Endless world -咬龍の庭-
このページは、僕の好きなゲームや漫画、テレビ、そして日常の出来事などのことをつれづれなるままに書いていくブログです。
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創作小説『バルドフォースG』最終章

みなさん、こんにちは。テストようやく終わりました、ごぜんです。


さて、遂に、遂にこの『バルG』、最終回を迎える時がやってまいりました!!
自己満で書いたら激長くなってしまい、僕のモチベーションも不安定で、更に以前いたブログがあまり大量の文字の記事を書けないため、一年以上の長きに渡る連載になってしまいましたが、ようやくこの時を迎えました!!
ずっと読んでくださった皆様、本当に、本当にありがとうございました(;>_<;)!!

そんなわけで、最後のバルG、いってみたいと思います。本文へは「READ MORE」で。
最後に。このこの小説を書きながら、つくづく「本当に自分はバルドや、そしてガンダムが好きなんだなぁ・・・」と実感しました!
これからも益々、ガンダムシリーズが日本を代表する一大シリーズとして発展していってくれるとうれしいなぁ、と僕は思っています(^-^)。

第一話はこちらから。








バルドフォース エグゼ



バルドフォース エグゼ
PlayStation2
アルケミスト




(↑この物語の原作です。元々は18禁パソコンゲームですが、18禁シーンよりもむしろストーリーやアクションゲームに比重が置かれており、一般向けになっても違和感はあまり無いと思います。特に、シナリオによって主人公の立場がめまぐるしく変わっていく様は本当にプレイヤーをひきつけます。僕もそれを何とか表現できないかと苦心したものです^-^)









機動戦士ガンダムSEED 1 機動戦士ガンダムSEED 1
矢立肇、 他
バンダイビジュアル

(↑この物語の原作その二です。他のガンダムシリーズからもかなりパクって(笑)ますが、やはりこの作品からのネタが一番多いですね。この作品も主人公の立場が色々変わりますし、メカも単純にカッコイイと思えるのが多いので(無論、他作品のメカも超カッコイイですが)一番好きなシリーズです)









MG 1/100 ウィングガンダム ゼロカスタム (エンドレスワルツ版)
MG 1/100 ウィングガンダム ゼロカスタム (エンドレスワルツ版)
バンダイ

(↑ラスボス“セラフィム”のモチーフ機です。ラスボスの正体から考えて、主人公の機体をフリーダムにした時「やっぱラストバトルは天使ガンダムVS天使ガンダムでしょ!!」という安直極まりない発想によって、ウィングがラスボスになりました。ウィングファンの皆様、スミマセン>_<)

 


バルG第三十一章『決意』


 



 優哉が消えた仮想の草原の中で、透は一人、呟いた。
透:「よし、これで、帰る方法はわかったが・・・。あとは、アシュランと合流しないと」
 アシュランは今どこにいるのだろうか? 優哉の話だと、アシュランも優哉の見つけた方法を聞いたそうだから、きっと今頃は、あの山荘で透を待っているはずだ。
 ならばと、透はあの山荘のことを頭に強く思い浮かべた。この世界の法則から言って、そうすれば、あの山荘にすぐ辿り着けるはずだった。
 その時だった。
??:「お兄ちゃん・・・・」
 透の耳に飛び込んでくる、最愛の妹の声。イメージは、否応無しに中断される。
透:「憐・・・・」
 透はゆっくりと振り向いた。
 そこには、今にも泣きそうな顔をした、憐がいた。
憐:「お兄ちゃん・・・どうして、憐をおいて行こうとするの・・・?」
 憐は、今にも消えそうな声で言う。
透:「憐、あのな・・・」
 透が自分の決意を話そうとした時だった。
憐:「いや!! 行かないで、お兄ちゃん!!!」
 ドンッ!!
 憐が、まるで身を投げ出すように、透の胸に飛びついた。
憐:「いやだ! いやだよ、お兄ちゃん!! もう一人ぼっちはいや!!! もうこんなところに一人でとじこめられるのはいや!!!!」
 憐は堰を切ったように、透の胸で叫び、大粒の涙を流して泣いた。
透:「憐・・・・」
憐:「お願い!! 憐をおいて行かないで!!!! 憐、ようやくお兄ちゃんと会えたのに、どうしてお兄ちゃんといっしょにいられないの!!!!?」
 ここは単なる幻想だ、現実じゃないんだ。本当は、憐はもう死んでいるんだ。お兄ちゃんは、憐のいない外の世界で生きないといけないんだ。
 様々な人との邂逅と別れを経て、強い決意の元で紡がれた言葉たちを、透は口から出す事すらできなかった。
何故なら、その全ては、憐にとってはあまりに無慈悲で、あまりに残酷であったから。透には、この自らの腕の中で声を枯らして泣き叫ぶ、小さくて弱い存在を、これ以上の奈落に突き落とすような真似は、できなかったから。
 透は、心を鬼にするには、あまりに憐を愛し過ぎた。
 思えば、産まれたばかりの、まだ自らを守ることもできないその小さな存在を、母親に言われてその手に抱いたその時から、透はこの少女を守る事に全力を傾けてきた。そんな透が、この子にあまりに無慈悲な現実を突き付けることなど、できようはずもなかったのだ。
透:「憐・・・・」
 透の決心は、ここに来て大きく揺らいだ。
無論、透の決意が弱かった訳ではない。先程の透の決意を変えることは、おそらく何人もできなかっただろう。ただ唯一の、例外を除いては。
憐:「ぐすっ・・・お兄ちゃん・・お願い、憐といっしょに、このままここで暮らそう」
 憐は、上目遣いで透を見上げる。あまりにも純粋でか弱いその瞳は、もう既に、これ以上無いほどの酷い傷を無数に負ってしまっている。
憐:「お兄ちゃんは、憐といっしょにいたくないの?」
 さっきは言えた、拒絶の言葉。でもあの時は、まだ一切の具体的な方法が思い浮かばなくて、だからこそ、あんな言葉も口にできたに違いない。
 今憐を拒絶すれば、おそらく、それがそのまま決定的な離別になる。この、肉体を永遠に失ってしまった少女を、永久の孤独と絶望の中に投げ落とす事になるのだ。
透:「憐・・俺は・・・・・」
 透の脳裏に、母になり損ねた哀れな女性の姿が、自分と共に生きていくことを誓ってくれた愛しい少女の姿が、自らを殺した透を爽やかな笑顔で許してくれた好青年の姿が、透にこれからの事の指針を与えてくれた友の姿が、憐を救ってくれと言い残して空に還った親友の姿が、憐に真の救いを与えるために無駄に帰すかも知れぬ努力を惜しまずしてくれた仲間の姿が、そして、前を向いて生きろと、そう力強い言葉で透の背中を押してくれた、最高の相棒の姿が、次々と駆け抜けた。
透:「憐、俺はな・・・」
 透が彼らの想いに後押しされ、その決意を喉元までせり上げた、その時。
憐:「お願い、憐を一人にしないで。憐はね、大好きなお兄ちゃんと、いたいだけなんだ・・・」
 最愛の妹のその一言が、透の全力の一言を、完全に押し留めてしまった。
透:「・・・そうだな。俺も、憐が大好きだよ・・・」
 嫌いなはずが無い。憐は透の唯一の肉親で、透の血の繋がった妹で、そして、とてもとても、純粋でいい子なのだから。
透:「俺も、憐と一緒にいたいよ・・・・」
 憐は、いわば透の半身なのだから。無防備に自分を頼ってくれる憐を守っていると、自分の全存在が肯定された気分になり、これ以上無いほど満ち足りるのだ。
 思えば、透がハッカーとして、危険な事に首を突っ込んでいったのは、もしかしたら、その半身を、何よりも安らぎを与えてくれるものの存在を、失ったからなのかもしれない。そして、今また、今度はそれを永遠に失おうというのか?
 誰も、憐の代わりにはなれないのだ。月菜をどれほど愛していようと、アシュランをどれほど大切にしようと、憐を失った空白は、決して埋める事ができない。もし、月菜を失ったとき、その空白を憐で埋められないのと同じ事だ。
透:「俺だって・・・憐と、離れたくはないよ・・・・」
 透の口から出たのは、紛れも無い本音。透が心の奥底で思っていた、もう一つの本音。それが、今や理性を完全に超越し、透の心を侵食しようとしていた。
憐:「じゃあ、いっしょに暮らそう・・。いつまでも、いつまでも、ずっと一緒に・・・・」
 不意に、憐の足元の草が、異様なまでに伸びる。そしてそれは、徐々に徐々に、透の足元に、膝に、胴に、そして全身に絡みついていった。
 しかし透には、それはむしろ心地よいものとして感じられた。まるで母の胎内に戻っていくような・・・そう、元々は一つのもので、それが何らかの拍子に二つに分かれてしまったものが、また元の一つのものに戻っていくような・・・、そんな、言葉で表現し得ないような、至高の充足感があった。
(そうだ・・、これで、いいんだ・・・・)
 透は思った。おそらく、これが本当の、あるべき姿なんだと。
憐:「お兄ちゃん・・・大好きだよ・・・・」
 憐が、目を閉じ、背伸びをして、その小さな唇を透の唇に近づける。
 目前に迫った憐の唇は、冷たい氷の匂いがした。
(これで、いいんだ・・・これで・・・・)
 氷の揺り篭に抱かれながら、透は目を閉じた。
 憐の唇が、透の唇に触れようとした、その時だった。
??:「透!!!!」
 懐かしく、暖かく、優しく、そして力強い声が聞こえ、透は一気に覚醒した!
透:「アシュラン!!!」
 駆けて来るのは、大切な友の姿。これからを共に生きていくはずの、新しい最高の相棒の姿だ!
アシュラン:「透!! これを!!!」
 アシュランの手の中に、何か光る物が見えた。そう、あの形は、見紛うはずも無い。過去から、未来へ向けて透の背中を押してくれた、過去の相棒が生きていた証!
 そうだ! 確かに、憐の存在は何者にも換え難い! けれどそれは、アシュランの存在だって、優哉の存在だって、同じ事だ! 
 確かに、透は憐と共に生きたい。けれど、それと同じ位、アシュランと、月菜と、みんなと共に生きていきたい! 優哉の想いと、あきらの想いと、今はもういない者達の想いと共に生きていきたい!
 それを選ぶのが、例えどんなに辛い事でも、偽りの安寧の代償にそれを捨ててしまう事は、絶対にできない!!
憐:「ちっ!!!」
 憐は、それが憐だとは思えないほどの冷酷で壮絶な瞳でアシュランを睨んだ。同時に、アシュランの足元の草が、アシュランの脚を絡めとろうと襲い掛かる。
アシュラン:「くっっ!!」
 アシュランは優哉のペンダントを電子アイテムのナイフと化し、懸命にそれを薙ぎ払うが、何しろ辺り一面が草なのだ。もういくらもしないうちに、アシュランは絡めとられてしまうだろう。
しかし、アシュランはそれでも必死に、生きようと戦う。
 透は、懸命に戦う友の姿を見て、決意した。もう、今度こそ本当に、迷いは無い!
透:「アシュラン!! そのペンダントを俺に!!!」
 この一言で、透の全ての決意を悟ったのだろう。アシュランは、ナイフを元のペンダントに戻すと、透に向かって全力で投げた。
アシュラン:「透、頼んだ!! 絶対、必ず成功させるんだ!!!」
憐:「くっ!!!」
 憐が慌てて手を伸ばすが、それはまるで優哉の意思を帯びたかのように、憐の手をすり抜け、そして透の手に、綺麗に収まった。
 いや。このペンダントを透に届けてくれたのは優哉だけの意思では無かったのだと、透はそれを手に取った瞬間、確信する!
 アシュランの意思が、イザークの、ニコルの、マリアの意思が、明日を生きようとする者達の意思が流れ込んでくる!
 ミゲルの、ディアッカの、レミーの遺志が、生ある者たちに明日を生きて欲しいと願う者達の遺志が流れ込んでくる!
憐:「お兄ちゃん、そのペンダントを離して!!!」
半狂乱になって叫ぶ憐に、透は、自分でも驚くくらいに優しく、力強い声で言った。
透:「憐、ごめん。やっぱりお兄ちゃんは、もう憐とはいられない。俺が生きるのは、この世界じゃないんだ。幻想の、仮想の世界じゃないんだ。俺は・・・俺はこれから仲間たちと、リアルの世界で、電子の世界で巡り合った仲間たちと、現実の世界で、共に生きていくんだ!!
憐:「お兄ちゃん、いかないでぇぇぇぇぇ!!!!」
 憐の叫びが、透の胸を、激しく痛ませ、傷つける。
 だが、透は。
透:「さよなら、憐」
 その傷を上から抉り潰すように、優哉のナイフを突き立てた。


『反転(フリップ・フロップ)』


透:「くっっ!!!」
 透の胸を激しい痛みが走り、透は思わず目を瞑った。
 当然だ。自分の胸を思い切り刺したのだ。生半可な痛みのはずは無い。
 しかし、脳内チップの電子音声は聞こえた。胸の痛みも、もう無い。おそらく、賭けは成功したはずだった。
透:「だとしたら、ここは一体・・・・、!!!?」
 透は辺りを見回して、ぎょっとする。
 そこは、先程と変わらぬ、チャットルームの草原だった。いや、ただ一点だけ、大きく変わっている所がある。
 本来なら、抜けるような青空に標準固定された、その周囲の壁紙は、代わりに真っ赤に燃えるような、茜色の夕焼けだった。
透:「こ、ここは、一体・・・・」
??:・・・がさない!
 突然、頭上から少女の声が聞こえる。それは、透がとてもよく知っている、しかし一度も聞いた事が無い声。
憐:逃がさない!! お兄ちゃんは逃がさない!!!
 憐の、絶対零度の叫びが、上から降り注ぎ・・・。
憐:お兄ちゃん、いっしょに生きよう、いつまでも、いつまでも!!!
 突然、目の前に発光球体が出現した!!
透:「セラフィム!!!? くそ!! まだ脱出したわけじゃなかったのか!!!」
 透は反射的に、自分もシュミクラム体に転移しようとする。しかし・・・。
憐:「ふふふ。お兄ちゃん、無駄だよ。ここは、仮想と現実の“狭間の世界”。一番端っこだけど、まだお兄ちゃんは、憐の世界にいるんだよ。だから、シュミクラムには、憐を傷付けるようなものには、なれないよ!!」
 その声は、もはや憐ではなかった。冷たく、威圧的な、魔物の声。ゲンハが危惧した通りの、狂気に支配された怪物の声だった。
 透は、ゲンハの悲しい最期を思い出す。
透:「違う!! 俺は憐を傷付けたいんじゃない!! ただ、憐を本当の意味で、救ってやりたいだけなんだ!!!」
 確かにこのまま透が現実に帰れば、憐は絶望と孤独に突き落とされるだろう。でも、だからといって、透がここにいれば、憐は遠からず、もっと酷い破滅を迎えることになるのだ!! その時に憐に襲い掛かる闇は、絶望と孤独、などというレベルではないのだから!!
 しかし、憐の姿をした怪物は叫ぶ。
影の憐:「うそつき!! お兄ちゃんは、憐をきずつけたいだけなんだ!!・・・いいよ、お兄ちゃんがそうするのなら・・・憐はね、力づくでも、お兄ちゃんをつれて帰る! そして、いつまでもいつまでも、いつまでもいつまでもいっしょに暮らすんだ!!!
透:「――――――!!!!」
 その声の冷たさと凄まじさに、透は戦慄した!! もう、純粋で愛らしい妹の面影は、どこにも残っていなかった!

「グオォォォォォォン!!!!!」

 セラフィムが凄まじい咆哮を上げ、同時に、次の瞬間には光弾になって頭上に降り注ぐであろう無数の羽根が茜色の空高く舞い上げられるのを、シュミクラム体になれない透は、ただ成す術もなく見上げていた。そして・・・。
 シュッシュッシュッ!!
 ドォォォォン!!
 被弾の凄まじい衝撃に、大地が揺れた!!
 しかし。
透:「な・・・?」
 透の体には、傷一つ無かった。
透:「何で・・・?」
??:「大丈夫。お兄ちゃんは、私が守るから・・・
 透の目の前に、一人の少女が透を庇うように立っていた。そして、その少女の声は、正真正銘、透の唯一の肉親の声。
透:「憐!!!」
影の憐:「何!!!?」
憐:「ねえ、もう一人の私。だめだよ、お兄ちゃんを、こまらせたら・・・」
 憐は、上空に漂うセラフィムを、きっと睨みつけた。
透:「憐・・・」
 憐はゆっくりと透に振り返り、そして、悲しげな瞳で、しかし笑った。
憐:「わかってるよ、お兄ちゃんは、憐が大好きだってこと。だから、だから憐のためを思って、この決断をした、ってこと・・・」
 憐の声は、透が知るどの憐よりも、優しく、そして強かった。
憐:「だから・・・あなたもわかるでしょう?」
 憐はそう言ってセラフィムを見上げ、そして、遂に透が言えなかった言葉を、はっきりと言った。
憐:「私たちはね、もう死んでいるんだよ
影の憐:「!!!!??」
 影の憐が、さっと蒼ざめ、そして。
影の憐:「いやだ!! いやだ!! 憐はお兄ちゃんと離れたくない!!!」
 
影の憐の声は、既に完全にセラフィムの咆哮とリンクしていた。
影の憐:「お兄ちゃんは絶対に、絶対に離さない! 永久に!!!!!」
 そして、セラフィムが発光球体を、いや、今までその全身を覆っていた翼を広げた!!
透:「あれは、何だ!!!?」
憐:「あれがあの子の、“セラフィム”のもう一つの姿・・。あの子、本気でお兄ちゃんを、殺してでも自分の物にするつもりだ!!」
透:「な・・・・・」
 透は、翼を広げたセラフィムの姿を見上げた。
 その姿は、巨大な、有機的な翼を生やしていたが、ボディは完全にガンダムタイプのシュミクラムそのものだった。
 天使の姿をしたガンダム。なんということだろう、憐の深層意識が選んだ“最強の力のイメージ”は、明らかに兄の操るシュミクラムを模したものだったのだ。透の胸が、再び激しく痛む。
 そして、セラフィムが、その神々しい姿に全く似合わぬ、獣のような咆哮を上げ、同時にその翼から羽根を無数に舞い上げた!

「グオォォォォォォン!!!!」

憐:「くっっ!!!」
 憐は懸命に、絶対防御障壁を張ってセラフィムの光弾を防いだ。そして、意を決した表情で、透に振り向いて、そして言った。
憐:「戦って、お兄ちゃん! そして、あの子を倒して!!」
透:「な!!?」
憐:「今の憐じゃ、狂気が暴走しているあの子を止められない!! 憐の力で、お兄ちゃんをシュミクラム体にするから、だから・・・あの子を倒して!!!」
透:「し、しかし・・・」
 透とて、知っていた。玲佳も言っていたではないか。「憐を殺せば、影の憐も消滅する」と。そして、即ちその逆もまた成り立つ。
 影の憐を倒せば、表の憐もまた、消滅するのだ。
 しかし、憐は気丈に微笑んで、言った。
憐:「お兄ちゃんも、もう決意したはずでしょ? それに・・・憐は、もう本当なら、七年前に終わっていたんだ。それが、もう一度お兄ちゃんと会えて、お喋りできて、笑い合えて、お兄ちゃんに抱き締めてもらって・・・。満足だよ。本当に、もう、胸が一杯なくらい、満足だよ・・・」
 憐の頬を、涙が伝った。けれど、憐は満面の微笑みを浮かべていた。
憐:「ありがとう、お兄ちゃん。憐はお兄ちゃんのこと、大好き。だから・・・戦って、お兄ちゃん!!!
 次の瞬間、憐の身体は光となって、透の胸の中に飛び込んだ!
 そして、同時に、再び舞い上げられた無数の羽根が、光弾となって透に降り注いだ!!
 シュッシュッシュッ!!
ドォォォォン!!!
 しかし、爆煙が晴れたそこには、十二枚の翼を広げた、機動戦士の姿があった!
透:「憐・・・。俺も、憐のことが大好きだよ。だから・・・だから、お前を倒す!!!

「グオォォォォォォン!!!!」

 咆哮と共にセラフィムが巻き上げた無数の羽根を、透はマルチロックオンで次々とロック、フルバーストで次々と相殺して破壊する。しかし、無数に降り注ぐ光弾は、とても破壊しきれるものではない!
透:「くっっ!!」
 透は素早くこれ以上相殺して防ぐのを諦め、瞬時に回避に切り替えると、一瞬の隙を生かして本体を狙い、一斉射撃を叩きつけた! しかし、砲撃が届く寸前で、セラフィムは忽然と姿を消す。
透:「瞬間移動か!!?」
 次の瞬間、セラフィムは透の斜め後方、完全な死角に現れる。そして同時に、またも無数の羽根を巻き上げる!
透:「ちっっ!!!」
 透は初撃で盾を破壊されるものの、驚異的な反射神経で、雨霰と降り注ぐ無数の光弾を全て回避していった。
 すると、羽根の光弾だけでは透を倒せないと悟ったのか、セラフィムは両手にそれぞれロングバスターライフル“ソドム”“ゴモラ”を虚空から出現させると、それを一つに合成、ツインバスターライフル“メキド・フレイム”とし、天空目掛けて、強烈なエネルギー波を放った!! そして、それはすぐに上空に停滞、無数の火の玉に分裂すると、まるで背徳の街を焼き払う神々の審判の炎のように、上空から降り注ぐ!!
 更にセラフィムは、再びバスターライフルを二丁に分離すると、羽根の光弾をばら撒きながら、透を狙い撃つ。
 どれもまともに当たれば即死級の威力を持つ攻撃が、豪雨のように降り注ぎ激流のように押し寄せるが、透は全てを信じられないような機体捌きでかわしていった。
透:「くそっ、メチャクチャだな!!!」
 しかし、上空から降り注いだ審判の火の一発が、透のビームライフルを貫いた。透は素早くライフルを捨て、両手でビームサーベルを引き抜くと、襲い掛かる光弾やビームをビーム刃で払いのけながら、セラフィムへ向けて突進した。
 幸いにも、“メキド・フレイム”は既に止んでいた。透は光弾を払いのけてセラフィムに突進、上空から急降下して斬りかかり、二丁のバスターライフルを、一瞬の元に両断した。
 しかし、次の瞬間、セラフィムは忽然と姿を消し、今度は逆に透の頭上に瞬間移動、ビームサーベルをそれぞれ両手に出現させると、さっきの透の攻撃そのままに、透にビーム刃を振り下ろす!
 透はそれを咄嗟に受け止めるが、セラフィムのビームサーベルのあまりの出力に、徐々に徐々に押されてゆく。
透:「く・・くっそぉ!!!」
 透は咄嗟に両手に持ったビーム刃の角度をずらし、セラフィムの剣圧をいなそうとした。それは一方は成功するが、もう一方は失敗し、フリーダムの右腕が肩口から斬り裂かれる!
透:「これしき!!」
 透は残った左手のビーム刃を素早く横に薙ぎ、セラフィムの左腕を切断する。そして同時に大きく飛び退くと、翼の収縮プラズマ砲を展開して瞬時に発射、セラフィムの右腕を、貫くことに成功した。
 しかしセラフィムも、この時には既に次なる羽根の光弾を巻き上げていた。間を置かずして降り注ぐ光弾を、砲撃のため一瞬動きを止めてしまった透はかわしきれず、右翼が被弾、大破した!
透:「うおっ!!」
 メインスラスターの片翼を失い、透は一瞬、機体のバランスを崩す。敵は、その一瞬を見逃さなかった。
 セラフィムの胸部の中心、緑色の球体が、不意に強い光を放つ!
透:「しまった!!!」
 そして次の瞬間、緑の球体から、強烈なエネルギーの奔流が放たれた!
 ジオングをも一撃のもとに飲み込んだ、反ネットロジック殲滅砲“ローエングリン”をかわすことは、このタイミングでは不可能だった!!
透:「くそぉぉぉ!!!」
 その時!!
月菜:「透ーーーーー!!!!!」
 何と、月菜のゼータが、ウェブライダー形態で目にも留まらぬ速さで飛来し、ローエングリンの射線上、透の目の前に割り込んだのだ!!
透:「月菜、何で!!? それに、早くどけ!!!」
 月菜は、己の機体を盾にして、ローエングリンから透を庇う。月菜の機体が、圧倒的なエネルギーの前に、徐々に融解を始めた。
月菜:「今度は助けるって言ったでしょ!! さあ、早く行って!!!」
 月菜の固い決意の篭った叫びに、透は反射的に飛び上がり、セラフィムへ向けて最後の突撃を行った!
 しかし、セラフィムはそれを迎撃するために、無数の羽根を舞い上げた。今の透には、かわす術は無い!
透:「くそっ!!!」
 瞬く間に、頭部が、両腰部レールガンが、左脚が吹き飛ばされた。そして、遂に一発の光弾が、コックピットへ向けて飛来した!!
 しかしその光弾は、どこからともなく放たれたビームに貫かれ、破壊される!
透:「!!!?」
 見れば、数機のドラグーンが現れ、次々とビームを放ち、光弾たちを貫いていく。
透:「ドラグーン!? バチェラか!!?」
 しかし、全ての光弾を破壊する事はできず、残りの光弾が透目掛けて飛来した!
 その時だった。
??:「跳べ、透!!!」
 アシュランの叫びと共に、ジャスティスのリフター・ファトゥム-00が透の正面に舞い降りた! 
透:「アシュラン!!!」
 透はそれを踏み台にして更に跳躍し、光弾たちは透のすぐ足下を通り過ぎていった。ファトゥムはそのまま、既に耐久度の限界にきていた月菜の前に飛来し、月菜を庇う。
透:「サンキュー、みんな!!!」
 この空間、憐の世界でものを言うのは、“意志の力”だ。仲間たちは、この強い想いが全てを叶える空間で、透を助けたいと強く願ったのだろう。
 仲間たちの全ての想いを込めて、透はビームサーベルを、セラフィムに付き立てた! しかし!!
 ビーム刃がセラフィムに到達する直前で、翼がセラフィムを覆い、身を守る!!
 おそらく、セラフィムの絶対防御障壁の正体は、この翼なのだろう。透の決死の突撃は、ここに来て阻まれたように見えた! だが!!
透:「負けるかぁぁぁぁぁ!!!!」
 透は諦めなかった! この世界を支配しているのが“意思の力”ならば、強い意思は、この絶対に破れない障壁をも、破るはずだ!
 そして!!
透:「おぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」
 透の強き想いに呼応したのか、ビーム刃の出力が、急激に上がった! そして・・・。
 ピシピシッ!
 バリーンッ!!!
 障壁を形成していた翼に、まるでガラスのように無数のヒビが入り、そして粉々に砕け散った!!
 だが、同時に、透のビームサーベルも、同じように砕け散る! 
 もはや、透を阻むものは何も無い。だというのに、透には、セラフィムを倒す武器が残されていない!
透:「いや! 武器ならまだある!!」
 透は、咄嗟にその存在に気付き、すぐさま最後の武器を実体化させる。
 それは、ナイフ。そう、優哉の形見のペンダントだった!
 胸部の緑の球体の中には、憐の姿が透けて見えた。間違い無い! こここそが、セラフィムの心臓部なのだ!!
 憐の瞳が、悲しげにこちらを覗く。透の胸は三度、激しく痛む。
 しかし、透はその痛みを押し殺す。そして!!!
透:「うあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
 優哉のナイフを、セラフィムの心臓部に突き立てた!!
 優哉のナイフは、セラフィムのコアを、完全に貫いた。
 セラフィムは、辺り一面を包み込むような強烈な閃光を発し、その中で、完全に消滅した・・・。
 透は、その全てを覆う閃光の中で、セラフィムの中に閉じ込められていた無数の魂のようなものが解放され、辺りに散っていくのを感じながら、愛しい少女の、最期の声を、確かに聞いたような気がした。
「ありがとう、お兄ちゃん・・・。憐は、お兄ちゃんのこと、大好きだよ・・・・」
透:「憐・・・・」


「さようなら、お兄ちゃん」


 そして、透の長きに渡る戦いは、苦過ぎる結末を迎えたのだった・・・・・。


 


 


第三十一章『決意』完


 


 


終章 『草原の狼と電子体幽霊』




 こうして、透たちの、長い長い戦いは終わった。


 透たちは、あの後すぐ、実体で目覚めることがきでた。現実の時間は、実はセラフィムに飲み込まれてから数分しか経っていなかった。それを知ってから、透は、今では、憐の世界の光景が夢の産物だったのではないかと思うこともある。
 アシュランや月菜はもちろんのこと、最終決戦でセラフィムに飲み込まれた者たちは、全員現実世界に帰還することができた。また、最終決戦の中で、セラフィム以外のものによって命を落とした者たちも、奇跡的に帰還することができた。そして奇跡的に、リャンや、セラフィムのDOSで命を落とした一般市民など、死んでからまだあまり間の無い者で遺体が残っていた者もまた、蘇生することができた。
 しかし、それ以外の者たち、既に鬼籍に入っていたり、死んでから時間の経っている者たちは、結局生き返る事は無かった。
 また、ゲンハ・ヴァンガード、ギル・ラザード、パトリック・ザラなど、あの世界で死んだ者たちも、生き返ることはなかった。
 透たちはそれでも、彼らもセラフィムから解放され、真の意味で救われたのだと思っている。しかし、このセラフィムが引き起こした一連の事件は、ネット世界未曾有の、史上最悪の惨事として、人々の心に深い傷跡を残すことになりそうだった。
 その傷跡が、時と共に薄らいでいくのか、それとも、彼らに一生残るのか。それは透たちにも、わからないことだった・・・。


 透たちが日常に戻ってすぐ、セラフィムが破壊されたと知ったマスコミ達による、一連の事件の“犯人探し”が始まった。
結果、あの怪物を生み出した『ブレインプロジェクト』に関わった、政治家たちなどの一部の権力者たちは、自分達に火の粉が降りかからないように、率先して全ての責任を、橘玲佳に押し付けた。
 その結果、どうも橘玲佳は、至上稀に見る大悪人、ということにされてしまいそうで、一部には「歴史の教科書に載るのではないか?」と噂する者もあるそうだ。
 ただ、橘玲佳本人は、セラフィム消滅直後に姿を消した。警察や軍などが、総力を挙げてその行方を必死に追っているが、今のところ、手掛かりさえ全く掴めていない。
 透は、玲佳はもう、自分たちの前にも、人々の前にも姿を現さぬだろうと確信していた。あの、セラフィムの中で全ての闇から解放され、自分を“母”と呼んでくれ、と懇願した玲佳からは、既に覇気が感じられなかったからだ。
 でも、心のどこかでは、彼女は今もどこかで生きているのではないかと、透はそうも思うのだった・・。


クーウォン:「・・・そうか。玲佳がそんな事を・・」
 事件から数日後、透たちはあの山奥の山荘に呼び出された。そして、そこで生きていたクーウォン、彼を匿っていたという水坂夫妻、そして生き返ることが出来たリャンと再会を果たした。
 クーウォンは、やはりあのレベル7崩壊から生き延び(あの大爆発は、追っ手の目を眩ますための囮だったらしい)、それからずっと、行き場を失ったレベル7の住人たちを助けて奔走していたのだそうだ。そして、彼の努力の甲斐あってか、生き延びたレベル7の元住人たちは、今もどこかで元気に暮らしているらしい。
 クーウォンは、透から玲佳の話を全て聞き終えると、しばらく黙って目を瞑り、じっと何かを考えてこんでいた。
 そして、ゆっくりと目を開くと、クーウォンは過去を語り始めた。
クーウォン:「私と彼女は、レベル7のあった所とはまた別の貧民街(スラム)の出身でね・・・。玲佳の話した通り、私は彼女と出会い、恋に落ち、そして彼女の全てを受け入れた・・・。私は、幸せだったよ。彼女は、私の全てを愛してくれた。私もまた、彼女の全てを愛していたと、あの頃は間違い無く、そう断言できた・・・」
月菜:「それが、“ブレインプロジェクト”で・・・・」
クーウォン:「そうだな。思えば、あれがボタンの掛け違いの始まりだったのかもしれん・・・・」
 クーウォンは、やりきれない大きなため息をついた。
クーウォン:「安室夫妻が亡くなる直前だったか・・・、彼女は、子供を流産してね、私の子を二度と産めぬ身体になった。私は、精一杯彼女を励ましたつもりだったが・・・・・。その頃からだろうか、彼女は、私の力になろうと、何かに獲り憑かれたような言動をすることが増えていった。彼女が、子供たちに非道で無茶な実験を繰り返すようになったのは、その頃からだよ・・・」
透:「・・・・」
クーウォン:「私は、そんな彼女から子供たちを庇おうとし・・・・彼女は、おそらくは焦燥から、益々態度を悪化させていった」
バチェラ:「それで・・・、“あの事件”が起こって、結局プロジェクトは凍結されたんだね」
 バチェラが“あの事件”と口にした瞬間、透の心は強く痛んだ。例えバチェラが、透の気持ちを考慮して、あえて“あの”と婉曲的に表現したのだとしても。それほどまでに、透が喪ったものは、大きかった。
 クーウォンの話は続いた。
クーウォン:「そうだ。しかし、プロジェクトが凍結される直前だったか・・・。玲佳の狂気は、既に留まる所を知らぬ域にまで達していた。玲佳は、その頃から既に、あの醜悪な洗脳技術を、半ば確立していたのだ。そして、彼女はそれを、彼女から離れてゆこうとする私に、躊躇い無く使った」
月菜:「・・・・・」
クーウォン:「だが、私は幸運にも、そこから逃れる事ができた。没入時、死んだと思っていた憐が、私に呼びかけてくれたことでな」
アシュラン:「それで、貴方は憐の電子体幽霊としての生存を知り・・・そして、憐に起こった悲劇を透たちに起こさせないため、透たちを連れて脱走したのですか?」
クーウォン:「ああ。その通りだ。幸いあの頃の洗脳技術は、今よりも大幅に未熟であった。だから、『反転』には未覚醒の私でも、何とか破る事ができた。しかし・・・私の脱走は、思えば、玲佳の心を壊す、最後の一押しだったのかもしれんな・・・・」
 そう言って、クーウォンは短く天を仰いだ。
クーウォン:「今までは、玲佳の事を、冷血非道の雌狐と、そう思って憎み続けていたが・・・・・。私がもっと彼女のことを理解し、支えてやれば、或いはこんなことには、ならなかったのかもしれん・・。私は、当時はあれで全力を尽くしたつもりだったが・・・・、結果的に、最も愛した女性を壊し、娘を喪いかけ、そして息子を苦しめた末に死なせてしまったのだから・・・、私も、彼女と同等の“罪”を、背負っているのだろうな・・・・・」
 クーウォンの目から、一滴の涙が流れたのを、透は見たような気がした。
信一:「“罪”というなら、私だって背負っていますよ・・・」
 水坂信一が、ため息と共に言った。
信一:「そもそも、あんな非人道的な実験を行った事が・・私たちの、許されぬ過ちだったんです。“科学の発展”とか“人類の未知なる可能性の探索”などという大義名分を掲げようと・・・数人の子供たちの未来を奪うような実験には、私たちは科学者として、断固として反対するべきだったんだ!!」
クーウォン:「そうだな・・。その点も、大いに賛成だ。あれは、私の決して許されぬ“罪”の中でも、最も重いものの一つだろう・・・・。」
夏江:「先程、透ちゃんたちから、憐ちゃんが咄嗟の偽名とはいえ、『水坂』の性を名乗ったと聞いたとき・・・、不覚にも、涙が出てしまいました・・・。私は、確かにあの子を可愛がっていたけれど・・・・、それでも、私は彼女を『実験体』として扱ったということには変わらない。私はあの子を、本当に不幸にしてしまった。一時はその事実さえ信じられず、“あんなこと”もしたのだけれど・・・・」
 その時、バチェラがハッと顔を上げた。
そして、夏江の両肩を掴み、物凄い剣幕で迫った。
バチェラ:「ねえ、オバサン!! 一つ、一つだけ大事な質問に答えて欲しいんだけど!!!」
夏江:「え、ええ・・・」
 そして、“質問”に対する夏江の答えを聞いたバチェラの表情が、みるみる明るくなってゆく。
バチェラ:「それなら・・もしかして、あるいは・・・・・・!!」


 その後、水坂博士夫妻は、生体素子の研究者としての人生を再開させた。人類の未知なる可能性の探索を、今度はまた違った、誰の犠牲も出さないような方法を模索しながら、行っていくらしい。
 クーウォンは、あの後すぐに、再び地下へと潜った。その際、クーウォンはこう言った。
クーウォン:「私は、あまりに多くの罪を犯してしまった・・・。それらは償い切れるものでは決して無いが、だからこそ、せめて残りの人生、犠牲となった者たちの死を無駄にせぬためにも、戦い続けなければな・・・・」
アシュラン:「“戦う”って・・・何とです?」
クーウォン:「今回の件は、全て橘玲佳単独で行ったこととされているが・・・・、君達も知っての通り、あの洗脳政策には、世界中の多くの権力者たちが、秘密裏に関わっていたのだ。彼らは、その事実を闇に葬ろうとしているようだが・・・、そんなことは、私がさせない!」
リャン:「クーウォン・・・・」
クーウォン:「我々が生み出してしまった負の遺産は、君たちの世代に不条理な痛みを強いてしまった・・・。だからこそ、次の代にはそれが及ばぬように、我々の罪は、我々の手で購っていかねばな。おそらく、玲佳もそれを望んでいるだろう・・・・」
 その後暫らくして、世界中に、政変の嵐が巻き起こることになる。原因は、マスコミへの謎の人物の、多数の政治家たちの不正の情報のリークだった。そして、政界を追われた政治家たちが、全てあの洗脳政策に関わっていた者たちであったことを、透は後に知った。
 しかし、それらの政変は、どうにも“単なる首の挿げ替え”で終わりそうだ。そして、おそらくはクーウォンであろう、謎の人物が流した情報についても、洗脳政策『プロジェクト・リバイアサン』に関するものは全てがマスコミに届く前に握り潰されており、また、政界を追われた政治家たちも、その政策に関わった者全て、からは程遠い人数だった。
 クーウォンの長く厳しい戦いは、多分、まだ続くのだろう。だが、クーウォンは、その戦いを、人生をかけて完遂させる覚悟に違いなかった。


 事件後の、一連の騒動のごたごたにより、透たちの第一級不正アクセスの罪、アシュランやその仲間たちの軍からの脱走罪については、暗黙の了解的に不問になった。一部の政治家たちは透たちがセラフィムの破壊に多大な貢献をしたことを知っており、そのための恩赦的措置だった。
 しかし、透もアシュランも、自分たちが犯した罪を、これから一生背負って、生きていく覚悟だった。


 透は、事件のすぐ後、アシュランと、彼の小隊の仲間たちと共に、ミゲル・アイマンの
墓参りをした。透はそこで深く土下座し、ミゲルの両親にも、深く詫びた。
 ミゲルの両親は、一瞬とても悲しそうな表情をしたが、次の瞬間、精一杯の笑顔で、透を許してくれた。
 透は次に、ザラ隊の仲間達にも、今までのことを詫びた。マリア・ハウは穏やかに笑って、ニコル・アマルフィは満面の笑みで、イザーク・ジュールは思い切り不機嫌な顔で、それぞれ、透のことを許した。そして、彼らはそこで、長年来の友人のような、深い友情を築いたのだった。


 マリアは、未だに軍を休職している。しかし、精神障害についてはほとんど回復しており、今はむしろ、教職への道を再び志すか、それとも軍のサポートとして復帰するのかで迷っているらしい。それに関して、イザークは「お前の好きな方を選べ!」と言っていたが、軍に戻ってきて欲しいと思っているのは、誰の目から見ても(マリア本人は例外だが)明らかだった。


 二コルは、軍を退役し、ピアニストとしての活動を再開した。そして、その天才的な才能を存分に発揮し、既にいくつかの賞を獲得している。ほとんどの評論家たちは、「近い将来、父親を超え、今世紀最高の音楽家になるだろう!」と絶賛しているが、本人は「いえ、まだまだ僕は、父さんには全然及んでないです」と、研鑽を積む事を怠ってはいない。またニコルは、戦争の跡地となって荒廃した国での無料コンサートを数回に渡って行っており、今後はそちらでの活動をメインに据えたいと、いつか話していた。


 イザークは、一人軍に残っている。軍のパイロットの多くが、洗脳の強制解除の副作用によって脳内チップに障害を発生させてしまい、ネットへの接続能力を失ってしまっているのだ。そのため、いつも忙しいと、ある時しきりにぼやいていた。
 また、彼が洗脳政策の打破とセラフィムの破壊に大きく貢献していたため、軍内では彼を、英雄視する者たちも多いそうだ。しかし本人は、あの後プライベートで透とアシュランにシュミクラムの模擬戦闘を挑み、結果いずれもボロ負けしてしまったせいもあるのか、そういう者たちの声には、かなり謙虚な態度を取っているらしい。そして、いつの日か真の英雄になるため、彼の戦いは続いているようだ。


 アシュランは、軍からの強い復隊の要請を拒否。自分ができる最善のことを、模索する日々が続いている。
 そして今、アシュランはバチェラとリャンと同棲している。けれど、その内容はアシュランによれば、色っぽいものでは全く無く、むしろ友達同士の付き合いの感覚に近いのだとか。
女性二人からすると、それは少々不満そうではあったが、彼女らも「まあ、アシュランも色々あったしね。焦らずじっくり、気長にやるさ」、「あいつがアレなのはもう諦めてるしさ・・。それに、そういうのはあいつの許婚に匹敵するくらいいい女になってからじゃないと、アタシの気も収まらないからね。まあ丁度いいさ」とのコメントを残しており、三人はそれなりに仲良く、楽しくやってるようだ。
 また、リャンとバチェラはその類稀なる記憶力とプログラミング能力を活かし、V・S・Sや軍の洗脳の犠牲者で、今も洗脳強制解除の後遺症に苦しむ人たちのために、彼らの脳内チップの修正パッチの開発にも力を注いでいるらしい。なので、彼らが救われる日も、遠い未来の話ではないだろう。
 そして、リャンはある時、家の中に巨大な蛮刀を持ち込んで、二人を驚かせた。しかし、アシュランはすぐに、その蛮刀がゲンハのものであり、彼の形見であることに気が付いた。それを指摘されると、リャンは気まずそうに言った。
リャン:「わかってるよ、アンタからすれば、アイツなんて思い出したくもないってことは・・・。でもさ、確かにアイツはとんでもないことばかりやってきたけれど・・・それでも、アタシの兄さんだったんだ。だからアイツには、せめて幸せに生きるアタシの姿を、見ていてほしいんだ・・・」
 リャンの想いをアシュランは理解し、そしてアシュランはゲンハを許した。
アシュラン:「透にも聞いたよ。あいつだって、犠牲者の一人だったんだ。それに、俺はもう、人を恨まないと決めた。それは俺の目を曇らせ、周りの人を不幸にしてしまうだけなんだって気付いたから・・・。だから、あいつに対する恨みを捨てて、もう二度とあいつのような人が生まれないようにすることが、レミーの仇を本当の意味で討つことなんだろうし、優哉の死に報いることなんだとも思う。だから、もう俺は、今後一切ゲンハを憎まないよ」
 そういうアシュランの眼には、何か大きな決意が宿っているように、リャンとバチェラには思えた。


 そして・・・・・。
 透は、月菜と共に、下町の比較的大きめの一軒屋を買い、そこで小さな、電子機器やシュミクラム整備専門の店を始めた。
 透は、商売を始めると同時に、シュミクラム乗りと、そしてハッカーからの正式な引退を宣言した。透は、あの戦いが終わってから、自分の将来の姿を真剣に模索した。そして、出した結論が、これだった。
 大切な人を悲しませたくない、という考えの元、透は危険から脚を洗った。それからの日々は、基本的に平和で穏やかで、透自身にはいささか「物足りない」と感じる事も無いわけではないが、それでも、隣で微笑む大切な人たちの笑顔を見ていると、すぐに、こんな生活も悪く無いと、そう思えてくるのだった。そして、そう思った時には必ず、どこかで優哉もそれを見て微笑んでいるような、そんな感覚も覚えるのだった。
 そして、これは誰にも言っていないことだが、透は近々、月菜にプロポーズする決意を固めている。決して高くは無いが、自分にできる精一杯の、立派な指輪も買ってある。ただ、それを渡そうと思って月菜に話しかけると、どうしてもいつの間にか、いつもの言い合い、別名・夫婦漫才になってしまい、結局渡す機会を逸してしまっていた。
 でも、その言い合いの中でも、透は月菜との、確かな絆を感じている。だから、透は全く、焦っていない。遠からずして、指輪は月菜の手に渡ることになるだろうと、透は確信していた。
 アシュランたちも開店当初はよく店を手伝ってくれ、また顧客獲得にも大いに協力してくれた。なので、商売の方も、順調と言ってよかった。
 アシュランたちは、最近は手伝いに来ることは徐々に少なくなっていったが、アシュランたちのおかげで、透は既に、一人で商売を続けていける自身を得ていた。そして、アシュランたちも、“自分にできる事”が少しずつ見えてきたらしく、今はそれを形にするので忙しいようだった。


 そうして、透たちは、一連の事件によって受けた小さくない傷跡を抱えながらも、未来に向けて、一歩一歩、確実に歩んでいた・・・・。



そして、半年の月日が経った・・・・。


 9月10日。この日、透は店を早めに仕舞うと、“ある用事”のために出かけた。そして、それと入れ違いにアシュランたちが店にやってきた。
 店の奥にある生活スペースでは、月菜が既に、パーティー用の料理を用意していた。
リャン:「おじゃましま~す!! あ、お茶とかはいらないよ。むしろ遠慮なくこき使っていいからね」
月菜:「いらっしゃい、みんな。それじゃ、そうね・・・。アシュランたちは、ケーキ作りをお願いね。もうそろそろ、買出し担当のイザークたちが材料買ってくると思うから」
アシュラン:「でもさ、ケーキなら、わざわざ自分たちで作らなくても、買えば早いんじゃないか?」
月菜:「あのね、アシュラン。こういったことは、何より愛情が大事なの。愛情を沢山こめて、手作りしたほうが、祝ってもらう方も嬉しいでしょ?」
バチェラ:「月菜・・なんだか、最近、本当に落ち着いたよね」
月菜:「え・・・そう?」
 確かに、バチェラの言う通り、最近の月菜は、本当に落ち着いた。以前から包容力は高い女性ではあったが、最近の月菜のそれには、穏やかな『母性』のようなものが加わっていた。
アシュラン:「そうだな・・。月菜はきっと、いいお母さんになるよ」
月菜:「え・・・あ、ありがとう」
 月菜は顔を赤らめながらも、太陽のような笑顔で微笑んだ。
 その時。
イザーク:「おい! 頼まれたもの、買ってきたぞ!!」
マリア:「イザーク君、他人のお家に入るときは、まずは挨拶しなさいって言ったでしょ」
イザーク:「い、いちいちうるさいな!!」
ニコル:「ふふ。お邪魔します」
 騒々しい一団が、大量の買い物袋を下げてやってきた。
月菜:「こんにちは、ようこそ、ザラ隊のみなさん」
イザーク:「くっ・・、その呼称、いい加減止めろ」
マリア:「私はいいですよ。やっぱりあの名前が、私たちの絆を示す、一番いい名前だと思いますから」
イザーク:「ぐっ・・・・・」
ニコル:「さて、僕も手伝いますよ。あ、こないだ作った曲を、メディアに入れて持ってきたんですけど、作業中のBGMにかけます?」
月菜:「ありがとう。それじゃあ、お願い。それから、ニコル君は指を痛めたら困るから、会場の飾りつけや配膳を手伝って。マリアさんは、料理の方をお願い。イザークは・・・、えっと・・・・」
イザーク:「俺も料理くらいはできる!!!」
月菜:「・・・・・・」
アシュラン:「いや、こないだお前の作ったの食べたけどさ・・・、あれはちょっと・・・・」
イザーク:「そんな疑惑あり気な目で、俺を見るな!!!」
マリア:「イザーク君は大丈夫ですよ。あれから、ちゃんと私が料理のレクチャーしておきましたから」
イザーク:「う、うるさい!! 勝手に人の恥をバラすな!!!」
バチェラ:「なんかみんな、相変わらずって感じだね」
 そして、そんな風に賑やかに、そして楽しげに、スピーカーから流れるニコルの穏やかな曲を背景に、準備の作業は続くのだった。


 それから二時間後。日はそろそろ暮れ初め、空が茜色に染まる頃。
月菜:「よし、できたっと!」
リャン:「結構際どかったけど、何とか間に合ったみたいだね。どこかの誰かが足を引っ張るばかりだからさ、正直少し焦ったよ」
イザーク:「そう言いながら、何故俺を見る!! あれでも俺は、精一杯やったんだぞ!!」
アシュラン:「そうだぞ、リャン。イザークも、料理、上手くなったな」
イザーク:「お前にそう言われるのが、一番むかつくんだ!!」
マリア:「ほらほら、イザーク君、そんな大きな声を出したら、近所迷惑ですよ」
イザーク:「く・・・」
ニコル:「それはともかくとして・・・、そろそろじゃないですか?」
 ニコルに言われて、月菜はちらりと時計を見た。
月菜:「そうだね。うん、そろそろ、“主賓”が帰ってくる頃だとは思うけど・・・・」
 その時だった。
透:「ただいまー! 帰ってきたぞー!!」
 透の声が聞こえ、アシュランたちは慌てて、各自手元にあるクラッカーを握った。
 ガチャッ!
 次の瞬間、扉が開いて、透と共に、もう一人の人物、このパーティーの“主賓”が、元気よく挨拶をしながら入ってきた。
??:「ただいまぁー!!」
 パパパンッ!!
 クラッカーの音が、盛大に鳴り響き。
一同:「憐ちゃん、十五歳の誕生日、おめでとう!!」
 そして、パーティーが始まった。



 バチェラがあの日、夏江にした質問、それは「もしかして、憐の遺体がどこかに冷凍保存されていないか?」だった。そして、それに夏江は、首を縦に振って答えた。
 バチェラはすぐさま、その遺体が保存されている場所を聞き出し、そして皆を引き連れて向かった。
 夏江たちによると、水坂夫妻は、我が子のように可愛がっていた憐の死が信じられず、また、その遺体がまるで眠っているようだったことから、いつか生き返るのではないかという叶わぬ願いを捨てきれず、火葬される直前の憐の遺体を秘密裏に持ち出し、私用の研究施設で冷凍保存にかけていたのだった。
 そして、バチェラの指示で遺体が慎重に解凍され・・・憐は、息を吹き返したのだった!!
 
 バチェラがセラフィムの中で組んでいたプログラム。それは憐専用の、シルバーコード再生プログラムだった。バチェラ自身、そんなプログラムを組めるなどとは夢にも思っていなかったし、それに例え奇跡的に成功したとしても、遺体が既に残っていなければ、そのプログラムは全く意味を成さないはずだった。
 だから・・・・これは、まるで神様が、透たちの長い長い旅路の果てに用意してくれた『奇跡』のように、透には思えてならなかった。
 意識を取り戻した憐は、そのまま、長年の孤独な電子体での生活による重度のストレス障害の治療と、長期に渡る冷凍睡眠からのリハビリのため、入院することになった。しかし、透たちの懸命な看病の甲斐もあってか、信じられない早さで退院が許可された。
 憐はそれから、透の家で暮らしている。まだ定期的な通院は必要だったが、それ以外は、店や家事を手伝ったり、休みの日には透たちとピクニックに行ったりと、幸せな日々を過ごしているようだ。



 憐は、大きく息を吸い込んで、ケーキの上に立てられた十五本のローソクの火を、勢いよく吹き消した。ステレオからは、ニコルがわざわざ自分で演奏してスタジオで録音してきたという、『ハッピーバースデイ』の曲が流れていた。
透:「憐、誕生日おめでとう!」
 そう言って、透は憐に、綺麗に包装された、小さな包みを渡した。憐はそれを受け取ると、満面の笑みを浮かべて、言った。
憐:「ありがとう、お兄ちゃん!」


 それから、皆はそれぞれ持ち寄ったプレゼントを憐に渡し、そして皆が憐の、本来は迎えられなかったはずの十五回目の誕生日を祝った。
 そして、宴は楽しげな談笑と共に進み、そしていつしか・・・アルコール飲料を飲んだ者は、次第に酔いつぶれていき、宴も酣となっていった・・・。
 気が付けば、周囲には、酒で酔いつぶれて寝てしまった者たちが散乱していた。この、奇跡とも言うべき日を祝うため、酒は完全に無礼講になっていたので、二十歳になったばかりの透やアシュラン、イザークはともかく、明らかにまだ未成年のニコルやリャン、バチェラまでも、しこたま飲んだようだった。
透:「やれやれ・・・。ま、いいか。折角のお祝い事だしな」
 周囲に散乱している人の体やら空き瓶やらを見ながら、透は何とも言えぬ幸福感を覚えた。本来なら、決して開かれるはずのなかった祝い事。その奇跡の中に、今の自分たちはいた。
透:「でも・・ここは流石に、空気が悪くなってきてるな・・。それに、俺もちょっと、飲み過ぎたかな・・」
 透はそう言うと、部屋内を換気し、そして次に、酒で火照った体を、どこに行って冷やそうかと考えた。
透:「この町は、あまり空気が良くないしな・・・。やっぱり、“あそこ”しかないな・・・」
 透はそう言うと、近くのコンソールに行き、そしてニューロジャックを首筋に挿入した。


『没入(ダイブ)』


 そして、透は仮想の草原に、降り立った。そこで、奇妙なことに気付く。
透:「あれ・・・?」
 いつも昼間の爽やかな青空を演出しているはずの壁紙は、何故か夜の、一面の星空へと姿を変えていた。
透:「これは・・・一体・・・?」
 その時、透の首に、後ろからそっと、柔らかい輪のようなものがかけられた。
憐:「はい、お兄ちゃん」
 輪のようなものの正体は、近くの花を摘んで憐が作った花輪だった。
透:「憐。この壁紙も、もしかしてお前が?」
憐:「うん。今日はお星さまがきれいだったから、ここもそうだといいなあ、って思って」
透:「・・・相変わらず、デタラメもいい所な能力だな。」
憐:「えへへ」
 そう言えば、今透が首にかけている花輪も、本来ならばこの世界にはあり得ないはずのものだった。何故なら、ネットロジック上、ネットにあるものは、残骸を残さず消滅する。だから、この花輪に用いられている花も、本来なら摘まれた時点で消滅するのが道理だった。
 つまり、この花輪は、世界で唯一の『アンチネットロジック』の使い手である憐がこの世にいる証。そう考えると透は、無性に暖かい気持ちになる。
透:「・・・にしてもお前、一人で没入なんかして。もう、大丈夫なのか?」
憐:「あ、ううん、実はあんまり大丈夫じゃないんだけど・・・・、でも、今は月菜お姉ちゃんも一緒だから、一人じゃなければ大丈夫」
透:「え?」
 気が付くと、憐の後ろには、お酒のせいかちょっと顔を赤らめた月菜の姿もあった。月菜の首には、やはり憐が作ったのだろう、透の頭に乗っているのと同じ花輪がかかっていた。
透:「なんだ・・、お前たちも来てたのか?」
月菜:「うん。酔い覚まし。ついでに、透も来ると思って」
透:「やれやれ、俺の行動は、相変わらずみんなお見通しか」
アシュラン:「ま、そういうことだ。」
 振り向くと、そこにはアシュランとバチェラもいた。
透:「みんな、考える事は一緒なんだな」
憐:「だって・・ここは、とても気持ちがいいんだもん」
バチェラ:「そうだね。ここは、ボクが知るネットの構造体の中でも、多分最高にいい場所だよ」


 それから、五人はそこで暫らく、穏やかな語らいの時間を過ごしていた。そして、憐がこっくりこっくりと船をこぎはじめたのを皮切りに、皆とうとう睡魔に勝てず、仮想の草原のベッドで、すやすやと寝息を立て始めた。
透:「・・・平和だな・・・・・・」
 透は、草原のベッドで横たわる大切な仲間たちを見渡し、そして最後に、愛くるしい草原の眠り姫の、愛しい愛しい大切な妹の寝顔を見つめる。
透:「この平和が、本当に、いつまでも続くといいな・・・・」
 透は憐の柔らかい髪を、そっとなでる。
憐:「・・うん・・・・おにい・・・ちゃん・・・・」
 憐は、幸せそうに目を細め、可愛らしい寝言を呟いた。
透:「こうしていると・・・なんだか、この世界全体が平和になったみたいに、そう思えるな・・・・」
 今、透の周りには、本当に平和が満ちている。だから、今この瞬間に、そうでない人たちがいるなんて、透にはにわかに信じ難かった。
 けれど、透は知っている。世界には、未だ、多くの争いがあることを。かつての透たちのように、憎しみに身を焦がし、過去に囚われ、そのために不幸になってゆく人たちが後を絶たないという事を。
 だから、透は、周囲で幸福の内に寝息を立てる仲間たち、未来の象徴とも言える大切な存在たちを眺めながら、強く思う。
 世界中の人たちが、自分たちと同じような、真の幸せに辿り着けますように、と。
 
 世界中が、平和と幸福に包まれる日が、いつか来ますように、と・・・・・・。


 


 


バルドフォースG 完


 

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この記事に対するコメント

本当にお疲れさまでした!
最後が文句なしのハッピーエンドでとてもおもしろかったです!
アシュランとリャンとひかるのその後の生活も気になるところですが
バルドフォースw私もこれを機にやってみようと思います!
それでは。
【2007/02/06 17:04】 URL | 詞亜 #QE5urBdk [ 編集]


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
原作に興味を持たれましたか。二次創作小説の筆者として、それに勝る喜びはありません(^-^)。
『バルドフォース』は、2002年に発売されたPCゲームの中でトップの完成度だ、と言われた作品です。PC版でもPS2版でも、この小説を楽しんでいただけたなら、きっと楽しめるはずだと思いますよ。

創作小説、応援してくださって、ありがとうございました。詞亜さんのコメントからはここ一ヶ月、たくさん力を貰いました。心より、感謝いたします(^-^)。
【2007/02/06 18:19】 URL | ごぜん@管理人 #5FtMdOeE [ 編集]

中国酒
中国酒を探すなら http://www.mladickrealty.com/510915/201344/
【2008/09/13 11:03】 URL | #- [ 編集]

心理カウンセリングでばっちりダイエット
心理療法の専門家であるカウンセラーが相談者(クライエント)の心理上の問題や悩みなどを面接してその内容を分析し、専門的な立場から助言をしたり解決のための援助をすること http://garcon.victoriaclippermagazine.com/
【2008/10/15 06:05】 URL | #- [ 編集]

ヘルペスを美容とエステ
ヘルペスとは、ヘルペスウィルスと言うウィルスが皮膚や粘膜に感染して水ぶくれができる病気のことです http://larkspur.sabellsenterprises.com/
【2008/11/22 11:10】 URL | #- [ 編集]


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現在社会人として東京都心の企業に勤めている。出身地は北海道。
一人っ子。故に(?)わがままでせっかちなところがある。趣味はドライブと創作作品鑑賞。ただし基本的に超インドア。
話すのが大好きだが、上手なわけではい。



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