Endless world -咬龍の庭-
このページは、僕の好きなゲームや漫画、テレビ、そして日常の出来事などのことをつれづれなるままに書いていくブログです。
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『バルドフォースG』 第十章
え~、創作小説、何と前に書いた日付は三ヶ月前でした!ご無沙汰し過ぎですね(^-^;。
でも、これを楽しみにしてくださっている皆さん、安心してください。以前にも言いましたように、この小説は何が何でも完結させるつもりですので。
まあ、どれだけ楽しみにしてくださっている人がいるのかはちょっとわかりませんが・・・。でも、この小説を続けるのは、単に「書きたいから書いて最後まで書き終わったけど、折角かなりの労力と時間を費やしたのだから、どうせなら公共のスペースに発表したい。そうして始めて、この作品は本当の意味で“完成する”」という僕の考え方からなので、楽しみにしてくれる人がいるにしろいないにしろ、最後までマイペースでも突っ走ります。
楽しみにしてくれる人がいるに越したことはないですが(^-^;。

では、「READ MORE」より本編へ。あと、バックナンバーはこちら

バルドフォース エグゼ


バルドフォース エグゼ





(↑原作ゲームのPS2版です。元はPCの18禁ゲームですが、シナリオ自体がよく作りこまれているので、18禁シーン無しでも十分良作です)

バルG第十章
『英雄』



 一まず大掛かりな作戦が終わり、ZAFTの基地内も、ここ数日は平穏に過ぎていった。それが嵐の前の静けさだと疑わない者は誰もいなかったが、それでも隊員たちは、それぞれ与えられた束の間の日常を謳歌していた。
 無論その中でも、皆テロリストたちとの闘いを、完全に忘れているわけではない。日常の訓練の中にも、その合間の一時になされる会話の中にも、今が飛刀との戦争の最中であることがはっきりと伺える雰囲気が、確かにあった。

テロリストの基地内での戦いから数日後、初めての休日
 基地の皆は、ほとんどが気分転換ということで、努めて飛刀との戦いのことを忘れるため、遊びに出かける者が多かったが、それとは反対に、どうしてもテロリストとの戦いのことが忘れられず、作戦室などに篭って戦闘シミュレーションなどに明け暮れる隊員たちも、少なくはなかった。
 そもそも、今、この基地内では軍とV・S・Sの首脳陣による飛刀への対処を検討するための会議が行われている。そのため、基地内が完全に休日ムード、とはかないのも、致し方のないことではあった。
 そして、アシュランも、その『休日ムードになれない者』の一人だった。
 彼はあの日以来、暇があれば自室に篭り、部屋の端末を利用して、あらゆる状況における自らの部隊の、ひいては他の部隊との合同作戦の、ありとあらゆるシミュレーションを行っていた。それは、この休日も例外ではなかった。
 アシュランは、端末上でのシミュレーションの結果を見ながら、ひとりごちた。
アシュラン:「もう俺は、誰も死なせたくない。ゲンハたちのような凶悪な連中に殺される人たちを守りたいと、そういう想いで戦っているのに・・・。皮肉なことだ、俺たち軍人が、次々と奴らに殺されていく。こんな悲劇をもう繰り返したくない、そのためには・・・・」
 シミュレーションの結果が、プリンターから吐き出されていく。結論部分には『二名脳死』の文字が、赤々と躍っていた。
アシュラン:「俺たちが死なないように、いや、隊長の俺が、死なせないようにするしかない。例え一般市民であれ、軍人であれ、親しい人の亡骸を前に慟哭する人は、もう見たくない。そのためには、隊長として俺が頑張らなければ・・・・」
 そう言いながらも、アシュランは自分の言葉が、なぜかひどく独善的に聞こえるような気がした。自分の考えは、間違いではないはずなのに・・。その理由は、いくら考えてもわからなかった。
 ただ、彼の決意は、もう二度とレミーのような犠牲者を出さないためであるにもかかわらず、それを考えると、何故か無関係なはずの父の冷たい表情が、何度となくアシュランの脳裏に浮かぶのだった。
アシュラン:「・・くそっ!!」
 アシュランは、思わず頭を掻きむしった。頭が沸騰状態なのかもしれない。シミュレーションの結果も、ここ数回は大した向上も見られない。そういえば、今日は徹夜していたことに、アシュランは正午を回った今始めて気が付いた。
アシュラン:「ニコルが、あまり一人で根を詰めてもいい結果は出ない、って言ってたっけな。確かに、もうそろそろ、俺の考えも行き詰ってきたってところか・・・・」
 しかし、誰かに相談するにしても、今日はおそらく、同僚たちのほとんどが出払っているだろう。
 そのとき、アシュランは、隣の部屋から大音量の音楽が微かに洩れているのに気が付いた。そしてその部屋は、イザークの部屋だった。どうやら、彼はまだ自室にいるらしい。
しかし先日、アシュランが壁を殴ったことにああも腹を立てていたのに、その彼自身が、隣の部屋まで響くようなボリュームで音楽を聴いているとは・・・。おそらく、あの時にアシュランに対して怒ったことも、忘れているに違いない。まあ、そんなところが、彼らしいといえば彼らしいのだが・・・。
 何はともあれ、好都合だった。日頃はあまり仲がいいとは言い難い相手だが、彼は文句無く優秀な兵士だ。上手くいけば、何か良いアイディアを出してくれるに違いなかった。
 アシュランは、早速プリントアウトされたシミュレーション結果をまとめると、イザークの部屋に向かった。

アシュラン:「おい、イザーク、イザーク!・・・おかしいな、留守か?」
 だとしたら、大ボリュームの音楽はかけっ放しだ。周りの部屋にとっては、いい迷惑だろう。
 そのとき、アシュランは、イザークの部屋の鍵が開いていることに気が付いた。
アシュラン:「なんだ、いるのか・・・。おい、イザーク、入るぞ」
 アシュランはそう一言断わって(イザークからの返事は無かったが)、イザークの部屋の扉を開けた。途端に大音量の音楽が、アシュランを襲った。
アシュラン:「うわ、おい、イザーク!」
 そう呼びかけながら、アシュランは、この音楽が、実は映画のBGMであることに気付く。そして、当のイザークは律儀に正座しながら、視線を部屋のスクリーンに釘付けにしていた。
 スクリーンには、アシュランも見覚えのある映像が展開されていた。

 白いMSが、次々とテロリストのシュミクラム(MSではなく、旧式のものだ)を撃破していく。
 白いMSの動きは、正に“凄まじい”の一言に尽きた。軍のトップパイロットであるアシュランの目から見ても現実離れしている。何しろ、まるで背後の敵が見えているのではないかというような正確な一射のもとに、死角から迫り来るシュミクラムを撃破しているのだから。
 そしてこのMSは、このままたった一人でテロリストのシュミクラム十二機を、なんと三分間で全滅させるのだ。そして、仲間の兵士が、彼の戦いぶりを見てこう呟くのだ。
『同じ人間とは思えない・・・・。』と。
 そのMSは、今や文明と一切隔絶された生活を送っていない限り、世界中の誰でも知っているものだ。トリコロールのボディ、白い四肢。頭部には二本の角を生やした、まるで古代の魔神のような姿・・・。
 MSの名は『ガンダム』。この映画に記されている戦争で活躍、その機体自体の優秀性からも、現在アシュランたちも使っている『ガンダムタイプ』のベースとなっただけではなく、以後全てのMSに影響を与えた、伝説の機体だ。
 そして、それを操るパイロットは、これまた誰もが知る人物、テロリストたちとの戦いで大きな功績を上げた軍人、八年前に原因不明の事故で家族と共に若すぎる死を遂げた伝説の英雄、安室 嶺(あむろ れい)だ。

アシュラン:「安室嶺の、ドキュメンタリー映画(ホロ)か・・・」
 すぐ後ろで呟かれて、イザークもようやくアシュランの存在に気が付いた。
アシュラン:「懐かしいな。俺も、子供の頃に母と見た・・・」
イザーク:「な、なんでキサマがここにいる!?って言うか、入るなら声ぐらいかけろ!!!」
 イザークは、何故か思い切り慌てていた。
アシュラン:「声ならかけたよ。返事が無かったんだ。それより、イザークは安室嶺の、ファンなのか?」
 イザークの部屋に入ったのは、考えてみればこれが始めてだが、部屋の壁や机には、安室嶺関連のポスターやステッカーがいくらか見える。
 そして、その質問をされた途端、イザークの顔が、蒸気でも噴き上げかねないくらいに赤面した。
イザーク:「な、そ、そんなこと、キサマに関係ないだろう!!!!!」
 イザークは乱暴に画面のスイッチを切った。映画はこれから丁度、クライマックスである、テロリストのエースパイロット『赤い彗星』との一騎打ちのシーンだった。
 なぜそこまで慌てるのか?安室嶺は、今でも老若男女問わず人気があり、若い男性の中には、彼を尊敬する者も珍しくないというのに。
アシュラン:「もしかして・・・。イザーク、お前、安室嶺に憧れてZAFTに入ったのか?」
 ライバル視しているアシュランに、それを知られることは屈辱だとでも考えているのだろうか?
 すると、案の定、アシュランは質問を発した次の瞬間、イザークにもの凄い形相で胸倉を掴まれた。
イザーク:「うるさい、勝手な想像をするんじゃない!!!!」
 何ともわかりやすい反応だ。それにしても、もう毎度のことなので気にもならないが、このくらいのことで一応上官を、さらにいうと仲間を締め上げるのは、どうかと思うのだが。
アシュラン:「と、とりあえず、手を離してくれよ。その、変なこときいて悪かった」
 アシュランが一応素直に謝ると、今回はさすがに大人気ないと思ったのか、比較的おとなしくイザークは手を離した。
イザーク:「フ、フン!!・・・・ところで、何の用だ」
 ようやく、本題に入れそうである。
アシュラン:「次に飛刀と戦うことになったときのための戦闘シミュレーションなんだが、どうしてもこれ以上いい結果が出せなくてさ・・・」
イザーク:「なるほど。それで考えが行き詰って、この俺に相談しに来たというわけか」
 イザークは、まるでアシュランの無能さをあざ笑うような表情でアシュランを一瞥した(おそらく『まるで』ではなかったのだろうが)後、結果が印刷された用紙にざっと目を通した。
 イザークは暫くそのまま用紙を眺めていたが、見終わると、呆れた表情で言った。
イザーク:「キサマ、この休日に、どこに行くでも何をするでもなく、そんな下らんことを考えていたのか?」
アシュラン:「な・・・」
 次の戦いでは誰も死なせたくない、という一心で、徹夜までして考えたものを『下らんこと』呼ばわりされて、さすがのアシュランも、この時ばかりはカチンときた。
 しかし反論の言葉を言いかけて、イザークと目が合い、その言葉が、喉元で消え失せた。
イザークは、真っ直ぐな瞳でアシュランを睨みつけていたのだ。
イザーク:「こんな作戦では、部下を死なせるのは当たり前だろう。毎日テンパッて、徹夜して、その上休日も休まず部屋に引篭もっているような隊長の考える作戦ではな!!」
 アシュランは、返す言葉も無かった。
アシュラン:「それなら・・・・」
イザーク:「何?」
 イザークの言うことは、正しい。それがわかっているはずなのに、何故かアシュランは、無性に腹が立ってしかたがなかった。
アシュラン:「それなら・・・俺は、一体どうすればいいんだ!!!!!」
 気が付いたら、叫んでいた。逆ギレの形で、腹の中に溜まっていたものを全てぶつけるかのように、しかも全く落ち度の無いイザークに向かって。
 そしてすぐに、アシュランは我に還った。我に還ってみると、とても恥ずかしいことをしてしまったという思いが襲ってきた。
アシュラン:「・・イザーク、済まない・・・・」
 必ず、何か嫌味を言われると思った。今まで、自分に事ある毎に突っかかってきた彼なのだ。こんな絶好の機会に、何も言わないはずは無いではないか。
 しかし、イザークは、むしろ先程よりも穏やかな表情、そして落ち着いた口調で言った。
イザーク:「怒鳴るな、アホが。とにかく、今日くらいはゆっくり寝ろ。肝心な作戦のときに、隊長が目にクマなんぞつくっててみろ。ただでさえ無能なキサマを補助するのが、さらに大変になるだろうが」
 言われて、部屋にある鏡を見てみる。その時始めて、アシュランは自分の目の下に隈ができていることに気が付いた。
イザーク:「とにかく、これは預かっておく。暇なときにでも、見ておいてやる(そう言いながら、イザークは用紙を、乱暴に机の上に叩きつけるように置いた)。ほら、俺の言うことがわかったなら、さっさと部屋に帰って寝ろ」
 言い終わると同時に、イザークは、何も言えないでいるアシュランを、部屋から強引に閉め出した。


 イザークに部屋から閉め出された瞬間、アシュランを抗いがたい眠気が襲った。
 そしてそのままアシュランはふらふらと自室に戻ると、吸い込まれるようにしてベッドに倒れてしまった。おそらく今までの疲れが、指摘された瞬間、一気に噴き出たのだろう。
(それとも、実は今も、夢の中なのではないか・・・・)
 そんなことを、アシュランは考えた。大体、もしこれが現実なら、イザークがあんなに優しいわけがないではないか。いつも自分に対し憎しみにも似たライバル心を燃やし、上官である自分を殺気を込めて締め上げることすらある彼が・・・・。
 しかし、アシュランの頭は、どこかでこれが現実だと認識していた。というより、現実と夢が混ざり合ったような感覚、と言う方が正しいだろうか。
 まどろみの中で、アシュランは呟いた。
アシュラン:「それにしても、そうか、あいつ、安室嶺に憧れて、軍に入ったのか・・・・」
 おそらく、彼は子供の頃から安室嶺に、英雄に憧れていたのだろう。そして、その夢を実現させるため、ZAFTに入った。
 イザークは努力家だ。だから、夢を叶えるために一生懸命努力し、エリートパイロットの証『赤服』を手に入れた。そのときの彼の気持ちは、彼が今、自分が赤服であることをどれほど誇りにしているかを見てもわかる。
 しかし、そんな彼にも、軍の士官学校時代から、常に目の上のたんこぶがいた。そしてそれは、なんと彼の初めての所属先の隊長だった。しかも、そいつは彼と同い年の若造だ。イザークにとってみれば、アシュランの存在など、愉快なものであるはずがないのだ。英雄になりたいと思っているわけではないアシュランからすれば、いい迷惑だが・・・。
アシュラン:「安室嶺か・・・・・・」
 アシュランは安室嶺に対して、実はあまりいい印象を持っていない。
 それは、アシュランが別に安室嶺が嫌いだからというわけではない。アシュランも、他の若者と同じく、幼少のころは安室嶺に憧れていたクチだ。
 しかし、安室嶺と同じ軍に努めていた父に安室嶺の話をせがむと、決まって父は、普段から不機嫌そうな顔を、さらに不機嫌にするのだった。
 そして、決まって、苦虫を噛み潰したような表情で、こう言うのだ。
パトリック:「そうだな、確かに、安室嶺は偉大な英雄だ。だから、アシュラン、お前は誇りあるザラ家の長男として、彼を超える男になれ」
 父のその言葉には、何故か聞いているこちらを不快にさせるような響きがあった。だから、その父の言葉を聞きたくなくて、アシュランは、父の前では絶対に安室嶺の話はしないように心がけるようになっていった。そして、安室嶺のことを考える度、いつしかあの父の嫌な表情も思い出すようになっていったのだ。
 母がある事件で死んで、身寄りが父しかいなくなってからは、より一層、アシュランは安室嶺には興味を失っていった。
アシュラン:「それに、しても・・」
 アシュランは眠りに落ちる寸前、先程見たホロを思い出し、あることに思い至った。
アシュラン:「あの、安室嶺の動き。最近、どこか別の場所で見たことがなかったか・・・?」
 しかし、その答えを見つける前に、アシュランの意識は、深い眠りへと沈んでいった・・・。


同時刻、ZAFT基地内、会議室
 現在ここでは、国防委員長であるパトリック・ザラを含めたZAFT首脳陣と、橘玲佳社長以下V・S・Sの重役たちによる、飛刀対策の合同会議が開かれていた。
 現在の議題は、先日の飛刀基地襲撃作戦の反省だった。
パトリック:「ギル大隊長殿、この報告は、本当なのかね」
 パトリックが報告書を眺めながら、向かい側に座っているギル・ラザードを睨みつけた。
パトリック:「キミは、総指揮官としての役割を半ば放棄し、独断によって単独で戦場に向かったと、この報告書からはそう読めるが・・・」
 しかし、一方のギルは、そんなパトリックの威圧にも全く動じていない。それどころか、マスクによって表情は隠されていてわからないが、唯一むき出しの口の部分では、薄い笑みを浮かべていた。
ギル:「“ザラ委員長”、そう報告書には書かれておいでで?」
パトリック:「この報告書からは、そうとしか取れん!!」
ギル:「いえ、私は、“凶悪なテロリストに苦戦する部下たちを助けに”出陣したのですよ、ザラ委員長」
パトリック:「しかし、記録には、『テロリストとは無関係と見られるハッカーと戦闘、機体を破損』とあるではないか!これは、どういうことだ!!?」
 パトリックがそう言った瞬間、一瞬ギルの表情が僅かに歪んだ。しかし、ギルはすぐにもとの薄笑いの表情に戻る。
ギル:「いえ、構造体内で彼とは“偶然に遭遇”、彼は以前何度か兵士たちに対し攻撃を加えているので、混戦となっていたあの状況で、我が軍に対しての脅威となっては、と、思いましてね・・・・」
パトリック:「それでは何故、『金色の流星(ゴールデン・ミーティア)』のお前ともあろうものが、その単なるハッカーごときに逃げられた!?そして、何故そのたかがハッカーに対し、V・S・Sのαユニットに追跡要請なんぞ出した!!?」
 その言葉を聞き、ギルは思わず、橘玲佳を睨みつけた。おそらくこのことは、玲佳がパトリックの耳に入れたのだろう。誰にも言うなと一応口止めはしておいたはずなのだが。
 当の玲佳は、そ知らぬ顔をしている。おそらく、失敗したペナルティを発案者の自分に押し付けるつもりだろう。まあ、いい。
ギル:「いえ、彼は何か『常人を越えた能力』を持っているようです。例えば、あのテロ組織『ZEON』と戦った・・・・」
パトリック:「もういい!!!!」
 パトリックが突然声を荒げ、議場は一瞬静まり返った。
 パトリックが咳払いをするのを見て、ギルは、自分の言いたかったことが彼に伝わったと確信した。
 パトリックが、苦虫を噛み潰したような表情になるのを見て、ギルは再び、薄笑いを浮かべた。それは、先程の相手を侮蔑するようなものに加え、どこか憎悪のような表情も見て取れるものだった。
 結局、この議題はそこまでだった。
 そして、議事進行は、パトリックから橘玲佳に移った。
玲佳:「それでは、皆さん。今回の会議のもう一つの議題に移ります」
 すると、出席者の中の一人が席を立ち、何故か戸締りを確認しに行った。
 彼は戸締りを確かめると、安心したような表情で戻ってきた。
玲佳:「では、始めます。『プロジェクト・リバイアサン』の中間報告なのですが・・・」
 会議の議事の進行を記録する書記が、端末の記録用のファイルを変更した。
 そのファイルのタイトルには、『シークレットレベルⅣ・関係者以外閲覧禁止』と書かれていた。


イザーク:「ちっ、まったくあのバカ、なんであんな奴が隊長なんてやってるんだか・・・・」
 妙にそわそわと落ち着かない気分を抱えながら、イザークは付近の街へと繰り出していた。特に何かを買うつもりはなかったが、部屋で安室嶺のホロを見る気にも、どうしてもなれなかった。
イザーク:「ま、あいつがバカなのは今に始まったことじゃないが・・。あ、あれは・・・」
 目の前に見知った姿を見つけ、イザークの胸の高鳴りはいやがおうにも激しくなる。
 マリアだ。清楚なロングスカートを穿いた姿が、お嬢様らしい彼女によく似合っている。
(な、なんで俺がマリアに声をかけるのに、こんなに緊張しなきゃならないんだ?)
 ドキドキと音響する鼓動を悟られないように気を付けながら、イザークは努めて平静に、マリアに近づいていった。
イザーク:「おい、マリ・・・」
 そのときイザークは、マリアの近くに小さな人影がいくつかあることに気が付いた。
 子供たちだ。マリアは子供たちと、楽しげに話している。彼女が子供好きとは知っていたが、彼女の活き活きとした笑顔を見ると、それが本当なのだと感じさせられる。
マリア:「そう、君たち、小学五年生なんだね」
子供たち:「うん!」
マリア:「学校でも、ちゃんと仲良くしてる?」
一人の男の子:「もちろん!だって、俺たち、そろそろハッカーチーム組もうと思ってんだぜ!」
マリア:「え!?」
 そのとき、マリアの顔色が、サッと変わる。それを見て取った子供の一人が、発言した子供を「バカ、余計なこと言うなよ」と小突いた。
 しかし、マリアの顔は、異常なほど青白くなり、そして体には、細かな震えまで見え始めた。
イザーク:「お、おい、マリア、どうした!?」
 慌てて駆け寄ったイザークを見て、子供たちが再び騒がしくなる。
一人の男の子:「うわ、なんだかコワそうなにいちゃんが来たぞ!」
女の子:「顔に大っな傷があって、なんだかヤクザみたーい」
イザーク:「な、何だと、このクソガキ!!!」
子供たち:「うわー、ひとごろしのにいちゃんが怒ったーー!!」
 子供たちは、すっかりクモの子を散らすみたいに逃げていってしまった。
イザーク:「誰が人殺しだ、誰が!!!・・・・ん」
 見ると、マリアが、逃げる子供たちのうちの一人を、慌ててつかまえた。
マリア:「ちょっと待って!!ねえ、お姉さんの話、聞いてくれる?」
男の子:「う、うん・・・・」
 マリアの真剣な様子に、子供は小さく頷いた。
マリア:「あのね、みんなでハッカーやるって、本当?」
男の子:「う、うん・・・。お姉さん、もしかして警察?」
マリア:「違うわ。でも、似たようなものかな」
 すると、男の子が逃げ腰になった。
マリア:「あ、大丈夫。お姉さん、君たちを逮捕しようとか思ってないから」
 そう言って、マリアは子供の肩に優しく手を置き、子供と同じ目線に屈んだ。
マリア:「でも、これだけはきいて欲しいの。・・・お姉さん、今までに色んなハッカーを見てきたわ。単にお金儲けが目的で悪いことを繰り返す人たちもいれば、立派な目的を持ってハッカーになった人たちもいた・・・」
男の子:「うん、俺、ハッカーになって、悪いせいじかやだいきぎょうの連中を、やっつけるんだ!!!」
マリア:「そう、それはとても偉いね。でもね・・」
 マリアは、そっと目を伏せた。マリアの周りには、逃げ遅れた仲間を心配して、先程逃げ出した子供が全員戻ってきて、マリアの話に耳を傾けていた。
マリア:「でもね、ハッカーは、とっても危険なお仕事よ。お姉さんが知ってるハッカーの中でも・・・・死んでしまった人は、たくさんいるの・・・・」
 すると、別の男の子が、怒るように言った。
男の子:「子供だからって、甘く見んなよ! 俺たち、シュミクラムでなら、大人にだって負けないんだからな!!」
 マリアは、その子の頭に手を伸ばし、優しく撫でる。
マリア:「うん、わかるわ・・・。でもね、どんなに強い大人でも、死んでしまうハッカーはたくさんいるわ。それに、君たちが危ない目に遭ったら、お父さんは、お母さんは、それに、お友達の君たちは、どう思うの?・・・死んでしまったらとても悲しいし、もう取り返しはつかないのよ・・・・」
 マリアの目から、一筋の涙がこぼれた。そして、それを見た子供たちの間にも、動揺が走る。
子供たち:「・・・・」
マリア:「君たちは、とっても強くて正しい子たちね。だから、お姉さんの言うこと、わかるでしょ。お父さんやお母さんを、お友達を悲しませないで。そして、もし大人になっても、その気持ちでハッカーをやりたいんだったら、みんなで仲良くやりなさい。そのときは、きっとお父さんもお母さんも、君たちのこと褒めてくれるわ」
 暫くの沈黙の後、リーダーらしい男の子が言った。
男の子:「・・・わかったよ。ま、女に泣かれちゃ、オトコがすたるってモンだからな」
マリア:「ありがとう、わかってくれたのね!うれしいわ」
 マリアは、その子に抱きついた。マリアの暖かいにおいに包まれ、ちょっと生意気なその男の子は、少し顔を赤らめた。
 すると、すかさず、女の子がマリアに質問する。
女の子:「ねー、そこのおにいちゃん、もしかして、おねえちゃんのカレシ?」
イザーク:「な、な、な、このガキ、なに言ってるんだ!!!」
 イザークは、脳溢血を起こしてしまうんではないかと思うくらい、真っ赤になった。
マリア:「違うわ。でも、とっても大切なお友達、仲間よ」
女の子:「やっぱりねー。こーんなおっかない妖怪キズ男じゃ、おねえちゃんと釣合わないよねー」
イザーク:「誰が妖怪だ、だれが!!!!」
女の子:「うわー、怪人キズキズ男が、怒ったー!」
マリア:「こら、イザーク君、子供に本気で怒鳴らないの。それから、君も。イザーク君は、こう見えても、とても優しいのよ」
子供たち:「おにいちゃん、ひゅーひゅー」
イザーク:「くっ、クソガキめ・・・」
マリア:「ふふ。どっちが子供だかわからないわね」
 子供たちと楽しそうに(?)じゃれあうイザークの姿を見て、マリアも心底楽しそうに微笑んだ。そこに、先程の青白くなって震えていた彼女の面影は無かった。
 こうして、穏やかな休日の一時は過ぎていった。


 透は電子の世界の草原に寝そべりながら、実際には存在しない雲を見上げていた。すぐそばでは、月菜が綾取りを憐に教えている。
 ここは、とても平和だ。つい数日前、体験した戦場が、嘘のように感じられるほど・・・。
 しかし、あれは嘘ではない。嘘であって欲しくもない。何故なら、透は遂に、優哉の仇に繋がる手掛かりを得ることができたのだから。
 飛刀の基地構造体内で闘ったテロリスト、ゲンハ・ヴァンガード。
 彼は、あの日、優哉の仇の可変型MSと闘っていたシュミクラムのパイロットだった。憎むべき仇の敵も透にとっては倒さなくてはいけない相手である、というのは皮肉だが、何はともあれ、遂に直接仇の正体に結びつく情報が手に入ったのだ。もうすぐ、優哉の仇が討てる。
透:「・・・・なあ、月菜、憐」
月菜:「ん?」
憐:「なあに、お兄ちゃん?」
 透は、草のベッドから身を起こし、二人を見つめた。
透:「俺、もう一度軍のデータベースにハックを仕掛けてみようと思うんだ」
 その瞬間、チャットルームの平和な雰囲気が、サッと吹き飛んだ。
月菜:「・・・透、それ、本気?」
透:「ああ。月菜も見ただろう、この前俺が飛刀の基地で闘ったシュミクラム。あいつ、ゲンハとあの日一騎打ちしていたシュミクラムを探せば、優哉の仇が誰だかわかるんだ。おそらくあの可変型は特殊任務用だから、検索すべき情報さえわかっていれば、レベルⅢ位なら簡単に引っかかると思う」
月菜:「透、レベルⅢにハックするって事、どういうことだかわかってる!?」
透:「ああ」
 透はそう言って、月菜の横で状況を把握しかねている憐に視線を移した。
透:「憐のスキルなら、何の危険もなくレベルⅢにハックできる。それに、あの時は軍基地から仕掛けてたから見つかったが、憐がいるならウチから仕掛けた方が、むしろ安全だ」
 月菜の表情が、見る見る険しくなる。
月菜:「・・・透、ちょっと、あんた自分の言ってること、わかってんの!? 今透の言ってることって、憐ちゃんをすっごい危険に巻き込むってことなんだよ!!」
透:「わかってるさ。憐なら大丈夫だ。この前も、一人でレベルⅢに侵入して、一人で脱出した。その前だって、軍の包囲網から俺たちを助け出したり、この間だってV・S・Sのシュミクラムをかっぱらったりしている。どれも、自力でだ。だから・・・」
月菜:「だからって、そんなことっ!」
 そのとき、身をすくめて二人の言い合いを見ているだけだった憐が、か細い声を上げた。
憐:「お、お兄ちゃん・・」
透:「大丈夫だ、憐は何も心配いらない。・・・でだな、月菜・・・」
憐:「お兄ちゃん、きいて!」
 憐はか細く、しかししっかりとした意思を込めて叫んだ。
透:「憐?」
 憐は、改めて透に向き直った。その瞳からは、憐の考えを読むことはできない。
 そして、憐が一語一語を確かめるように、ゆっくりと言った
憐:「お兄ちゃん。憐は、もうあそこへは行きたくない」
透:「憐・・・。そうだよな、ごめん、いくらなんでも、あそこは怖いか・・・」
 透は、自分の提案の愚かさに気付いてうなだれたが、憐はゆっくりと首を横に振った。
憐:「ううん、べつに、こわいとかじゃなくて。でも、あれって、いけないことなんだよね?」
透:「え?」
憐:「憐、見てたんだ。あの後、お兄ちゃんがあっちに戻った後、お兄ちゃん、へいたいさんのおにいさんにおこられてたよね? あれって、しちゃダメなことなんだよね?」
透:「憐・・・」
憐:「お兄ちゃん、憐がむかしイタズラすると、よく、メってしかってたよね。だから、お兄ちゃん、いけないことしちゃ・・・」
 そこで、憐は慌てて口を押さえた。おそらく、また憐の本当のお兄さんの記憶と、透のことを混同してしまったのだろう。
憐:「・・・・と、とにかくね、えっとね・・」
透:「・・・わかったよ、憐。」
 言葉足らずで、口調も幼かったが、憐の言葉には確かな説得力があった。そして、あの大人しい憐がここまで自分の意見をはっきりと述べるのは、憐が透を本当の兄と同じくらい大切に思っているからだということが、透にはよくわかった。
 そして、あの時の兵士、アシュランの言葉も蘇る。

アシュラン:『ここは軍の機密だけでなく、個人のプライバシーまで入っているんですから。』

 そうだ。確かに、あれは『いけないこと』なのだ。いくら仇を討つためとはいえ、やってはいけないこともある。
 そう考えて、透はふと、自分の中で違和感を覚えた。
(『やってはいけないこともある』だって!?俺は、優哉の、本当にいい奴だった最高の親友の仇を討つためなら、どんなことでもするって誓ったはずじゃなかったのか!?手段を選ぶなんて、優哉への裏切りじゃないのか!!?)
 もし、優哉が死んだ直後だったら、この考えをあっさり肯定していただろう。
 しかし、今は何故か、透の中の何かの、それは間違っている、という声を振り切ることができなかった。
 何も言わない透に、今度は、憐の話の間複雑な表情で口を閉ざしていた月菜が、ぽつりぽつりと語り出した。
月菜:「・・・ねえ、透。そこまでして優哉の仇を討つ必要って、本当にあるの?」
透:「何!!!?」
 月菜は、突然何を言い出すのだろう。月菜も、優哉が大好きじゃなかったのか!?
 優哉は死んだ。殺されたのだ。あんなにいい奴だったのに、まるで虫けらのように貫かれて。
 無念だっただろう。やりたいことも、まだあっただろう。事実、透と商売がしたいと言っていた。あの夢も、永遠に叶わぬものになってしまったのだ。優哉をそんな目に遭わせた相手が、月菜は憎くないのだろうか!
 まるでそんな透の考えを読んでいるかのように、月菜は続けた。
月菜:「そりゃ、あたしだって、優哉の死は悲しいよ。殺した相手は、憎いよ。でも、でもね・・・」
透:「・・・。」
月菜:「透、仇の手掛かりって、あの、『狂戦士ゲンハ』だよね?あいつに関わるの、透、よくないよ。だって、あいつ、関わっただけで人生が駄目になるヤツだって噂だよ」
透:「あんなヤツに、負けはしないさ。それに、俺もあいつが個人的に許せないしな」
月菜:「透!・・・アイツだけじゃないよ。テロリストの狂人に、ZAFTの赤服に、ゴールデン・ミーティアに、V・S・Sのαユニット。なんだか仇討ちを始めてから透と関わった相手って、ヤバイのばっかりだよ」
透:「・・・それで、何が言いたいんだ?」
月菜:「透、お願い、もう止めて!!だって、透、もし透が仇討ちの中で死んだら、きっと優哉は悲しむよ・・・」
 月菜の目に、どんどん涙が溜まっていく。
月菜:「優哉だって、透に死んでまで仇を討ってくれ、なんて、望まないはずだよ」
透:「でも・・・・もし優哉が俺の立場だったら、死んでだって仇を討とうとしただろ!?」
月菜:「そうだけど・・・だったら、透、透だったら、優哉に死んでもいいから、自分の仇を討ってほしい?」
透:「・・・・・」
 それは、いやだ。透だって、優哉が自分のために死んで欲しくなんかない。
月菜:「・・・それにね、優哉だけじゃないんだよ。あたしだって、透には絶対死んで欲しくないんだから・・・・」
透:「月菜・・・・」
月菜:「あたし・・透の仇討ちなんて、絶対、絶対ゴメンなんだから・・・・・」
 最後の方は、涙で声が詰まっていた。そしてそのまま、月菜はその場に泣き崩れてしまった。
 透は、そんな月菜に声をかけることさえできずにいた。
 チャットルームは、重苦しい雰囲気に包まれていた。
 その時。
少年:「おーい、だれかいませんかー?」
 突然場違いに間の抜けた声が室内に響き渡り、泣いていた月菜も、慌てて顔を上げた。
少年:「おーい、って、いたいた」
 小さな丘の向こうから、一人の少年が駆けて来た。
 年は十歳前後。Tシャツに短パン、服装も髪型もごく平凡な感じの、ちょっと生意気そうな目つきが特徴的な少年だった。もちろん透たちに見覚えは、無い。
少年:「あ、『ステッペン・ウルフ』の相馬透じゃん!うわー、本物だー」
 自己紹介もせずに、自分のことを新種の珍獣かなんかのようにしげしげと眺める少年に、透はいささか辟易した。
透:「お、おい。お前は誰だ?ってか、どうやってここに入った!?」
 すると、少年は鼻の下をこすりながら言った。
少年:「そんなの簡単だよ。だってここ、セキュリティに小さなだけどバグがあったぜ。ま、おれのテクニックがスゲーからってのもあるけど」
 最後の方は、めちゃめちゃ自慢げだった。
透:「そんなバカな!ここのセキュリティは、万全を喫して・・・」
少年:「でもさ、実際にあったんだぜ。透さんらしくねーよな、バグを塞ぎ忘れるなんて」
 少年は、いつの間にか自分のことを馴れ馴れしく『透さん』と呼んでいる。
 それはともかく、おかしい。この前確認したときは、確かにバグは無かった。それに、このチャットルームは完成以来、目立った侵入は受けて・・・・・。
透:「あ!!」
 透は、ようやく原因に思い当たった。
 おそらく原因は、憐だ。憐のあの謎の『壁抜け』による度重なるログインによって、セキュリティにほころびが生じていたのだろう。そういえば、憐はここにログインするための正規のIDを持っていない。いつの間にかすっかりここに定着していたので作るの忘れていたが、つまりここは、憐が利用する度に“侵入を受けていた”ことになるのだ。
透:「・・・・はあ、まさか、この俺ともあろうものが、そんなうっかりしたミスで、ただのガキに侵入を許すとはな・・・」
少年:「お、おれはガキじゃねえやい!ハッカーだ!!」
 少年は、まんまガキの反応で返した。どうやらこの少年、ハッカーに憧れているクチらしいが・・・。
 そして、少年は透に向かってつかつかと歩いてきたかと思うと、透の目を見て、ニッと笑った。
少年:「おれ、星野(ほしの) ミツル。腕がいいことはわかっただろ?あのさ、おれ、『ステッペン・ウルフ』の大ファンなんだ。なんか今、解散するかもって噂聞いてさ。どう、おれを仲間に入れてくれないか?」
 返事は、決まっている。
透:「ダメだ」
ミツル:「なんでだよ!!!」
透:「うちはガキはお断りだ」
ミツル:「ガキって言うなよ!!そしたら、あそこにいるおれよりチビな女はなんなんだよ!!?」
 そう言って、ミツルはきょとんとしている憐を指差した。
透:「ああ、憐か。憐はああ見えても本当に凄腕だし、そもそも、憐はチームのメンバーじゃない。色々あって、よくここに遊びに来るだけだ」
ミツル:「おれの腕だって、結構凄いぜ!」
透:「そうでも、お断りだ。うちに帰って、宿題でもやってろ。」
ミツル:「なんだよ、それ!全く、透さんって遅れてるんだな。今じゃ、ネット空間っていう匿名世界の発展のおかげで、年齢なんか関係なくなっているんだぜ。実際、おれの年位でゲーム会社の社長やってるやつだっているしな」
 年齢なんて関係ないと言いつつ、さっきは憐を、年下だと馬鹿にしただろうに。
透:「それはわかってる。でも、社長とハッカーは違うだろ。ハッカーはお子様厳禁だ」
ミツル:「くっっ・・・・・」
 ミツルは、悔しそうにうなだれた。少しキツく言い過ぎたかもしれない。
 しかし、これでいい。さっきは勢いで子供の憐を危険なことに使おうとしてしまったが、あのときはどうかしていた。月菜の話を聞いて、優哉が死んだのは、そもそも透たちが危険な場所に連れ出したせいだというのを思い出した。
 そう、ハッカーは危険だ。命を落とすこともざらなほど。今の透なら、それがわかる。だからこそ、かつての透と似た感じのするこの少年には、透と同じ失敗は、してほしくない。
 そのとき、ミツルがいきなり顔を上げた。
ミツル:「そうかい、それなら、おれの実力を見せてやる!おれの実力がわかれば、仲間にしてくれてもいいだろ!!」
 わかってくれていないみたいだ。透は大きくため息をついた。一方、ミツルは自分のシュミクラムを転送した。
 果たして、そこに現れたのは、『ガンダム』だった。最古のMSの一つであり、現在の全てのMSの原点ともなった、伝説のMSだ。
ミツル:「どうだ、透さん!今のガキってやつは、新しけりゃ何でもカッコイイとか言うけどさ、おれはそんな奴らとは違うぜ!!あ、もちろん、パーツは最新のを使ってるけど、やっぱり、原点が一番だよな!」
 今の流れに逆らおうってやつか。発想もその手段の選択も、単純でガキそのものだ。
ミツル:「さあ、勝負だ、透さん!!透さんだっておれの腕前を見れば、おれを仲間にしたくなるよ、きっと!!」
透:「多分、ならないと思う。だから、こんなことをしても無駄だ。さっさと帰って・・・」
 すると、いきなり横から月菜が割り込んできた。
月菜:「いいわよ!だったら、あたしが相手になる!!!」
透:「は?」
 余計なことをするな、このアホ。
透:「お、おい、月菜、お前一体、何のつもりだ?」
月菜:「透は黙ってて!っていうか、透じゃ埒があかないじゃん。だから、ここはお姉さんが、君に大人の世界の厳しさというものを、よーく教えてあげないとね!」
ミツル:「『お姉さん』っていうより、『オバサン』って感じだけどな。」
 全くもって、その通りだ。
月菜:「な、なんですってー!いいわよ、そこまで言うんなら、あたしの実力、見せてやろうじゃない!!」
 そう言って月菜も、シュミクラム体・アレックスに移行する。
 二機のガンダムタイプのMSは、間合いを取りつつ睨み合った。
透:「はあ、もう、一体何が何やらだな・・・・。憐、離れていろ。模擬戦場フィールドを張るから弾に当たっても死にはしないが、痛いことには変わりないからな」
憐:「う、うん」
 憐が離れたのを見計らい、透はミツルと月菜の対峙する空間に、模擬戦場フィールドを張った。
透:「始めるんなら始めてくれ、まったく!」
 次の瞬間、月菜が背中のビームサーベルを抜いて斬り掛かった。
月菜:「えーい!!」
 しかし、その動きはメチャクチャ、ビームサーベルもただ振り回しているだけにしか見えない。
 一方、ミツルはその動きを、落ち着いてかわす。
月菜:「えい、えーい、当たってー!!」
 月菜はさらに遮二無二斬り掛かるが、冷静にかわし続けるミツルに、そんな乱雑な攻撃が当たるはずはない。そして、月菜が大振りをして、勢いあまってバランスを崩したのを、ミツルは見逃さなかった。ミツルは月菜に急接近して、柔道の内股のような技をかけて転ばせると、月菜が地面に落ちる前にビームサーベルを引き抜き、瞬時に武器を装備したアレックスの右腕と頭(イーゲルシュテルンが装備されている)を斬り飛ばした。
 月菜のものとは対照的に、鮮やかで無駄のない斬撃だった。そして、これで勝負あった。
 月菜のアレックスが、大きな音を立てて仰向けに地面に落ちた。
月菜:「あう!!あいたたたた・・・」
透:「おい、月菜、頼むから、負けないでくれないか・・・・・」
ミツル:「全く、あのオバサン、大したことないな」
 ミツルはシュミクラム体のまま、今度は透に向き直ると、サーベルを構えて言った。
ミツル:「どうだ。おれの実力、わかっただろ!これで、仲間に入れてもらえるよね!」
 確かに、ミツルのシュミクラムの腕前は、中々のものだ。相手の月菜が問題外だったことを除いても、ミツルがかなりの実力者であることは認める。しかし、
透:「却下だ」
ミツル:「なんで!!?だったら、透さん、今度はおれと戦って・・・・」
透:「戦っても駄目だ。どのみち、俺はお前を入れるつもりはない」
ミツル:「うううう・・・」
 そのとき、突然ミツルが、ハッとして顔を上げた。そして、
ミツル:「え、ママ!?・・・・あ、やべ、もう晩飯の時間か!!あ、大丈夫、ネットに接続なんかしてないから!!・・・・ちっ、透さん、今日はもう落ちる(ログアウトする)けど、おれは絶対、透さんに認めてもらうからな!!」
 そう言い捨てて、ミツルはログアウトした。透の、「諦めろ、絶対に無理だ」という言葉は、おそらく聞いていなかっただろう。
透:「・・・ふう。一体、何だったんだろうな」
憐:「さ、さあ。なんだったんだろうね・・・・?」
 一気に脱力する二人の横で、月菜はまだMS体で転んだまま、もがいていた。
月菜:「うう、痛いよぉ・・・。透、助けてぇ、一人じゃ起き上がれないからぁ・・・。」
 月菜は転んだときにコックピットを襲った衝撃で腰を強く打ったらしく、病院で全治二週間の仮想ぎっくり腰と診断された。







第十章『英雄』完
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現在社会人として東京都心の企業に勤めている。出身地は北海道。
一人っ子。故に(?)わがままでせっかちなところがある。趣味はドライブと創作作品鑑賞。ただし基本的に超インドア。
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