Endless world -咬龍の庭-
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創作小説『バルドフォースG』第十五章
前半も残すところあと一話!前半クライマックスまで、一気にいっちゃいたいです。
なお、『マリみて』感想はもうちょっと後にします。多分、実家に帰る時の飛行機の中で読むと思うので、その時にでも。ご了承ください(ペコリ)。


バルドフォース エグゼ


バルドフォース エグゼ







HG 1/144 イージスガンダム


HG 1/144 イージスガンダム






バルG第十五章『運命の皮肉』





透:「アシュラン!!?」
 透が叫んだのと同時に、アシュランは険しい表情を透たちに向けた。
アシュラン:「君たちが、何故ここに?」
 アシュランは明らかに警戒しているようだ。無理も無い、透たちはハッカーで、そしてここは、通常ならば一般人はまず立ち入る所ではないからだ。彼は軍人だ。透たちが経緯を説明しないのなら、銃を向けられてもおかしくない状況だ。が、それだけは避けたい。後ろには、月菜もいるのだ。
透:「俺は別に、怪しいことはしていない。ただ、シュミクラムが破損して、ここに閉じ込められているだけだ」
 透は言ってみて、我ながらどうしようもないほどにおかしな説明だな、と思った。これでは、何の状況説明にもなってはいない。しかし、クーウォンに会ったことを話すと、ややこしいことになるのは目に見えている。ならば、これ以外に説明のしようが無い。
 事実、アシュランは更に眉をひそめ、険しい顔になる。
アシュラン:「ただ、って・・・・。どうやったら民間人が、こんな所でシュミクラムを大破させるんですか」
 状況は、ますます悪くなってきた。透がどう説明しようかと迷っていた、そのとき。
クゥ~~・・。
 状況に合わない、なんとも間の抜けた音が鳴った。多分腹の音だが、無論透ではない。それは、透の後ろから聞こえてきたものだ。
月菜:「あ・・・・・」
 見れば、月菜が顔を真っ赤にしていた。
透:「月菜、お前、何考えてんだよ。本当に節操が無いな・・・」
月菜:「う、うるさいわね!お腹が勝手に鳴っちゃったのよ!!!」
 月菜が赤面しながら激しく抗弁しようとしたとき。
アシュラン:「お腹が空いているんだったら、俺が食料持ってますよ。よかったら、分けませんか?」
透と月菜:「へ?」
アシュラン:「非常食ですんで、味は保障できませんがね」
 アシュランが幾分か表情を和らげ、穏やかな声で言った。

透:「しっかし、火を熾す手間まで省けるとは・・・。何か、本当に悪いな」
 透たちは林の向こう側、アシュランが岩陰に熾した火のそばに腰掛け、温まっていた。
アシュラン:「いえ。困ったときは、お互い様ですしね」
透:「お互い様って言うより、いつもこっちだけ一方的に世話になっている気がするんだけどな・・・。今回のことだけじゃなく、会った時は毎度」
アシュラン:「この前は、君に助けてもらいましたよ」
透:「まあ、そういうこともあったっけな・・・」
アシュラン:「それより君たち・・・・」
 アシュランの目が、再び険しいものになる。
アシュラン:「どうしてこんな所にいたのか、教えてはもらえないんですか?」
 透の心の底が、さっと冷えた。
透:「・・・早速尋問か?やっぱり所詮は軍人だな、あんた」
月菜:「透!助けてもらった相手に、それは失礼だよ!!」
 確かに、月菜の言う通りだ。透自身としては、ハッカーという職業のせいか、どうしてもこういう軍隊や警察的な口調には条件反射で抵抗を持ってしまうし、優哉のことがあってから、軍隊というものには少なからぬ嫌悪感さえ抱いていたというのもあったのだが。だが、確かに今のアシュラン相手に、さっきの態度はいささか失礼が過ぎたようだ。
 仕方なく透は、怪しまれないように詳細を少々改変して、事のあらましを話す事にした。
透:「どこかの誰かに呼び出されて、行ってみたらテロリストが喧嘩を売ってきたんだ。何とか撃退したが、シュミクラムの動力をやられてこうなった。そっちは?」
アシュラン:「俺も、似たようなものですよ。パトロール中にテロリストに襲われて、何とか応戦、撃退はしましたが、シュミクラムをやられてね・・・・」
 そこまで言って、不意にアシュランの表情が曇り、言葉が途切れた。
 そして、アシュランの目から、涙が一筋、こぼれ落ちた。
透:「お、おい、どうしたんだ?」
アシュラン:「え、あ、ああ・・・・」
 どうやらアシュランは、自分が泣いていたことに、言われてようやく気付いたらしい。慌てて涙を拭い、なんでもないと笑おうとしたが、それは失敗し、途端にその端正な顔が、悲しみで歪んだ。
アシュラン:「部下が、大切な仲間が・・・・・その戦いで、死んだんです」
 月菜が目を丸くし、透もまた、胸が締め付けられるような思いになった。彼の悲しみが、そのまま伝わってきたかのようだった。
アシュラン:「いいやつだった。なのに、どうして・・・・・!!!」
 悲しみに嗚咽するアシュランの背中を、透は優しく叩いた。
透:「そうか・・・。でもそれは、きっとお前のせいじゃない。そいつは今頃、天国で喜んでいるさ。自分のことを想って、悲しんでくれるやつがいてな」
アシュラン:「・・・・・・・」
透:「わかるんだ、俺も。大切なやつを殺された経験があるからな・・・・」
アシュラン:「君・・・・」
 そう呼ばれて、透はなんだかむず痒い気がした。
透:「その『君』っていうのはやめろよ。なんだか、気持ち悪いしさ・・・・」
 そこで、今度は透が、不意に言葉を詰まらせた。
アシュラン:「どうしたんだ?」
透:「いや・・・・、その死んだ親友と出会ったとき、俺も同じこと言われたな、って思ってさ・・・」
アシュラン:「・・・・・」
 アシュランが透を真っ直ぐに見つめている。優哉のものに似た、優しげで、それでいてどこか悲しげな瞳で・・・・。透は、不意に胸に生じた衝動のまま口を開いた。
透:「とてもいいやつだった。でも、あいつが死んだのは全部俺のせいさ。嫌がるあいつを、俺が無理やり軍の構造体内を仕掛けようって連れ出したんだ!」
月菜:「透・・」
透:「あいつは、きっと危険がわかってたんだ!それで、案の定、テロリストが攻めてきて大混乱になって、あいつが、あろうことかあいつだけが、軍の可変型に殺されたんだ!!」
アシュラン:「・・・・・・」
透:「それで、俺は優哉の仇を討とうとも考えた!軍のことを憎みもした!!でも、本当はわかってたんだ!!あれは事故だ、あんな所でウロチョロしていた俺たちが悪いんだってことは!!いや、優哉は悪くないんだ!!!悪いのは、全部俺なんだ!!!!」
 気が付いたら、全てをぶちまけていた。今まで誰にも話さなかった想いを、丁度、いつも優哉にそうしていたみたいに・・・・・。
アシュラン:「そうか。君が一時期、軍に挑んできていたのは、そういうわけがあったのか・・・・」
 透は、軽蔑されるかと思った。それはそうだろう。透の個人的な思い込みで、殺すつもりは無かったとはいえ、殺傷兵器を彼らに向けたのだ。
 しかし、アシュランは、ただ穏やかに、そして悲しげに微笑むだけだった。
アシュラン:「・・・わかるよ、その気持ち」
透:「・・・?」
アシュラン:「俺も、復讐したい相手がいるんだ。許せない奴が。・・俺の許婚を殺した、憎むべき男が!!!!!」
 アシュランの穏やかな顔が、瞬時に憤怒に満ちたものに変わる。
アシュラン:「何の罪もない彼女を、笑いながら殺した!!!あのゲンハって男だけは、絶対に許せないんだ!!!!!!」
 そう叫ぶアシュランの憎しみに満ちた瞳には、薄っすらと涙さえ光っていた。
 透は、軍構造体内で、アシュランがゲンハと戦っていたことを思い出した。確かに、あの時のアシュランの太刀筋には、以前透と戦った時とは明らかに違うような、鬼気迫るものがあった。
透:「そうか、アシュランは、ゲンハが仇なんだな・・・」
 透の声を聞いて、今自分がどういう表情をしているかに思い当たったのか、アシュランの顔から、憎しみの色がふっと消えた。
アシュラン:「済まない、変な話をした・・・・」
透:「そんなことはないさ。アシュランの復讐は、真っ当なものだろ。それに、変な話をしたのは、お互い様だしな」
 透が笑いかけると、アシュランの表情も、寂しげではあるが、わずかに明るくなった。
アシュラン:「ありがとう。でも、こんな話をしたのは、あの事件を知っている人以外では君が始めてだ。本当に、俺、どうしたんだろうな・・・・」
透:「それを言うんなら、優哉の話をここまでしたのも、お前が始めてだよ。おかしいよな、なんか、今までロクに話したこともなかったのにな・・・・」
 そう言ってうつむく二人を、炎が赤々と照らしていた。


同時刻、実世界ZAFT基地内
 イザークは実世界に帰還し、意識の無いニコルを医務室に移送するとすぐに、長官室にてアシュランの捜索願を求めた。
イザーク:「出動許可をお願いします、今すぐに!!!!」
 しかし、長官は渋い顔をするだけだった。
長官:「あそこは離脱不能地域で、しかもテロリストの出現する危険地域だ。ネット時間でも、もう既に日は暮れている。どこに落ちたかがはっきりとわからんのでは、今すぐの捜索は無理だ」
イザーク:「捜索に人数が回せないのはわかっています!!!それならば、俺一人だけでも!!!!!」
長官:「落ち着きたまえ。それがわかっているなら尚更、今君を派遣できないことは、わかっているだろう。君も彼も赤服の一人なんだ。君はもう少し状況を把握し、彼を信じてはどうかね」
 誇りにしている『赤服』のことを持ち出されては、イザークも何も言い返すことができなかった。だが、しかし、それでもイザークはなんとか食いつこうとした。
イザーク:「ですが・・・・・」
長官:「君の気持ちはわかる。同僚が、あんなことになった直後ではね・・・・。だが、ここは堪えるんだ。明け方になったら、すぐに許可を出すから」
 長官の言葉を聞いて、イザークを、胸が激しく締め付けられるような思いが襲った。
 そうだ、ディアッカが、死んだのだ。ニコルのことで手一杯で、今までは脳の隅に押しやられていたが、その事実が今、イザークを激しく打ちのめす。
 ディアッカは死んだ。イザークたちを、仲間を守るために、その若すぎる命を散らしたのだ。作戦室のコンソールには、まだ彼の脳死体が横たわっているだろうか。それとも、もう医療班によって運び出されたのだろうか。
 更に、ニコルも今は予断を許さない状態だ。その上、もしかしたらアシュランまで・・・・・。
 イザークの心の底が、すっと冷えていくような気がした。
 そのとき、「失礼します!」という声が長官室に響き、扉が開いてミゲル・アイマンが長官室に入ってきた。
イザーク:「ミゲル!!」
ミゲル:「イザーク、やっぱりここにいたか」
 そう言うと、ミゲルはすぐさま長官に向き直った。
ミゲル:「長官。この私を、アシュランの、いえ、ザラ特務小隊長の捜索隊に加えてください!」
 そして、ミゲルはふかぶかと頭を下げた。
長官:「小隊長の許可は、取ってあるのかね?」
ミゲル:「はい。もちろんです」
長官:「そうか・・・・。それなら仕方が無いな。ザラ特務小隊長の捜索は君たち二人に任せよう。それと、今すぐに許可を出すことはどうしてもできんが、明け方すぐに捜索を開始することを許可する。それまで、両名ゆっくりと休んで疲れを落としておくように」
 それで、長官の話は終わった。
ミゲル:「ありがとうございます!」
 ミゲルがもう一度、深く頭を下げた。イザークもそこが妥協点と悟り、ミゲルにならって礼をすると、長官室を後にした。
 長官室をでた直後、ミゲルがイザークに言った。
ミゲル:「ニコルは大丈夫だそうだ。意識はまだ戻っていないが、どうやら命に別状はないらしい。きっと、アシュランも大丈夫だ!」
 その時になって初めて、イザークは、ミゲルの顔が汗でびっしょりであることに気が付いた。おそらく、アシュランたちのことを聞き、慌てて基地中を駆け回って、それでいて努めて冷静さを失わず、然るべき情報を手に入れたのだろう。
 ミゲルは自分たちのことを真剣に心配してくれている。そう思うと、イザークの気持ちも、少しは落ち着いた。
ミゲル:「それに、ディアッカのこと、聞いたよ・・・・。畜生、絶対に死にそうにない奴だったのに、どうして!!!!」
イザーク:「俺たちを守ったんだ。アイツらしくない、それでも、立派な最期だった・・・・」
 イザークの胸に再度悲しみが押し寄せてきたが、それは先程よりも、絶望的なものではなかった。おそらく、隣で共に悲しんでくれるミゲルの存在が、その悲しみをやわらげてくれたのだろう。
 それは、どうやらミゲルも同じだったらしい。すぐに、表情を悲しみから一転させる。
ミゲル:「それなら、せめてアシュランは、絶対無事に見つけ出さないとな!イザーク、今から作戦室で、早急にシュミクラムに捜索用の強化パーツを装備させるぞ!!」
 それは、必ず友を助け出すという決意の表情だった。そして、その力強い表情に、イザークの心の中の希望の灯火が次第に強くなっていく。
イザーク:「ああ、そうだな!!急ぐぞ、ミゲル!!!」
ミゲル:「りょうかい!!!」
 そう言うが早いか、二人は作戦室へ向けて、全力で走って行った。


 アシュランは横になりながら、ぼんやりと目の前の炎を眺めていた。
 今、火の番は透と一緒にいた少女-確か、月菜とかいう名だったか-がしていた。アシュランとしては、女性を起こしておいて男の自分たちが寝るのには抵抗があったのだが、月菜が二人はシュミクラム戦で疲れているだろうと、自分から火の番を申し出たのだ。実際激しい戦いの後に、更に遭難というアクシデントのせいで疲れきっていたアシュランは、結局その申し出を受けることにした。
 透は、横でアシュランが持ってきた毛布に包まって眠っている。アシュランも、軍服の上着を毛布代わりにして眠ろうとはしたのだが、どうしても眠れない。おそらく、今日はあまりにも色々なことがあったせいだろう。
 辺りは静寂に包まれ、ただ仮想の波の音だけが、三人を包みこんでいた。
 そのとき、静かに火を見つめていた月菜が、ポツリと口を開いた。
月菜:「アシュラン、眠れないの?」
アシュラン:「あ、ああ・・・。気付かれていたか・・・」
 アシュランはゆっくりと身を起こし、月菜の方を振り返った。月菜は、その視線を半分は火に、半分は丸まって眠っている透に向けていた。それでもアシュランが起きていることに気付いたのだから、この少女はよっぽど気が付くのか、それともアシュランがよっぽどもそもそやっていたかどちらかだろう。
 アシュランは、改めて月菜を眺めた。月菜は、美しい少女だ。格好は下町娘にありがちなラフなものをしているが、その顔はどこか、母性を感じさせるような優しさと、品格のようなものが備わっている。
 アシュランは、なんだかこの月菜という娘に対し、すまない気持ちになってきた。
アシュラン:「何だか俺、気が利かないことをしてしまったかな・・・」
 月菜は、ゆっくりとアシュランの方を振り返った。
月菜:「え?どうして?」
アシュラン:「せっかく二人きりのときを、なんか俺が邪魔してしまって・・・」
 確か、街で会った時も、二人は一緒にいた。アシュランはそのとき、二人はとてもいいカップルなんだな、と思った記憶がある。
 しかし、その意味をしばらく考えていた月菜は、急に顔を真っ赤にして、しどろもどろな口調になる。
月菜:「あ、ああ、あたしたちは、その、ただの幼馴染。ほんと、全然そんなんじゃないから!」
アシュラン:「え?でも、なんだか随分仲良く・・・・」
月菜:「まあいつも一緒にいるけど、ほんと、ただの腐れ縁なんだから・・・・」
 そう言う月菜の目は、台詞とは全く合っていないような気がしたが、これ以上突っ込むのはどうにも野暮のような気がしたので、アシュランは何も追求はしないことにした。
 しかし、月菜は照れ隠しのためか、更に言葉を続けた。
月菜:「透ってさ、ほんと、だらしないところがあって、家事も炊事も人並み以下にしかできないし、洗濯物は溜まりっ放しだから、あたしとかが見てやんないと、ほんと、もうどうなることか、って感じで・・・・」
透:「お前が頼まれてもいないのに、余計なお節介を焼いてるだけだろ」
 見れば、透が毛布をのけて、上体を起こすところだった。
月菜:「あ、透も起きてたんだ」
透:「誰かさんの声がデカかったからな・・・・・。それよりお前、余計なこと言うなよ。それも、身内の恥を他人に」
 そう言われて、月菜は再び赤面した。
 なんだかこう見てみると、二人はより一層、お似合いのカップルにしか見えてこないのだが。そう思って、アシュランの表情には、自然と笑みがこぼれてきた。
透:「ああ、月菜、アシュランに笑われてるぞ。お前は全く、恥ずかしいやつだな」
アシュラン:「あ、いや。なんか月菜の話を聞いてると、我が身のことを思い出してさ」
透:「え?」
アシュラン:「俺も、部屋とかかなりゴチャゴチャでさ、ニコルを、あ、これは俺の友達なんだけどさ、部屋によんだとき、それを思い切り指摘されて、その後ニコル一人に片付けさせてしまったことがあったよ」
 そう言えば、ニコルはどうなっているのだろう。無事だといいが・・・・。
 すると、月菜が驚いた表情でアシュランを見ていた。
月菜:「へー、何だか意外。アシュランって、なんだかメチャメチャキレイ好きっぽいイメージがあったんだけど・・・」
アシュラン:「そんなことはないよ。俺もよく不摂生するしさ、周りからは結構、だらしがない奴だって思われているんじゃないかな。っていうか、俺にそんなイメージがあったなんて、初耳だよ」
月菜:「でも、アシュランってなんだか、お金持ちの家のお坊ちゃまっぽい感じがするからさ。あ、悪い意味じゃなくてね」
 それも初耳だ。確かにアシュランは、かなり(いや、ものすごく)裕福な家庭に生まれてはいるが、イザークに「貧乏くさいやつだな!」と言われた事もある。
アシュラン:「そもそも、俺のどこらへんにそんなイメージがあるんだ?」
月菜:「え?そりゃ、ほら、立ち振る舞いとか、あと、許婚がいたりとか・・・」
透:「バカ!!!」
 透に指摘されて、月菜はハッとなって口を押さえた。
月菜:「ご、ごめん・・・・」
アシュラン:「いや、いいんだ。もう昔のことだ・・・・」
 本当はアシュラン自身、昔のことではあって欲しくなかったのだが、現実は直視しなければならないと、普段から自分に言い聞かせてきた。
アシュラン:「まあ、確かに俺は、豊かな部類に入る家に生まれたかもしれないけど、許婚っていっても、お互い特に結婚を前提に考えていたわけじゃなかった」
月菜:「・・・・・」
透:「悪い。いやなことを思い出させてしまったか?」
アシュラン:「そんなことはないよ。それに、確かに親が勝手に決めた許婚だったけど、俺はレミーといて楽しかったんだ。結局、レミーには不愉快な思いをさせてばかりだったけど・・・」
 そう言いながら、アシュランの脳裏にはレミーの可愛らしい笑顔がよみがえっていた。つき合い始めてすぐから、アシュランはレミーのことをとても大切に想っていた。でも、不器用なアシュランは、それをなかなか形にすることができなくて・・・・。あんなことになるのなら、もっともっと、努力すればよかった。
 そのとき、月菜が確かな声で言った。
月菜:「その、レミーさんって人は、とても幸せだったと思う。アシュランに、そんな風に想ってもらってさ」
アシュラン:「そうかな・・・。俺はよく、甲斐性無しって言われてたよ。それに、彼女の前では、楽しそうな顔一つできなかった・・・・・」
月菜:「でも、レミーさんは、きっと想いが通じていたことを知ってたと思う。そして、それって、とっても幸せなことだよ。絶対、絶対そう思う・・・・」
 月菜の言葉には不思議な説得力があり、アシュランの心に、とても素直に響いてゆく気がした。
 きっと、それは、そう言ってくれたのが月菜だからだったのだろう。想いが届かず、そして届けることができないでいる、月菜だから・・・・。
アシュラン:「ありがとう。お世辞でも、そう言ってもらえるとありがたいよ・・・」
 二人は、気まずそうな顔で、黙ってアシュランから目を逸らした。
 アシュランもなんだか気まずくなって、携帯端末を電子アイテムとして実体化させると、シュミクラムの修理状況に目を移した。
 修復率はまだ30%。やはり修理は、今夜一杯かかりそうだった。
 すると後ろでは、透が画面を、興味津々の目で覗き見ていた。
アシュラン:「あ・・・・」
 アシュランが反射的に携帯端末を遠ざけると、透はバツの悪そうな表情になった。
透:「あ、済まない。つい・・・」
月菜:「もう、透、人の携帯端末覗くなんてお行儀悪いよ!それに、それ、軍の機密事項かもしれないし・・」
透:「うるさいなあ、お前は。でも、そうだよな。ごめん、アシュラン」
アシュラン:「いや、そういうわけじゃないんだけど・・・」
 そう言いながら、アシュランはなんだか、彼らになら見せてもいいような気になった。
アシュラン:「興味があるのなら、見ますか?」
透:「え?いいのか?」
アシュラン:「そりゃ、機密事項を見せることはできないけど、まあ、表面的なものだけなら・・・」
 そう言って、アシュランはMS内部の機密事項のデータ(主に、変形機構のところだ)をロックすると、透に携帯端末を手渡した。透はそれを受け取ると、早速食い入るように眺め始めた。
透:「へー、これがZAFTの赤服のシュミクラムか・・・・。お、駆動系にはモルゲンレーテ製の、M―38型パーツを使っているのか。俺のと同じだな。あ、このパーツも、俺が使っているやつだ・・・」
アシュラン:「透もメンデス製の65版型を使っているのか?」
透:「ああ。あれだと、関節が最高にフレキシブルに動くんでね」
アシュラン:「君も中々“凝り性(マニアック)”だな。よければ、君のも見せてくれないか?あ、特にハッカー対策の資料とするわけじゃないからさ」
透:「ああ、いいぞ」
 そう言うと、透も自分の携帯端末を出現させ、しばらく操作した後(そのとき、「憐からの返信はこないな・・・。」とか呟いていた。おそらく、事前に仲間に救助要請のメールを出したのだろう)、MSのステータスの画面を開いて、アシュランに渡した。
 渡すとき、透は笑顔で言った。
透:「しっかし、ハッカー用語のスラングが軍人さんの口から簡単に出てくるなんてな、意外だよ」
アシュラン:「え、あ・・・・・」
 そう言えば。アシュラン自身、全く意識していなかった。アシュランは顔が火照るのを感じながら、画面に目を通し、そして一通り目を通して、驚く。
透:「どうだ。クルードなもんだろ?」
アシュラン:「こ、これは・・・。民間人で、ここまでシュミクラムを徹底的に改造(カスタマイズ)するなんて・・」
 密かにマニアックを自負するアシュランでさえ、このようなカスタマイズは見たことが無かった。
アシュラン:「『ゼフィランサス』をこんな機体に仕上げるなんて・・・。これはとても民間機とは思えないぞ・・・・・」
透:「俺の友達も、かなり“マニアック”でね。」
 そう言って、透は、まるで宝物を自慢する子供のように、屈託無く笑った。
透:「今の時代、シュミクラムはハッカーの命だからな。って、こんなこと、軍人さんに自慢げに話すことでもないか・・・・」
アシュラン:「いや、純粋に驚いた。本当に、大したものだよ」
透:「へえ、なかなか話がわかるな。軍人とハッカーの価値観で話が合うなんて、思わなかったよ。いや、皮肉じゃなくってな」
 そのとき、不意に、アシュランはあることを思い出した。
アシュラン:「そう言えば俺も、ハッカーとかそういうのに憧れていた時期があったよ。ジュニアハイスクールに入る前までだけどね」
透:「へぇ、アシュランがか。意外だな」
アシュラン:「俺も忘れてた。でも、正直、今でも実は、少しはまだそういうのが残っているんじゃないかって、ちょっと思うよ」
透:「はは、軍人さんにあるまじき発言だな。しかも、エリート部隊の小隊長殿が、な」
アシュラン:「はは、それもそうだな」
そうだ。アシュランも子供の頃、自由で粗雑(クルード)なハッカーに憧れていた時期があったのだ。そして、同じクラスの悪ガキどもとつるんで、悪戯にせいを出していた時期もあった。いつの頃からだろうか、それをやらなくなったのは・・・・・。
 そうだ。悪戯が何度か発覚して、その度に父から厳しく叱られているうちに、次第にそういうことから遠ざかっていったのだ(父は普段は息子のことなど見向きもしないくせに、そういうときだけは、「貴様も早くザラ家に相応しい人間になれ!」などと言って激しく、そして熱心に怒ったものだ)。アシュラン自身、その後家系に沿って軍人を目指すようになってからは、ハッカーが敵になったこととも相まって、そういう友達との付き合いも少なくなっていった。
 でも、今思い出してみると、アシュランの19年の人生の中で一番楽しかった時期は、レミーとのことを別格にすると、その悪友たちと過ごした時間だった。だから、当時の悪友たちの一人であったミゲルとは、今でも仲が続いているのだろう。
 なんだか懐かしい気持ちになって、アシュランはもう一度透のMSのステータス画面を見回して、ふと、あることに気が付いた。
 それは、コックピットの部分だ。珍しい文字が記されてある。
アシュラン:「『コア・ブロック』・・・?」
 コア・ブロックシステム。MSが緊急状態に陥ったとき、自動で(設定によっては、手動で)コックピットが本体から分離、『コア・ファイター』と呼ばれる脱出艇を兼ねた戦闘機として、独自に飛行できるシステムのことだ。これはパイロットの生還率を飛躍的に上げるために作られた、発表された当時は非常にエポックメイキングなシステムだったのだが、いかんせんこれをシュミクラムに装備するためには、シュミクラムを構成するデータの多くをそのコアブロックシステムに当てなければならず、結果としてシュミクラム自体の性能や武装がかなりおろそかになってしまうという弊害があることがわかり、今ではほとんど使用されていない。
透:「ああ、それか・・・」
 非常に稀有(レア)なシステムのはずなのに、何故か透は微妙な表情だ。
透:「これも、マニアックの産物だよ。とは言っても、どっかの誰かさんが、お節介で付けようとか言い出したものだけどな・・・・」
 透はそう言って、月菜をジロリと見た。
月菜:「だ、だって、透って見ててすっごく危なっかしいんだもん!それに、優哉だって賛成してたじゃん!」
透:「誰が危なっかしいんだよ。お前よりマシだ。それに、こんなチャリの補助輪みたいなもの、いらないって言ったのに、人が知らないうちに勝手につけやがって」
アシュラン:「まあ、透が危なっかしいって意見には、俺も賛成だけどな」
月菜:「ほら~、アシュランだってそう言ってるし」
 透は、電光石火の速さでアシュランに振り向いた。
透:「おい、アシュラン。俺のどこが危なっかしいんだよ」
アシュラン:「それはもちろん・・・・・。」
 アシュランは、わざとニヤリと笑って言った。
アシュラン:「我が栄光ある赤服部隊に、一人で喧嘩を売るようなやつだからな」
透:「う・・・・。あれは、マジで死ぬかと思ったけどな」
アシュラン:「しかし、あれは本当に大したもんだよ。透に逃げられた後は、みんなかなりショックだった」
透:「まあな。でも今思うと、よくアシュランたちから逃げられたもんだよな。このシュミクラムの図解見ると、ほんと、ゾッとするよ」
アシュラン:「それはお互い様だよ。・・・・へえ、ビームライフルのジェネレーターは、RH―7型を使っているのか。俺のイージスは、まだ6型だよ。」
透:「ZAFTも、まだまだだな」
アシュラン:「だけど、ビームサーベルのジェネレーターはまだ48式か」
透:「え・・・あ、くそ、流石は本職だな。最新のを使いやがって」
アシュラン:「はは。しかし、なるほどなるほど・・・・」
透:「へえ・・・・」
 そして、アシュランは透と、夜通しのシュミクラム談義に花を咲かせたのだった。
そして、夜は、瞬く間に明けていった・・・・。


 憐が草原のチャットルームを訪れたのは、本当に朝の早い時間だった。
 今日だけではない。憐は、最近は毎日朝早くチャットルームへ行き、透たちを待っていた。いつ何時もそれは欠かさない。本当に、毎日だ。
 しかし最近、ここ一週間、透は全くこの草原に姿を見せなかった。
 憐は、不安だった。そんなはずはないとわかっていても、せっかく見つけた大切なものが、再びその手からこぼれ落ちてしまうみたいで・・・・・。
憐:「そんなこと、ないよね・・・。お兄ちゃんは、もう憐を、一人ぼっちにしたりはしないよね・・・・」
 拭い去るつもりで口に出すした不安は、より一層現実味を増す。憐はその思いを振り払うように、辺りをきょろきょろと見回した。
 すると、憐の目に、あるものが留まった。それは、大草原のなかにポツンと立っている、赤いポストだった。
憐:「あれ、たしかお手紙がとどくやつだったっけ・・・」
 見れば、挿し込み口に、白い封筒のようなものが見える。
憐:「あ、お手紙。でも、だれからかな?」
 憐はそれを手に取った。空けようとして、人の手紙を見ることになることに気が付き、一瞬伸ばした手を止める。しかし、入室記録帳を見てみると、やはり透は(月菜も)しばらくここに入室さえしていない。もしこの手紙が重要な用件なら、このままだといつ透たちに届くかわからない。
憐:「しかた、ないよね・・・。もし見ちゃいけないものだったら、すぐに忘れますから・・・」
 憐はそう呟きながら、封を破り、中を空けた。そして、その内容に目を通し・・・。
憐:「・・・お兄ちゃん?」


アシュラン:「もうそろそろ、俺はシュミクラムが直るころかな?そっちは?」
透:「あ、ああ。俺たちもだよ」
 そう言うと、二人はどちらともなく立ち上がった。月菜が最後に立ち上がった後、アシュランは焚き火の火を消した。火が消えるのを見たとき、何故かアシュランは、とても寂しい気持ちになった。
アシュラン:「楽しい一時だったよ。ほんと、こんないい時間が過ごせるなんて思わなかった」
 アシュランが他人とこんなにも夢中になって話したのは、一体何年ぶりだろうか?それほどまで、この相馬透という人の前では、アシュランは、自分自身でさえ忘れかけていた、本当の自分をさらけ出すことができた。会ってまだ間もない、敵同士だったことさえあった、きちんと話すのはこれが初めての人間に。
透:「俺もだ。ていうか、久しぶりだよ、ここまでシュミクラムの話で盛り上がったのは。ほんと、あんたって、下手なハッカーよりもハッカーズテイストを醸し出してるよな、って言ったら失礼か?」
アシュラン:「いや。最高の褒め言葉として受け取っておくよ」
 そのとき、アシュランの携帯端末から、呼び出し音が鳴った。
アシュラン:「どうやら俺の仲間が、近くに来ているらしい」
透:「へえ、よかったな」
 すると、透の携帯端末の呼び出し音も鳴った。そして、同時に透たちの目の前に巨大なスクリーンが現れ、そこに大きなリボンをした可愛らしい少女の姿が大映しになった。
憐:「あ、お兄ちゃん! よかったぁ、いま行くからねー!!」
アシュラン:「な、何だ!?びっくりしたな・・・。でも、透たちの方も、来たらしいな」
透:「みたいだな」
 二人の携帯端末も、MSの修復が完了したことを告げていた。もうそろそろ、お別れの時間だった。
アシュラン:「いつか、リアルでじっくり会いたいな」
透:「ああ、俺もそう思ってたよ。今度また、ゆっくりシュミクラムの話もしたいしな」
アシュラン:「そうだな。もしよければ、整備とかカスタマイズも手伝ってやるよ」
透:「それはありがたい」
 二人は、どちらからともなく手を差し出し、そして硬く握り合った。
透:「それじゃ、またな」
アシュラン:「ああ、また」
 そして、アシュランは二人と別れた。透と月菜は手を振りながら、仲間が来た島の反対側へと去って行った。
 それから少しして、アシュランの目の前に、デュエルと、そしてミゲルのジンが降り立った。
ミゲル:「アシュラン!!無事だったか!」
イザーク:「キサマァ、心配させやがって!!!」
アシュラン:「済まない、二人とも。それじゃあ、帰ろう」
 心底安堵したような表情の二人を横目に、アシュランもシュミクラム体に移行する。
ミゲル:「ニコルは大丈夫だぞ、アシュラン。二、三日入院するだけで、あとは後遺症も残んないってさ」
アシュラン:「そうか、よかった・・・・」
 そして、アシュランはもう一度、先程まで透たちといた岩場を振り返った。
 燃え尽きた焚き木は、ネットのロジックによって消失する。しかし、あそこで過ごした時間は、おそらくアシュランの中で色褪せることはないだろう。
アシュラン:「さあ、行こう」
 アシュランは、他の二人と共に、小さな小島を飛び立った。
 相馬透。不思議な程に親近感を感じる、ハッカーの青年。何故か彼とは、もうずっと親友でいたような、そんな気がする。
彼とは、必ずいい友達になれるだろう。アシュランは、そう確信していた。
 そう、その時は・・・・・。

 
 透たちもまた、反対側の浜辺でシュミクラム体に移行した。目の前には、こちらに向かって飛んでくる憐のMS『ステイメン』が見える。
憐:「お兄ちゃぁん。ほんと、ぶじでよかったぁ~。お手紙よんだときは、憐、しんぞうが止まるかと思ったんだよ・・・」
 憐は既に半べそ状態だ。
透:「心配をかけたな。迎えに来てくれてありがとう、憐」
月菜:「・・・。憐ちゃん、ありがとう。助かったよ」
透:「さあ、俺たちも帰るか」
 そして透たち三人も、シュミクラムを駆って、この仮想の小島を後にした。

憐:「それにしても、お兄ちゃん、うれしそうだけどなにかあったの?」
 大海原の上を飛んでいる最中、憐がふと尋ねた。
透:「え、そ、そうか?」
憐:「うん。なにか、いいことがあったの?」
月菜:「憐ちゃん、おにいちゃんはね、新しいお友達ができたんだよ」
 横から、月菜が告げ口する。
 すると憐は、まるで我が事のように、目をキラキラさせて喜んでくれた。
憐:「うわぁ~、お兄ちゃん、おめでとう!」
透:「え、まあ、憐にもそのうち紹介するよ。優しいやつだから、きっと憐とも仲良くなれる」
 そう言いながら、透はアシュランのことを思い出す。
 最初に出会ったときから思ったが、話せば話すほど、性格は全然違うのに、どこか優哉のことを思い出させる。一見とても軍人らしいのに、その実そこらのハッカーよりもハッカーズテイストを漂わせた、不思議な青年だ。
 透も、彼とは数年来の親友のような、そんな気がしていた。もしかしたらそれは、優哉の分の年月を足しているせいなのかもしれない。
 優哉を失ったことによる空白は、何者を以ってしても埋めることはできないだろう。それでも、アシュランとならば、もしかしたら、それとはまた別の、しかしそれに比べうるような時間を共有できるかもしれない。
 透がそう思ったときだった。
月菜:「透!!なんか、シュミクラムが二機、こっちに向かって飛んでくるよ!!!」
 不意に回線越しに、月菜の緊張した声が飛び込んだ。慌ててレーダーを見ると、確かにシュミクラムが二機、猛スピードで接近している。
 今、最低限の修理しか終えていない透に、戦う余力は無い。それでなくとも、今そばには憐がいるのだ。
 透は、すぐさま叫んだ。
透:「月菜、憐、そこの島の岩陰に隠れろ!!そしてジャマーを全開にするんだ!!早く!!!」
 三機は素早く近くの岩陰に隠れ、ジャマーを全開にした。
ゲンハ:『うひゃひゃひゃ!!遂に見つけたぜぇ!!!オルガの礼は、たっぷりとしてやるからな!!待っていやがれ、クソ野郎どもめ!!!!!』
 回線の向こうから、耳障りなゲンハの声が聞こえ、そして前方、岩の向こうを、フォビドゥンとレイダーが凄まじい勢いで飛び去っていった。
憐:「い、いったい、なんなの・・・・?」
 憐の声は、恐怖で震えていた。
透:「憐、大丈夫だ。あいつらは俺たちに気付かずに行ったよ・・・・」
 そう言いながらも、透は一方で、全く別のことを考えていた。
(ゲンハ・・・。あいつが向かった方向って、もしかして・・・!!!)
 そうだ。ゲンハたちの向かった方向は、間違いなくアシュランたちの飛び去った方向だったのだ。
 アシュランも、おそらくMSは万全の状態ではあるまい。それに・・・
アシュラン:『何の罪もない彼女を、笑いながら殺した!!!あのゲンハって男だけは、絶対に許せないんだ!!!!!!』
 アシュランの言葉がよみがえる。アシュランがゲンハと出会ってしまったら、間違いなくアシュランは戦うだろう。それが、例え勝ち目のない戦いだとしても・・・・。
透:「月菜。憐を連れて、一足先に戻っていてくれ!」
月菜:「と、透!? まさか・・・」
 月菜の顔色がサッと変わる。しかし透には、答える暇さえもどかしい。
透:「アシュランを助けに行くんだ!!」
月菜:「ちょ、無茶は止めてよ!それに、今アシュランは仲間と一緒なんだよ!今の透が行ったって、かえって足手まといだよ!!」
透:「わかってる!でも・・・」
 透の脳裏に、優哉の死がよみがえっていた。目の前で無残に散っていった、大切な人の命。
透:「でも俺は、もうダチを見殺しにしたくはないんだ!!!!」
 そう言うが早いか、透は全身のスラスターを全開にし、全速力でゲンハたちが去って言った方向へ向かって行った。


 アシュランもまた、ゲンハの襲来を察知していた。
ミゲル:「アシュラン、逃げよう!!俺たちの装備も探査用だ。今戦うのは、危険だ!!」
 それはアシュランにもわかっていた。それに、アシュランのMSも、十分に動けるだけで、コンディションは完璧とは言い難いのだ。
 しかし、アシュランは言った。
アシュラン:「お前たちは、先に基地へ戻っていてくれ。俺は、あいつと決着をつける!!!」
 少し前のアシュランなら、こんな選択はしなかっただろう。しかし、透たちとの出会いを経て、アシュランの中の何かが、確実に変わり始めていた。
イザーク:「何ぃぃ!!?キサマ、一体何を考えて・・・」
アシュラン:「済まない!必ず戻る!!!!」
 イザークの反論もそこそこに、アシュランはMSを九十度反転させると、仇敵たちが向かってくる方向に、全速力で飛び去っていった。

 少しすると、目の前にはすぐにゲンハのあの忌まわしい機体が見えた。
アシュラン:「ゲンハ!!!!」
ゲンハ:「いよぉ、まさか、自分からノコノコやって来るとはなぁ。追いつく手間が省けたぜぇ。さーて、オルガを殺された怒りを、テメェをぶっ殺すことで晴らさせてもらうぜぇぇ!!!」
 スクリーンにうつる、醜悪な狂人の顔。しかし、見るのもこれで最後だ!
アシュラン:「それは俺のセリフだ!!行くぞ!!!」
 ディアッカの、そしてレミーの仇を討つために、アシュランはビームライフルを撃ちながらゲンハに突進、そして、ビームサーベルで斬りつけた!
 しかし、ゲンハはそれを、大鎌であっさりと受け止める。
ゲンハ:「ぬるいぜぬるいぜぇ!!どうしたよぉ、殺気だけは人一倍なのに、そんな攻撃じゃぁ、俺サマを殺れねえぞぉ!!!!」
 今度は、ゲンハが激しく反撃に転じる。アシュランはゲンハの斬撃を何とか全て受けるが、やはりMSが万全ではないせいか、ゲンハの斬撃がいつもよりも重く感じる。
アシュラン:「くっ!!!」
 アシュランはイーゲルシュテルンで牽制しながら、ゲンハと間合いを取ろうとした。しかし、ゲンハは機体に無数のバルカン弾が当たるのも構わず、間合いを執拗に詰めてくる。さらに、アシュランの背後にいつの間にか、レイダーが回っていた。
クロト:「俺のこと、忘れちゃいませんかってんだ!!!」
 ウェブライダー形態のレイダーはツォーンを放ちながら、クローで掴もうと突進してくる。アシュランは寸前で気付き、ツォーンをシールドで防ぎ、突進をかわした。しかしその間に、ゲンハは一気に間合いを詰め、巨大な処刑鎌で斬りかかる。
アシュラン:「うあっ!!!」
 それも何とかかわしたが、アシュランは二機の猛攻の前に、次第に防戦一方になりつつあった。


イザーク:「まったく、アイツは何を考えているんだ!!!」
 イザークは、アシュランが去った方向を見ながら怒鳴った。イザークたちは、まだアシュランに言われた通りにはこの場を去ってはいなかった。
イザーク:「俺たちは何のために来たと思ってるんだ、アイツは!!!!」
ミゲル:「イザーク・・・・。」
 見ると、ミゲルは回線の向こうから、真剣な表情でイザークを見ていた。
ミゲル:「俺は、アシュランを助けに行こうと思う!!」
イザーク:「ミゲル・・・・。」
ミゲル:「お前も、本当は知っているだろう、アシュランとあのゲンハのこと。あいつ、本当はもっと最初から、こうしたかったはずなんだ。だから・・・、俺は、あいつのことを助けたい!」
イザーク:「ち・・・・」
 イザークも、アシュランとゲンハの因縁ことは、薄々だが感づいていた。飛刀との戦闘の時のアシュランの様子を見ていれば、気付くなという方が無理というものだ。しかし、アシュランはそれを無理に皆に隠して『よくできた隊長』を演じているつもりだったようだし、アシュラン自身がそのことをなかなか話そうとしないので、イザークはイライラしながらも、あえて気付かないふりをしていただけなのだ。
 そして、アシュランの仇討ちを助けたいという想いは、イザークとて同じだった。なんだかんだいって、同じ小隊の仲間だ。当然だ!
イザーク:「そうだな!さっさと行って、アイツに自分の馬鹿さ加減を身に染みて教えてやるか!!」
ミゲル:「よし、サンキュ、イザーク!!それじゃあ、俺はあのトリ野郎を足止めするから、イザークはアシュランと一緒にゲンハを速攻で仕留めてくれ!!俺の方はあまり長くは持たない。できるな!!?」
イザーク:「当たり前だ!!誰にものを言っている!!!」
ミゲル:「上等!!」
 そして二機もまた、全速力で戦場へと急いだ。


 アシュランは、既に限界に近かった。ゲンハのレールガンをなんとかかわすが、レイダーの機関砲がアシュランの退路を妨害する。
クロト:「ヒャハハ、死ね死ね死ね死ねーー!!!!」
 そのとき、一条のビームがレイダーを狙って放たれた。
ミゲル:「アシュラン!!!!」
アシュラン:「ミゲル!!!?」
 ミゲルはそのまま、レイダーに向き直ると、レイダーに向かってフットミサイルを発射する。
 そのとき、ミゲルの後ろから別の機体が現れた。
イザーク:「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
 イザークのデュエルだ!
アシュラン:「イザーク!!」
 イザークはそのままゲンハに向けて、ビームライフル、多弾頭ミサイル、レールガンを立て続けに放ち、次の瞬間、ビームライフルとシールドを投げ捨てると、二本のビームサーベルを引き抜き、更に勢いを増して、そのままゲンハに突撃した!
 ゲンハはゲシュマディッヒパンツァーでビームと砲弾を全て防ぐが、その立て続けの猛攻に、さすがのゲンハも衝撃までは防ぎきれずに体勢を崩す。その隙に、イザークが一瞬でゲンハの懐に潜り込み、両手のビームサーベルをそれぞれ一閃、ニーズヘグを持った両手とビーム偏向板の片割れを一瞬のうちに斬り裂くと、ゲンハの機体を思い切り蹴飛ばした。
ゲンハ:「ちぃっ!!」
 落ちてゆくゲンハは海面に叩きつけられまいと、バーニアを全力で吹かしなんとか踏みとどまったが、その一瞬、ゲンハの動きが完全に硬直する。今のゲンハには、ビーム偏向板の防御は無い!
イザーク:「アシュラン、今だぁぁぁぁぁ!!!!!」
 文句無い、絶好のタイミング。
(いける!!!!)
 アシュランは必殺のスキュラを放つため、夢中でイージスをウェブライダー形態に変形させた!!


 透は、ようやくアシュランたちの姿を発見した。アシュランのシュミクラムは、まだ無事だ!
透:「よし、今いくぞ、アシュラン!!!!!!」
 その時だった。透の目の前で、信じられない光景が展開した。
透:「!!?」
 アシュランのイージスが、次第に形を変え、見覚えのある、いや、今まで一日たりとも忘れたことの無いあの形に変貌していく。そして変形が終わったとき、そこにあったのは、禍々しい四本のクローを持つ、戦闘機形態のシュミクラムだった!!
透:「あ、ああ、あ・・・」


優哉:『やめろ!俺たちはテロリストじゃない!!!』
 しかし、四本のクローを掲げて突進する可変型のMSは、勢いを緩める素振りさえ見せない。
 そして、透を庇った優哉に、その凶悪なクローが迫り・・・・・。
 それは優哉を、透の大切な親友を、無慈悲にも虫けらのように貫いた!!!


透:「お前か!!!お前が優哉を!!!!!!!」
 透はビームサーベルを抜き放ち、“優哉の仇のシュミクラム”へ向けて、突進した!!!!
透:「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」


 月菜は、何とか透に追いついていた。後ろには、憐も一緒だ。「帰れ」と透に言われはしたが、だからといって「はいそうですか」と透を置いて帰るなど、月菜にも憐にもできるはずがなかった。
 そのときだった。二人の目前で、透が突然ビームサーベルを抜き放ち、ある方向に一直線に突進したのだ。
 そして、透の進行方向を見て、月菜は息を飲んだ。そこにいたのが、忘れもしない『あの』シュミクラムだったせいもあるが、いや、しかしその前に、あれは・・・・・。
月菜:「透、やめてぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」


 レイダーのミョルニルを辛うじて重斬刀で受け、その衝撃で弾き飛ばされたミゲルは、ふとアシュランの方向を向き、そしてギョッとした。
 アシュランに向かって、シュミクラムが一機、ビームサーベルを掲げて、物凄い勢いで突進してきている!!!
 あれは、確かゼフィランサス。確か以前、アシュランと交戦したとかいう機体だったはず・・・・。
いや、そんなことはどうでもよい。アシュランはまるで気付いていない。このままでは、アシュランが―――!!!!
ミゲル:「アシュラン、危ない!!!!!!」


 スキュラのエネルギーの臨界直前、アシュランは横目に、見覚えのあるMSの姿をとらえていた。
(あれはゼフィランサス、透!?)
 アシュランの危機を察知し、救援に来てくれたのだろうか。当然、そうに違い無い。おそらく機体も完治していないだろうに、危険を顧みず、アシュランを助けに来てくれたのだ。
 しかし、どこか様子がおかしい。透はゲンハに向かって突進しているはずなのに、透が向かう先は、どう見てもアシュランだ。
 いや、まさか、そんなはずはない。透とは、さっきまであんなに楽しく話していたのだ。アシュランは、あんなに短い時間で、彼とは親友になれるかとさえ思ったのだ。だが、しかし・・・・。
透:「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」 
 アシュランは、生まれて初めて、腹の底から凍りつく感触を味わった。もう間違いない、彼の標的は『アシュラン』だ!!!!
 かわすことは、不可能だった!!!

 そこから先は、アシュランにはまるでスローモーションのように見えた。

 透のビームサーベルがイージスのコックピットに突き立てられる寸前、ミゲルのジンが、イージスを突き飛ばした。
 弾みで、スキュラはゲンハから、わずかに逸れた。
 透のビームサーベルは、ミゲルのジンのコックピットを、まるで吸い込まれるように貫き・・・・。

 ミゲルのジンが、目も眩むような激しい閃光を発し、消滅した。

アシュラン:「ミゲルーーーーーーーーー!!!!!!!?」





第十五章『運命の皮肉』完
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現在社会人として東京都心の企業に勤めている。出身地は北海道。
一人っ子。故に(?)わがままでせっかちなところがある。趣味はドライブと創作作品鑑賞。ただし基本的に超インドア。
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