Endless world -咬龍の庭-
このページは、僕の好きなゲームや漫画、テレビ、そして日常の出来事などのことをつれづれなるままに書いていくブログです。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

創作小説『バルドフォースG』第二十九章

はい、昨日は「テスト前なのでもう暫く小説の更新は無い」などと言いましたが、なんか昨日、久々に小説を更新したらテンションが上がってしまい、次の章の修正も終わってしまったので、二十九章も続けて掲載しちゃいます(^-^)。

ただ、流石にもうテスト前の更新はほぼ無理でしょうから、次は一月下旬にあるテストの合間に息抜きとして一章更新するか、或いは二月まで伸びるかもしれません。っていうか、どっちかっていうと後者の方が確率高いです。
本当、こんな時期まで延ばしてしまって、楽しんでくださっている皆さんに申し訳ないですし自己嫌悪もかなりのものです(>_<)。

ですが、この物語に長らくお付き合いくださった皆さん、この物語はこれを除けばあと二話で終わりです!
なので、二月の頭には完結できるはずです!!・・多分(オイ)。

それにしても、昨日のあいばさんの記事にあった、よっぽど好きじゃないと二次創作まではやらない、という意見には、これを手直ししている最中同意することしきりでしたね。
本当、これを書いていて思いましたよ。僕はつくづく、ガンダムシリーズ、特にSEEDシリーズが好きなんだな、って。原稿用紙にして数百枚くらいありそうな大作を、「ただ書きたい」というだけで書き上げることができたのは、やはりガンダムやバルドに対する『愛』やら思い入れやらの力が非常に大きかったからなのかなぁ、と我ながらしみじみ実感しました。
なので、今ここで叫んでおきます!
I LOVE GUNDAM!!

では、本文へは「READ MORE」にてどうぞ~。








バルドフォース エグゼ
バルドフォース エグゼ
PlayStation2
アルケミスト









HG 1/144 ジャスティスガンダム
HG 1/144 ジャスティスガンダム

バンダイ

※作中に出てくるMS“トールギス”は、劇場版のトールギスⅢです


 


バルG第二十九章『決戦』




 橘玲佳は、自分用に開発された指揮官用MS“トールギス”の目から、眼前の光景を見つめていた。
 目の前には、巨大な発光球体が、その暴力性とは裏腹に漂うように浮遊している。
 ウォーン ウォーン
 目の前の発光球体『セラフィム』は、まるで何かの文句を言うように、低い唸り声をあげ続けていた。
玲佳:「ふふふ、そんなに暴れたいのかしら?」
 玲佳は、目の前のネット兵器、いや、『可愛い我が子の一人』に語りかける。だが、返事は返ってこない。『彼女』は、絶望のあまり、既に言葉さえ忘れてしまったのだろうか。
玲佳:「まあ、ギルにあんなにネチネチ責められれば、それも当然のことよね。それにしても、彼も余計な事をしてくれたものね。おかげでこちらの戦力の大半が消失。これじゃあ、V・S・Sの企業活動は、しばらく停止ね・・・」
 『セラフィム』は動かない。目の前にいるのが、先ほどまであれ程猛威を振るい、近付く者を無差別に光弾で、DOSの波で、薙ぎ払い、屠っていた物体と同一のもとのは、とても思えない。
玲佳:「・・・でもまあ、あなたが手に入ってくれるなら、そうでもないかしら。どう?我が社特性の、『相馬憐用 行動停止ウィルス』は。ついでにこれは、我が社の洗脳プログラムのノウハウも詰まっている。だから、もう少し時間を置けば・・・あなたは、私の物となる!」
 玲佳はそう言葉に出してはみたが、何故だろうか、電子世界上ではおおよそ考えうる限りの最強の力が手に入るというのに、歓喜も達成感も、少しも沸いてはこなかった。
玲佳:「・・・・やっぱり、あなたがいないと、私は駄目ね・・・」
 玲佳は、今やこの世にはいない男に、我知らず語りかけていた。
玲佳:「私はここまでやったというのに・・あなたは、結局ここにはいない。でも、あともう一歩か。あともう一歩で、私たちのような子供などもう二度と出ない、輝かしい未来が・・・・」
 その時だった。AIが、玲佳に緊急事態を知らせる。
AI:「本構造体に、侵入者有り。本構造体内に、侵入者有り。どうやら、件の脱走したZAFT兵の一味と思われます。繰り返します・・・・」
玲佳:「やれやれ・・・。全く、私にはいつも、肝心なところで邪魔が入るのね・・・。でも、いいわ。私の前にどんな障害が立ちはだかろうと、私は勝ってみせる!あの頃の、惨めな慰み物に逆戻りしないためにも!!」



 もとはV・S・Sのものである移動式没入スペースから、ZAFT兵だった者達が次々と没入していく。それを見ながら、アシュランも決意を新たにし、ニューロジャックを差し込もうとした。
その時、ふと、バチェラがこちらを見ていることに気が付いた。
アシュラン:「どうした、バチェラ?」
バチェラ:「あ、あの、えっと・・・」
 バチェラは顔を赤らめ、何かを言いにくそうにモジモジしている。
アシュラン:「言いたいことがあるなら、早く言ってくれ。ネットの状況によっては、もう一刻の猶予も無いかもしれないんだからな」
バチェラ:「う、うん。わかった、言うよ・・・」
 バチェラは、意を決して言った。
バチェラ:「ア、アシュラン、この戦いが終わったら・・・一緒の所に、住んでくれないかな・・?」
アシュラン:「へ?」
 一瞬、何を言われたのかを計りかねる。
バチェラ:「あ、ご、ゴメン!その、嫌ならいいんだ。決戦前なのに、変なこと言ってゴメン・・・」
 バチェラは、渋々とニューロジャックを首に刺そうとする。
 そんなテンションで出撃されたらたまったものではないが、アシュランはこの場合、どんな事を言えばいいかの知識など、持ち合わせていなかった。だから、アシュランは、素直な気持ちを口にする。
アシュラン:「嫌だというんじゃない。それどころか・・むしろ、大歓迎だよ」
バチェラ:「ほ、本当!?」
 バチェラの表情が、一瞬にして明るくなる。アシュランは、何故バチェラの機嫌が突然よくなったのかわからないまま、言葉を続けた。
アシュラン:「君といると、色々と楽しそうだしな。でも・・突然、どうしたんだ?もしかして、一人で暮すのが、よっぽど寂しくなったのか?」
バチェラ:「ち、違うよ!あ、いや、違わないけど・・・。でも、『寂しい』というなら、アシュランの方が、今のボクなんかよりもよっぽど寂しそうじゃないか!」
 言われて初めて、アシュランは気付く。
 確かに、自分は今、無性に寂しかったのだ。愛する人と死別し、そして唯一の肉親である父親とも完全に決別した。だから、透が妹と再会した時は、妹が既に電子体幽霊に成り果てていると知った時も・・・心のどこかで、一抹の嫉妬を覚えたのだ。
 そして、バチェラはいつも、そんなアシュランの心の隙間を敏感に感じ取ってくれただけでなく、それを埋めようと精一杯頑張ってくれたのだ。
アシュラン:「・・・確かにな、俺は、リャンを喪ってからずっと・・・寂しかったのかもしれない。バチェラ、ありがとう。この戦いが終わったら、一緒に暮そう!」
バチェラ:「う、うん!!アシュランが元気になってくれて良かった。そうだね、だから、この戦いは、絶対に生きて帰ろう!朝倉ひかる、“プロヴィデンス”、いっくよぉ!!」
 バチェラは、彼女らしく元気良く、ニューロジャックを首に突き立てた。
マリア:「うふふ、隊長、随分可愛い子を見つけてきたんですね」
 気が付くと、マリアが、意味ありげな視線を送っていた。
アシュラン:「え、え?マリアさん、一体なんですか!?」
マリア:「隊長も相変わらずですね~。まあ、いいですよ。この戦いが終わったら、この不肖、マリア・ハウ、隊長の恋路をしっかりとサポートさせていただきます!」
アシュラン:「いや、『恋路』って・・・。俺とバチェラは、そんなんじゃないって・・・」
 盛大に誤解され、アシュランは大きなため息をついた。
 そして、マリアと同じくこちらをニヤニヤして見つめていたニコルと、鋭い目つきで見つめていたイザーク視線に気が付き、アシュランはこの際なので、ふと疑問に思っていたことを聞いてみる。
アシュラン:「そう言えばイザーク、ニコル、お前らよく、俺の場所がわかったな」
 アシュランたちがいたあの場所は、『アシュランを助けに来る』という前提が無ければ誰もやってこない場所だ。何故なら、あの施設を制圧したいのであれば、地上を一気に攻めれば事足りるのだから。
 すると、ニコルがニヤリと笑って、自分の軍服の袖を指差した。
アシュラン:「え・・・?」
 アシュランは何となく嫌な予感がして、自分の軍服の袖を触ってみると、案の定というか何と言うか、僅かに固い感触がした。
アシュラン:「発信機って・・・・、普通、ここまでやるか?」
ニコル:「『備え在れば憂い無し』と言うじゃないですか。それに、それつけてなかったら、いつアシュランと連絡とれるかわからないでしょ?」
イザーク:「今回ばかりは、俺もニコルに賛成だな。貴様は、本当に自分だけで突っ走る独善野郎だからな!それくらいしとかないと、危なっかしくて見てられん!!」
 相変わらず油断のならないニコルに、相変わらず口の悪いイザーク、そして、相変わらず世話好きなマリア。そんな仲間たちを見ていると、アシュランの不安は、不思議と安らいでゆく。
今なら、どんな敵が来ても勝てるような、そんな気持ちがアシュランの中に広がってゆく。
アシュラン:「よし、おしゃべりは終わりだ。みんな、今回が多分、この一連の事件の、最後の決戦だ!各自、十分気を付けて挑んでくれ!」
イザーク:「言うまでも無い!」
ニコル:「アシュランも、気を付けて・・・」
 二人はそれぞれ力強く応えると、ニューロジャックを首に突き立てた。
マリア:「隊長、今の施設の構造体は、V・S・Sがセラフィムに構造体ごと飲み込まれるのを防ぐため、各地のAIを総動員して、『コズミック・フィールド』を展開しています。よって、仮想Gが無いので、気を付けてください!」
アシュラン:「なるほど、あの情報量のブラックホールに飲み込まれないために、構造体内を宇宙化、か・・・。わかった、大丈夫だ。イザークやニコルも、月菜もバチェラも、もちろん俺も透も、それくらいのハンデ、大したことは無い!」
 そしてアシュランも、首筋にニューロジャックを突き立てた。
アシュラン:「アシュラン・ザラ、“ジャスティス”出る!!!」


 透は、ニューロジャックを見つめていた。
今まで、これを使って何回、仮想世界に没入したことだろうか。
 思えば、まるで引き付けられるように透がネットの世界に夢中になったのは、透を探していたという憐みたいに、透もまた、記憶の底に埋もれた最愛の妹を、無意識に探していたのかもしれない。
 そして、その探求の旅は終わった。透は最愛の妹を見つけ・・・そして、その道の途中で、優哉、あきら、アシュラン、バチェラ、掛け替えの無い仲間達を見つけ・・そして、月菜、人生を共にする、最愛の女性を見つけた。
 そして、今、透は戦う。大切な妹を、救うために。
 どうすればいいのかはわからない。『自らの死』という、人にとって最悪の絶望を突きつけられ、自我の殻に閉じこもってしまった憐に、どうやれば希望を与えることができるのか、全くもって見等がつかない。
月菜:「大丈夫」
 横を見ると、月菜が柔らかい笑顔で、微笑んでいた。
月菜:「透は、本当、何でも自分一人で背負い込むんだから・・・。でも、今はもう大丈夫。あたしが、隣にいるから。あたしが、共に戦うから。あたしたちが・・共に、生きていくから!」
 その月菜の言葉は、透にとって大きな希望となってゆく。
 そうだ、今、自分は一人じゃない。憐を見つける旅の過程で得た、こんなに多くの仲間が、今、透に力を貸してくれる。
透:「そうだな。わかった、月菜。一緒に戦おう!!」
月菜:「うん!!」
 そして、月菜は自らの首にニューロジャックを突き立てた。
月菜:「笹桐月菜、“ゼータ”、いくわよ!!」
 透も、ニューロジャックを固く握り締め・・・そして、首筋に突き立てた!
透:「相馬透、“フリーダム”、行きます!!」


『没入(ダイブ)』


 そして、透たちは次々と、構造体内に降り立った。いや、『降り立った』という表現は、正しくないかもしれない。正確には、透たちは、仮想の宇宙空間の真っ只中に浮いていた。
月菜:「ひゃ~!本当に、重力無いわね」
バチェラ:「大丈夫、月菜?ボクは全然ヘッチャラだけど。」
月菜:「もう、いい加減、バカにしないでよね、ひかるちゃん。あたしだって、もう一端のシュミクラムパイロットなのよ。こんな場所、全然何でも無いって!」
アシュラン:「俺も問題は無い。透は?」
透:「当然だ!!」
 そして、透は正面に、遠くにかすかに光る発光球体を見据える。
透:「憐・・・。にしても、セラフィムが暴走しているはずなのに、静か過ぎる。もしかして・・・・」
ニコル:「どうやら、既に橘玲佳が沈静化させちゃったみたいですね」
 穏やかで礼儀正しい声と共に、ニコルの“ブリッツ”が出現した。
イザーク:「チッ、少し遅かったか・・・。だが、まだまだ『完全に遅かった』訳じゃない!!!」
 少々粗暴だが誰よりも真面目で熱い声と共に、イザークの“デュエル”が出現する。
 その時、セラフィムの方角から、無数の点のようなものがこちら目掛けて突進してくるのが見えた。
月菜:「透、あれは・・・」
 程無くして、それがアストレイとジンの大群であることが判明する。
イザーク:「はっ、上等だ!!行くぞ、お前ら!!」
ニコル:「雑魚の露払いは僕らに任せてください。アシュランたちは、セラフィムを!あなたたちの機体なら、どんな強敵が出てきても負けないはずですから!!」
 イザークとニコルがそう叫ぶと、仲間のジンの軍団を引き連れ、洗脳措置によって操られたシュミクラム部隊へと向かっていった。そして、瞬く間に、敵の部隊と交戦状態になる。
アシュラン:「さあ、俺たちも行くぞ!!」
透:「おう!!」
 そして、透たちは、全速力でセラフィムに向かって突撃を開始した!
 すると、早速透たちにも、敵のシュミクラム部隊が一斉に襲い掛かる。
バチェラ:「邪魔だよ!!」
 バチェラがドラグーンを放出し、瞬く間に複数のシュミクラムの武装を撃ち抜いた。
透:「どけぇぇぇぇぇ!!!」
 透もマルチロックオンからの一斉射撃で、目の前の敵たちを瞬時に一掃した。
 アシュランも、月菜も、圧倒的な強さで目の前の敵を次々と退けてゆく。
 後方を見れば、イザークたち『赤服』はもちろんのこと、他の元一般兵たちも、数では圧倒的に勝る敵シュミクラム部隊に対して驚くべき粘り強さで善戦していた。
透:「後ろは、あいつらに任せても大丈夫そうだな」
アシュラン:「・・・みたいだな」
月菜:「でも、これなら案外、簡単に憐ちゃんまで辿り着けちゃったりして・・・きゃあ!?」
 突然、透たちを様々な方向からビームが襲う。
透:「月菜、大丈夫か!!」
月菜:「う、うん、大丈夫!」
アシュラン:「これは、ファンネル!とすると・・・・」
月菜:「やっぱり、そう簡単にはいかないみたいだね・・・」
 二機のキュベレイが、透たち目掛けて飛来した。
透:「毎度お馴染の、αユニットか!だが、こんな奴ら、全員でかかれば・・・」
 その時バチェラが、透たちを制するように、一機、前に出た。
バチェラ:「透たちは先行って!!」
アシュラン:「バチェラ!!何をバカなことを!?」
月菜:「そうだよ、ひかるちゃん!一人で戦うより、全員でかかった方が、絶対楽だって!」
 だが、バチェラは決意を固めた強い眼差しで言った。
バチェラ:「いや、そんな事をしている時間は無いよ!」
透:「どうしてだ!?」
バチェラ:「考えてもごらんよ。既に憐は、セラフィムは、橘玲佳の手に落ちてる。しかも、『あの』橘玲佳だよ。奴は厄介なことに、洗脳技術を確立してる。それに、憐のアンチネットロジックへの対策も万全だった。だから、ヘタをして、憐が洗脳されたら、それこそこちらの負けだ!だから、本当にボクらには、正に一刻の猶予も無い状態なんだよ!!」
透:「!!!」
バチェラ:「それに、大丈夫。ボクはこんな奴らには負けない。すぐに後を追いかける。だから、早く、先に行って!!」
透:「わかった!!行くぞ、アシュラン、月菜!!」
 透は覚悟を決め、尚も追いすがろうとするファンネルの追撃をかわしながら、セラフィムへの突撃を再開する。
月菜:「ひかるちゃん、気を付けてね!!」
アシュラン:「バチェラ、さっきの約束、忘れるな!必ず、生きて会おう!!」
 そして、月菜とアシュランも、透に続いて先を急ぐ。
バチェラ:「よし・・・さあ、αユニット、このボクが相手だ!!」
 バチェラは進藤姉妹の駆る二機のキュベレイに向かって、ありったけのドラグーンを放出した!


 透たちは、執拗に纏わり付いてくるシュミクラム隊を払いながら、全速力でセラフィムへと急いでいた。
透:「くそっ、何で邪魔をするんだ!俺はただ、妹のことを、救ってやりたいだけなのに!!!」
 その時、透の視界の片隅に、何か飛来する物体が映る。
透:「!!」
 透は咄嗟にシールドを掲げて、それを防ぐ。
物体の正体は、ビームブーメランだった。そして、次の瞬間。
??:「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」
 耳障りな嬌声を上げながら何か黒い物体が猛スピードで接近、透に向けて黒い刃を振り下ろした!透はそれを、ビームサーベルで受け止める。
透:「ゲ、ゲンハ!!?」
 黒い物体は、ゲンハの“デスサイズ・ヘル”だった。
透:「ゲンハ、どけ!!俺は、憐の所に行かなきゃいけないんだ!!」
 透はかつての親友に向かって、必死に叫ぶ。しかし。
ゲンハ:「つれねぇな~、透よぉ。そんな事言ってねぇで、この俺サマと、昔みたいに殺し合いゴッコして遊ぼうぜぇ!」
透:「な・・」
ゲンハ:「そうだ、殺し合いだ、殺し合い、殺し合い、コロシアイ、コロシアイコロシアイコロシアイ・・・・ああ、何て楽しいんだ、何てコロシアイは楽しいんだぁぁぁぁ!!!ギヒャヒャヒャヒャ!!!
透:「ゲンハ・・・」
 欠陥付きの補助チップによって理性を狂わされ、そして狂った理性の赴くままに愛する家族さえも殺めてしまったゲンハの精神は、既に跡形も無いまでに崩壊していた。
透:「くそっ!だったら、せめて・・・」
 透がゲンハに斬りかかろうとしたその時、透より先に一陣の赤い疾風が、ビーム刃でゲンハに踊りかかる。
アシュラン:「透は先へ行け!妹を助けるんだろ!!」
 それは、アシュランのジャスティスだった!
透:「アシュラン!しかし、こいつは・・・」
アシュラン:「わかっている!だが、お前が憐ちゃんを救わなくて、一体誰が救うんだ!!!」
透:「く・・・・」
アシュラン:「安心しろ、こいつは俺に任せてくれ。こいつは、俺が止める」
月菜:「で、でも、アシュラン、アシュランはこの人に・・・」
アシュラン:「そうだな・・・、確かに、俺はこいつに、大切なものを沢山奪われた・・・。でも、俺は学んだよ。透、君たちとの出会いで学んだんだ。復讐心や、恨みや、憎しみや・・・・そんなもので戦っても、何も生まれないって。だから、俺は・・・君の仲間として、君たちを守るために、そして、この男に大切な物を奪われた物として、二度とそんな悲劇が起こらないように、いま、俺はこの男を止めるために戦う!!」
 アシュランは、二本のビームサーベルを連結し、双刃の長剣(アンビデクストラス・ハルバート)としてゲンハに斬り掛かる!
アシュラン:「さあ、二人とも、行くんだ!!!」
透:「わかった・・・。ゲンハを頼んだぞ、アシュラン!!」
月菜:「こっちも、絶対憐ちゃんを助け出すから!!」
 透は再び十二枚の翼を広げ、月菜は瞬時に機体をウェブライダー形態に変形させ、猛スピードで先へと急いでゆく。
アシュラン:「ゲンハ、お前を止めてやる!!
 アシュランは双刃の長剣を振りかざしてゲンハに斬り掛かるが、ゲンハはそれを、ビーム処刑鎌『デスペナルティ』で軽々と受け止め、弾き返す。
ゲンハ:「ゲッゲッゲ!!テメェにゃ俺サマを止められねえぜぇ!!!!
 ゲンハは全身からビーム刃を射出し、アシュランに踊りかかった!


 透と月菜は、それぞれの高機動シュミクラムの限界の速度で飛びながら、襲い掛かる敵を、そのスピードを少しも緩めることなく撃退、先へ先へと進んでいった。この構造体に侵入した時はとても小さく見えたセラフィムが、今はかなり大きい。
月菜:「透、あともう少しだね!」
透:「そうだな・・。しかし、月菜、お前、本当に随分腕を上げたな・・・」
 ここに来るまでの月菜のシュミクラム操縦の腕前は、透の目から見ても、最早自分たちと対等に戦えるまでになっていた。
月菜:「へへ、透に初めて褒めてもらっちゃった」
 その間にも、月菜は浴びせ掛けられるアストレイのビームをかわし、すれ違い様にそのアストレイのビームライフルをビームで撃ち抜いた。
月菜:「実はね、ちょっと不謹慎なんだけど・・・」
透:「ん?」
月菜:「あたしね、今・・・とても楽しいんだ」
透:「え?」
月菜:「だって・・・これ、あたしの夢だったんだもん。透と肩を並べて一緒に戦う事。透と並んで、一緒に生きる事。それが、やっと叶ったな、って・・・・・」
透:「月菜・・・」
 透は月菜の想いを聞き、今までの電子世界の旅路のことを考える。
 長く、険しく、そして辛い旅だった。でも不思議と、それが長く、辛く、険しいとは、旅路の中で透が感じたことは、ほとんど無かった。
 それは、多分、その旅路を常に共にしてきた存在、旅路を始めた頃からずっと傍にいた幼馴染で今は共に生きる恋人となった、一人の女性がいたから。
月菜:「あ、ゴメン!やっぱり、こんな時にこんなこと言うの、不謹慎だったよね・・・」
 だから、透は、万感の想いを込めて、この言葉を口にした。
透:「ありがとう、月菜。お前がずっと隣にいてくれて・・・本当に、よかった」
月菜:「透・・・・」
 その時、透たちを突然、波線状のビームが薙ぎ払った!
月菜:「きゃ!!」
透:「くっ!!!」
 かつて月菜の愛機だった“アストレイ・ブルーフレーム”のパルスビームライフルから放たれたパルスビームだった。ウェブライダー形態の月菜はそのままかわしたが、透は思わずシールドで受け止め、そのため、一瞬前進が止まってしまう。そして、その一瞬で、そのまま突っ切っていった月菜との距離が、一気に開いた。
月菜:「透ーー!!!」
 慌ててUターンしようとした月菜に、透は叫んだ!
透:「月菜、お前が先に行け!!必ず、すぐに追いつくから!!!」
 月菜は、すぐにUターンを止めると、そのまま全速力でセラフィムへ進んでいった。
月菜:「わかった!憐ちゃんを救えるのは透だけなんだから、絶対追いついてよ!!!」
 そして、月菜の機体はすぐに、見えなくなる。
α-Ⅷ:「敵確認、排除します」
 元月菜の機体を与えられたαユニットの新顔は、透に向けて、再度ビームライフルを構えた。しかし。
透:「くそっ、お前に構っている暇は無いんだ!!!!!」


『反転(フリップ・フロップ)』


 透は自らの深層無意識の力を引き出し、ビームライフルが火を噴くよりも速い物凄いスピードでα-Ⅷに接近、ビームサーベルを引き抜き、アストレイのライフルを装備した右腕と、胸部の動力機関部を斬り裂いた。
アストレイは機関部を完全にやられ、そのまま動かなくなった。その間、わずか一秒にも満たぬ出来事だった。
透:「く、月菜を追わないと・・・」
 しかし、焦る透の目の前に、大軍のジンが、アストレイが、引っ切り無しに殺到する。
透:「ちっ、どうしてお前ら、俺の邪魔をするんだ!!どけ!!!!」
 透はフルバーストで立ちふさがる敵を一掃するが、その間にも月菜との距離は、広がるばかりだった。


 月菜は一人、全速力でセラフィムへと向かっていた。セラフィムの周囲を守っているとばかり思っていたシュミクラム部隊の大軍も、最早一機もいない。どうやら、完全に敵が密集していた地帯を突っ切ってしまったみたいだ。
 セラフィムの巨大な発光球体は、既に目の前と行ってもいい距離になっていた。
月菜:「透・・・せっかく隣に並べたと思ったら、何であたしが一人で先行くことになっちゃうの・・・・」
 月菜は、しかし、次の瞬間にはそんな感傷的な心を、強く振り払う。
月菜:「ダメダメ!あたし、もっとしっかりしなきゃ!透と一緒に生きていくんだったら、もし一人になってもちゃんと生きられるようになるって、あの日、誓ったじゃない!それに・・・大丈夫、もしあたしが本当に危なくなったら、きっと透は、助けに来てくれる・・・」
 その時、思わぬ声が、月菜の耳に飛び込んできた。
??:「あら、一番最初にここまで辿り着いたのは、あなただったのね、笹桐月菜さん」
月菜:「た、橘玲佳社長!!」
 玲佳の声を発した『その物体』は、城壁をそのまま人型に彫り込んだような姿をしていた。カラーリングは、大部分が白で、腰部や胸部などの一部がブルー。額に三叉に分かれた角を付け、その角はどこか、王冠のようにも見える。左肩にはシールド、そして右肩には巨大な砲身を装備している。また、肩アーマーの後部には、小型であるが、明らかに高性能なバーニアユニットが取り付けられていた。
 そして、何よりの異様なのはそのサイズ。他のシュミクラムの、1.5倍はある。
月菜:「玲佳社長が、シュミクラム・・・?」
玲佳:「そうよ。これが、私の専用機。私は確かにシュミクラムは素人だけれど、このシュミクラムには、我が社の洗脳技術、被洗脳者をコントロールする技術を応用した、高性能な小型の自律AIが埋め込まれているわ。このシュミクラム“トールギス”の核となっている我が社の洗脳技術の凄さは、あなたも身をもって、よーくわかっているでしょう?」
月菜:「く・・・・」
玲佳:「セラフィムにうちの社員の大半がやられ、人手不足だったから試運転も兼ねてこれで出てきたのだけれど・・・あなたと戦えるなら、それもいいかしらね」
月菜:「退いてください、玲佳社長!!退かなければ、力ずくでも退いてもらいますよ!!」
玲佳:「あなた、憐を助けに来たのでしょう?だったら、退くわけにはいかないわ。折角もう少しで私の玩具になるものを、私の『元ペット』如きに、黙って横取りされるわけ無いでしょう」
 玲佳のその言葉に、月菜は、V・S・Sに所属していた頃の屈辱的な時間を思い出し、頭がカッと熱くなる。
月菜:「誰がペットよ、誰が!!!!」
玲佳:「ふふふ。それに、あなたが洗脳を自力で破ったことを知った時、私は是非、あなたとは一度、二人きりでお話をしたいって、そう思ったの。だから・・・始めましょう、女同士の語らいを!!
 玲佳はシールドの裏からビームサーベルを取り出し、それを月菜に向けて振り下ろした。月菜も素早く変形を解除し、ビームライフルからビームを銃剣状に収束させ、それを受け止めた。
 二本のビーム刃がぶつかり、激しい仮想の火花を散らした。


イザーク:「よし、こっちは大体片付いたぞ!ニコル、お前は!!?」
ニコル:「僕もあらかた!それに、皆さんも頑張ってくれているみたいです。これは、予想以上に早く終わりそうですね」
イザーク:「当然だ!俺だって、伊達に『赤』を着ているわけじゃないんだぞ!!!」
 そう言いながら、イザークは接近してきた敵の武装を、的確にビームライフルで撃ち抜く。
 その時、マリアが緊迫した声を発する。
マリア:「イザーク君、ニコル君、気を付けて!そっちに猛スピードで接近するシュミクラムが二。これは・・・αユニットの“シグー”よ!!」
 マリアの通信と同時に、イザークの目に、正面から猛スピードで突進してくる二機のシグーが映った。
イザーク:「大丈夫だ、マリア!お前は他の奴らのサポートをしろ!お前も知っているだろう!俺たちは、αユニットになど、負けはしない!!」
 そしてイザークは、隣で身構えているニコルに向かって叫ぶ。
イザーク:「ニコル!奴らは、連携攻撃が得意な連中だ!引き剥がした上で散開して、別個に仕留めるぞ!!」
ニコル:「丁度僕も、同じ事を考えていたところですよ!」
 そして、二機は同時に散開した。
 シグーはあくまでコンビネーション攻撃を仕掛けようと、一糸乱れぬ動きで突進してくるが、イザークが追加装甲の多弾頭ミサイルで、ニコルがグレイブニールでそれぞれ一機を攻撃、二機を巧みに引き剥がすと、再び連携する隙を与えぬように、それぞれが担当の機体に猛攻をかける。
 イザークは追加装甲のレールガンとビームライフルを立て続けに放ち、一機を完全に孤立させると、武器をビームサーベルに切り替え、追加装甲のスラスターを全開で吹かして突進、シグーに斬り掛かった。
 しかし、イザークの斬撃が届く刹那、シグーはシールドをイザークに向け、そして電撃『スタン・ボルト』を放った!イザークは咄嗟に反応してかわそうとするが、完全に虚を付かれていたためかわしきれず、雷撃を浴びてしまう。
イザーク:「ぐあぁぁぁ!!?」
 装甲を付きぬけ、コックピットまで到達した電撃は、殺傷力こそは無かったものの、イザークの体を痺れさせ、動きを封じた。シグーはビームライフルとビームガトリングをイザークに向けて発射、イザークは動かない機体を何とか動かしてシールドで防ぐが、更にシグーはビームコーティングされた重斬刀を引き抜くと、イザークに斬り掛かる。
イザーク:「ぐぅ!!」
 イザークはそれも何とかビームサーベルとシールドで受け止めるが、やはり麻痺した体では、まともに斬り合いなどしても不利なだけだ。
 イザークはイーゲルシュテルンでシグーを何とか引き離そうとするが、シグーは高性能のスラスターを全開にしてイーゲルシュテルンの圧力を真正面から完全に押し戻してしまう。
イザーク:「何!!?」
 そしてシグーは、そのまま猛スピードで突撃、必殺の斬撃を放つ。イザークは何とか動くようになった体で辛うじて致命傷は避けるが、胸部の追加装甲が斬り裂かれ、閃光を発して消滅した。
 更にシグーは急旋回、再びイザークに、今度は剣を突き立てるようにして突撃する。今度こそ、イザークにかわす術は無い。完全に、必殺のタイミングだった。
イザーク:(くそぉ!!俺は、こんな所で死ぬのか!!!?)
 諦めかけたイザークに、マリアの声が届く。
マリア:「イザーク君!!!」
イザーク:「!!!!」
 そうだ!今、死ぬわけにはいかない!!ここで死んだら、英雄になるという夢も、アシュランを見返してやるという夢も、そして、好きな女に想いを告げるという夢も、永遠に叶わなくなる!!
イザーク:「こんな所で、死ねるかぁぁぁぁ!!!」


『反転(フリップ・フロップ)』


 突然、謎の電子音声が脳内に響き渡り、イザークを不思議な感覚が包み込む。途端、今までは、憧れながらもどこか「夢物語だ」と思っていた安室嶺のような動きが、今なら実際に出来るような確信が、イザークの心に満ちてゆく!
 物凄いスピードで突進してくるはずのシグーの動きが、何故かひどくスローモーに見えた。
イザーク:「遅い!!」
 イザークはそれを紙一重で、しかしその実完全に余裕でかわすと、そのまま背後に通り抜けたシグーに対し、レールガンの砲身を後ろに向けた。そして一切視敵を認せずに、ただ感覚だけを頼りに放つ。外すなどとは、一切考えられなかった。何故か後ろに目が付いたような、そんな不思議な感覚だった。安室嶺が、ただ手を後ろに向けた狙撃で敵のコックピットを撃ち抜いた芸当が、今なら自分に出来るという確信もあった。
 そして、電磁力で加速された超高速の弾丸は、過たずしてシグーの重斬刀に直撃、その刀身を真っ二つに叩き折った。
 更にイザークは、シグーが装備をビームライフルに持ち替える暇を与えず、多弾頭ミサイルを放ちながらビームサーベルを再び引き抜いてシグーに突進する。シグーは再び盾をイザークに向け、スタン・ボルトを放とうとするが、それは予測の範疇だ。
イザーク:「甘いんだよ!!」
 イザークは盾を投げつけて、スタン・ボルトを盾に浴びせることで防ぐと、盾を手放して身軽になった左手でもビームサーベルを引き抜いた。右手のビーム刃でシグーの左腕を斬り裂き、そして左手のビーム刃でシグーの駆動系を正確に貫く。
α-Ⅱ:「!!!?」
 シグーは機体を激しくスパークさせ、そしてそのまま動かなくなった。


 一方ニコルは、予想を遥かに上回るシグーの機動力に、苦戦を強いられていた。
 機動力には自信のあるブリッツとはいえ、元々機動力に特化され、更に改良によって更なる速さを手に入れたシグーには、ブリッツのスピードは及ぶべくもなかった。そのため、こちらのビームライフルは全く当たらない。得意の接近戦に持ち込もうにも、追いつけず翻弄されるばかりなのでは話にならない。
ニコル:「くっ、今のままじゃ、グレイブニールもランサーダートも、撃ってもかわされるのがオチか。ミラージュコロイドを使っても、反撃の糸口すらつかめないこの状況じゃ、リスクが大き過ぎる!」
 その時、シグーの放ったビームが、ブリッツの右脚に被弾、右脚は閃光を発して消滅してしまう。
ニコル:「しまった!!」
 右脚部のスラスターを失い、更に機動力を落としてしまったブリッツに、シグーが止めとばかりに猛攻を掛けようとする。
ニコル:「くっ、まずい!!」
 シグーの猛攻を、ニコルは必死にかわすが、かわすのに精一杯で反撃ができず、このままでは遠からず追い詰められるのは明らかだった。
ニコル:「で、でも、このままここで死ぬわけにはいかない!僕は、僕は・・・・」
 ニコルの脳裏に、ゲンハたちとの戦いで怪我を負ったとき、見舞いに来てくれた両親の姿が蘇る。


ユーリ:『ニコル、お前はもう、軍を辞めなさい』
 父は、開口一番でそう言った。
ロミナ:『あなたもわかるでしょう?あなたは、戦いになんて絶対向く子じゃない。このまま、もしあなたに万が一の事があったら・・・・』
 母はそう言って、声を詰まらせた。
 両親は元来、どちらもとても大らかな性格の持ち主で、息子のやることに口を挟んだことは、今まで一度として無かった。その二人がこんな事を言ったということは、二人とも、自分のことを本当に心配してくれているのだと、ニコルは思った。
 そして、両親の気持ちを汲み取ったその上で、ニコルは決然と言ったのだった。
ニコル:『父さん、母さん、ありがとう。でも、僕にはまだ、ここでやる事があるんです』
父・母:『ニコル!!?』
 戸惑う両親に向けて、ニコルはしっかりと、言葉を紡いだ。
ニコル:『僕にはまだ、立派なピアニストになるという夢があります。だから、そのためにも、今ここでやり残したことをやらなければ、僕はどうしても前には進めないと、そう思うんです』
 掛け替えの無い友の心を癒し、支えること。それは、人々を癒すピアニストになると誓ったニコルが、最初にやらなければいけないこと。
父・母:『ニコル・・』
ニコル:『大丈夫。僕は、もうしばらくしたら絶対、再び立派なピアニストになるために、あなたたちのもとに帰ってきますから・・・』
 それは、自分を心から愛してくれる両親へ向けての、心からの誓い。


ニコル:「そうだ・・僕は、僕は、僕の夢を叶えるためにも、必要としている沢山の人たちに、僕の音楽を届けるためにも・・・こんな所で、死ぬわけにはいかない!!!


『反転(フリップ・フロップ)』


 突如、ニコルの脳内に謎の電子音声が響き、途端に全身の感覚、特に聴覚がやけに鮮明になる。
ニコル:「こ、これは・・・・」
 そして不思議なことに、全ての周囲の音が、まるで手に取れるようにしっかりと感じられる。シグーのスラスターの排気音、関節の駆動音、ビームの発射音、その全てが完全に認識できる。
ニコル:「この感覚は・・・・」
 そうだ。この感覚は、作曲家である母の才能も少しは受け継いでいるらしい自分が、新しい曲を作曲するときに、ごく稀に感じる感覚とよく似ている。その感覚に包まれた時は、ここではないどこかの世界から聴こえてくる音を、自分はただ忠実に鍵盤を奏でて再現するだけでいいのだ。そして、そういう時は、必ず自分でも驚くほどのいい曲ができるのだ。
ニコル:「これは・・いける!!!」
 ニコルは、聴こえてくる音に忠実に、まるで鍵盤を打つように、ランサーダートを三発全て放った。それらは高速移動中のシグーを的確に捉えた。シグーは咄嗟に盾で防ぐが、高い突貫力を持った三発のミサイルは、盾を左腕ごと完全に破壊し、更に爆風で視界を一瞬塞ぐ。
ニコル:「今だ!!」
 ニコルはすかさずミラージュコロイドで姿を消し、聴こえてくる音を頼りに、シグーの進路に先回りする。
 そして、シグーの懐に気付かれずに飛び込むと、トリケロスに内蔵されたビームサーベルからビーム刃を射出、シグーの動力回路の中心部を的確に貫いた。
 動力をやられたシグーは、機体を激しくスパークさせ、そのまま動かなくなった。


マリア:「イザーク君、ニコル君、凄い!どうしちゃったんですか!?今の、とんでもない戦いっぷりでしたけど・・・」
 マリアの歓声を聞いて、イザークは自分と同じくニコルが無事、戦いに勝利したことを知る。
イザーク:「いや、よくわからんが、なんだか変な音声が・・・」
マリア:「はい?」
イザーク:「いや、何でもない」
 イザークは、今も体を支配する妙な感覚について説明しようとして、止めた。そんなこと、口に出して説明したところで、理解不能なだけだ。何しろ、自分だって、さっぱり理解できないことなのだから。
 ただ、この感覚は嫌なものでは無かったし、何故か、自分が憧れの安室嶺に一歩近づけたような、奇妙な満足感があった。
マリア:「・・・とりあえず、お二人とも無事で良かったです。・・・・あ!でも、気を付けてください!また新たなシュミクラムが一機、猛スピードで接近中!!これは・・・これも、新型です!機種は、“ステイメン”!!」
ニコル:「やはり乗っているのは、αユニットですね」
 その時、前方から、一機の白いガンダムタイプのシュミクラムが、ビームを放ちながら突進してきた。
α-Ⅰ:「敵発見、排除します」
イザーク:「次から次へと!!いくぞ、ニコル!!」
ニコル:「はい!!」
 二人は、ビームをかわすと同時に散開する。
 イザークは左手のビームサーベルをビームライフルに持ち替えると、レールガンとビームライフルを撃ちながら突撃、同じくビームを放ちながら突撃するニコルとタイミングを合わせて接近し、敵機のビームにビームライフルが撃ち抜かれるが構わず、消滅するビームライフルを捨てると左手で再度ビームサーベルを引き抜き、間合いに入ってビーム刃を射出したニコルと同時に、イザークは左から、ニコルは右から、斬撃による挟み撃ちを仕掛けた。
 しかし、イザークの二刀での斬撃は、一方はシールドで、もう一方は、肘裏から伸びたマニピュレーターが引き抜いたビームサーベルで、それぞれ防がれてしまう。
イザーク:「何!!?」
 見ればニコルの斬撃も、ビームライフルを持った右手の肘から伸びたマニピュレーターが保持するビームサーベルで受け止められていた。
ニコル:「隠し腕、ですか」
イザーク:「小癪な真似を!!」
 イザークは、せめてもの足掻きにシールドを斬り裂くが、ステイメンは隠し腕『フォールディング・アーム』からビームサーベルを手放すと、そこからビームを放ち、イザークが咄嗟に左手から手放したビームサーベルユニットを撃ち抜く。
 更に、右腕でも同様の攻撃を行い、虚を付かれたニコルの右腕を吹き飛ばす。
ニコル:「くっ!!」
 ブリッツのほとんどの武装が集中する複合兵装『トリケロス』を装備した右腕が吹き飛ばされ、ニコルはほとんど無力化されてしまった。
イザーク:「おのれぇ!!」
 イザークは怒りのままに遮二無二斬り掛かるが、ステイメンは人工的な、しかし鮮やかな動きでそれをかわすと、フォールディング・アームから多角的に何発ものビームを浴びせかける。
イザーク:「くっ!!」
 イザークはそれを何とかかわすが、右脚に一発が、左腕に一発がそれぞれ被弾、イザークはすかさずビームを浴びた追加装甲をパージし、本体の損傷を辛うじて防ぐ。
イザーク:「マリア!予備のライフルとシールドをよこせ!!」
マリア:「は、はい!!」
 すかさず転送されてきた予備の装備を構え、イザークは再度ステイメンに突撃する。
 ステイメンは左手にプラズマバズーカを構え、更にバックパックの二連装ビーム砲も開いて、その驚くべき火力を全門開放させてイザークを狙った。
イザーク:「くっ・・こんなもの!!」
 プラズマバズーカの砲撃に、シールドが耐え切れず砕け散るが、イザークはそれを捨てて果敢に突進、ビームライフルで敵のビームライフルを、左肩の多弾頭ミサイルで敵の背部二連装ビーム砲を破壊することに成功する。しかし、次の瞬間多弾頭ミサイルポッドが、左脚の追加装甲が、それぞれビームを浴びる。イザークはそれを次々とパージさせて、本体へのダメージを未然に防いだ。
イザーク:「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
 イザークはビームライフルを貫かれながらも接近、自分に向かって放たれた最後の一発のビームをパージした右腕の追加装甲を盾にして防ぐと、左手でビームサーベルを抜き放ち、渾身の斬撃を放つ!
イザーク:「くらえぇぇ!!!!」
 しかし、ステイメンは紙一重で身をかわし、捨て身の一撃はステイメンの左腕を肩口から斬り裂いただけに留まってしまう。しかも、すれ違い様、ステイメンはフォールディング・アームからビームを一撃放ち、それがデュエルの背部の追加バーニアスラスターに直撃、イザークは機動力を大きく奪われてしまう。
イザーク:「くそぉぉ!!」
 その時、いつの間にかミラージュコロイドで姿を隠していたニコルがステイメンの死角に出現、渾身のグレイブ二ールを放った!
α-Ⅰ:「!!!?」
 ステイメンは鋭く反応してそれをかわすが、ニコルは巧みにグレイブニールを操作し、ワイヤーを敵の全身に絡ませ、展開させた鉤爪を敵の体に打ち込んでステイメンの動きを完全に封じ、更にニコル自身もステイメンにしがみ付いて、叫んだ。
ニコル:「イザーク、今です!!今のうちに、こいつを!!!」
イザーク:「ニ、ニコル!!しかし・・・。」
ニコル:「大丈夫!僕はよけます!さあ、早く!!」
イザーク:「わかった!!!」
 イザークはニコルの腕を信用し、右肩のレールガンを放とうとしたが、寸前、ワイヤーの拘束からその部分だけ巧みに抜け出たフォールディング・アームがビームを放ち、レールガンを貫いてしまう!
 更にフォールディング・アームは、密着しているニコルのコックピットに狙いを定める。このままではニコルが危ないが、ビームサーベルで突撃しても間に合う距離ではない。かといって、今のデュエルには、火器はイーゲルシュテルンしかない。こんなものでは、何の役にも立たない!
イザーク:「マリア!!予備のビームライフルをよこせ!!」
 しかし回線からは、泣きそうなマリアの声が返ってくる。
マリア:「デュエル用の火器は、もう有りません!!!」
イザーク:「使える武器なら何でもいい!!早くよこせぇぇ!!!」
イザークは、叫んだ!もう、ステイメンのビームが今にもニコルを貫こうとしている!!
マリア:「つ、使える武器・・あ!これなら!!」
 同時に、イザークに、ある武器が転送されてくる!二門の火器を連結させた、特徴的な砲身。これは・・・今は亡き戦友の愛機“バスター”の、超高インパルス長射程狙撃ライフルだ!!
イザーク:「う、うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
 渾身の砲撃を放つその瞬間、ディアッカの力が流れ込んでくる気がした。
 高出力のエネルギーの奔流は、そのまま真っ直ぐステイメンのコックピットを貫いた! ニコルは寸前でワイヤーをパージして離脱し、フォールディング・アームから放たれた最期のビームが、虚しく空を切った。
 コックピットを貫かれたステイメンは、激しい閃光を発して消滅した。
イザーク:「ありがとう、ディアッカ・・・・」


バチェラ:「くっ・・・うわぁ!!」
 危うくビームに貫かれかけ、バチェラは機体を捻ってそれをかわした。
 しかし、二機のキュベレイから放たれるファンネルは、上下前後の概念が無い仮想の宇宙空間でこそその本領を発揮する。まさしく四方八方、全方位から、計二十基のファンネルが、執拗にバチェラを狙う。
バチェラ:「くそぉ、このままじゃ・・放出!!」
 バチェラも負けじとドラグーンを放つが、いくら性能ではファンネルに勝るドラグーンといえど、プロヴィデンス一機からの計十一基のドラグーンでは、キュベレイ二機から放たれる計二十基ものファンネルには、どうしても押され気味になってしまう。
 あまりにもあらゆる方向から放たれるビームに、バチェラの驚異的な集中力も限界だ。そして、遂に一基のファンネルから放たれたビームがビームライフルに被弾、ビームライフルは閃光を発して消滅してしまった。
バチェラ:「あぁ!しまった!!」
 更に、その瞬間を好機と見た二機のキュベレイは、ビームサーベルを引き抜くと、互いの攻撃が互いの死角となるような方向から突進する。
バチェラ:「くぅ!!」
 バチェラは一機の斬撃をシールドからビーム刃を射出して防ぐが、その間にもう一機によって、右脚を斬り裂かれた。
バチェラ:「ちっくしょぉ!!」
 バチェラは苦し紛れに盾の二連装ビーム砲を放つが、二機のキュベレイは見事に揃った動きで散開してそれを回避する。更にその間に放たれたファンネルがビームを放ち、かわし損ねたバチェラはプロヴィデンスの頭部を貫かれた。
バチェラ:「くそっ、こいつら、洗脳されてるとはいえ、何て見事なコンビネーションなんだ!」
 先程の突進もそうだが、ファンネルの操作においても、互いのファンネルが互いの攻撃を阻害するようなことは、一切ない。それどころか、まるで互いのファンネルも、自分で撃ち出したものであるかのよう。どちらか一方のキュベレイが二十機全てのファンネルを操っていると、思わずそう錯覚してしまうほど、二人の攻撃は息が合っていた。
バチェラ:「ちくしょう、こいつらには二対一じゃ、やっぱり分が悪かったのか・・・」
 そう言えば、確か今戦っている二人は、双子の姉妹だと聞いたことがあった。やはりこの二人は、洗脳される前から、いや、産まれた時から、このようにピッタリと息の合った、仲のいい姉妹だったのだろうか?この二人は、生まれた時から一人ぼっちになったことなど、無いのではないだろうか?
バチェラ:「やっぱり、一人じゃ勝てないのか?一人ぼっちじゃ、何もできないのか・・・?」
 次第に追い詰められ、バチェラは思わず弱気になる。
そして同時に思い出してしまう。一人孤独にパズルを組んで遊んでいた、あの頃を。素顔を明かせず、大好きだったチームの仲間達から一人疎外されていた、あの頃を。
同時に、その時感じた孤独が、寂しさが、絶望が、鮮明に蘇る。
バチェラ:「ダメだ。やっぱり、一人ぼっちじゃ勝てないんだ。一人ぼっちじゃ、何もできないんだ。一人ぼっちじゃ、結局、どうしようもないんだ・・・・」
 その時、ふとバチェラは、暖かい温もりを思い出した。


『大丈夫。僕はいつでも、君の友達だから』
 一人パズルを組んでいた幼い頃、優しい少年がかけてくれた暖かい言葉。


『こうして、俺は君と巡り合えたんだ。だから、今日からは、俺が友達だよ』
 兇漢の暴力に、暗闇で一人怯えていた時、大好きな青年が差し伸べてくれた暖かい手。


『あの頃にできなかった事、二人で仲良く色々やる事・・きっと、今度はできるよね』
 かつて自分を疎外していた仲間の少女が、自分の素顔と名前を明かしたときに向けてくれた、眩しい笑顔。


バチェラ:「そうだ・・・、ボクは、今のボクは、一人ぼっちなんかじゃない!!!」


『反転(フリップ・フロップ)』


脳内に、初めて聞く電子音声が流れ、周囲を飛び交うファンネルの動きが、途端にやけに鮮明に感じ取れるようになる。
バチェラ:「これが『フリップ・フロップ』・・・?そう言えば、データベースには、クーウォンは『誰にでも起こりうる事』って言ってた、って書いてあったっけ・・・。それにしても、なんだか不思議な、でもとってもいい感覚だ・・」
 なんだか周囲から、みんなの力が流れ込んでくるような、そんな気がした。
バチェラ:「よし、これならまだ、戦えるぞ!・・・・今だ!!いけいけいけいけ、いっけぇぇぇぇ!!!
 バチェラは全方位から浴びせられるビームを巧みにかわしながら、タイミングを見計らい、いつにも増して神憑り的な速さでドラグーンの攻撃プログラムをプログラミング、そしてありったけのドラグーンを射出した!
 的確に計算されたドラグーンの一斉射撃は、たった一度の攻撃で、二十基全てのファンネルを正確に貫いた!
さつき:「な・・・?」
むつき:「に・・・?」
 バチェラは戻ってきたドラグーンを再び放出すると、シールドからビーム刃を放出、肩の装甲からリサーチミサイルを放つさつきのキュベレイに突進、リサーチミサイルを全て紙一重でかわす。更に迎撃のために放たれたさつきの斬撃もかわすと、すれ違い様にビーム刃を素早く二度振い、さつきキュベレイの両腕を瞬時に切断した。
 更に、援護のために死角から突撃してきたむつきのキュベレイを、予め放っておいたドラグーンが狙撃、むつきは両腕と動力回路を一瞬の内に撃ち抜かれ、無力化する。バチェラもトドメに、さつきのキュベレイの動力回路をビーム刃で貫いた。さつきのキュベレイも、完全に行動を停止した。
バチェラ:「よし!さあ、早くボクの仲間たちを、透たちを助けに行かないと!」
 バチェラは、遠くで輝くセラフィムへと向き直った。


アシュラン:「うおぉぉぉぉぉ!!!」
ゲンハ:「うりゃぁぁぁぁぁ!!!」
 アシュランのアンビデクストラス・ハルバートと、ゲンハのデスペナルティが、何度も激しくぶつかり合い、漆黒の仮想宇宙に火花を散らす。
 そして、何合目かの激突の最、ゲンハの放った斬撃をアシュランは双刃で受け止め、それを巧みにいなし、次の瞬間にもう片方のビーム刃で、ゲンハの処刑鎌の柄を斬り裂いた。真っ二つになったデスペナルティは、閃光を発して消滅する。
アシュラン:「どうだ!!」
ゲンハ:「うひゃひゃひゃひゃ!楽しいねぇ~。いいねぇ、殺し合いは、やっぱこうでなくちゃなぁ!!」
 メインウェポンを失ったというにも関わらず、ゲンハはただ、殺し合いのスリルと快感に酔いしれるだけだった。
アシュラン:「くっ・・、お前、本当に狂ってしまったんだな・・・」
ゲンハ:「何言ってんだぁ!俺サマは、元々狂ってんだよぉ!そいつが、ちーとばっかし、強まっちまっただけだぜぇ!!」
アシュラン:「くっ!」
 アシュランは、肩に装着したファトゥム-00のフォルティスビーム砲を放つが、ゲンハは素早く耐ビームコーティングの施された漆黒の翼『アクティブ・ローク』をマントのように身に纏ってそれを弾くと、ミラージュコロイドを噴霧、陽炎のように姿を消した。
ゲンハ:「テメェもよぉ、もうちっと狂えよぉ!!」
 虚空から、狂気に満ちたゲンハの嬌声が響き渡り・・・。
ゲンハ:「こんな風によぉ!!」
 突然頭上に姿を現したゲンハが、左足のつま先から射出したビーム刃を振り下ろした。
アシュラン:「くうっ!!」
 アシュランはそれを、咄嗟に反応してビーム刃で受け止める。
アシュラン:「くらえっ!!」
 アシュランはそのままゲンハの攻撃をいなすと、連結されたビームサーベルを再び二本に分離し、今までの訓練や戦いで身に付けた、斬撃と蹴りを複合させたとびきりの連続技(コンボ)を放つ。しかし。
ゲンハ:「しゃらくせぇ!!」
 鍛え抜かれたアシュランの『意思のスピード』と、ジャスティスの鋭敏なニューロ・リフレクターによって極限のスピードで放たれた連続技を、ゲンハはあっさりとかわし、放たれた蹴りを膝で簡単に止めると、膝からビーム刃を射出し、アシュランの蹴りを放った左脚を斬り裂いた。
アシュラン:「何!?」
ゲンハ:「あんだよぉ。テメェもクーウォンと同じ、つまんねーことやりやがるなぁ。『意思のスピード』ってやつじゃぁ、この俺サマに勝てるヤツはいねぇって、言ったろーがよぉ!!」
 そう言えば、ゲンハは『ブレインプロジェクト』という非道な実験によって、右脳部分、つまり『直感・本能』などを驚異的なまでに強化されているのだった。ならば、その動物的な本能の反射のままに、人を超えた『意思のスピード』を持っていてもおかしくは無い。実際、今までの驚異的なゲンハの強さの源は、それによるところも大きいのだろう。
アシュラン:「ちいっ!!」
 アシュランは、ファトゥム-00を分離、支援機として独立航行させる。
ゲンハ:「そんなんじゃ、ちっとも面白くねぇなぁ!!テメェも、もっともっと、俺サマを憎めよぉ!!」
アシュラン:「何だと!」
 アシュランは武器をビームライフルに持ち替えてビームを放ち、ファトゥムもフォルティスビーム砲をゲンハに向けて放つが、デスサイズ・ヘルの圧倒的な機動力と、野獣並の反射神経を持つゲンハには、容易に避けられてしまい、かすりもしない。
ゲンハ:「テメェ、何のかんの言っても、この俺サマが憎いんだろぉ?」
アシュラン:「!!!」
 ゲンハは肩から無数のワイヤー・マインを射出する。アシュランは、それがワイヤーを放ちだす前に一基でも潰そうとビームライフルを連射、そしてファトゥムにも旋回機関砲を使って潰させるが、如何せん数が多すぎて、全く減らない。
ゲンハ:「好きなオンナを二人も殺されてよぉ、俺サマが、憎くて憎くてしょうがないんだろぉ?」
アシュラン:「貴様!!」
 ゲンハの言葉に刺激され、アシュランの心の中に、微かな怒りの焔が灯る。
 ファトゥム-00は周囲のワイヤーマインを破壊しつつ旋回、ゲンハの背後に回るとビームや機関砲を放ちながらゲンハに突撃するが、ゲンハはまるで後ろに目があるかのように空中に飛び上がってそれをかわすと、バック転して、翼の鉤爪からビーム刃を射出、ファトゥム-00は両断され、消滅した。
 更にその時、ワイヤー・マインが一斉にワイヤーを射出!アシュランは四方八方から絡み付いてくるワイヤーを何とかかわすが、そのうち一本が胴に巻き付いてしまう。
アシュラン:「ちいっっ!!」
 アシュランは全力でワイヤーの牽引力に逆らい、機体が激突する前に機雷をビームライフルで撃ち抜き、そしてその爆風を盾を構えて防ごうとするが、予想以上の爆風に、アシュランは堪らず吹っ飛ばされる!更にその進行方向から、ゲンハが右腕の小型シールドを超振動の刃に変えて、突撃してくる。
アシュラン:「くうっ!!」
 アシュランは咄嗟に盾を掲げるが、全てを切り裂く狂気と化したゲンハの小型シールドは、アシュランの盾を易々と斬り裂いた。
アシュラン:「うっ!!」
ゲンハ:「だからよぉ、もっと殺る気出せよぉ!!憎いんだろぉ、この俺サマが!好きなオンナ二人も、しかもその一人は殺す前に散々犯されてよぉ、そんな事した俺サマがよぉ、憎くて憎くて、殺したくて殺したくて、たまらねぇんだろぉ!!」
アシュラン:「!!!」
 その時、アシュランの脳裏に、あの時の映像が蘇る。


 野獣のような男にのしかかられ、理不尽な暴力に踏みにじられてゆく、アシュランの何よりも大切な者。
 やめてと叫んで泣き叫ぶ少女を、心底楽しそうな顔でいたぶる、人とは思えぬ兇漢。


 アシュランの怒りが、完全に燃え盛った!
アシュラン:「き、きっさまぁ!!!!」
ゲンハ:「そうだぁ!もっと怒って怒って、心地いい殺気を、この俺サマに浴びせてくれよぉ!!」
アシュラン:「おぉぉぉぉぉ!!!」
 アシュランは怒りをそのまま咆哮に変え、ゲンハに渾身の力でビームブーメランを投げつける。だが、ゲンハもビームブーメランを投擲、二つのビームブーメランは、激しくぶつかり合ってお互いを切り裂き、消滅した。
アシュラン:「ゲンハぁぁぁぁぁぁ!!!」
 アシュランは溢れ出る怒りを叩きつけるかのように、ビームサーベルを抜いて全力で突進した。ゲンハはその斬撃を、右腕の小型シールドであっさりと受け止める。
ゲンハ:「何だよ、その程度かよぉ。だったら・・・」
 ゲンハは、左腕の小型シールドを超振動させて凶器の刃へと変えた。
アシュラン:「ゲンハぁぁぁぁ!!!」
 しかし、怒りに曇ったアシュランの目には、それは全く見えてなかった。
ゲンハ:「・・・逝っとけや、このヤロウ!!
 ゲンハの刃が突き立てられる、正にその時。


『どうしてお前が、優哉を殺したぁぁぁぁ!!!』
 不意に聞こえたその叫びが、アシュランを正気に戻す。
アシュラン:「あ、あ・・俺・・は・・・」
 その時、レミーが、いや、レミーによく似た少女・リャンが、アシュランを真正面から見上げ叱咤したような気がした。
リャン:「落ち着け、アシュラン!あいつみたいになりたいのか!!復讐なんてろくなもんじゃないって、お前、言っただろ!!」


『反転(フリップ・フロップ)』


アシュラン:「!!!」
 不意に、アシュランの視界が一気にクリアになる。そして、自らに迫ってくるゲンハの刃が、嘘みたいによく見えた。アシュランはそれを、紙一重で、しかし余裕を持ってかわす。
ゲンハ:「ん!!?」
 アシュランはゲンハから距離を取ると、頭をゆっくりと二回、大きく横に振った。
アシュラン:「そうだな、レミー、リャン、そして透・・。俺はもう、二度と過ちを繰り返さない。そんな事をしたらお前らにも、そしてこの“ジャスティス”にも、合わせる顔が無いからな・・・」
ゲンハ:「何スカシてんだよ。このヤロォ!!!」
 ゲンハが両足両膝からビーム刃を射出し、両腕の刃を掲げて猛スピードで突進してくるのを、アシュランは冷静に見つめていた。
アシュラン:「憎しみや怒りのためじゃなく、俺は俺の『正義』のために戦うって、そう決めたんだ!!」
 ゲンハが、野生をも超える直観の力に裏付けられた『意思のスピード』を駆使した、先程のアシュランの連続技を遥かに上回る超神速の突きを、蹴りを放つが、アシュランにはそれらが完全に見えていた。
 アシュランはゲンハの突きを冷静に紙一重でかわすと、蹴りを入れようとしたゲンハの膝に鋭い蹴りを入れて体勢を大きく崩させ、次の瞬間一気に二本のビームサーベルを抜き放つと、ゲンハの両脚と両翼を、一呼吸のうちに斬り裂いた。
 瞬時にしてほとんどの武装を失ったゲンハだが、それでもアシュランに向けて、イーゲルシュテルンを放つ。
ゲンハ:「ちっ、やるなぁ。だが、そんなもんじゃ俺サマは止まんねぇぜぇぇぇ!!!
アシュラン:「だったら・・・止まるまで、戦うまでだ!!!
 アシュランはビームサーベルを振り上げ、再びゲンハに向かって行った。


月菜:「うあぁぁぁぁ!!!」
 月菜が振り下ろしたビーム銃剣を、玲佳は強固なシールドで受け止める。
玲佳:「ううっっ!!」
 玲佳はそのまま月菜を弾き飛ばし、月菜は吹っ飛ばされる体勢をそのままに玲佳にビームライフルを連射して牽制、そして機体をウェブライダー形態に変形させると、その機動力で玲佳を翻弄しようとする。
 しかし、玲佳のトールギスは肩部後方の小型バーニアユニットを持ち上げると、そのスラスターを全力で吹かし、超猛スピードで月菜に一気に接近した。
月菜:「くっ!!」
 月菜の進路に先回りした玲佳は、ビームサーベルを月菜に向けて振り下ろした。だが、月菜はすぐさま変形を解除、ビーム銃剣で玲佳の斬撃を受け止めると、そのままビーム刃を振い、玲佳のビームサーベルを弾き飛ばした。
玲佳:「月菜・・あなた、本当に強くなったわ。見違える位に・・・」
月菜:「何を!!」
玲佳:「だからこそ、惜しいわ。あなたが私の下から、去っていってしまった事がね!!」
 その瞬間、トールギスのシールドの先端から、超振動の刃をもつスチールウィップ『デーモンローズ』が伸びて勢いよく月菜に襲い掛かり、月菜のビームライフルを真っ二つに斬り裂いた。
月菜:「きゃぁ!!」
玲佳:「だけどね、今からでも遅くない。どう?あなた、もう一度私の下に戻ってこないかしら?」
月菜:「何を寝言を!!」
 伸縮自在、自由自在に動き回るデーモンローズの刃を巧みにかわしながら、月菜は『ハイパーメガランチャー』を掲げ、そこからロングラインビームを射出、それをそのまま振り下ろす。玲佳はAIの自律制御装置の助けもあり、それに反応し、機体を捻ってかわすが、かわしきれずに小型バーニアユニットを一基、斬り裂かれる。
月菜:「あんな地獄みたいな所、誰が戻るもんですか!!」
玲佳:「あら、そう?私は『貴方のため』を思って言っているの。私はね、今では本当に、あなたのことが気に入っているのよ」
月菜:「何を今更、しゃあしゃあと!!」
 月菜はハイパーメガランチャーを両手で構え、シュミクラムの装備の中でもトップクラスの破壊力を持つチャージショットを叩きつけるように放つが、玲佳のトールギスは、それをシールドを掲げただけで完全に受け止めてしまう。
月菜:「くっ!何て固い装甲なの!!」
玲佳:「我が社の技術力を、なめないことね!」
 そう言うと玲佳は、右腕の肩部に装備された巨大な砲を前に倒し、グリップを右手で握った。すると、砲口部分が前にせり出し、そこに凄まじい威力のエネルギーが臨界する。
月菜:「くっっ!!」
 次の瞬間、咄嗟に身をかわした月菜がさっきまでいた地点を、トールギスの最強武装『ハイメガキャノン』から発射された凄まじいエネルギーの本流が薙ぎ払った。ゼータのハイパーメガランチャーさえも明らかに上回る、とてつもない破壊力を秘めた恐ろしい武器だ。
玲佳:「私はね、あなたのような女性には、本当に幸せになって欲しいと思っているの」
月菜:「『幸せ』!!?洗脳しておいて、何を勝手な!!!」
 何とかあの途方も無い巨砲を破壊しようと、月菜はビームサーベルを引き抜いて突撃するが、自在に動き回り襲い掛かるデーモンローズが邪魔で、上手く攻撃する事ができない。
玲佳:「嘘じゃないわ。だって、私の下にいれば、少なくともあなたは一生透君と共に居られる・・・」
月菜:「あんな所じゃなくても、あたしはずっと透と居られる!!!」
 月菜は斬撃を放つが、おそらくは自動制御であろうデーモンローズは、それを的確に受け止める。
玲佳:「そうかしら?私はとても、そうは思えないのだけれど」
月菜:「何ですって!!!」
玲佳:「そうよ。・・・ああ、私は別に、あなたが問題だと言っているわけじゃないの。ただ・・・『男』というのは、そういうものなの」
 デーモンローズが、その超振動の棘を煌かせて月菜に襲い掛かる。一瞬のうちに攻防が逆転し、今度は逆に月菜が、ビームサーベルで必死に玲佳の攻撃を受け止める。
玲佳:「『男』というのはね、とても身勝手な生き物。こちらがどれだけ想っても、こちらがどれだけ愛しても、結局は女を、置き去りにするわ」
月菜:「え・・・・」
玲佳:「あなたも覚えがあるでしょう?どんなに彼のことを大切に想っても、結局跳ね除けられてしまう。彼の独善的な考えによって、ね」
 月菜は思い出す。この七年間、自分の想いが透にどれだけ伝わってきたかを。それは、伝わってなかった事の方が、透が想いを理解しようとさえしてくれなかった事の方が、圧倒的に多くて・・・。
月菜:「で、でも・・・透は、言ってくれた!あたしと一緒に生きてゆこうって!!あたしが傍にいてくれてよかったって!!そう言ってくれた!!!」
玲佳:「口では何とでも言えるわ。それに、もし透君が心の底からそう言ってくれたのだとしても、人の心は変わるもの。断言するわ。彼は、いつかあなたを捨てる。彼の『自我』が、あなたを捨て去るわ!!!」
月菜:「そんな事!!」
 月菜はどうしても邪魔となるデーモンローズを何とかしようと、ハイパーメガランチャーをビーム刃として振って斬りつけるが、デーモンローズはそれさえも、いとも簡単に受け止める。片手持ちとはいえ、ハイパーメガランチャーのビームさえもあっさりと受け止めてしまうとは、何という耐ビーム性だろうか!
玲佳:「そして、あなたは絶望に泣くことになる。私はね、そんなあなたを、見たくはないの。でもね、私の世界の中でなら、あなたは百%確実に、透君と一生共に、幸せに過ごせるわ・・・」
月菜:「勝手に決めないでよ!!大体、あなたに何がわかるの!!?」
玲佳:「・・・わかるわ。何故ならこれは、私は身を以て経験したことだから・・・」
月菜:「え・・・?」
 デーモンローズがビーム刃を跳ね除け、月菜は後方に吹き飛ばされる。
玲佳:「私もね、丁度あなた位の頃かしら・・・、とてもとても大好きな、それこそ、あなたが透君を愛するみたいに、愛している男がいたの。その人は、私に言ってくれたわ。いつまでも、共に生きるって。辛い時は、二人で支え合って生きよう、って・・・。でも・・・あの男は、私を捨てた!!
月菜:「!!!」
玲佳:「彼は、私のもとから去った!!手酷い裏切り行為と共にね!!そして、私が本当に辛い時、彼は何もしてくれなかった!!それどころか、あの男は、私の大切な物を、全て奪っていったのよ!!!!!」
月菜:「玲佳社長・・・・」
玲佳:「その時の私の絶望、孤独、悲しみ!!今のあなたなら、想像がつくでしょう?」
 確かに、『もし今、自分が透に捨てられたら・・・』と考えると、月菜を身を切られるような悲しみが襲った。
玲佳:「私は・・・あなたに、私の二の轍を、踏んで欲しくないだけなのよ」
月菜:「でも、透は、透は・・・・!!」
 玲佳のハイメガキャノンが再び火を吹く!月菜は、その凄まじい火線をかわすが、更にブラックローズが、容赦無く襲い掛かる。
玲佳:「『透君は違う』かしら・・・。まあいいわ。でもね、本当に『違う』というなら・・・例えばあなたがピンチになった時、彼は助けに来てくれるかしら?」
月菜:「当たり前よ!!」
玲佳:「そう、随分自信満々に言うのね・・・。だったら、そうね・・それを今、証明してもらおうかしら!!!
 玲佳のブラックローズが月菜を激しく襲う!玲佳は、本格的に攻撃に乗り出したみたいだ。攻撃の激しさが、さっきまでとは完全に違う!
月菜:「くっっ!!」
 月菜はそれを必死に受けるが、もう完全に、防御で手一杯だ。
 計らずしも、今が確かに、月菜の『ピンチ』ということになりそうだった・・・。
月菜:「透・・・・」


 イザークは、周囲の戦場を見渡した。もうほとんど、敵と思しき機体で、動いている物は無い。そろそろ、ここは決着がついたみたいだった。
 それに、自分もニコルも、もう機体がボロボロだ。既にこれ以上戦える状態ではないだろう。
イザーク:「ちっ!あとはアイツらに任せなくてはならないのが忌々しいが・・・仕方ない、ニコル、そろそろ引き揚げるぞ」
ニコル:「そうですね。そろそろ、潮時みたいです」
イザーク:「マリア、そろそろ引き揚げる!!」
マリア:「わかりました。ここは離脱妨害エリア内ですが、私が離脱可能エリアまで誘導します・・・あれ、ちょっと待ってください!そちらに、正体不明の機影が接近中!!しかもかなりのスピードです!!」
 突如、マリアの声が、不吉な緊張を帯びたものとなり・・・。
ニコル:「イザーク!!あれは・・・」
 ニコルの視線の先に、イザークも、その異様な機体を見た。
イザーク:「な・・何だ、これは!!!?」
 その機体には、脚が無かった。そしてその機体は、異様なまでに巨大だった。しかし、両端に大きな角が生えた頭部の中心の単眼の顔は、何故か異様なまでに虚ろな印象を抱かせる。いや、顔だけではなく、薄いブルーで塗装されたその機体の全身から受ける印象が、どこか虚ろで、不気味なのだ。
 脚の無い、虚ろな巨体。まるで幽霊、いや、亡霊のようなその機体は、気だるげな動作で両腕を伸ばし、指を伸ばして胸の前で組んだ。その指は、おそらくはビーム砲の砲口なのだろう、先端に穴が空いていた。その左右五つ、計十の砲口から、徐々にエネルギーがあふれ出し、十個のエネルギーは次第に一つに集まって、巨大な塊を作った。
ニコル:「イザーク!!」
 ニコルが叫ぶ前に、イザークは、背筋を立ち昇った悪寒に突き動かされるままに、超高インパルス長射程狙撃ライフルと、続けざまに砲身を組み替え、対装甲散弾砲を放った。イザークの本能が叫んだのだ。「あの攻撃はヤバイ!!」と!!
 しかし、砲撃は全て、謎のシュミクラムの前で、何か見えない壁のように当たって弾かれ、謎のシュミクラムに全くダメージを与えることはできなかった!!
イザーク:「何なんだ、アレはぁぁぁぁ!!!!?」
 イザークが恐怖に叫んだのと同時に、謎のシュミクラムが作り出していたエネルギーの塊が、弾けた!!
 弾けたエネルギーは、無数のエネルギー弾となって辺り一面に飛来し、周囲にいたシュミクラムに、敵味方の区別無く襲い掛かる!!そして、その中の一部が、イザーク目掛けて猛スピードで飛来した!!
イザーク:「うおぉぉぉぉ!!?」
 イザークは咄嗟に砲を投げ捨てて、コックピットを両腕で庇った!次の瞬間、イザークを、圧倒的な衝撃と、耳をつんざくような轟音、目も眩むような閃光が襲った!!
イザーク「―――――――――――!!!!!!!」
 イザークは、声にならない悲鳴を上げた!
 そして、イザークの視界が開けた時、デュエルは原型を留めぬまでに破壊され、残っていたのはほぼコックピットだけだった。生きているのが、不思議なくらいだ。
 しかし、謎のシュミクラムは、再び両手を合わせてエネルギーを溜め、あのメチャクチャな攻撃を放つ体勢に入った!今あれに来られたら、防ぐ手段は無い!!
ニコル:「イザーク!!!」
 謎のシュミクラムが再びあの攻撃、全方位拡散超高エネルギー弾を放ったのと、ニコルが近くに浮遊していたブリッツの盾を引っ掴んでイザークの正面に割り込んだのとは、ほぼ同時だった。再び、全方拡散位超高エネルギー弾は、周囲のシュミクラムを無差別に破壊し、その一部がイザークたちにも襲い掛かる。
イザーク:「ニコルーーーー!!!」
 イザークを庇ったブリッツを、容赦無くエネルギー弾の雨が襲う!そして、再び轟音と共に視界が白光した。
 そして、視界が開けたとき、自分と同じように、コックピットしか残っていないブリッツの無残な姿が目に飛び込んできた。
イザーク:「ニ、ニコル、無事か・・・?」
ニコル:「え、ええ・・何とか無事ですよ。咄嗟に盾でコックピットを庇いましたから。シュミクラムは全然無事じゃないですけどね・・・」
 ニコルの声を聞き、イザークは心底安堵しつつ、先程のデタラメとしか思えない攻撃を思い出し、心底戦慄する。
イザーク:「どうやら、ヤツは行ったみたいだが・・・・、アレは一体、何なんだ!!?」
ニコル:「わかりません、が・・・・・」
 ニコルは言った。
ニコル:「とにかく途方も無い。それだけは確かですね・・・・・」


 全方位拡散超高エネルギー弾で辺りのシュミクラムを無差別に薙ぎ払いながら、ギルは残虐な笑みを浮かべた。
ギル:「ふふふ。さすがはV・S・Sの最新型だ。この“ジオング”とやらの性能なら・・・・」
 逃げ惑おうとするZAFT兵を、攻撃を加えるこちらを『敵』と認識しあくまでも向かってこようとするV・S・Sのシュミクラムを、ギルはジオングの指の五門のビーム砲のエネルギーを駆使して放つ『全方位拡散超高エネルギー弾』で、ただ己のシュミクラムの性能を試すために蹴散らしながら、ひとりごちた。
ギル:「これなら、あの忌々しい安室の子孫どもを、根絶やしにできる・・・。ふっふっふ、はっはっは、あーっはっはっは!!!!」
 ギルは高らかな、しかしそのシュミクラムと同じ、どこか虚ろな嘲い声を上げながら、脚の代わりに底部に設けられたバーニアスラスターを吹かして、セラフィムへ、『安室の娘』の場所へと、向かっていった。


月菜:「くぅっ!!!」
 月菜は、振り下ろされたデーモンローズを辛うじて受け止める。
玲佳:「ふふふふ、結構粘るわね。けれど、どう?いくら待っても、愛しの透君は助けに来てくれないわよねぇ?」
月菜:「うぅ・・・」
玲佳:「ふふ、そろそろ透君が助けに来ないと、あなたももう限界よねぇ?」
月菜:「く・・・」
 確かに、月菜の体力も、シュミクラムの破損度合いも、既に限界に近付いていた。ゼータは今のところ五体満足だが、装甲には細かな傷が無数に走り、所々には装甲が捲れ上がっている部分もある。
月菜:「なんの。まだまだ、あたしは戦える!本当に危なくなってるわけじゃない!それに、あたしが本当の本当に危なくなったら、絶対、絶対透は、助けに来てくれる!!!」
玲佳:「まだ言うか、この小娘ぇ!!!」
 中々根を上げない月菜に、いよいよ玲佳は逆上し、月菜に向かってデーモンローズを勢いよく振り下ろした。
月菜:「ぐうっ!!!」
 月菜はそれをビームサーベルで受け止めるが、その凄まじい衝撃に、思わずビームサーベルを手放してしまう!
玲佳:「ふふふ、さあ、透君、助けにくるなら今のうちよ。でないと・・・愛しの月菜が、死んでしまうわよ!!」
月菜:「くうっっっ!!!」
 玲佳が再びデーモンローズを振り上げて月菜に迫る!月菜はハンド・グレネードとイーゲルシュテルンでなんとか引き離そうとするが、トールギスの超重装甲の前には、まともに当たったところで、効果は全く無い。
 玲佳が、悪魔の茨を振り下ろした。月菜には、もう避ける手段も防ぐ手段も無い。悔しいが、ここまでだ!
月菜:「とおる・・・お願い、助けて、透ーーーーー!!!」
??:「月菜ーーーーーー!!!!」
月菜の叫びに応えるように、自分の名を呼ぶ、愛しい人の叫び声が聞こえる!
月菜:「え・・?」
玲佳:「なんですって!!!?」
 月菜には、まるで『それ』が、流星のように見えた。
 光のようなスピードで突進してきた月菜の守護天使(フリーダム)は、ビームサーベルを引き抜いてデーモンローズを受け止め、そしてそのまま流れるような動きで、シールドを捨ててもう一方の手でもビームサーベルを引き抜くと、トールギスの腹部、おそらくは動力の中心がある場所に突き立てた!
透:「おおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
 玲佳の機体の全身に、火花が散った!
透:「月菜、無事か!!!?」
月菜:「うん!!・・・透、本当に来てくれたんだ。透・・・あたし、透のこと、大好きだよ・・・」
玲佳:「お・・・おのれぇぇぇ!!!」
 動力を貫かれ停止したと思われていたトールギスを、しかし玲佳は強引に動かし、右腕のハイメガキャノンを振り上げて透をカチ上げると、そのまま吹っ飛ばされた透目掛けて、超高出力のエネルギー奔流を叩きつけるように放った!!
透:「ぐっ!!」
月菜:「ああっっ!!!」
 透は咄嗟に、近くに浮いていたシールドを拾って防御したが、強力なエネルギー砲の直撃には耐えられず、フリーダムのシールドや装甲が見る見るうちに溶けていく。
玲佳:「きえろぉぉぉぉぉ!!!」
透:「ううっ!!」
月菜:「このままじゃ、透が、透が・・・・、透ーーーー!!!!」


『反転(フリップ・フロップ)』


月菜:「うわぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!」
 月菜は無我夢中で機体を変形させると、猛スピードでハイメガキャノンの射線上に割り込んだ。
透:「つ、月菜!!!?」
 そしてそのまま、月菜はゼータの装甲が溶けるのにもかまわず、玲佳目掛けて一直線に突撃した!そのスピードは、普段のスピードはおろか、最早光速をも超えていた!!
玲佳:「ひっ!!」
月菜:「あぁぁぁぁぁぁ!!!!」 
玲:「た、助けて・・・・助けて、クーウォン!!!!
 そして、ゼータの体当たりが、玲佳の機体を直撃した!凄まじい衝撃に、トールギスの巨体が吹き飛び、ハイメガキャノンの射線が大きくずれる。
 玲佳はそのまま、近くに浮いている仮想の小惑星に激突した。
玲佳:「ぎゃぁっ!!!」
 その衝撃で、先程透に貫かれた場所から一際激しい火花が散り、トールギスは、完全に動きを止めた。どうやら、今の月菜の体当たりが完全に止めとなり、駆動系に致命的なダメージが入ったらしい。
月菜:「透、大丈夫!!?」
月菜は旋回して後ろを振り向いた。透のフリーダムには、幸い、外部装甲が多少溶けただけで、深刻なダメージは無いようだった。それは、月菜のゼータも同様だった。
透:「ああ、大丈夫だ。それより、月菜、お前は!?」
月菜:「あたしも大丈夫。ちょっと今の体当たりで、電子体の頭にコブできちゃったみたいだけど・・・。でも・・・玲佳社長・・・」
 月菜は、先程の玲佳の叫びを聞いていた。自分と同じく、窮地に追い込まれたとき愛しい男の名前を呼んだ、悲しい女の叫びを・・・。
玲佳:「『反転(フリップ・フロップ)』か・・・。『実験体』の透君ならいざ知らず、本当に何の措置も施されてない一般人の月菜までも覚醒するなんてね・・・。『人類には、誰しも未知なる可能性を秘めている。我々はその覚醒を、ただ促すだけに過ぎない』か・・・。クーウォン、あなたは一体どこまで、私の邪魔をすれば気が済むの・・・・?」
 玲佳のその言葉の最後の部分は、間違い無く、涙声だった。
月菜:「玲佳社長・・・・」
 その時だった。
 ビシュウゥ!!
玲佳:「!!!!」
 突然、玲佳のトールギスを、背後から強烈なビームが貫いた!!そして、貫かれた場所は、間違い無くコックピットだった。
玲佳:「クー・・・ウォン・・・・」
月菜:「玲佳社長!!!」
 そして、激しい閃光を発し、玲佳のトールギスは完全に消滅した。
月菜:「玲佳・・社長・・・」
透:「こいつは・・・・」
 ビームが放たれた場所には、巨大な謎のシュミクラムが浮いていた。月菜はそれを見た時、最初、『幽霊』かと思った。それも、『電子体幽霊』のようなものではない。もっと醜く、もっと禍々しい・・・そう、正しく『悪霊』か、あるいは『怨霊』とでも言おうか。とにかく、邪悪な負のオーラを、物凄い密度で集めて固めたような、そんな感じだった。
ギル:「あれほどの金と権力を持っていれば、少しは使えると思ったのだがな・・・、まあ、所詮は彼女も、哀れな女でしかなかったと、そういう言う事か・・・」
 そのシュミクラムから聞こえてきた声。それは、月菜がシュミクラムに抱いたイメージに相応しい、禍々しい声。
透:「ギル・ラザード!!!」
ギル:「さあて、安室嶺の子孫どもよ。我が本懐のために、死んでもらおう!!」


V・S・Sパイロット1:「ひいぃ、う・・あああ!!!」
V・S・Sパイロット2:「あぁぁ!!あ、頭が、頭がぁぁ!!!!」
敵ZAFTパイロット1:「助けて、助けてぇぇぇ!!!」
 突如辺りの様子が一変、全ての敵シュミクラムが苦しみ悶え始めたのを見て、バチェラは、橘玲佳の死を理解した。
さつき:「あああ、あああ!!!!」
むつき:「ひぃぃ、いやぁぁぁぁ!!!」
 後ろを振り向けば、先程倒したキュベレイのパイロットも悶え苦しんでいた。
 V・S・Sの社員の思考を統括しているマザーAIは、橘玲佳と完全にリンクしていた。故に彼女の崩壊は、そのままマザーAIの崩壊を意味していた。そして、マザーAIが突然崩壊するような事があれば、その大部分に思考、つまり大脳の大半を支配されていた被洗脳者にも、重大な過負荷が与えられる。彼女らは、今正に、頭を内側から食い破られんばかりの苦痛を味わっていることだろう。
 中には耐え切れず、既に脳死、消滅した者もいる。
バチェラ:「くっ・・・。でも・・・・」
 バチェラには、もう一つ気がかりな事があった。バチェラは、セラフィムを見上げた。それは、薄ぼんやりとだが、先程よりも激しく、強い光を放っている。
バチェラ:「透・・急いで!!」


月菜:「あつぅっ!!」
 突然横から悲鳴が上がった。
透:「月菜、どうした!!?」
月菜:「あつつ・・、あ、いや、何でもない。ただ、頭がちょっとズキってしただけだけど・・・・」
 そこで、透は先日の電車でのバチェラの話を思い出す。確か、被洗脳者は、洗脳システムなどを強制的に破壊されて無理矢理洗脳を解除されると、脳に深刻なダメージを受けるという話を。だとすると、月菜も、洗脳からは立ち直っているとはいえ、その後遺症が僅かながらあり、洗脳システムの崩壊、つまり橘玲佳の死によって、強い影響を受けてしまったのだろう。透は何ともないが、それは『実験体』という特異体質のせいかもしれない。
透:「月菜・・・お前はもう戦えないだろう。だから、さがってるんだ」
月菜:「大丈夫だって。もう全然痛くもないし、さっきのだって、ちょっとコブが痛んだせいかもしれないし。それより、透、『あれ』・・・・」
 月菜の視線の先には、さっきよりも光の強さを増したセラフィムがあった。そう言えば、引っ切り無しに聞こえるセラフィムの唸り声と思しき低周波と高周波の波も、心なしか大きくなっている気がする。
透:「憐・・・・」
ギル:「ふふふ・・・、橘玲佳が死んで、憐を停止させているウィルスの機能のうち『洗脳』の機能が死滅したな」
 玲佳を殺した当の本人は、まるで他人事のように、楽しげに言う。
ギル:「あのウィルスがセラフィムを停止させられたのは、洗脳の効果も含んでようやくセラフィムの暴走を抑えうるだけの力を発揮したからだ。V・S・Sの洗脳技術に対抗するのには、どうやら暴走状態の憐といえど、骨が折れたらしいな。しかし・・・」
透:「つまり、その『洗脳効果』が無くなった今、ウィルスに憐を抑えていられるだけの力は無い、ってか。その割には、あんたは随分余裕だな!」
 透は目の前の男、幽鬼の如き不気味なシュミクラムに、銃を向けた。
ギルの目には、最早今の状況は入っていないことは明らかだ。こいつは間違い無く、死を恐れていない。ただ、自分の目的を果たそうとしているだけだ。多分、物凄く身勝手で、とんでもなく邪悪な目的を・・・。
ギル:「まあな。私はこの状況、どっちに転んでも楽しめる。私が君と憐を殺してもいいし、憐が私を含めてここにいる全ての人間を殺してもいい!何しろ、君は最愛の妹に殺されるわけだし、ザラ家の連中は憎んでいる安室の娘に殺されるわけだ。そして・・・安室の娘は、その手を血で染め、己の罪に苦しみ、その心を壊していくしかなくなるのだからな!!!」
 狂っている。明らかに、この男の思考は邪悪に歪みきっている!どうやったらこんな醜悪な思考ができるのかがわからない!
透:「お前、さっきから聞いてりゃ、『安室の娘』とか『安室の息子』とか・・・。そうしてお前は、そんなに『安室嶺』にこだわる!!?」
ギル:「そうか・・、君は知らないのだな・・・。私はかつて、テロリストに所属していた。そこで、私は『エドワゥ・マス』と名乗っていた。」
透:「!!!」
 『エドワゥ・マス』という名は、透にも聞き覚えがあった。確か、安室嶺の伝説的活躍の物語の中に出てくるパイロットの名で、テロリスト組織『ZEON』のトップパイロットだ。そして、確か安室嶺と幾度と無く交戦し、そしてその全てに、苦い敗北を負ったとか・・・。
透:「元テロリストの男が、どうして軍なんかにいるんだ!?」
ギル:「まあ、ちょっとした『コネ』というやつだよ。まあそんなことは、どうでもいいだろう。軍には橘玲佳も、強い影響力を持っていたのだしな。不自然な話ではあるまい?」
 『類は友を呼ぶ』というやつか。
ギル:「それで、君は聞いたことはないか?『金色の流星(ゴールデン・ミーティア)』は、何故常に仮面をつけているか」
透:「聞いたこと無いな!」
月菜:「あ、もしかしてそれ、『顔に酷い火傷を負っている』とかいう、あれ?」
ギル:「まあそういうことだよ。そして、透君、君もご存知の通り、私は左腕が利かない。これはどうしてか、わかるかね?」
 つまりは、こういうことだ。
透:「顔も左手も、安室嶺に、父さんにやられた、ってことかい?俺や憐にやけに突っかかって来るのは、その復讐か?下らない!!」
 そんなものは、自分が敵として安室嶺の前に立ちはだかるからだ。それで嶺を恨むなどとは、『逆恨み』もいいところだ!
ギル:「まあ、元より君には理解してもらおうとは思っていなかったさ。私が君に望むことは、唯一つ・・・・」
ギルが、シュミクラム“ジオング”の両手の砲を合わせ、巨大なエネルギー弾を形成する。
ギル:「死ね、安室嶺の息子!!!」
 そして、そのエネルギー弾がはじけ、無数の小さなエネルギー弾、全方位拡散超高エネルギー弾となって、物凄い速度で透たち目掛けて降り注ぐ。
透:「うおっ!!」
 透たちは、シュミクラムの機動力を活かして精一杯避け、透はマルチロックオンからのフルバーストで、雨あられと降り注ぐエネルギー弾を次々と撃ち落す。
 そして、ジオングの弾幕を抜けた一発のビームが、ジオングを直撃する。しかし。
 バシュ!!
 それは、ジオングに届く寸前で、突如見えない壁に阻まれ、消滅した。
透:「シールド!?それも、セラフィムのやつにそっくりだ!」
ギル:「それはそうさ。何しろ、V・S・Sが、捕獲した憐や、セラフィムの暴走時の行動から取ったデータを元にして再現した、『アンチネットロジック』による障壁だからな。それがネット兵器である以上、あらゆる攻撃はこのジオングには効かない!」
透:「憐の力か・・・。確かに、厄介だな」
ギル:「ふふふ、愉快な事ではないかね?かつては私に散々恥辱を与えた安室嶺の、その娘の力が、今は私を守っている、というのは!」
透:「いちいちくだらない意味付けしてんじゃねぇ!!!」
 透はビームライフルのサブグリップを左手で握り、必殺のチャージショットを放つ。月菜もウェブライダー形態で素早くジオングに接近すると変形を解除し、ハイパーメガランチャーによる斬撃を放つが、両者ともにジオングに届く寸前で、反ネットロジックのバリアに阻まれ、ダメージを与える事ができない。
月菜:「くっ!!」
ギル:「さて、次はこちらから行こうかね!!」
 ギルがそう叫ぶと同時に、ジオングの両手が、頭が、胴体から分離し、まるでビットのように飛び回る。そして頭は口部の複列位相エネルギー砲『スキュラ』を、両手は指から、拡散超高エネルギー弾と五指のビーム砲を、それぞれ様々な方向から透に向けて放つ。同時に、接近している月菜には、腰部の二門のビーム砲と、分離した腕の付け根に装備された超大口径バルカン(弾丸がバズーカの弾ほどの大きさがある!)を浴びせた。
月菜:「くぅっっ!!」
 月菜は、バルカンの驚異的な破壊力の前に、堪らず後退する。
 一方透は、オールレンジから浴びせられる砲撃を、巧みに機体を捌いてかわしていた。そして反撃にビームライフルを撃ち返すが、ドラグーン並の速度で移動する腕と頭部に中々当てることができない。そのうち、ビームライフルを五指のビーム砲に貫かれ、盾を拡散超高エネルギー弾に砕かれて、それぞれ失ってしまう。
透:「くっ!!」
 更に追撃とばかりに放たれるビームを、エネルギー弾を、透は両手でビームサーベルを引き抜き、ビーム刃で弾き飛ばして防いだ!驚異的な動体視力がなければまず無理であろう、透以外はおそらく不可能な芸当だった。
 更に、透は隙を見て、腰部のレールガンをジオング本体に撃ち込む。しかし、超高速の実弾も、ジオングに届く寸前で反ネットロジックのバリアに阻まれてしまう。
ギル:「無駄だというのが、わからないかね?」
透:「うるさい!!」
 その時、砲撃のため一瞬動きを止めた透に頭部が接近、スキュラで透を狙い撃ちにする!
透:「くっっっ!!!」
 透は間一髪で反応、スキュラをすれすれでかわすと、そのまま頭部に急接近、両手のビーム刃を振い、ジオングヘッドを真っ二つに切断した!
透:「どうやら、完全無敵って訳でも無いみたいだな!!分離した頭部には、反ネットロジック障壁は効かないらしい!!」
月菜:「あと、腕にもね!」
 見れば、月菜がハイパーメガランチャーを振い、分離した右腕を斬り裂いていた。
ギル:「それがどうしたね?いくらビットをやったとて、本体にダメージを与えられねば、意味は無い!」
 ギルが、本体から腰部ビーム砲と腕部の超大口径バルカン砲を放つ。確かにこれだけでも、物凄い攻撃力だ。その上、一切の攻撃が効かないのでは、分の悪さは変わらない。だが!
透:「今のうちに言ってろ!!今に、そのご自慢の『反ネットロジックのバリア』とやらも、破ってみせるからな!!」
ギル:「その根拠はあるのかね?」
透:「特に無いさ!けどな、一つ忠告しておいてやる。憎しみとか復讐とか、そんなつまらないことに力を使っているとな、必ず自分をダメにするぜ!!
 透は思い出す。全くの逆恨みで始めた『優哉の復讐』のため、一体どれほどの人間に取り返しのつかない傷を付けてしまったのか。アシュランや、月菜や、憐や、そういった人たちが自分を救ってくれねば、自分もやがてこの男と同じようになり、そしていつか、間違い無く己の身を滅ぼしていただろう。
 透はアシュランの友人を殺したことを、優哉の仇を討ちたいがためコアファイターでアシュランに特攻までした己の所業を、深く恥じる。そして同時に、あの時、極限状態においても、修羅の道に堕ちようとしていた自分を止めようと叫んでくれたアシュランに、深く感謝するのだ。
透:「復讐になんて使う力が、完全なものであるはずは無い!!そんな力は、すぐに破られ、そして滅びるんだ!!!」
ギル:「せいぜいほざいてろ!!忌々しい血筋めが、今すぐ根絶やしにしてやる!!!」
 その時だった。
突如、ネット世界が、揺れた!!
透:「!!!れ・・憐・・・・・」
 見れば、セラフィムの光は一段と強くなり、最早今にも動き出しそうだ。
月菜:「と、透、これ、まさか・・・・」
 月菜の声は、震えていた。目の前のちっぽけな男などとは比較にならないほどの、真の『恐怖』を前にして。
ギル:「ええい!もう復活したのか!!!」
 ギルが悔しげにそう呻いた刹那、セラフィムが、この広大な仮想宇宙空間の全てに響き渡るような、壮絶な咆哮をあげた!!

「グオォォォォォォォォォォォン!!!!!!」

ギル:「この位置では、私が真っ先に巻き込まれるか・・。ちぃ、奴らの死様を見るには、まずはこっちを殺らねばいかん!!!」
 ギルはずぐにセラフィムへ向けて方向転換をすると、残ったありったけの砲撃を、セラフィムに向けて叩き込んだ。
 しかし、ビームや超大口径バルカンは、本家本元の反ネットロジックバリアに完全に防がれ、そして拡散超高エネルギー弾は、セラフィムから舞い上げられた無数の羽が変化した光弾に全て相殺され撃ち落される!そして、光弾は左腕のビットにも降り注ぎ、ジオングの左腕を完全に砕き、破壊した。
ギル:「くっ、化物め!!だが、この私には傷一つ付けられなんだな!!」
 その時、セラフィムの球の中心に、大きな緑色の点が発生する。それは、まるでセラフィムの、巨大な『目』のようであった。そして、その目の光が、次第に強くなっていき・・・。
 バジュゥゥゥゥゥ!!!
 突然、『目』から、緑色の凄まじいエネルギーの奔流が放たれる!そしてそれは、真っ直ぐにジオング目掛けて突き進んでいく!!
ギル:「くっ、だが、こんなもの!!・・・ぐぐ・・ぐ・・ああっ!!?ぐ・・・」
 始めは、セラフィムのエネルギー砲を反ネットロジックバリアで完全に防いでいたギルだったが、緑色の光は、程無くして反ネットロジックのバリアを侵食し始め、そしてすぐに、まるで虫が食うように、バリアに大きな穴を発生させてしまう。
 そして、バリアを失ったギルは、圧倒的なエネルギーの奔流に、成す術なく飲み込まれていった。
ギル:「おのれ、安室の娘めぇぇぇぇぇぇ!!!!・・・・・・・・」
最期まで怨恨の断末魔をあげながら、ギル・ラザードは消滅した。
 そして、次の瞬間、ネット空間が大きく歪んだ!
背景の所々に虫食いが発生し、この構造体のシミュレートに、過負荷による不具合が発生している事を告げる。
月菜:「DOS!!?でも、ここって・・・・」
透:「ああ、ここの再現には、かなり大量のAIを導入しているはずなのに・・・・」
 セラフィムの力は、もはや、人知では計り知れぬ域にまで到達していた。
透:「憐、止めるんだ!!俺だ!!ここにいるのは、お兄ちゃんだ!!!」
 しかし、憐はそんな透の叫びを掻き消すように、悲しみと絶望の咆哮をあげた!

「グオォォォォォォォォォォォン!!!!」

 もはや、最愛の兄の言葉すら届かぬ怪物と成り果てた憐から、凄まじい歪みの波が放たれた。
そして、その波は透を含む、周囲にあるもの全てを、人も物も関係無く、無差別に飲み込んだ。
透:「憐・・・・・・」
 透の目の前に『時差ゲージ』が現れ、それが一気にレッドゾーンとなった。


アシュラン:「な、何だ、これは!!!?」
 ゲンハとの果てしない戦いの最中、アシュランは見た。ネット空間全体を覆わんばかりの凄まじい歪みの波が自分たち目掛けて襲い掛かってくるのを。
あれは、見覚えがある。そう、あれは、セラフィムのDOS攻撃だ!!
ゲンハ:「おいおい、どこ見てやがんだよぉ!!」
 その時、セラフィムを無視して尚も戦いを続行しようとするゲンハを、DOSの波が飲み込んだ。
アシュラン:「!!!!」
ゲンハ:「もっと・・・もっと・・つづ・・けようぜ・・ころ・・・合い・・・・よ・・・・・」
 ゲンハの身体が、波にそのまま飲まれるように波打ち、そしてその波打ちは一気に大きくなって、ゲンハの身体を引き千切った。
 そして、次の瞬間、更に驚くべき事が起きた!
何と、今さっき死んだはずのゲンハや、橘玲佳、ギル・ラザードなど、この戦いで死んだと思しき者達の電子体が突如空間に発生し、それらは遠くの発光球体、セラフィムへと流れていったのだ。
アシュラン:「まさか、セラフィムは・・・死んだ人間の電子体を、魂を食うのか!!!?」
 その時アシュランは、セラフィムへと吸収されてゆく電子体の中に、よく見知った者の顔を見つけ、叫んだ。
アシュラン「透!!?そんな、そんなバカな!!!!!?」
 次の瞬間、DOSの波がアシュランを、そしてこの構造体の中にいた者、没入せずに単に接続していただけの者、その全てを飲み込んだ。
 そして、一つの構造体は、一つの宇宙は、憐という一人の少女の絶望が産み出した『セラフィム』という怪物に、完全に飲み込まれた。


『切断(ディスコネクト)』



第二十九章『決戦』完

スポンサーサイト
この記事に対するコメント
水・ソフトドリンク
水・ソフトドリンクを探すなら http://www.saturnalbany.com/100316/
【2008/09/17 00:19】 URL | #- [ 編集]

クリスマスイルミネーション
クリスマスイルミネーションの検索サイト。自宅、東京、販売、大阪、京都などクリスマスイルミネーションに関する各種情報をお届けしています。 http://kaoliang.santamonicatravelodge.com/
【2008/11/29 10:02】 URL | #- [ 編集]


この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
http://gozen1020.blog69.fc2.com/tb.php/134-780839f4
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

カレンダー

10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -



最近の記事



プロフィール

ごぜん

Author:ごぜん
現在社会人として東京都心の企業に勤めている。出身地は北海道。
一人っ子。故に(?)わがままでせっかちなところがある。趣味はドライブと創作作品鑑賞。ただし基本的に超インドア。
話すのが大好きだが、上手なわけではい。



フリーエリア

このページはリンクフリーです。



フリーエリア

総計 アクセスカウンター 今日 アクセスカウンター 昨日 アクセスカウンター



最近のコメント



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カテゴリー



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



ブログ内検索



RSSフィード



リンク

このブログをリンクに追加する





上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。