Endless world -咬龍の庭-
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創作小説『バルドフォースG』 第十二章
ガシガシ掲載していきます、『バルG』!
・・・とはいえ、もうすぐテストだったりするんで、すいませんがこれからおよそ一週間はちょっと続きを書くのは難しくなります。ご了承ください(ペコリ)。
では、いつもの通り「READ MORE」から本文へ。


バルドフォース エグゼ


バルドフォース エグゼ







バルG第十二章『悲劇』




 テロリストから補給基地のセキュリティを奪い返したザラ隊が任務を終えて現実世界に帰還した、その日の夕方。
 今回の作戦は色々波乱づくみのものだったが、現実に帰って来た今、何よりも心配なことは、サポート用のコンソールチェアの空白だった。
 マリアは、結局作戦中には帰ってこなかった。それどころか、彼女は作戦室を出てすぐにそのまま倒れ、医務室に運ばれたのだった。
イザーク:「くっ・・・・」
 アシュランがマリアの代わりに作戦の報告書をまとめている横で、イザークが落ちつかなげに操作卓(コンソール)を指で叩いている音が聞こえる。
ニコル:「マリアさん、大丈夫でしょうか・・・・」
 アシュランの作業が一段落したのを見計らって、ニコルが心配そうな表情で聞いてきた。まるで彼の表情といったら、マリアが危篤状態の患者であるかのようだ。
アシュラン:「ああ、まあ、何か強いストレスで倒れただけらしい。ここ数日寝てないみたいらしいけど、まあ、ぐっすり眠れば回復するって、医療班の報告にある。心配はないよ」
 そう言うアシュランも、マリアのことが心配でならなかった。
 ここ数日、彼女はろくに睡眠も取れてなかったらしい。その報告が、気になった。
 何が彼女のトラウマを刺激したのか、そして、そのトラウマとは何なのか。隊長である身としては恥ずかしいことだが、アシュランは何も知らなかった。無論、聞くのは、機会を見なければいけないことだが・・・・。
 すると、医療班の隊員の一人が、作戦室にやって来た。
医療班:「マリア・ハウさんの面会、いいですよ。面会時間は夜の・・・・」
イザーク:「わかった!!!」
 医療班の人が言い終わる前に、イザークがすっ飛んで行ってしまった。
ディアッカ:「青春真っ只中、って感じ?」
 ディアッカは、一言茶々を入れるのを忘れない。
 それにしても、ようやくマリアは意識を取り戻したらしい。アシュランは、心底ホッとした。
アシュラン:「そうか。それじゃ、みんなでお見舞いに行くか」
ディアッカ:「イザークが、戻ってきたらな」
 ディアッカに指摘されて、アシュランは自分の無神経に気付き、少し赤くなった。
 そんな様子を見て、医療班の兵士は微笑んでいた。
医療班:「やっぱり、仲のいい小隊ですね。こんな時間まで、しかも作戦室で全員待ってる部隊なんて、なかなか聞きませんよ」
 そうかな、とアシュランは思った。でも、相変わらずニヤついているディアッカと、穏やかに微笑んでいるニコルを見ると、そうかもしれない、とも思えるのだった。


 イザークは、脇目も振らずに医務室へと駆け込んでいった。
イザーク:「マリア!!!」
 イザークは思い切りドアを開け大声で叫んだ。ベッドに寝ている他の患者が、何事かとイザークの方を見た。
マリア:「イザーク君、あんまりここで大声出しちゃ、駄目でしょ」
イザーク:「う・・・・」
 心配してお見舞いに来た患者であるはずのマリアにいきなり注意され、イザークは赤くなった。しかも、周りからは小声でクスクス笑い声が聞こえる。
イザーク:「う・・あ・・。と、とにかくだな、マリア、大丈夫か?」
 すると、マリアの表情が、僅かに曇った。
マリア:「あ、え、ええ。・・・ゴメンなさい。今回は大変な作戦だったのに、私、みんなのサポート行けなくって・・・・」
イザーク:「気にするな。俺たちはサポートがいなくなったくらいでどうにかなるほど、ヤワじゃない」
 すると、今度はマリアが少しふくれた。
マリア:「『サポートがいなくなったくらい』って、イザーク君、それ、ちょっとひどいですよ。私だって、みんなのために、これでも一生懸命頑張ってるんですからね」
イザーク:「う・・い、いや、そういう意味じゃなんいんだがな」
 イザークが狼狽すると、マリアの表情は少し明るいものになった。
マリア:「あ、別に怒ってるわけじゃないよ。わかってます、イザーク君。ありがとう」
 マリアの笑みは、イザークにとっては、本当の聖女マリアのようだ。とにかく、彼女の表情が少し明るさを取り戻して、イザークはホッとした。
イザーク:「・・・ところで、マリア、お前、最近寝てないみたいじゃないか。一体、どうしたんだ?」
 マリアの表情が、また少し暗くなった。イザークにだって、わかっている。これは、マリアの触れられたくない部分に触れることなのだ。しかし、だからといって、聞かないわけにはいかなかった。今回のようなことが続けば、優秀なサポートの不在により部隊の戦力が落ち仲間が危険に晒される、ということもあったが、何よりもマリアにとって、このような状態の継続は、いいことのはずがなかった。
イザーク:「俺だけじゃない、アシュランも、みんなも心配しているんだ。もしかして、先週の休日のことが原因か!?」
マリア:「・・・・・」
イザーク:「頼む、俺に聞かせてくれ。それとも、俺じゃあ、相談相手には不足か!?」
 マリアは暫らく俯いていたが、やがて顔を上げた。
マリア:「・・・わかったわ。ありがとう、イザーク君。でも、ここじゃちょっとね。少し、いいかな?」
 マリアは、イザークが見たことも無い表情をしていた。それは、悲しみをこしとって、何年も醸成しないとならないような表情だった。
イザーク:「・・・・ああ」

 マリアは上着を着ると、担当の医務室の先生に許可をもらい、医務室を出た。そして、マリアがイザークを連れてきたのは、中庭だった。
 爽やかな風が寂しげにそよぐ中で、マリアは草むらに腰掛けた。
マリア:「イザーク君。私が昔、先生を目指してたってことは、聞いてるよね?」
 マリアの話は、そう唐突に始まった。
イザーク:「ああ・・・」
マリア::じゃあ、私がどうしてここに来たか、誰かに聞いたことない?」
 そう。いつも、気にはなっていたのだ。マリアのような女性に、軍は似合わない。いつも優しく、街の子供とも楽しそうに語らうほどの子供好きで、作戦で死んだ兵士のみならず、やむを得ずに殺めてしまった相手に対しても涙を流す。そんな彼女には、こんな所で軍人をやっているよりは、教師になった方が、よっぽど合っている気がする。
イザーク:「・・・いや」
マリア:「そう・・・・」
 そのまま、二人は暫らく、ただ風の中にいた。
マリア:「・・私ね、先生になることが、小さい頃からの夢だったの」
イザーク:「・・・・・」
マリア:「そして、その夢を叶えるために教育大に入って、三年生で、教育実習のためにある都市部の小学校に、教生先生として赴任したの」
 そう話すマリアの表情は、本当に楽しそうだった。まるで、夢の名残を見ているかのように・・・。
マリア:「私は見ての通り、ドジだしそそっかしいから、始めての教壇は失敗ばかりだったけれど、私の担当のクラスは、本当にいい子ばかりで、みんな私に、よく懐いてくれた・・・」
 しかし次の瞬間、マリアの笑顔は、悲しみで崩れた。
マリア:「でも、でも、あの日、ネットへの没入の実習のときだった。その日は担任の先生が、病気でお休みで、私があの子たちの面倒を見ることになっていたの」
イザーク:「・・・・」
マリア:「私、あのときもちょっとしたミスをしたの。本来ならあの子たちよりも先に、先生の立場の私が没入してから安全を確かめることになっていた。だけど、半分以上の男の子たちがはしゃいでて、だから私、思わずあの子たちを先にダイブさせてしまった・・・・」
 ほんの些細なミス。それも、マリアの子供たちへの愛情故の。
マリア:「でも、でも・・・・。そこには、誰が仕掛けたのか、悪性のウィルスが蔓延してて、そして、そして・・・う・うう・・・・」
 もうマリアは、嗚咽で話すどころの状態ではなかった。そして、イザークも、その先は聞かなくてもわかる。
イザーク:「わかった、もういい、もういいんだ・・・」
 泣き崩れるマリアの肩を、イザークは優しく抱き寄せた。マリアは、イザークの胸に顔を埋めて泣き続ける。イザークは、マリアの長く艶やかな髪を、そっと撫でた。
 ネット世界に不慣れな子供たちに襲い掛かるウィルス。それは言うなれば、体育の授業中の校庭を、突然戦闘機で絨毯爆撃するようなものだ。子供たちはひとたまりもなかっただろう。マリアの話からすれば、この事件は未解決のままなのだろう。どうせ、犯人はイカレたハッカーか何かだろうが。多くの子供たちの命を平然と奪うその行為に、イザークは吐き気がしたが、おそらく当人は、子供を殺した実感などないのだろう。そこのところもまた、このネット時代の恐ろしさであるのだ。
 おそらくマリアは、そういう人間を捕まえるため、もうその時の子供たちのような犠牲者を出さないため、夢を捨ててまで軍に入ったのだ。しかし、そんなイカレた人間のために、マリアのような優しい女性が、どうしてここまで苦しまなければならないのか。
イザーク:「マリア、安心しろ。それはお前のせいじゃない」
マリア:「でも、でも・・・。私、パニックに陥るともうどうにもならなくって、あの時も、私がパニックになっている間に、クラスの四分の三の子供たちが・・・・・・」
イザーク:「それでも、お前のせいじゃない。ウィルスをばら撒きやがったクソヤロウのせいだ!お前が気にすることじゃ、ないんだ・・」
マリア:「イ、イザーク君・・・うう、う・・う・・・」
 マリアはそのまま、イザークに寄り掛かって、暫らくの間、泣き続けた。
イザークはただ、マリアのするがままにさせてあげる事しかできなかった・・・。

マリア:「ありがとう、イザーク君。私、もう大丈夫だから・・・・」
 暫らくして、マリアは少し落ち着いたのか、イザークから離れた。彼女の目は、涙の跡で真っ赤になっていた。
イザーク:「ああ・・・・。今回の不調は、あの映像のせいか?」
マリア:「・・・ええ」
 ウィルスにより皆殺しにされた補給基地の職員達。その映像は、彼女に目の前で死んでゆく子供たちを思い起こさせたのだろう。
マリア:「最近、そう、先週の休日に、あの子たちとお話してからかな。なんだか、さっき話したことが、夢に出るようになってしまって・・・・・」
 優しい彼女らしい。それだけに、イザークはより一層堪らなかった。
イザーク:「だから、お前のせいじゃないんだ、もう気にするな!」
 すると、マリアはほんの少しだが、笑顔になった。
マリア:「ありがとう、イザーク君。イザーク君のそういうところ、私、好きだよ」
イザーク:「な・・・・」
マリア:「?どうしたの、イザーク君?顔が真っ赤だけど・・・」
イザーク:「と、とにかく、また何かあったら、俺にでも声をかけろ。できることなら何かしてやるから・・・・」
マリア:「うん」
イザーク:「そ、それじゃあ、もう医務室に戻れ。今日くらいはゆっくり寝て、次の作戦に備えろ」
 そう言うと、マリアはゆっくりと立ち上がり、そして、思い出したように振り返った。
マリア:「イザーク君。今回の作戦で、何か、うちの隊に子供が挑んできたって話だけど・・・・」
 おそらく、あのガンダムに乗ったガキのことだろう。今頃ZAFTの赤服を倒したと思っていい気になっていると思うと、心底腹が立つ。
イザーク:「ああ、あのクソガキか」
 すると、マリアはまた、顔を曇らせた。
マリア:「そう、やっぱり・・・。イザーク君、これは他のみんなにもだけど、お願いがあるの」
 その表情は、いつになく硬かった。
イザーク:「あ、ああ・・・・」
マリア:「その子がどこでシュミクラムを手に入れたかは知らない。でも、シュミクラムを持つってことは、銃を持っているも同じ。だから、誰かに殺されても文句は言えない・・・・」
イザーク:「・・・・・」
マリア:「だから、イザーク君。その子を絶対に、間違った道から救ってあげて!きっとその子、赤服を倒したことで有頂天になって、次にどんな無謀なことをするかわからない。私、もう、子供が死ぬのを見たくないの!!!お願い・・」
 最後は、藁にも縋るような声だった。
イザーク:「わかった。すぐにそのガキの身元を特定して、絶対に二度とナメたマネができないようにしてやるから、心配するな」
マリア:「うん・・・・」


アシュラン:「わかった。すぐに、あの少年の身元の分析を開始しよう」
 イザークからマリアの様子を聞いて、アシュランが発した第一声だった。彼らは見舞いにいく予定を急遽取りやめ、あの少年の足取りを追うことを優先させる決定をしたのだ。
アシュラン:「確かに、あの一件は、彼を止められなかった俺に責任がある。だから、なんとしてでもあの少年の安全を確保しなければ」
ディアッカ:「『俺に責任』じゃなくて、『俺たちに』の間違いだろ、タイチョウさん?」
ニコル:「そうですよ。僕らも全力であの子を探します」
イザーク:「フン、あんなガキはさっさと見つけ出して、少々痛い目にあわせてやらないとな!!」
 そうは言っても、だ。
アシュラン:「しかし、手掛かりが交戦記録の映像だけ、とはな。ログイン地点もしっかり消されている。ハッカーとしては、この少年、相当の腕前だぞ・・・」
 アシュランは、端末の前に腰掛けながら、ため息をついた。
アシュラン:「これでは、全力で探し出したとしても、早くて二、三日はかかるな。それまでに、何もしてくれなければいいんだが・・・・」


同時刻。下町にて。
月菜:「う~、透ぅ~、気持ちいい~。そこもっとおねがーい」
透:「へいへい」
 平和な午後の夕暮れ時。
月菜:「う~、やっぱ、力の強い男の人はいいね~」
透:「・・・・・・」
 只今透は、月菜の専属マッサージ師になっている最中である。因みに、月菜の腰には、左右それぞれ二枚のシップが張られている。
月菜:「やっぱ透のマッサージって、ギックリ腰に効くね~」
透:「・・・ていうか、近くにマッサージの店あるんだから、そこへ行け」
月菜:「あそこ高いじゃん。透は、タダだからいいの」
透:「金取るぞ」
月菜:「何言ってんのよー。いっつも下着洗ってあげてるんだから、文句言わないの」
透:「いつもじゃねえだろ」
月菜:「ほら、手が止まってる」
透:「・・・・・・・」
 透は、仕方なくマッサージを再開した。
透:「しっかし月菜。ギックリ腰にシップ、さらにマッサージとくれば、お前もう完全にオバサンだな」
月菜:「な!!だ、誰がオバっ・・・痛っ!!!」
 文句を言おうとして腰を捻り、月菜は悶絶する羽目になった。
透:「ったく、バカばっかりやってると、あと一週間で治るものが治んなくなるぞ」
月菜:「うう~。まさかあたしが、あんな子供に負けるなんて・・・」
 月菜にとって、あの敗北はそれなりにトラウマらしい。
透:「っていうか、あれならそこら辺のガキ相手でも、負けるときゃ負けるんじゃないか」
月菜:「そんなことないよー」
 因みに、全治二週間のギックリ腰を患った月菜の腰だが、外科的に見れば異常は全く無い。しかし、ネット世界で腰を痛めたことにより、ネットに接続している神経が錯覚し、現実でも腰に痛みを感じるようになったのだ。いわゆる、『仮想ギックリ腰』というヤツだが、これがギックリ腰だとまだいい。仮想の世界で手足が切断されたりなんかすると、その手足が現実でも一生使い物にならなくなったりする。現実を忠実にシミュレートするネット世界は、人類に更なる発展を約束したが、その反面、こういう怖さもついて回ることになるのである。
月菜:「でも、あの子、あれから結構しつこいよね。『仲間に入れろ』ってさ」
透:「ああいうガキは、ほんと困るんだ。」
月菜:「あら。透だって、昔はあんなんだったじゃない」
透:「だからだよ。あいつに俺と同じ思いはさせたくない」
 そこで、月菜も沈黙する。おそらく月菜も、優哉の死を思い出しているのだろう。
月菜:「・・・・そうだね。あの子を、優哉の二の舞にはさせたくないもね・・・」
透:「・・・・・・」
 そのとき、透の端末が、メールの受信を知らせた。
透:「なんだ・・・・・あっ!!あいつ・・・・」
 メールは、ミツルからだった。


その翌日。
ネット空間、とあるフリーのチャットルーム。
透:「それで、ミツル。呼び出しって、何の用だ?」
 目の前には、ミツルがいる。しかも、何故だか、自信満々の面持ちだ。
ミツル:「ねえ、透さん。仲間に入れてよ」
 またそれだ。透はいい加減、頭が痛くなってきた。
透:「ダメだ!!一体、何度言えばわかるんだ!!!」
 しかし、ミツルは全く動じなかった。
ミツル:「『ハッカーはガキの遊びじゃない』でしょ?わかってるよ、そんなこと。でもさ、おれ、ただのガキじゃないぜ」
透:「少しくらいハッキングができたって、お前はただのガキだ」
ミツル:「透さん、『これ』を観たら、考え変わるぜ」
 そう言ってミツルが取り出したのは、一本の、旧時代の記録媒体、ビデオテープ型の電子アイテムだ。おそらく形状からして、何らかの画像が収められているのだろう。
透:「何だ、それ?」
 すると、ミツルは自慢気に鼻を鳴らした。
ミツル:「フフン、聞いておどろけ。なんと、おれ、ZAFTの赤服をやっつけたんだ!!!」
透:「何!!!?」
 そんなバカな!?いや、それより・・・・。
透:「お前、一体、どこでZAFTなんかに挑んだんだ!!?」
ミツル:「ほら。昨日の、テロリストの襲撃のときだよ。逃げられたけど、それまではおれが圧倒してたんだぜ!何か、赤いヤツが隊長だった、四機のガンダムの部隊だった」
 透は、開いた口が塞がらなかった。
ミツルが倒したという部隊は、おそらくアシュランの部隊だろう。ミツルの話といい、ミツルが手に持っているテープといい、おそらくその話は嘘ではあるまい。確かに、ミツルはZAFTの赤服の部隊を退けたのだろう。しかし・・・・。
ミツル:「しっかしさ、あいつら、精鋭部隊とかいっても、てんで大したことねえの。あんなんだったら、何人かかってきても、おれ一人で・・・うわぁ!!!」
 透はカッとなり、気が付いたら、ミツルの胸倉を掴んでいた。
透:「いい加減にしろ!!! お前、何もわかってないな!!!!」
ミツル:「うわ、な、なんだよ、透さん!!!」
透:「お前があいつらをやっつけただと!!?そんなわけあるか!!!」
ミツル:「い、いてーよ!確かにおれは、やっつけたんだよ!!」
透:「ああ、そうだろうさ!けどな、あいつらはな、多分、お前がガキだと知って、手加減したんだ!!そうじゃなきゃ、お前が勝てるわけないだろ!!!」
 おそらく、事実はそんなところだろう。そもそも、ZAFTの任務は、警察の力ではどうしようもないネットの犯罪を、武力鎮圧することにある。そのため、装備は自然と殺傷力重視になる。アシュランたち精鋭部隊ともなれば、なおさらだ。そんな装備を、優しい彼らが、幼い子供に対して使えるわけがない。
ミツル:「な・・・そ、そんなわけあるかい!!!おれは、赤服に勝ったんだ!!!」
 ミツルは喚いた。折角手に入れた自慢を、プライドを砕かれるのは、痛いだろう。だがここは、心を鬼にして言わねばならない。
透:「いい加減、目を覚ませ!!!お前の身の丈は、そんなところなんだよ!!大体、戦場に行って、お前が帰ってこれたのは奇跡なんだ!!もしテロリストに遭遇してみろ!!喧嘩を売った兵隊がアシュランたち以外だったりしてみろ!!お前は今頃、死んでいるんだよ!!!!」
ミツル:「な・・・・・」
 ミツルは呆然と、目を見開いた。
透:「お前、俺たちを調べたなら、知っているだろ!俺の親友は、軍人に殺されたんだ!!ハックの最中に、戦闘に巻き込まれてな!!!お前も、ハッカーになって、そうなりたいのか!!?」
 ミツルの目から、次々と涙が溢れ出てきた。
透:「わかったか・・・・。こんなことは、もうやめろ。俺はお前や、お前の友達や、家族を不幸にはしたくない・・・・・」
ミツル:「うるさい!!!」
 ミツルは、涙を飛ばしながら喚き散らした。
ミツル:「うるさい、うるさい!!!!お前なんか、見損なったよ!!お前なんか、おれの実力を全然知らないんだ!!!おれは、おれは、もうガキじゃないんだーーー!!!!!」
 ミツルはそう言うと、まるで逃げるようにチャットルームから退出、ネット空間からもログアウトしてしまった。
透:「おい、ミツル!!・・・ったく、しょうがねーな」
 まあ、今日のところは、こんなものだろう。確かにあの少年は、透の小さい頃(といっても、十二歳以前位の記憶が無いのだが)に似ている。だから、おそらく今すぐに言い聞かせるのは無理だ。
 でも、これだけ言えば十分だろう。後は、今後も彼のハッカーの仲間入りに対しては、断固とした態度で接するしかない。そうすれば、いつかは彼も大人になり、わかる時が来る。
 いつか、大人になれば・・・・・。


ミツル:「くそう、くそう、透さんの、わからずや・・・」
 悔しかった。誰も、ミツルのことをわかってくれない。
ミツル:「憧れてたのに。尊敬してたのに・・・・」
 始めてミツルがネットに接続したのは、小学校三年生のとき。それから、あるきっかけでハッカーの少年たちと友達になった。そして彼らから色々なことを教えてもらい、シュミクラムもそのとき手に入れたのだ。
 でも、学校の先生は、それを知ると、ミツルを頭ごなしに叱りつけた。あいつらは不良だ、付き合っているとお前もダメなヤツになる、と言って。
 そして、それから暫らくして、ミツルの友達のハッカーたちが警察に捕まった。皆、少年刑務所に送られ、暫らくは出て来られないみたいだった。ミツルには、どうして彼らが捕まったのか、わからなかった。もちろん、今でもだ。きっと、大人が彼らを『不良』と決め付けたのだろう。
 両親は、ミツルがハッカーに憧れていることを知らない。でも、ミツルがネットに接続しているのを見て、母が言った。
母:「ミツル、ネットに接続するのはいいけど、気を付けなきゃダメよ。ネット空間には『ハッカー』っていう悪い人たちの溜まり場になっている場所が、いくつもあるんですからね」
 母さんも父さんも、結局はあの、ハッカーと見れば『不良』と決め付ける、バカな大人たちの一人だった。
 学校の同級生は、ミツルから見れば、はっきり言ってガキだった。ハッカーならば無料で手に入れられるようなゲームを、小使いをはたいて買って、それで喜んでいる。しかも、バカな大人たちに騙されて、ハッカーを不良だと信じているヤツがほとんどだ。
 みんな、みんなバカばっかりだ。だから、ミツルは、ハッカーになりたかった。ハッカーたちと付き合いたかった、ハッカーたちと遊びたかった。
 でも、ミツルもこの年くらいになると、ハッカーの中にも、バカで不良で最低な奴らがいることも、わかってきた。そして、今活躍している凄腕のチームは、意外とそういう奴らが多かった。
 そんな中、『草原の狼(ステッペン・ウルフ)』は違った。華麗で、かっこよくて、それでいて粗雑(クルード)で。本当に楽しそうなチームだった。特に、その中でも一番のシュミクラム使い、相馬透は最高だった。
 だから、仲間に入りたかった。
 いや、今でも入りたい。
ミツル:「でも、どうやったら透さんは認めてくれるんだろう・・・・」
 いや、もう答えはわかっている。ZAFTの赤服くらいを倒したくらいでは、まだ透は、ミツルがガキだという認識を改めてはくれない。
 ならば、もっと強いヤツ、もっと危険なヤツを倒せば、きっと透さんは認めてくれる。
 それならば、うってつけの奴に一人、心当たりがあった。
ミツル:「確か、アイツに連絡をつけるためには・・・と」
 蛇の道は蛇、という諺がある。優れたハッカーならば、ネット世界の裏事情、警察や軍隊が知らないようなことでも、知っている場合があるのだ。
 ミツルは、それらの知識を活かして、ある人物にメールを送った。

『挑戦状
 toゲンハ』


その日の夕方。
 ネット世界は、今でこそ土地使用に関する厳粛な法が存在するが、ネット空間が創られた当初は、人々はこの空間の無限の可能性を無責任な根拠として、思いつくままに様々な構造体を作った。
 この、仮想の大海原の真ん中にある、無数の島々もその一つだ。
 この島々は、本来誰にも邪魔されないための決闘用のスペースとして作られた。ネット上での決闘が違法になり、ある金持ちのレジャー用の別荘地として買い取られたが、数十年の月日が経つうちに、誰からも、買い取った当人からも忘れられた場所だ。
 そこのうちの一つ、切り立った崖に囲まれた起伏の激しいこの島にて、ミツルは、MSで相手を待っていた。
 待つこと数分。MS体で、相手は意外にも、丁度時間通りにやって来た。
ゲンハ:「いよう。テメーか、俺サマを呼び出したのはよぉ」
 回線の画面には、ハッカーの間でも悪名高い狂人の顔が見える。噂で聞くよりも、ずっと凶悪そうだ。しかし、望むところだ。
 そう。ミツルが透に認めてもらうため、次に選んだ相手はゲンハだったのだ!
ミツル:「ああ。おれだ!テロリスト『飛刀』、ナンバーワンのシュミクラム使い、ゲンハ・ヴァンガード!お前と決闘しに来た!!」
 すると、ゲンハは一瞬にしてシラけた表情になる。左右に控えている二機のシュミクラム、おそらく『飛刀三悪』と呼ばれるゲンハの取り巻きだろう彼らも、一様にバカにしたような表情を見せた。
ゲンハ:「おいおい・・・。なんだよ、どんな奴かと思いきや、単なるガキか・・・。とんだ無駄を食っちまったぜ!帰れ帰れ、俺サマはガキをいたぶるシュミゃねーんだよ!!」
オルガ:「ガキは、とっととクソして寝ろ!」
クロト:「うひゃは、コイツ、ガンダムなんか乗ってやんのー!ヒーロー気取りか!?なんつーか、マジでガキ臭せ!!」
 こいつらもか。こいつらも、相手が子供だとわかった瞬間に態度を変える、つまらないバカな連中なのか。だったら・・・。
ミツル:「ガキだかどうか・・・実際、見てみろよ!!!」
 ミツルは、ゲンハに向けてビームライフルを放った。
ゲンハ:「!!」
 ゲンハはそれをかわしたが、まだ顔からは、侮るような表情が消えない。
オルガ:「おいおい、いくらガキっつっても、こりゃやりすぎだぜ!」
クロト:「そうそう。チョーシ乗ってると、あとでどんな目に遭っても知らないよーだ!」
ゲンハ:「おい、ガキ、おにーさんはなー、たたかいゴッコに付き合ってる暇はねーんだよ。そういうやつなら、ダチと一緒にでもやりな!!」
ミツル:「へん、あんたら、おれを馬鹿にしてると、痛い目遭うよ!」
 ミツルは、今度はビームライフルのサブグリップを左手で握り、本気のチャージショットを放った!
ゲンハ:「うおっ!!?マジかよ!!!!?」
 ゲンハは慌ててゲシュマゲィッヒパンツァーでそれを防ぐ。そして、その顔は、瞬時に憤怒の表情に変わった。
ゲンハ:「おいおいおいおい!!今のはマジで死ぬところだったぜ!!!・・・・・へへ、なかなか活きのいいガキじゃねえかよ。いいねぇ」
 そして突然ゲンハは憤怒の表情を一転、嬉しそうに目を輝かせながら舌なめずりをする。
ゲンハ:「そーいう活きのいいガキなら、おにーさん大歓迎しちゃうぜ!!いいぜー、お望み通り、始めようか!!」
 そして、三機のMSは身構え、
ゲンハ:「殺し合いをよぉぉーー!!!!
 一斉に、砲撃を開始した!
ミツル:「へ、ようやくわかったかよ!?」
 ミツルは砲弾を悠々とかわすと、まずは一番鈍重そうなカラミティに向かって、次々とチャージショットを浴びせかけた。
オルガ:「当たるかよ!!」
 カラミティは、鈍重な見かけによらぬ反射神経でそれをかわすが、避けきれずに、左の肩装甲が被弾し、跳ね飛んだ。
ミツル:「どうだ!!」
 しかし、オルガは動じた様子も無く、回線の向こうで不敵に笑っていた。
オルガ:「へえ、単なるガキとは、一味違うみたいだな」
クロト:「まあ、『一味』くらいだけだろうけどね!!」
 レイダーがウェブライダー形態に変形し、火器を撃ちながら、クローで掴もうと猛スピードで突っ込んできた。
ミツル:「へん、それはどうかな!!」
 ミツルはレイダーの火器を巧みにかわすと、レイダーが掴みかかってくるのにタイミングを合わせ、ビームサーベルを振るった。しかし、レイダーは急激に方向転換し、それを間一髪でかわす。
クロト:「うひょ~、あっぶねーなー!!」
 クロトはビーム刃がそばをかすめたというのに、本気でそのスリルを楽しんでいるようだ。
ゲンハ:「いよぉ、楽しそうじゃねぇかよ。俺サマも混ぜろよな!!!」
 ゲンハが、ニーズヘグを構えて突進してきた。
 ミツルは素早く武器をビームライフルに持ち構えて撃つが、ビーム偏向板に全て遮られてしまう。
ミツル:「それなら、これでどうだ!!!」
 ミツルは武器を背中に背負っていたバズーカに替え、そしてゲンハめがけて放った。
ゲンハ:「うおぉ!!?」
 バズーカの巨大な弾頭は、フォビドゥンの頭部めがけて一直線に飛び込み、爆発。仮面のようなリフターが爆風を閉じ込めたこともあり、フォビドゥンの頭が完全に吹き飛んだ。
ミツル:「やった!!!」
 ミツルは、勝負あったと思った。いくらMSは感覚を共有していないとは言え、自分の頭が吹き飛ばされるのが『見える』感触は、想像を絶する恐怖を乗り手に与える。それ故、実際はメインカメラを潰されるだけだが、頭部を潰された機体のパイロットは完全にビビって、もう戦えなくなるものだ。ミツルは、遂に『あの』ゲンハをも倒したのだ!
 しかし、恐怖のために戦闘不能になるかに思われたゲンハは、何と、心底嬉しそうに笑っていた!!
ゲンハ:「うひゃひゃひゃひゃ!!!いいよ、いいじゃねえかよぉ、楽しいぜ、ボーズ!!!!それじゃぁ、おにいさんも、もうちょっと本気になっちゃうぜーー!!!!!」
ミツル:「な・・・・・・」
 ミツルは一瞬、頭が真っ白になった。この男が、ミツルの理解を超えたからだ。
(どうしてこの男は、頭が飛ばされてもあんなに楽しそうなんだ?どうして、全然ビビらないんだ!?)
 ゲンハは、再び大鎌を構えて突進してくる。頭が無く、不吉な仮面をかぶり、死神の鎌を持って大声で笑いながら突進してくるそれは、この上も無く恐ろしい化け物に見えた。
ミツル:「う、うわぁぁー!!
 振り下ろされた大鎌を、ミツルは間一髪でかわしたが、ミツルの足元にあった仮想の大岩が、恐いくらいに奇麗に真っ二つになる。
ミツル:「あ、あ・・・・」
 更に、変形したレイダーに乗ったカラミティが、胸部の複列位相エネルギー砲『スキュラ』を放った。ミツルは辛うじてかわしたが、あまりにも強烈なエネルギーの奔流は、仮想の大地に当たって爆炎を上げ、ミツルを吹き飛ばした。
ミツル:「うぁ!!う、うう・・・・」
 大地には、大きく抉れた爪痕がクッキリと残っていた。もし直撃すれば、間違いなく死ぬだろう。今までの戦いのような模擬フィールドならいざ知らず、実戦場であるここでは・・・。
 そう。ここは模擬戦場ではない。それどころか、ここは殺し合いを前提とした戦場、決闘場であり、ここは離脱も転送も、先天的に封じられているのである。ミツルはその事実を、ことここに至ってようやく実感したのだった。
ミツル:「う・・うう・・。あ、ああ・・・」
 ミツルの中に、今まで感じたことの無かった感情が、ジワジワと生まれてきた。
 それは、『恐怖』だった。


ミツルの母:「おかしいわねぇ・・」
 ミツルの母は、二階への階段を見ながら呟いた。
 ミツルは、学校から帰ってきてからずっと、二階の自室に閉じこもったままだ。ケーキが焼きあがったのでさっきから何度呼びかけておるが、一向に降りて来ない。
ミツルの母:「いつもなら、大好きなケーキができたら、何よりも真っ先に飛んでくるんだけどねぇ。ゲームにでも、夢中になってるのかしら?・・・・ミツルー!」
 しかし、ミツルの部屋からは、返事は無かった。


クロト:「そりゃー、必殺!!!」
 レイダーが変形を解除し、すぐさまミョルニルを叩き付けた。
ミツル:「う、うわーーー!!!」
ガゴォ!!
 巨大な鉄球がシールドに直撃、シールドは見るも無残に歪んでしまった。
オルガ:「うらうらぁー!!!」
 変形解除のときにレイダーから飛び降りたカラミティが、大口径のプラズマバズーカを放った。ミツルは咄嗟に身を庇ってシールドを構えたが、既に激しく傷ついていたシールドは耐え切れずに破壊、消滅した。
ミツル:「あ・・ああ・・・」
 自分の身を守ってくれるモノの消滅に、ミツルはただ呆然とするばかりだった。
 ミツルの頭は、既にパニックだった。恐怖が思考をかき乱し、今自分がどこにいるのか、何をやっているのか、そもそも、どうしてこんなところにいるのかさえ、まともに考えられなくなっていた。
 それなのに、相手は、自分を、確実に殺すような攻撃で、執拗に攻めてくる。ミツルは、彼らに特に恨まれるようなことはしていないのに・・・・。
ゲンハ:「おりゃおりゃあぁ、さっきの殺気はどうしたよぉぉぉぉ!!!」
 ゲンハが、死の大鎌で斬りかかった。ミツルはそれを慌ててビームサーベルで受ける。しかし、あまりの剣圧にミツルは激しく吹っ飛ばされ、ビームサーベルがその手から落ちる。
ゲン:「おいおい、本当にどうしたんだよぉ。すっかり元気なくなっちまってよぉー!でもな、俺サマはもう、火が付いちまったら止まらねぇーんだよぉぉぉ!!!
ミツル:「ひ、ひいぃぃぃ!!!」
 ミツルは地面に倒れたままあとずさりながらバズーカを放つが、簡単にかわされる。反対に、ゲンハはレールガンとフレスベルグを、正確に続けざま放った。電磁力により加速された弾丸によってバズーカの砲身にたちまち大きな穴が二つ空き、更に思わぬ方向から飛来した高出力エネルギーによって、バズーカが完全に破壊、消滅した!
ミツル:「あ、わわ・・・」
 ミツルは、目の前で何が起きたのかさえ、わからなかった。
 ゲンハは、更に追い討ちをかけるべく、飛び掛ってきた。
ミツル:「!!ひいい!!!?」
 ミツルは慌てて身をかわしたが、ニーズへグの巨大な凶刃が頭をかすめ、頭部をわずかばかりだが、こそぎ取られる。
ミツル:「あ・・あ・・・」
 先程、ゲンハに味あわせた『頭を吹き飛ばされる恐怖』を、今度はミツルが味わう番になったのだ。
ミツル:「た、助けて・・・」
ゲンハ:「あん?」
ミツル:「助けてぇー!!」
 恐怖に負けたミツルは、脱兎の如く逃げ出そうとした。しかし。
クロト:「ひゃははは、今更それかよ。ダメだね、逃がさねーよー!!」
 レイダーが変形し、猛スピードで迫った。そして、あっと言う間に追いつくと、その鋭い鉤爪でミツルのガンダムの頭部と左腕を掴み、クロー内部の短射程プラズマ砲で撃ち抜いた!今度こそ自分の頭が目の前で完璧に吹き飛ばされ、ミツルの恐怖のタガが完全に外れた!
オルガ:「おらおらー!!!」
 更に、敵は執拗に自分を狙ってくる。
(助けて、助けて、助けて助けてたすけてたすけてタスケテタスケテタスケテタスケテ・・・・・・助けて!!!!
 ミツルは無我夢中で、MSに標準装備されている軍隊への救難信号のボタンを、何度も何度も何度も押した。


ニコル:「えっと・・・名前は星野ミツル、年齢は十歳、住所は××市の○○町ですね・・・・」
アシュラン:「やっと特定できたか・・・。ありがとう、みんな」
 あれからザラ隊の面々は、不眠不休であの少年の身元の捜索に当たっていた。そして、その苦労の甲斐あってか、なんとわずか一日で、少年の正確な身元を特定するまでに至ったのだった。
ディアッカ:「ふぁ~あ。よく一日で見つけられたよな。まさしく、寝ずの努力ってやつ?」
イザーク:「フン、早速見つけ出して、一発ぶん殴ってやらないと気が済まん!!!」
アシュラン:「イザーク、気持ちはわかるが、それだけはやめろよ・・・」
 何はともあれ、彼を見つけ出し、身柄を保護すれば、とりあえずはこれで一安心だ。
アシュラン:「よし。さっそく、そっちの警察に連絡を取って・・・・」
 そのとき、端末の画面から警報音が鳴った。
※:「緊急出動要請、緊急出動要請。ネット内の△△地区、座標・24,36にて、救難要請を確認、出動が可能な隊は、至急、救助に向かってください。繰り返します・・・」
アシュラン:「緊急救助要請(エマージェンシー)!?一体、何が・・・・」
ニコル:「この場所は、小島郡の決闘スペースですね。だとすると、何かやばい予感が・・」
アシュラン:「そうだな・・。みんな、疲れているところ済まないが、即出動だ!!」
 誰一人として異論を挟む者はいなかった。
全員:「了解(ヤー)!!」

『没入(ダイブ)』

 アシュランたちは、全速力で救難信号の発信地点を目指して飛んだ。
ディアッカ:「しっかしさぁ、こんな俺ら軍も忘れてるような所で、どこの誰が一体何をやってるんだろうねぇ?もしかして、泳ぎの練習でもしてて溺れたとか?」
アシュラン:「だとしても、このままじゃまずい!周囲は海だから、没入可能地点は相当遠くの陸地だし、発信地点は小島郡の中心部だ。どんなに急いでも、あと十分はかかる!!」
イザーク:「ちょっと待てよ!こ、これは!!!!」
 イザークが叫び、それに続いて、アシュランもそれに気が付いた。
アシュラン:「このシュミクラムナンバーは、あの子供!!?」
 そう。救難信号を発しているのはシュミクラムは何と、星野ミツル少年だったのだ!!そして、彼の今までの行動を思い起こせば、彼が今どんな目に遭っているかは明らかだ!!
イザーク:「く・・・・」
 イザークの胸に、つい先日、必死の形相で頼んできたマリアの表情がよみがえった。
 イザークは、デュエルの追加装備『アサルトシュラウド』に装備された全てのバーニアスラスターを全開にした。
アシュラン:「!!待てイザーク、単独での先行は危険だぞ!!!!」
 おそらく、ミツルは危険な何者かに襲われているのだ。それならば、一人だけ勝手に先行しては、その隊員も危険な目に遭ってしまう可能性があるではないか。
 しかし、イザークから返ってきたのは、必死の形相での叫びだった。
イザーク:「危険だと!!?バカか、キサマは!!!あのガキは、俺たちが死んでも、絶対死なせられないだろう!!!!」
アシュラン:「っ――――!!!!」
 そうだ。確かに、あんな幼い子供を、絶対に死なせるわけにはいかない。そして、同じ危険に遭うならば・・・・。
アシュラン:「よし!!!」
 アシュランは、機体をウェブライダーに変形させた。
ニコル:「アシュラン!!?」
アシュラン:「イージスのこの形態なら、ダントツで早く着ける!俺は先に行ってミツル君を助け出す!みんなも、出来るだけ早く追いついてくれ!!!!」
ディアッカ:「確かに、それしかないみたいだな」
ニコル:「仕方・・・ありませんね」
イザーク:「フン・・・・頼んだぞ、アシュラン!」
 そして、仲間たちに返事をする暇もあらばこそ、アシュランは猛スピードで救難信号を目指した。


ミツル:「う、うわぁぁぁーーー!!!!」
 ミツルは必死にビームライフルを撃ちかけるが、フォビドゥンにも、レイダーとそれに乗ったカラミティにも、全く当たらない。
ミツル:「当たれ、当たれ、当たってくれよぉぉぉぉぉーーー!!!」
 ガンダムの装甲には、ゲンハたちの攻撃により、無数の傷が走っていた。しかし、もうミツルには、自分がどれだけ傷ついたのか、敵にどれだけダメージを与えたのかも、全くわかっていたかった。
(こんなはずじゃなかった。何が、一体、何が起こっているんだ!!!?)
 ミツルの思考は、既に現実から逃避を始めていた。
(一体、どうしてこんなことになってしまったんだろう。おれは、ハッカーに憧れていた。おれの母さんも、学校の先生も、クラスのやつらもみんなくだらないやつらばっかりだった。それに、今の世界はネット世界、匿名が当たり前、スキルのあるやつなら、年齢に関係なく成功できるんだ。でも、でも、それじゃあ、今のおれは何なんだ?おれは強い、おれは誰にも負けないはずなんだ。だから、透さんの仲間に入れてもらえるはずななんだ!でも、おれは今、危ない、死にそうなんだ。・・・!?死ぬ?死ぬの?いやだ、死ぬのはいやだ!死ぬのは怖い!怖い、怖い、怖い、怖い、助けて助けて助けて助けて・・・・)
ミツル:「助けて、助けて、助けてぇぇぇぇーーーーー!!!!!!」
オルガ:「おいおい、完全にビビッちゃってるよ、こいつ」
クロト:「ひゃはは、ボクちゃん、お漏らししてまちゅかー?」
 実際、自宅にあるミツルの実体は今、恐怖で失禁していた。
 しかし、ゲンハの答えは無情だった。
ゲンハ:「ひゃひゃひゃひゃ、何いってんだよぉぉー!!俺サマはな、本気で俺サマを殺そうとするような活きのいい奴ぁな、例えガキだろうと差別しねーんだ!何せ、今の世界はネット世界、年齢は関係ねーもんなぁー!!俺サマって、なんて公平、平等なんだぁぁぁーーーー!!ひゃひゃひゃひゃ!!!!!
ミツル:「いやだぁぁぁぁ!!!たすけてぇぇぇぇぇ!!!!」
ゲンハ:「助けて欲しいか?そんなの無理だぁぁ!!!さっきも言ったが、俺サマは一旦殺し合いを始めちまったら、もうどっちかが死ぬまでゃ止まれねーんだよぉぉ!!!!」
ミツル:「ひいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
 そして、ゲンハがニーズへグで斬りかかった。そのとき、
ミツル:「!!!?これは、『我、救難信号を受信せり。直ちに向かう、それまで持ち堪えよ』!?・・・・やった、軍が助けに来たんだ!!!」
 ミツルの心の中に、一滴の希望が湧いた。すると、さっきまでのパニックが、嘘のように静まる。
 ミツルは、ゲンハの斬撃をギリギリまで引き付けると、ゲンハが鎌を振りかぶった瞬間、がら空きになった胴を蹴りつけた。そして、トドメとばかりにカラミティを乗せて真上から一直線に急降下してくるレイダーに向かって、カウンターの形でビームライフルからビームを放った!!ミツルに出来る、おそらく最後の反撃だった。
 しかし、レイダーは間一髪で急旋回、ミツルの渾身のラストシューティングは外れた。
 そして、レイダーから飛び降りたカラミティがスキュラを放ち、ビームライフルがそれを装備している右腕、更には右足ごと溶かされる。
 抵抗する最後の術、そして希望さえ奪われたミツルに、いつの間に撃たれたのか、変曲ビームのフレスベルクが迫る。
 高出力のビームは軌道を変え、ガンダムのコックピット目掛けて、ミツル目掛けて一直線に走り、そして・・
ミツル:「助けて、お母さぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!」
 ミツルを貫いた。


ミツルの母:「!?・・・・へんねぇ、今、ミツルが呼んだように聞こえたんだけど・・・?ミツル、どうしたの、ミツルー?」
 しかし、二階のミツルの部屋からは、返事がない。
ミツルの母:「気のせいかしら?でも、あの子ったら、全然降りてこないじゃない。早くしないと、あつあつのパンケーキが冷めてしまうわ。手作りは、あついうちが一番なのにねぇ。ミツル、いい加減、オヤツにしなさい。ミツルー?・・・しょうがないわね、上がるわよー、ミツル、ミツルー、返事しなさい、ミツ・・・」
 そして、ミツルの母は、部屋の扉を開けた。


アシュラン:「『シグナル・ロスト』!!?」
 これは一体、どういうことなのだろう。
 『シグナル・ロスト』。つまり、救難信号を発信していたシュミクラムを、見失ったということだ。そうなる理由は、二つしかない。
 一つは、シュミクラムが転送による長距離移動、またはネット空間から離脱した場合。しかし、あの小島群は転送も離脱も不可能であり、さっきまでそのエリアのど真ん中にいたミツルのシュミクラムを、この方法で見失うとは考えられない。
 では、可能性は一つだ。シュミクラムの破損、もしくは破壊による、信号の強制的かつ仮想物理的な切断。
 そして、それの意味するところは、たった一つしかなかった・・・・。


 同時刻。
透は、月菜と街まで買い物に出かけていた。
 幼馴染との、心休まる一時。最近色々な事件が起こったが、たまにはこういう穏やかな日常も、悪くはないと思った。だから、街からいつもは電車で帰るところを、今日はのんびりと、二人で歩いて帰っていたのだった。
月菜:「あれ、透、なんだか、人だかりができてるよ?」
 隣町の、こざっぱりとした住宅地を通っているときだった。
 確かに月菜の言う通り、ある一戸建ての家の前に、十数人のやじ馬と思しき人たちが集まっている。
透:「一体なんだ?しかもあれ、救急車や、警察までいるぞ!?」
 誰かが病気か、怪我でもしたのだろうか?いや、それにしては人だかりが大きすぎるし、それにどうして警察までいるのだ?透には、なぜか不吉な予感がした。
 すると、
母:「ミツル、ミツル!!うそ、そんなのウソよぉぉぉ!!!!ミツル、ミツルーーー!!!!」
 中年の女性の、悲鳴にも似た泣き声が聞こえてきた。その声は、なんとも形容しがたいほどに、聞く者の胸を締め付ける。
 その女性は、何か、白い服を着た二人の男性に運ばれている物体に、すがりついていた。
母:「いやぁ、ミツル、いやああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
 その物体は、その二人の男性が持った担架に寝せられ、青い布を被せられていた。
透:「ミツ、ル・・・・・?」
 いや、そんなはずはない。第一、名前が同じだけで、あのミツルと決め付けることは・・・・。
 そのとき、
月::「と、と、透、ああ、あれ・・・・」
 月菜が震える声で指差した先には、人だかりができている家の、表札があった。それには、こう書かれていた。
『星野』
透:「バ、バカな・・・、う、ウソだろ・・・・・?」
 嘘だと信じたかった。
 
 しかし、その願いは、その日の夜のニュース報道で、儚くも打ち砕かれたのだった。





第十二章『悲劇』完
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現在社会人として東京都心の企業に勤めている。出身地は北海道。
一人っ子。故に(?)わがままでせっかちなところがある。趣味はドライブと創作作品鑑賞。ただし基本的に超インドア。
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