Endless world -咬龍の庭-
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創作小説『バルドフォースG』第十四章
昨日の日記にもある通り、もうすぐ前半終了なので、それまではガシガシ掲載していきたいと思います。
では、いつも通り、読みたい方は「READ MORE」で本文へ。


バルドフォース エグゼ


バルドフォース エグゼ









バルG第十四章『狂信者』




アシュランたちが仮想の小島で死闘を演じた、その日の朝。

 透は、下町のアジトでただ何をするでもなく、コンソールに座ってディスプレイを眺めていた。
 何かをする気には到底なれなかった。目を閉じると、今でもあの叫び声がまるでついさっきのことのように思い出され、耳にこびりついて離れないのだ。

ミツルの母:『いやぁ、ミツル、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!』

 子を亡くした母の叫び。透はあの叫びを、おそらく一生忘れることが出来ないだろう。
 結局、透はミツルを死なせてしまった。もっと透がきちんとミツルの行動を諌めていれば、もしくはあんな結果にはならなかったのかも知れない。
 ハッカー仲間の話だと、なんでもミツルは、凶悪なテロリストに挑み、そして返り討ちに遭ったらしい。しかも、ミツルが挑んだテロリストというのは、あのゲンハだと。
 それを聞いて、透は理解した。ミツルは多分、透に自分の力を知らしめたくて、そんな無謀を行ったのだ、と。ハッカー仲間はミツルの死を、同情しながらも結局は『自業自得』と言っていたが、透には、自分が上手くやれなかったせいだと思えてならなかった。
透:「俺はまた、優哉に続いて、誰かを死なせてしまったんだな・・・・・」
 そのとき、扉が開いて月菜がやってきた。
月菜:「透、朝からいないと思ったら、やっぱりここにいたんだ」
 月菜は笑顔だ。しかし、その笑顔も隠しきれぬ悲しみを無理に押し殺してのものであることは明白だった。月菜も、あの事件に少なからぬショックを受けているのだ。
月菜:「透、なんでこんな所でぼーっとしてるの?今没入すれば、チャットルームに憐ちゃんいるかもよ」
 それはわかっている。しかし、透は今、ネット空間そのものに行きたくなかった。それに、もし今憐に会ったとして、鋭いところのある憐は、透の憂いをいち早く察知してしまうだろう。そのとき、憐にどう言えばいいのだ?あの優しい憐に、この前会った子供が死んだことを、殺されたことをどう告げればいいのだ?
 透のそんな気持ちを、月菜も察したようだった。
月菜:「透。やっぱり、あの子のこと考えてたんだ・・・」
透:「ああ・・・・」
月菜:「あれは、透のせいじゃないよ。透が自分を悔やむことなんて、無いんだよ」
 月菜は、自分も辛いのにも関わらず、辛い思いをしている透を慈しむように微笑んだ。それは、まるで弟を慰める姉か、子供を慰める母親のようだった。
 透は、不意に心に抱えていたわだかまりのようなものがゆっくりと溶けていくような感触に襲われ、心の中にあった言葉がつい口から漏れ出した。
透:「なあ、月菜」
月菜:「うん?」
透:「この前月菜が言ってたこと。ほら、あの日、ミツルと初めて会った日に・・・・」
月菜:「優哉の、仇討ちのこと・・・・?」
透:「ああ・・・」
 透は一息つくと、続けた。
透:「ミツルがこんなことになって、俺、思ったんだ。ハッカーって、本当に危険なものなんじゃないかってな・・・」
月菜:「・・・・」
透:「そもそも、優哉が死んだのだって、俺たちがその危険を考えていなかったせいなんじゃないか、って思うんだ・・」
月菜:「あれは・・・あたしのせいだよ。あたしが、軍の構造体に仕掛けようなんて考えなければ・・・・」
透:「いや。それを言うなら、責任は優哉以外のみんなにあるよ。俺だって、その事への危険性を、全然わかっていなかった。俺の無理解が、優哉を死なせたんだ・・・」
月菜:「透・・・・」
透:「だから・・・」
 そして、透は次の一言を、自分に納得させるように、ゆっくりと口に出した。
透:「だから、俺があの軍のシュミクラムを恨む道理なんて、本当は無いのかもな・・・・・」
 言い終えて、不思議と優哉への罪悪感は無かった。ただ、何かが体から抜けて行くような、虚脱感があるばかりだった。
月菜:「・・・・」
 そのとき、ディスプレイから、メールの受信を知らせる着信音が鳴った。
透:「メール?一体、誰から・・・」
 そして、メールの宛名を見て、透たちは心底驚いた。
透:「『from リー・クーウォン』!!?」


数時間後
 透はシュミクラムを駆って、仮想の大海原の上空を飛び、クーウォンから指定された場所を目指していた。
月菜:「ねえ、透、これってどういうことだろうね・・?」
 回線の向こうの月菜の表情は、いつにも増して不安げだ。それはそうだろう。あの、飛刀のリーダー、第一級のテロリストであるリー・クーウォンが自ら、透を直接指名し、呼び出したのだ。
 内容の真偽すら疑わしいが、もし本当だったとしても、それが透たちにとって致命的な罠である可能性が高いのだ。
月菜:「ね、ねえ、今回は、絶対止めようよ!この先は、離脱妨害エリアの決闘場だよ。それに・・・・ミツル君も、確かここら辺で・・・・」
 そうだ。ここは決闘場の小島群上空、ミツルが殺された場所もこの辺りのどこかなのだ。
 だが、透は引き返そうとは全く考えなかった。鬼が出るか蛇が出るか、といった気持ちもあったが、なにより、あのクーウォンが透などのような単なる一ハッカーに一体何の用なのか、本当に気になったのだ。
月菜:「透、次の島が待ち合わせ場所だよ。・・・・・あ!電子体反応が一体、こ、これは・・・」
 月菜が言葉を続ける前に、透のシュミクラムの高感度カメラは、その電子体の顔を皺の一つに至るまで正確に捉えていた。
 透は、約束の小島に降り立った。そして透は改めて、数仮想メートル離れた位置に立っている男の電子体を眺めた。
 眼鏡をかけた男の電子体だ。その顔に刻まれた深いシワから、年は三十代後半と推測できるが、男から醸し出される破棄は、男をもっと若々しくも見せている。所々銀髪が混ざっている髪は長く、眼鏡をかけた瞳は理知的で、その風貌はテロリストの首領というよりは、大学の研究者か何かのようにも見える。しかし、190cm以上あるその大柄な体格は一流の武道家以上にたくましく鍛え抜かれており、MS体よりも遥かに小さな電子体にも関わらず、全身から発する雰囲気のせいか、シュミクラムと同じ大きさにも見えるような錯覚さえおぼえる。
 テレビでよく見る顔だ。間違い無い。彼が飛刀のリーダー、リー・クーウォンなのだ。
クーウォン:「来てくれたのか。わざわざありがとう、透君、礼を言う」
 そう言って、クーウォンが小さく頭を下げた。その声は穏やかで、外見に違わずとても理性的なものだ。
 透は、相手の出方が全く読めず、クーウォンにビームライフルを油断無く向ける。しかし、無防備な電子体に強力な殺傷兵器を向けられているにも関わらず、クーウォンは少しも動揺したようには見えなかった。
クーウォン:「銃を下ろしてくれ。私は、戦いに来たのではない。君と、少し話がしたいだけだ」
透:「し、信用できるか!! 第一、なんであんたみたいなテロリストの首領が、俺なんかのことを知ってるんだよ!!?」
 クーウォンはただ穏やかに笑って、ゆっくりと言葉を続ける。
クーウォン:「君の話は、二階堂あきら君から聞いている。今回の君の連絡先も、彼から教えてもらった」
 その言葉で透は、あきらが今飛刀の一員となっていることを思い出した。
透:「・・・・それで、あんたが俺をここに呼んだ用件は!?」
クーウォン:「時間があまり無いので率直に言う。君に、我が同胞の一員となって欲しい」
透:「な・・・・・」
 一瞬、透は二の句が告げられなかった。
(俺に、飛刀の一員となれ?テロリストの、狂信者の集団の?)
 しかし、よく考えてみれば、こういう話の展開はありうることだったのだ。クーウォンがあきらから透の話を聞いている以上、あきらが透を誘いたがっているのも聞いているだろう。そして、透の腕前なら、飛刀としてはとても得がたい戦力だろう。
月菜:「透・・・・・」
 月菜が回線を通して、不安げな顔で透を見た。しかし、透の答えは決まっている。
 透は、更に険しく銃を突きつけて、言った。
透:「俺が、『はい、わかりました』なんて、言うと思っているのか!!」
 すると、クーウォンは目を閉じ、穏やかに微笑んだ。
クーウォン:「そういきり立つ必要は無い。私は何も、君を害しようと思っているわけではないのだ。この話にしても、君にとっては悪い話にはならないはずだが・・・・」
 透は、次第に、この学者を装う人殺しの親玉に対し、心底腸が煮えくり返るのを感じた。
透:「黙れ!俺がそんな人殺しの集団に入ると思っているのか!!子供でも容赦無く殺す、最低の殺人鬼集団なんかにな!!!」
 すると、クーウォンは怒るどころか、心底悔やむような表情になった。
クーウォン:「あの、星野ミツル君のことか・・・。彼には、私もとても済まないことをしたと思う。あれは私の部下が、私の目の届かぬ所で行ったことだが、私も彼や彼のご両親のことを想うと、忸怩たる思いと重大な責任を感じずにはいられない・・・・」
透:「よくもそこまで、白々しい言葉を並べられたもんだな!!!この、狂信者め!!」
 すると、クーウォンの表情が、また変化した。しかしそれは、またしても怒りではなかった。ただ純粋に、相手の真意を探るものだった。
クーウォン:「狂信者、か・・・・。君は、私の思想のどこが、狂的だと言うのかね?」
透:「反チップ主義なんて、時代錯誤も甚だしいんだよ!!しかも、その理由が、『脳内チップによる洗脳政策』だと!!?これが狂っていなくて、何だというんだ!!!」
 今や埋め込みが市民の義務となっている生体素子、脳内チップは、その製作に関して完全な中立機関の非常に厳しい審査が入るのだ。そんなものに、この時代の最も重罪の一つである、洗脳の機能を持ったブラックボックスが、存在できるはずが無い。
透:「その狂った思想にあきらまで巻き込みやがって!!この狂人め!!!!」
 思いつく限りの罵倒を吐いた透を、クーウォンは、ただ静かに見つめていた。
クーウォン:「確かに、それが私の創ったフィクションなら、私は狂人ということになるだろうな」
 しかし、その瞳は理性が溢れていて、『狂人』などというものとは、この世で最も程遠いものであるようにしか見えなかった。
クーウォン:「私自身、それがフィクションなら、私の作り話ならよかったと、何度思ったことか。しかし、残念ながら、それは事実なのだよ」
透:「な、何をバカな!!!」
 透のライフルを握る手に、汗が滲んできている気がした。口の中も、カラカラに乾いているみたいだ。透は、正体もわからぬような圧倒的な恐怖に気圧されていた。
(一体、こいつは何者なんだ?こんな御伽噺を、しかも心底真面目に信じていやがる狂人のくせに、なんでこの世で最も賢い学者のような顔をしてそれを語る!?)
クーウォン:「とにかく、先程も言ったように、時間が無い。私と一緒に来てくれれば、全てはわかる。もしその時、まだ私を狂人だと思うのなら、私をその銃で撃てばいい」
 クーウォンは、ゆっくりと透に向かって歩み寄り始めた。
月菜:「透!!」
 月菜が、訴えるような表情で透を見ている。
透:「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
 透は焦燥に突き動かされるように、クーウォンの足元を狙って撃った。
 クーウォンの数歩先の地面を、仮想の高熱エネルギーが溶かす。しかし、クーウォンは全く動じず、歩み続ける。
クーウォン:「怖がることは無い。それに、こう言うのは卑怯かもしれないが、私に付いて行けば、君の親友の仇にも会えると思う」
透:「な・・・・」
 透の脳裏に、優哉の死に様の光景が蘇る。それと同時に、優哉の仇のあの軍のMSに対する憎しみもまた、僅かながら心に蘇ってきた。
クーウォン:「私は、それが誰だかを知っている。君が彼と直接会うことが出来れば、彼にも然るべき償いをさせることが出来るのではないかね」
 透の心が、激しく揺れ動く。
(この男に付いて行けば、優哉の仇を討つことができるのか?この男に付いて行けば・・)。
 しかし、透の頭に、憐の心配そうな表情が蘇る。そして、回線の向こうで見つめている月菜も、とても不安そうな瞳をしている。
 透は、優哉の仇に対しての憎しみを、頭の中から振り払った。
透:「クーウォン、やっぱりアンタは狂人だよ。この卑怯で狂った偽善者め、そんなことで俺を騙せると思うな!とっととここから失せろ!!でないと、今度は絶対にコイツを当てる!!」
 透は、ライフルの標準をクーウォンに向け、ピタリと定めた。それを見て取ったクーウォンは、遂に歩を止めた。
クーウォン:「そうか。やはり、小細工を弄そうとするものではないな・・。しかし、透君、私は本当に君に心から来て欲しいのだよ」
透:「黙れと言ってるだろう!!!」
クーウォン:「やれやれ・・・・。真実を知らぬまま、それでもここまで成長するとは。笹桐も罪なことをする・・・・・」
透:「な!!?」
 突然出てきた意外な人物の名に、透はまたしても一瞬動揺する。そして、動揺は、透よりも回線の向こうの月菜の方が、はるかに激しかった。
月菜:「お、お父さんを知っているの!!!?ねえ、どうして、ねえ!!!!」
 完全に取り乱した月菜を見て、逆に透の動揺が一瞬にして静まる。
透:「月菜、ハッタリだ!!きっと月菜の親父さんのことも、あきらから聞いたに違いない。・・・クーウォン、いい加減なことを言って俺だけじゃなく月菜の動揺まで狙うなんて!!!もう俺は、お前を絶対に許さない!!!!」
 透は、ライフルのトリガーに指をかけた。もう躊躇うことは無い。この卑劣漢を本気で撃ち抜くつもりだった。
 クーウォンは、深く、深くため息をついた。
クーウォン:「そうか、私の言うことは、何も信じぬか・・・・。ならば、致し方が無い。君と争うつもりは無かったのだが、こんな所で私も死ぬわけにはいかない!」
 瞬間、クーウォンの電子体が発光した。そして、その光が収まった時には、そこには巨大なMSが一体、立っていた
 カラーは濃いブルー。目はモノアイ。全身を重厚な装甲に包み、両肩にコンテナ、足にタンク、そして全身にバーニアを身に付けた、超重量級のシュミクラムだ(確か、名は『ゼクアイン』と言ったはずだ)。
 そして次の瞬間、いかにも鈍重そうなクーウォンのシュミクラムが腰を落とし、まるで中国拳法のような型をとり始めた。その動きは、下手な軽シュミクラムよりも軽やかで、そして目を見張るほどに鮮やかだった。
(こいつ、できる!!かなりの凄腕だ!!!)
 透の、汗腺の無いシュミクラムの頬を、一筋の汗が流れていくような気がした。
クーウォン:「ではゆくぞ!!覚悟せよ!!!!」
 そしてクーウォンは大きく距離を取り、巨大な砲身のバズーカ砲を小脇に抱え、透に狙いを定めた。
 透が反射的にかわすと同時に、それが火を噴いた。そして、透が先程まで立っていた地点が白熱、巨大な爆炎をあげた。凄まじい威力だ。いくらPS装甲に守られていても、これをくらえば一溜まりも無いだろう。
さらにクーウォンは、その超高火力ナパーム砲で、執拗に透を狙った。このナパーム砲、かなりの連射が利くらしく、一秒間に約一発の割合で、超高火力のナパーム弾を放ってくる。透はゼフィランサスの機動力を活かし、右に左にと確実によけるが、おかげで辺りは瞬時に火の海となる。
 透は反撃に、ビームライフルからビームを放つ。そのビームはクーウォンに直撃、被弾して爆発が起きるが、爆煙が晴れたとき、クーウォンは全くの無傷で、小揺るぎもしていなかった。
透:「くそっ!!あの重装甲の前じゃ、こんなものは効果薄か!!!」
 透はビームライフルを捨ててビームサーベルを引き抜くと、巨大な砲弾をかわしながら、砲身目掛けて斬りかかった。
 しかし、透の斬撃が届く刹那、両の肩当てと一体化している盾の中心にあるバーニアが、一斉に文字通り火を噴いた!!
透:「う、うわぁぁぁぁ!!!!」
 透は咄嗟に後ずさってかわしたが、その物凄い火力に、クーウォンの周囲が一瞬にして炎に包まれる。
透:「あ、あのバーニア、火炎放射器も兼ねているのか・・・」
 しかも、どうやら全身のバーニアもまた、火炎放射器の機能があるようだ。これでは、真正面どころか、どこから行っても炎の餌食だ。
透:「それなら・・・・」
 クーウォンが再び透目掛けてナパーム弾を放った瞬間、透はバックパックと脚部のバーニアスラスターを全開にして高々と跳び上がった。そして、その落下速度を加速に使い、真上から思い切りビームサーベルを振り下ろす。
 クーウォンは素早く反応し身を引いたが、頭上からの攻撃には誰しも少しは反応が遅れるものだ。更にクーウォンのシュミクラムは重装甲が故、機動性を大きく犠牲にしている。そのため完全には避けきれず、ナパーム砲の砲身が切断され、消滅する。
 更に透が、トドメをさそうとサーベルを振り上げた、その時だった。
透:「がぁっ!!!!?」
 突然、シュミクラムの脇腹を重い衝撃が走り抜け、透は遥か後方に吹っ飛ばされた。
透:「うが・・・ああ・・・。な、何が、一体何が起こったんだ・・・?」
 その正体が、全く見えない角度で入った『蹴り』だということに気付いた時には、クーウォンは全身から炎を吹き上げながら迫ってきていた。蹴りの衝撃は凄まじく、MS体にも拘らず、透は鳩尾を強打した時のように、呼吸困難で思うように動けない。
クーウォン:「フンっ!!!」
 クーウォンの強力な蹴り下ろしを、透は辛うじてかわす。更に追撃しようとするクーウォンに、透は牽制のイーゲルシュテルンを放った。しかし、クーウォンの重装甲の前には、そんなものは蚊ほどの効果も無く、牽制にさえならない。
クーウォン:「くだらん!!!」
 クーウォンの正拳突きを、透はシールドで受け止めた。しかしそれはほとんどレールガンなみの破壊力で、透をまたしても大きな衝撃が襲う。
 更にクーウォンは大きく踏み込むと同時に、透のコックピットに強烈な膝蹴りを入れた。
透:「がああぁぁ!!」
 透の意識が、一瞬飛んだ。その間にクーウォンは、ビームサーベルを引き抜いた。
クーウォン:「奥義!!フン!ヤァ!トゥ!ハッ!ハァァァァ!!!!」
 斬撃を交えての、怒涛の連続攻撃(コンボ)が透を容赦なく襲う!透は最初の斬撃を何とかかわしたが、その無駄のない、流れるようなコンボの全てを捌ききることは出来ず、最後の裏拳の打ち下ろしをまともにくらってしまった。
 くらったのは、感覚を共有していない頭部だったにもかかわらず、その圧倒的な衝撃は透の脳を揺らし、透を地面に勢いよく叩きつけた。目の前が、一瞬フラッシュする。
透:「う・・・・」
 何とか起き上がろうとする透を、クーウォンの必殺の踵落としが襲う。その巨大な足での、刃物のように鋭いそれは、くらえばMSといえども、一撃で粉砕するのではないかというほどの迫力があった。かわすことは、もうできない。
透:「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

『反転(フリップ・フロップ)』

 透の脳内に、またあの不思議な感覚が浸透してゆく。同時に、あの恐ろしい踵落としが、まるで子供の技のように見えた。
 透はいとも簡単に、両腕をクロスさせ、強烈な踵落としをブロックした。凄まじい衝撃が透を襲うが、透は背中のバーニアスラスターをフル稼働させ、それに耐える。
クーウォン:「何!!!?」
 更に透はそのまま跳び上がると、バーニアを使って空中で方向転換、瞬時にクーウォンの背後に回り、そのまま頭を蹴り飛ばした。クーウォンは地面に頭から叩きつけられる。
クーウォン:「く・・・・」
 クーウォンは素早く起き上がると、透に突進、達人級のコンボを雨あられと浴びせた。
 しかし、透にはその全てが手に取るように見えた。透は全ての打撃を的確に防御。まるで一流の武道家のように、クーウォンの攻撃をいとも容易く完全に外し、捌いてしまった。
クーウォン:「ば、馬鹿な!!!?」
 クーウォンはビームサーベルで斬りかかったが、透はそれを自身のビームサーベルであっさりと受け止め、そのまま跳び上がると空中で一回転、強烈なドロップキックをクーウォンのコックピットに命中させた。
 倒れたクーウォン目掛けて、透はそのまま空中で加速し突進すると、クーウォンのコックピットに、ビーム刃の切っ先をピタリとつけた。
透:「これで、飛刀も終わりだな」
 そのとき、透から不思議な感覚が、ゆっくりと抜けていった。しかし、もう勝負はあった。あとはサーベルを少し突き出せば、終わりだ。
 回線の向こうのクーウォンの表情には、恐怖などは全く無かった。ただ、推し量りがたい表情で、何事かを呟いていた。
クーウォン:「そうか・・・・。君は、もう既に覚醒していて・・・・・」
透:「訳のわからないことを言うな!!これで最期だ!!!!」
 透がサーベルを、コックピットに突き立てようとした、そのとき、
少女:「クーウォン!!!!!」
 少女の叫び声と同時に、透に向かって一条のビームが放たれた。
 透はそれを咄嗟に飛び退いてかわす。その隙に、クーウォンは身を起こしてしまった。
テロリストの少女:「クーウォン、あんた、こんなところで何をやっているんだ!!ゲンハならともかく、あんたまでこんなバカなことをするなんて!!!」
 回線に映った少女は、目は猫のように細く釣りあがり、お団子ヘアに大陸系の顔立ちの、中華風の美少女だった。
クーウォン:「リャン!?済まない。だが、これは大事な私用なのだ」
 しかし、リャンと呼ばれた少女は、あのクーウォン相手にも一歩も引かない。
リャン:「何が私用だ!!それであんたが殺されたりでもしたら、一番困るのはアタシたちなんだよ!バカは休み休み言うんだね!!!」
クーウォン:「いや、しかし・・・・」
リャン:「しかしもヘチマもないよ!!それに、軍がこの前の事件で、ここをパトロールしているんだ。今だって、もうすぐ連中がここを通る予定になってる。さっさと離脱しないと、あいつらに捕まるよ!!!」
クーウォン:「いや・・・」
リャン:「いやじゃない!!!いいかい、あと三十秒以内にここから撤退しなかったら、今すぐアタシのナイフで、アンタの頭を変な髪形に切ってやるから!!!!」
クーウォン:「やれやれ、仕方がないな・・・・・」
 そういうクーウォンの表情はまるで、じゃじゃ馬な娘に手を焼かされている父親のようだった。しかし、次の瞬間、クーウォンの表情は一転して険しいものになる。
クーウォン:「透君、今回はこれで引くが、私の言ったことを、よく考えてくれたまえ。手遅れに、ならないうちにな!」
 そう言うと、クーウォンは透に背を向け、離脱妨害エリアへ向けて、飛び去っていった。
透:「待て!!!!」
 リャンとかいう少女の迫力に圧倒され、しばし状況を忘れていた透は(本当に、物凄い迫力だった。月菜以上だ。この世に月菜以上のお転婆がいるとは、やはり世界は広い)、咄嗟に我に返り、慌ててビームライフルをクーウォンに向けた。
 しかし、またしても別方向からビームが放たれ、透のビームライフルを撃ち抜いた。
リャン:「待ちな!クーウォンに手出しはさせないよ!!!」
 ビームを放ったのは、リャンという少女のMSだった。カラーはカーキと白のツートン、両腕の裏に何か巨大な盾のようなものを装備し、右手に両極に穂を持つ三叉の槍(トライデント)を装備した、これまた中華風にカスタマイズされた、ガンダムタイプのMSだ(名は、『ナタク』という)。
透:「そこをどけ!!俺はクーウォンに用があるんだ!!!」
リャン:「どかないね!!どうしても、っていうんなら、アタシを倒してから行きな!!!!」
 リャンが、右手の三叉槍を構えた。良く見ると、刃の部分を形成しているのは、両極ともビームだ。
 そのとき、透の全身を、激しい痛みが襲った。あの不思議な感覚の中では、まるで何も感じなかったのですっかり忘れていたが、クーウォンに散々痛めつけられたのだ、当然のことだ。
透:「くっ・・・・とにかく、やるしかない!!!」
 二機は同時に地面を蹴った。透はビームサーベルを引き抜き、リャンのトライデントの斬撃を受け止める。
リャン:「くうっ!!!」
 リャンは透のサーベルを弾き、更に第二撃、三撃を繰り出してきた。おそらく、彼女も武術の心得があるのだろう、中々に洗練された動きだ。
 しかし、MSでの斬り合いなら、透も負けない。透はリャンの斬撃を落ち着いてかわすと、リャンが大振りになった瞬間を狙って、武器を装備しているナタクの右手首を斬り裂いた。
 さらに透は跳び上がり、ナタク目掛けて斬り下ろした。リャンはそれを、左腕に装備されたシールドのようなもので受ける。
透:「ちっ、やるな!!」
リャン:「あんたもね。けど、まだまだだよ!!!」
 よく見るとその盾は、龍の頭のような形をしていた。そして、その先端、口の部分は、開閉式のクローのように見える。
リャン:「ハァ!!!」
 リャンの気合いと同時に、その龍の頭の形のシールドが起き上がり、一気に伸び上がった。いや、正確には、そのシールドは機体とワイアーで繋がれており、そのワイアーが延びたのだ。
 更に、龍の頭がくるりと回転し正面を向くと、口を模したクローが左右に展開し、そこから一条のビームが透を襲う。透は咄嗟にそれをかわす。
 しかし、透がよけた方向に先回りするように、今度は右側のシールドが延び、透にビームを放つ。
透:「くそっ、なんだ、この装備は!!!?」
 透は間一髪でそのビームもかわすが、その時に激しく体を捻り、その拍子に、全身を再び激痛が走った。
透:「くうっ!!!」
 左側のシールドも更に延び上がり、二つのシールドが、まるで生きている二匹の龍のように、執拗に透を攻め立てる。それをなんとかかわし続ける透だが、そのとき、虚を突いて、一匹の龍がクロー自体で襲い掛かり、かわしきれなかった透はシールドで受けるが、その衝撃に、全身を三度目の激痛が駆け巡った。
透:「ぐあぁぁ!!!」
 このナタクの有線式攻防複合兵器の名は『ドラゴン・ファング』。本来はシールドだが、ワイヤーが伸縮自在に延びることによって相手を打ちのめすクローになり、そして、二本のクローの間からはビームも放てる、攻守において万能の兵器だ。
リャン:「ヤァ!!!」
 倒れた透に、更に二匹の龍が襲い掛かる。透はそのうち一基をかわしたが、もう一基が死角から回り込み、その牙でビームサーベルを持った右手に噛み付き、内部のビーム砲でその右手を撃ち抜いた。
 さらにもう一方のドラゴン・ファングが、今度は透のコックピット目掛けて伸びてくる。透はそれをかわしたが、ドラゴン・ファングはなんと更に伸び、ワイアーを透に巻きつかせると、それでそのまま透を締め上げようとした。凄まじい圧力がMSを締め付け、透の全身が、その度にギリギリと痛む。
透:「ぐ、がぁ!!!」
 すると、透を締め上げているファングの頭が、透のコックピットに向けて口を開いた。どうやら、このままコックピットを至近距離から撃ち抜こうというつもりらしい!!
透:「させるかぁ!!!」
 透はシールドを捨て、左手でもう一本のビームサーベルを引き抜くと、素早くワイアーを切断して逃れた。
 しかし、そのとき、切断されたドラゴン・ファングの砲口から、ビームが放たれた。おそらく、エネルギーは既に臨海に達していたのだろう。
 ビームはコックピットにこそ当たりはしなかったが、右の脇腹に被弾した。
透:「ぐがっ!!」
 透の体を、またも激痛が襲った。しかし、それだけではなかった。途端にMSの動きがギクシャクし、遂には崩れ落ちるように倒れて止まってしまったのだ!
透:「くそっ!!動力をやられたか!!!」
リャン:「どうやら、年貢の納め時のようだね!!」
 動けない透に向かって、リャンが悠々と残ったドラゴン・ファングを掲げた。鎌首をもたげたそれは、まるで獲物を狙う、獰猛なドラゴンのように見える。
 そのとき、
月菜:「透ー!!!」
 月菜が、アレックスで助けに来たのだ。月菜はビームライフルを撃ってドラゴン・ファングの狙いを外すと、透を素早く抱えて飛び上がり、追跡しようとするリャンを腕部ガトリングガンで牽制し、そのまま小島の外へと飛び立った。
月菜:「透、大丈夫!!?このまま、離脱妨害エリアの外に逃げよ・・・・。」
 そのときだった、
透:「月菜、危ない!!!!」
月菜:「へ!!!?」
 なんとドラゴン・ファングがすぐそこまで伸びて、ビームで月菜を狙ったのだ!
 月菜は透のおかげで寸前に気付き、かわしたが、コックピット直撃は免れたものの、腹部に被弾してしまった。
月菜:「あうっ!!!」
 それでも月菜は、全速力で飛んでリャンを振り切った。リャンも、先程言った「軍がパトロールしている」ためだろうか、追っては来なかった。
月菜:「・・・逃げ切れた?」
透:「ああ、何とかな・・・。それにしても、ありゃとんでもないじゃじゃ馬だな。月菜以上がいたとは、ある意味感動だよ」
月菜:「な、なんですってぇ!誰がじゃじゃ馬・・・・・・きゃぁ!!!?」
 そのとき、月菜のMSがスパークした。そしてそれと同時に、高度が次第に下がってゆく。
透:「月菜、一体どうしたんだ!!!?」
 すると、回線になんとも情けない表情の月菜が大映しになる。
月菜:「ごめん・・・・。さっきので、あたしも動力やられたみたい」
透:「な、なんだってーーーー!!!!!?」 冗談ではない!もしそれが本当なら、そのときは、そのときは・・・・・。
 透がそれ以上考える前に、二機のMSは、小島の一つに墜落した。
透:「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
月菜:「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
・・・・・・・・。


月菜:「いつつつ・・・・・。何とか助かったね、あたしたち・・・」
透:「まあな・・・・。落下地点が陸地で、幸いしたな」
月菜:「ホントホント。落ちたのが海の中だったりとかしたら、シャレにならなかったよね、あはははは・・・・」
透:「笑い事じゃないだろ、まったく・・・・」
 そう言いながら、透は辺りを見回した。これが、この小島群の無人島の一つだということには、まず間違いは無い。
 見れば、空が薄っすらと暮れ始めている。そういえば、もうそんな時刻だっただろうか。
透:「さて・・・どうするか」
月菜:「どうしようねぇ・・・」
透:「あのな、少しは考えろよ。・・・とは言っても、できることはあまり多くなさそうだけどな・・・」
 透はそう言って、電子アイテムとして呼び出した携帯端末の画面を見た。
透:「シュミクラムは二人とも動力破損、自動修復プログラムを使っても動けるようになるのは明日の朝。ここは離脱妨害エリアでログアウトは無理。長距離レーダーも利かないし、二人ともネットの中なんで、実質ここから動けない」
月菜:「何よ、あたしが外にいればよかったっていうの?あたしが助けに来なかったら、透なんて今頃、どうなってたことか・・」
 文句がありそうな月菜を無視し、透は続けた。
透:「つまり、俺たちはここに閉じ込められたってわけだ。これからは夜だし、シュミクラムが直るまでは、ここを動けないな」
月菜:「つまりそれって、一晩中ここに閉じ込められるってこと?」
透:「そういうことになるな。一応チャットルームにこの件のメールを出しておいたから、憐がいれば助けに来てくれるかもしれないが、いない場合はどうしようもないな」
 それを聞いて、月菜がげんなりした。
月菜:「そんなぁ・・・。透~、非常用の食料持ってない?」
透:「持ってない」
月菜:「ええ、うそぉ!!・・・今日はご飯ぬきかぁ」
透:「別に、一晩くらいいいだろ。そんなに食い意地張ってると、太るぞ」
月菜:「し、失礼ね!!!・・・・でも、電子体であんまり長い間実体と離れてると、なんか発狂しちゃうって話だけど、大丈夫かなぁ・・・?」
透:「一晩くらい大丈夫だろ。ってか、月菜は心配し過ぎなんだよ」
 なぜか、月菜に叩かれた。
透:「いってえな、なんだよ、一体!?」
月菜:「もう、透ってほんと、冷たいよね!!!」
透:「俺はただ、正論を言っただけだろ・・・」
 まあ、女の気持ちなどというものは、理解しようとするだけ徒労だ。
透:「とにかく、火くらいは熾さないとな。まあ、ここなら燃料とかありそうだし、着火アイテムは持ってるから、何とかなるだろう・・・」
 その時、月菜がレーダーを見て、叫んだ。
月菜:「透!!レーダーに電子体反応一つあり!!!この島に、あたしたちの他に誰かいるよ・・・・・」
透:「なんだって!!?」
 これはまずい。もしその人物が危険な奴、例えばテロリストだったりしても、今の透たちは、身を守れそうな物はほとんど持っていない。強いて言うならば、優哉の形見のナイフがあるが、それが武器としてどれだけ役に立つかは、正直疑問だ。
月菜:「どんどんこっちに近づいてくるよ・・・」
 そう言って、月菜は前方の林を指差した。
 透は辺りを見回した。ここは、丁度砂浜であり、後方は海だ。誰か来るという前方の林以外に、隠れられる場所は見当たらない。
 透は月菜を後ろに庇い、電子アイテムのナイフを実体化させて、身構えた。
 次第に林を掻き分けて歩く音がし、そして人影が姿を現した。
透:「何者だ!!?」
 すると、
?:「あれ!?君は確か、相馬透・・・・?」
 聞き覚えのある声がし、見覚えのある顔が現れた。憂いを帯びた優しげな緑色の瞳。そしてZAFTの赤い軍服。そう、彼は・・・・。
透:「アシュラン!!?」




第十四章『狂信者』完
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現在社会人として東京都心の企業に勤めている。出身地は北海道。
一人っ子。故に(?)わがままでせっかちなところがある。趣味はドライブと創作作品鑑賞。ただし基本的に超インドア。
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