Endless world -咬龍の庭-
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創作小説『バルドフォースG』 第十七章

久しぶりの、本編掲載です。
この『バルG』も遂に後半。クライマックスに向けて、できる限り早めに掲載していきたいと思います。
では、いつも通り「READ MORE」にて本文へ。










バルドフォース エグゼ

 


バルドフォース エグゼ




バルG第十七章


『慟哭』


 


 


 閃光が瞬いた。
 
仮想の雨が降りしきる中、白と赤の巨人は激しく激突した。
 
二体の機動兵器を操る二人の青年の頭には、お互いを殺すことしか無かった。それぞれ、友の死の悲しみを、そのまま相手への殺意としていたのだ。
  アシュラン・ザラは、殺意に動かされるままに、白の機体へ向けてビームの刃を振るっていた。そのときのアシュランには、目の前の白い機体を傷つけることが全てであり、自分の生きている意味だとさえ思えた。
 
そして、遂にとどめをささんという時、白い機体のコックピットが上半身と下半身から分離、コックピット部は戦闘機となり、アシュラン目掛けて一直線に突っ込んだのだ!
  アシュランの目には、迫り来る戦闘機の背後に、凄まじい憤怒の形相が見えた。まるで、悪鬼のような顔をしたその眼に、自らの顔が映る。そこにあった自らの顔も、まるで鬼か悪魔のように、凶悪に歪んでいる。アシュランが最も憎んでいる狂人でさえしないような、この世のありとあらゆる憎悪を集めて固めた、恐ろしい表情。それが、アシュランに迫り、そして・・・・。


 


 


アシュラン:「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
 
ガラスが、落ちて砕ける音がした。そしてその音のおかげで、アシュランは、今まで見ていたものが全て夢だったと悟った。
 
喉が、ひどく渇く。そして体の節々が軋み、錆びた機械のように痛む。
アシュラン:「・・・・ここ、は?」
ニコル:「アシュラン、よかった、気が付いたんですね」
 声がした方を見ると、良く見知った、幼さを残した少年が、心底安心したようなあどけない笑顔でアシュランを見ていた。そして、ニコルに「気が付いたんですね。」と言われて初めて、アシュランは今自分がベッドに寝ていて、身を起こしている状態であることに気が付いた。そう言えば、周囲の景色、これは確か、基地の医務室・・・・?
アシュラン:「俺は・・・一体、どうしてこんな所にいるんだ・・・・?」
イザーク:「それは、キサマがブザマに気絶したからだろ!!!」
 
見ると、前方の棚のそばで、イザークがせっせと割れたガラスの欠片を集めていた。先程の音は、棚の上にあったグラスを、彼が落として割ってしまったためのものらしい。
イザーク:「いきなり無断で出動したかと思えば、追いかけて来てみたらあんなことになってやがるし、おまけにこっちが仕方なく看病に来てやったら、死にそうな声をあげて驚かせやがるんだからな!!」
アシュラン:「あんな・・・こと?ウッ!!」
 
イザークの言葉に何かを思い出しかけた途端、アシュランの頭が、それを拒否するかのようにズキリと痛んだ。
ニコル:「アシュラン!!大丈夫ですか?イザーク、アシュランは病人なんですから、そっとしておいてあげましょうよ」
 
ニコルが嗜めると、イザークは面白くなさそうに鼻を鳴らして、またガラスの破片集めの作業に戻った。
ニコル:「アシュラン、喉渇いたでしょう」
  ニコルはそう言いながら、甲斐甲斐しく、アシュランに水の入ったコップを手渡した。
アシュラン:「ありが・・・とう・・」
 
アシュランはそれを受け取り、ゆっくりと喉に流し込んだ。水は冷たく、そのおかげで、今まで靄のかかったようだった思考が、幾分はっきりとしてくる。
(俺は、どうしてこんな所にいるんだ?気絶したから?どこで?そうだ、確か俺は、ネットでシュミクラムと戦っていたんだ!戦った?誰と?そうだ、ゼフィランサス!!あれは・・・・・・!!!!)
 そこまで思い出したとき、不意にアシュランを、凄まじい悪寒が襲った。
アシュラン:「あ、ああ・・・・。そうだ、俺は、透を、透を・・・・」
ニコル:「アシュラン!!今は無理に思い出さなくてもいいですよ。二日も寝ていたんですから、とにかく、ゆっくりと休んでください」
 ニコルがなだめようとするが、アシュランの思考は止まらなかった。
アシュラン:「そうだ!!俺は、あのとき透を、透を本気で殺そうとしたんだ!!!」
 アシュランの背中から、冷や汗が次から次へと吹き出てくるのが感じられた。
 そうだ。アシュランは、透を殺そうとしたのだ。親友とさえ思った青年を、ゲンハに対して抱いたのと同じ位の殺意を以って・・・・。
アシュラン:「俺は、俺は、俺は何てことを!!!!」
ニコル:「アシュラン、落ち着いてください、アシュラン!!!」
 ニコルが激しくアシュランの背中をゆすり、そのおかげでアシュランは、少し正気に戻ることができた。
アシュラン:「あ、ああ・・・・」
 そのとき、アシュランの膝の布団の上に、錠剤の入った小さな箱が投げつけられた。投げたのは、イザークだった。
イザーク:「お前に何があったのかは知らんがな、とにかく、今はこれでも飲んでもう一度寝ろ!!あと、次に起きるときは、あんな殺されそうな悲鳴をあげて起きてくるんじゃないぞ!!!」
 イザークは吐き捨てるように言うと、そのまま医務室を出て行ってしまった。
 アシュランは、睡眠薬の入った箱を、何となく眺めた。
ニコル:「イザークは、あれでもアシュランのことを心配しているんですよ。イザーク、ここ二日間、一睡もせずに看病してくれましたからね」
 そう言って笑いかけるニコルの目にも、薄くない隈ができていた。
アシュラン:「そういえば、ニコル、お前、怪我は大丈夫なのか!!!?」
 そうだ。ニコルは確か、先の戦闘で負傷し、アシュランが出撃したときには、まだここで寝ていたはずなのだ。
 そんなアシュランに対し、ニコルはやつれを無理に隠して、にっこり笑った。
ニコル:「ええ。大丈夫ですよ。心配かけましたね。それにしても、僕が起きて医務室の外に出たら、入れ違いでアシュランが運び込まれて来るんですから、流石にあれはビックリしましたけどね」
 そう言って、ニコルは悪戯っぽく笑うが、ニコルの目の隈は、彼が少なくとも一晩は徹夜している証拠だ。そして、ニコルの性格から言って、例え自分が回復したばかりでまだ本調子ではなかろうと、仲間のためなら寝ずの看病も平気でやりかねない。ニコルは、そういう子なのだ。
アシュラン:「・・・・済まない、ニコル。随分無理をさせたみたいだな・・・」
ニコル:「いえいえ、そんなことはないですよ」
 そう言って、ニコルは痛々しくさえある笑顔で続けた。
ニコル:「それに、こんなことを言うのは不謹慎なんですが、正直アシュランのことで助かってるんです。実は、今回僕が怪我したことで、父さんと母さん、なんかすごく慌ててしまって。それに、ディアッカとミゲルのこともあったし、父さんと母さん、僕に軍を辞めさせるために、基地まで押しかけて来たんですよ、それも凄い剣幕で。もし、僕に『アシュランを看病する』っていう口実が無かったら、強引にでも引き戻されていたかも知れませんね」
 アシュランとしては、ニコルにはこの機会に軍を辞めてもらった方がありがたかった。もちろん、ニコルは非常に優秀な兵士で、アシュランたちザラ隊にとっても得がたい戦力だ。しかし、この戦いに向かない、ピアニストになるべくして生まれてきたような少年を、戦場などで死なせるわけにはいかないのだ。
 そんなアシュランの思いを知ってか知らずか(多分、この聡明な子は知っているのだろうが)、ニコルはこう締めくくった。
ニコル:「とにかく、僕はまだ軍隊を辞める気はありませんよ。まだ、アシュランの大切な人の仇、あのゲンハだって倒してませんからね」
 ニコルが何気なく言った『仇』という言葉に、アシュランは一瞬、息が詰まる思いがした。
 


『どうして、どうして・・・・・どうしてお前が、優哉を殺したぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
 


 友の、憎しみに満ちた叫びがよみがえる。アシュランに大切な親友を殺された青年の、血を吐くような叫びが・・・・・。
アシュラン:「『仇』か・・・・。俺も、透にとっては仇・・・・」
ニコル:「アシュラン・・・・?」
 ニコルが、気遣わしげにアシュランを見た。その吸い込まれるような瞳に、アシュランは一瞬、全てをこの心優しい少年にぶちまけたい衝動に駆られた。しかし、それはできない。ニコルは、今でさえこれ以上無いというほど無理をしているのだ。その上、こんな話など、聞かせてはいけない。
アシュラン:「と、とにかく、俺は大丈夫だ。ニコルも、もう部屋に戻って休んだ方がいい」
 アシュランは、強張った顔を無理に動かして、なんとか笑って見せた。
ニコル:「そうですか・・・。わかりました、それでは、お言葉に甘えさせていただきますね」
 そう言って、ニコルは立ち上がったと同時に、堪えきれずに欠伸を漏らした。
 ニコルが医務室を出る直前、アシュランは、ふと、あることが気になった。非常に疲れているニコルを呼び止めるのは気が引けたが、どうしても今聞いておきたいことだった。
アシュラン:「ニコル、済まない、ちょっといいか?」
ニコル:「はい?」
アシュラン:「・・・・俺が気絶したあの後、透、いや、あの相手のパイロットはどうなったんだ」
 アシュランの記憶が正しければ、透は、小型のコア・ファイターで、アシュランに特攻をかけてきたのだ。あんな無謀な攻撃、透が生きているとは思えなかった。
 ニコルの返事は、正直、聞きたくなかった。もし聞いてしまえば、アシュランは、透の親友だけではなく、透さえも殺してしまったことになるのだ。
 しかし、ニコルの口から出たのは、意外な事実だった。
ニコル:「彼、確か、『相馬透』でしたよね。とにかく、奇跡的に無事でした。機体は大破し、修理不能。あ、これはイージスもですね。彼は今、無事捕縛されて軍の拘留所で取り調べを受けているはずです」
 思いも寄らなかった言葉。透は生きていた。アシュランは心が、少し軽くなるのを感じた。
 しかしニコルは、更に、思いも寄らぬことを続けた。
ニコル:「それと、捜査隊が辿り着いたとき、『相馬透』の仲間らしき少女が二人、シュミクラムで現れたんですよね。彼女らも、その場で無事捕縛。名前は忘れましたが、確か彼女らも、『ステッペン・ウルフ』のメンバーだそうで、これで事実上、チームは壊滅させることができたみたいです。なんでも、そのうちの一人は、まだ小さな女の子だったとか」
 アシュランは、頭を金槌で殴られたような衝撃を受けた。
 それは多分、月菜と、透の妹らしき、無邪気であどけないあの少女だった。


 


 


 透は、拘置所の鉄格子の中にいた。透もまた、捕縛されてから先程まで、まる二日間眠っていたのだ。
 透が目を覚ましたとき、まず目に入ったのは、透を半泣きで覗き込んでいる月菜の顔だった。月菜の背後には、薄汚れたねずみ色の天井。大体これで、今自分が置かれている状況は把握できた。
透:「月菜、お前・・・・」
 追いかけてきてしまったのか。こんな所まで。
月菜:「透、大丈夫。何も心配はいらないから・・・・・」
 月菜はこんなときにでも、気丈に笑みを浮かべようとしている。透はもう、月菜に対して怒る気はしなかった。ただ、結局彼女を巻き込んでしまったことへの、慙愧の念があるばかりだった。
透:「なあ、月菜。俺は何で、生きているんだ?」
 それとも、ここは実は地獄なのだろうか。ではなぜ、月菜がいるのだ?まさか、地獄まで透についてきたなどと、笑えない冗談みたいなことがあるわけはない。
月菜:「透、覚えてないんだ。そうだよね、あたしも、あのときは本当に、もうだめかと思ったしね・・・・」
 
そう言って、月菜の目に、再び涙が溜まってゆく。


月菜:「取調べに来た軍人さんに聞いたんだけど、透、アシュランにコアファイターで突撃したんだって?でも、イージスにぶつかる前に、透、急ブレーキをかけたよね。だから、機体が急激に減速して、上を向く形になったんだって。それで、前方のコックピットから突っ込まずに済んだらしいんだ」
 「でも、怪我らしい怪我もほとんど無い、ってのは、奇跡的らしいんだけどね」と、月菜は締めくくった。
透:「そう、か・・・・。アシュランも、無事なのか?」
月菜:「・・・・・うん。」
 透は、アシュランのことを思い出す。
 あの時、透の頭の中にあったのは、ただ『憎き優哉の仇を討つ、殺す』ことだけだった。相手がアシュランだとかは、あのとき、変形したイージスを見た後、飛んでしまった気がする。そして、透は、ただアシュランを殺すためだけに、脱出艇であるコアファイターで、何の躊躇いもなく特攻さえしたのだ。
 あの時の透は、殺意の塊だっただろう。ただ、相手を殺すためだけの存在。でなければ、あんな正気の沙汰では考えられないようなことを、するはずが無い。
 そして、あのときのアシュランの叫び。
 


やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!
 


 あの瞬間、透は自分の網膜に、確かに自分自身の顔が映ったのを見た気がした。
 その顔は、とても人間のものとは思えなかった。憎しみと怨恨を限界まで濃縮したような醜い顔。まるで、なにか途方も無い化け物のような顔だった。そしてそれは、透が『優哉の仇』に対して抱いていたイメージの、そのままだったのだ。
 あの時、アシュランは、何に対して「やめろぉぉぉ!!!」と叫んだのだろうか。アシュラン自身の命を奪うことに対してだろうか。普通は、そう考えるのが当たり前だ。しかし、透には、そうは思えなかった。アシュランは、憎しみに飲まれそうになっている透に対して、『これ以上はやめろ!!』と言ったのではないだろうか?そう考える根拠は無いが、何故か透には、そう思えて仕方が無かったのだ。
透:「そう言えば、憐は?」
 すると、月菜は沈痛な面持ちで俯いた。
月菜:「あたしと一緒に、捕まっちゃった」
透:「な・・・・・」
月菜:「ごめんね・・・。憐ちゃん、結局守れなかった・・・」
 月菜はそう言って自分を責めるが、透には、月菜を責める気持ちなど少しも湧いてはこなかった。
透:「いいよ、月菜。悪いのは俺だ。謝らなきゃいけないのは俺なんだ」
月菜:「透?」
透:「俺が全部悪いんだ!!月菜と憐まで、結局巻き込んでしまった、しかも、俺の身勝手な復讐に、だ!!!」
月菜:「とおる・・・・・」
透:「そうさ、わかっていた、わかっていたはずなんだ!!アシュランは何も悪くない!! 前にも言った通り、優哉が死んだのは俺の責任なんだ!!でも、結局俺は、まだそれを受け入れきれてなくて、まだ誰かのせいにしたくて・・。だからなんだ、アシュランを、優哉の仇のシュミクラムを目の前にしたとき、頭に血が上って何が何だかわからなくなった!!あれだって、俺がガキで、幼稚で、身勝手だったからだったんだ!!なのに、月菜や憐まで巻き込んで、アシュランに辛い想いさせて、その上アシュランの仲間を殺してしまった!!!悪いのは・・・俺なんだ!!!」
 気が付くと、全てぶちまけていた。自分一人では抱えきれなかったものを、周囲に当り散らすようにして。
しばらくして気分が落ち着き、またガキじみた行為をしてしまったと自己嫌悪に苛まれかけた透を、不意に月菜が、優しく抱きしめた。
月菜:「透、大丈夫。透一人に辛い想いはさせないから。あたしが、どこまででも、どんな所へでも、ついていってあげるから・・・・」
透:「つき・・な」
 透はその言葉には応えられず、ただ涙を流すだけだった。
 そんな二人を、鉄格子がはめられた窓から注ぐ月明かりだけが照らしていた。


 


 


 その夜、アシュランはまだ寝付けずにいた。イザークが持ってきてくれた睡眠薬は、飲んだ。だが、アシュランが薬の連れてきてくれた眠気に身を任せようとすると、アシュランの頭の中に、透たちのことが引っ切り無しに流れ込んできていたのだ。
アシュラン:「・・・・・」
 アシュランは、ベッドのそばの机に無造作に置かれていたペンダントを手に取り、それを無感情な瞳で眺めながら少し玩んでみた。柄の部分に小さな宝石のようなものが埋め込まれたそれは、短剣のような形をしていた。これを持ってきたニコルによると、電子アイテムを封入した特赦な首飾りだという。何でも、ネット空間ではナイフになるそうで、このペンダントはアシュランが捕らえた凶悪犯が持っていたものらしい。
 アシュランは、その『凶悪犯』の顔を思い浮かべた。相馬透。彼は、現在軍の拘置所にいるという。彼の意識がまだ戻ってきていないので取調べはまだ行われていないだろうが、彼が意識を取り戻せば、すぐにでも開始されるだろう。そして、彼が全ての情報を吐き尽したあと、彼を待っているのは処刑台だけだ。
 透は、本当にそうなるに値する、極悪人なのだろうか?アシュランには、そうは到底思えない。だとしたら、彼をそうさせてしまったのは、一体何なのだろうか。
 答えは、問われるまでも無い。それは、アシュラン自身だ。
 彼らが軍構造体に仕掛けてきたあの日、戦闘の中でアシュランの頭の中にあったことは、ただ相手を、テロリストを、ゲンハを殺すこと、ただそれだけだった。確かに客観的に見れば、そんなところに無用心に侵入してきた透たちにこそ非はあるだろう。だが、だからと言って、アシュランがあのとき取った行動が適切だったかといえば、断じて肯定することはできないのだ。憎しみに身を任せ、怒りによって相手を殺す。いくら戦場とはいえ、そんなことが人として許されるはずは無い。そしてそれこそが透の親友を死に至らしめた直接の要因ならば、確実にアシュランにも非はあるのだ。
 
ゲンハは、レミーを殺した。無抵抗な彼女を、この世にある限り最も屈辱的な方法で。だから、どうあってもゲンハを許すことはできないし、ゲンハを倒すことは間違いの無い正義であろう。だが、だからといって、ゲンハを倒すために心の全てを憎しみで染め上げても許されるという道理などないのだ。
 今回の一件は、全て自分のせいだと、アシュランは思っていた。心を容易く憎しみに塗り潰してしまった、自分の未熟さが原因なのだと。そのために、透の親友は、ミゲルは死に、透や彼の大切な人たちは取り返しのつかないような大罪を犯してしまったのだ。
アシュラン:「・・・・俺は、俺は、何という事を!!!!!!!」
 そのとき、医務室の扉が開いた。そして、父のパトリックが、ゆっくりと室内に入ってきたのだ。
アシュラン:「ちち、うえ・・・・?」
 アシュランは、目の前にいる人物が誰だか、一瞬わからなかった。しかし、そこにいたのは、紛れも無く彼の父だ。
 アシュランは、動揺する心を一瞬でなんとか落ち着けた。
 アシュランが軍に入ったのは、ゲンハを倒すためということもあるが、それ以前に、『ザラ家の長男として』エリート軍人の家系の長である父に認められたいと思っていたからだ。今、前者の目的が揺さぶられているアシュランにとって、せめて父に、何か言葉をかけて欲しかった。どんな言葉をかけて欲しいかは彼自身もわからなかったが、せめて、何か『父親らしい』言葉をかけてもらえれば、アシュランも報われるような気がした。
 しかし、視線を合わせた父は、相変わらず冷徹に、息子を見下ろしていた。
パトリック:「アシュラン。貴様、今回の一件が、軍規違反に当たることは重々承知しているな?」
 発せられた言葉も、その言葉を発する口調も、相変わらず事務的で、高圧的なものだった。
アシュラン:「・・・・はい。申し訳ございません」
 アシュランも、できるだけ落胆を外に出さないよう、事務的に応えた。すると、パトリックは品定めをするような視線でアシュランを見回してから、再び氷のような口調で話し始めた。
パトリック:「・・・まあ、いい。結果的に、凶悪犯『ステッペン・ウルフ』を、捕縛できたのだからな。機体は失ったが、データを見せてもらった。それもやむを得ない相手だったということは、私にもわかる。近々お前には、今回の功績を讃え、最新鋭の機体が贈られることに決定した。もっとも、その機体はまだ未完成だから、完成までは、先日捕縛した『ステッペン・ウルフ』の仲間から奪還した、『RX―78NT―1・アレックス』を使ってもらう。昇進は無いが、これは軍規違反のペナルティだと思え」
アシュラン:「・・・・はい」
 軍規違反のお咎め無しどころか、実質的にはほとんど昇進と変わらない処遇は意外だったが、正直アシュランには、何の感慨も湧いてはこなかった。自分の仕出かしてしまったことの後始末を自分でしただけ。それも最悪の形で。人に褒められるようなことは、何一つしていないからだ。
パトリック:「とにかく、良くやってくれた。存分に休養し、より一層、任務に励め」
 父の褒め言葉も、これが『息子へ』のものではなく、『よくできた道具へ』に対してであることは、アシュランもわかっていた。
アシュラン:「父上!!!」
 だからだろうか、パトリックがもう用は済んだとばかりに踵を返そうとしたとき、アシュランは思わず叫んでしまった。
 パトリックが、足を止めて振り返った。その表情から、感情を推し量ることは難しい。
 アシュランが何も言えずに戸惑っていると、パトリックは暫らく考え込むようにした後、口を開いた。
パトリック:「アシュラン、今回は、本当によくやってくれたな」
アシュラン:「父・・上?」
 アシュランは、一瞬、我が耳を疑った。パトリックから発せられたその声は、明らかに『息子に対して』の言葉だったからだ。
 しかし、次の台詞を聞き、アシュランは更に我が耳を疑った。
パトリック:「ようやく、あのゲンハとかいうゴミを追うのを止めたようだな。もうこれ以上、あんな下らんことは止めて、我らが栄光あるザラ家の名に恥じぬよう、努力しろ」
 そう言うと、唖然とするアシュランに一瞥もくれず、パトリックは医務室を後にした。
アシュラン:「・・・・・・」
 アシュランは、まだ自分の耳にした台詞が信じられなかった。父は、さっき、何のことについて何と言ったのだ?
 『下らんこと』?ゲンハを追うことが?レミーの、大切な人の無念を晴らそうと考えることが、『下らない』??
 アシュランは、奈落に堕ちてゆくような気分を味わっていた。父とは、こうも断絶があるとは。それならば、父が言う、そして自分が心のどこかで目指していた『栄光あるザラ家の跡継ぎ』とは何なのだろう??
 アシュランは、足元が崩れてゆく音を聞いたような気がした。


 


 
 透は、突然呼び出されて面会室の中にいた。眠っていたところを叩き起こされ、何故か透一人だけ、屈強な兵士に面会室に連れてこられたのだ。面会室の中に入った途端、透を連れてきた兵隊は部屋から出、錆が目立つ鉄の扉に鍵をかけた。
 暫らくして、分厚いガラスの向こうの扉が開いた。そしてそこには、この場所に似つかわしくない、一人の美しい女性が、いかにも高価そうなスーツに身を包んで立っていた。
透:「あ、あんたは・・・」
 その女性の姿を見て、透はあっけに取られた。
 その女性の顔は、知らぬものはいないのではないかというほど有名な顔だった。彼女は、V・S・Sの社長、橘玲佳だったのだ。
玲佳:「相馬透君ね。はじめまして」
 玲佳はそう言って、意味ありげな笑みを浮かべた。
 透は、未だに信じられなかった。国内トップの一流セキュリティ会社の社長が、一介のハッカー、それも逮捕された犯罪者に過ぎない透に、わざわざ面会に来るのだろうか?
 透が何も言えずにいると、先に玲佳から口を開いた。
玲佳:「あなたの噂は、わが社の情報網にも届いているわ。私があなたにわざわざ会いに来たのは、他でもない、あなたをわが社の正式な一員として、迎えに来たからよ」
透:「!!!?」
 一瞬、透は玲佳が何を言ったのかわからなかった。しかし、玲佳はさも当然のことのように続けた。
玲佳:「入社のための書類一式はここに用意してあるわ。後でここの看守に渡すから、きちんと受け取ってね」
透:「え、い、いや、その・・・・」
 透は、ようやく事態を把握しつつあった。しかし、未だに信じられない。
透:「その、何故V・S・Sが、俺みたいなハッカーを?それに、俺は第一級の犯罪者で、もうここから出られない身なんだが・・・・」
 すると、玲佳は何かを含んだ、妖艶な笑みを浮かべた。
玲佳:「ふふ、そんなことは、私にかかればどうとでもなるわ。私は、あなたの優れた技術がわが社にとって非情に有益なものと判断したの。いくら払っても惜しくない、というほどにね」
透:「・・・・・」
玲佳:「条件は、かなり弾むわよ。あなただけでなく、あなたの幼馴染の笹桐さんも面倒を見るわ。なんなら、彼女も一緒にV・S・Sに推薦してもいいわ」
透:「月菜も、ですか?」
 ますます信じられない話だ。玲佳は、V・S・Sの社長は、透だけでなく、月菜の罪をももみ消して、その上二人ともV・S・Sで雇いたいと言ってきているのだ。
玲佳:「ふふ。なんか、『信じられない』といった顔ね。でも、あなたにはそれだけの価値がある。だから、私があなたを買いたいと言うのも、なんら不自然なことではない」
 どうやら、この話は紛れも無く現実のようだ。しかし、それでも透の中では、完全には信じられないものだった。だから、透はとりあえずこう答えた。
透:「余りにも急な話なんで、少し、考えさせてください・・・・」
玲佳:「そうね、いいわよ。ただし、あなたたちの取調べが始まって、罪が公になればなるほど、この話を実行するのは難しくなるわ。だから、時間はあまり無いことを、覚えておいてちょうだいね」
 そう言うと、玲佳は立ち上がり、踵を返して部屋を出て行こうとした。
透:「あ、待ってください!!」
 透は、玲佳を呼びとめた。
玲佳:「何?」
透:「その、条件についてなんですが、俺たちだけではなく、憐も、もう一人捕まっているやつも、何とかしてもらえないでしょうか」
 すると、玲佳はゆっくりと首を横に振った。透は落胆しながらも、納得していた。玲佳の出した話は、ただでさえ現実離れした、破格の好条件だ。その上透の方から要求するなど、おこがましい以外のなにものでもない。
 しかし、玲佳はこう言った。
玲佳:「確かに私としても、彼女もわが社で雇いたいのだけれど、残念ながらそれはできないわ。だって、彼女は今、捕まってすらいないのだから。」
透:「え!!?」
玲佳:「彼女は、捕らえられてすぐ、不可思議な力で拘束を自力で解き、脱走したの。彼女の身元、没入地点、過去の罪状など、軍当局やわが社でも、一切把握できていないわ。まあ、私の方からあなたたちに聞くつもりも無いし、とにかく、そういうことよ」
 透が安堵のため息をつくと同時に、玲佳は部屋の外から扉を閉めた。
 玲佳が部屋を出て行ってから、看守が呼びに来るまで、透は先程の話を考えていた。
 確かに、かなり唐突で急な感はある。もしかしたら、何か裏があるかもしれない。しかし、今の透に、他にどんな選択肢があるのだろう。
もし、玲佳が単に透一人だけをスカウトしたならば、透は断わっていたかもしれない。しかし、玲佳の話を受ければ、月菜も助かるのだ。
 月菜。透の恩人の娘で、大切な幼馴染。いつも透の後をついてきた彼女を、透は遂にこんなところまで巻き込んでしまった。その償いができるのならば、透にこの話を断わる理由など無かった。
 月菜が日の当たる場所に出られるのなら・・・。
 透は、拳を強く握り締めた。


 


 
次の日の夜


 アシュランは、ただ真っ白い医務室の天井を見上げていた。
アシュラン:「・・・・・・・・」
 あれからもう、何時間たったかもわからない。今は何も、考える気など起こらなかった。
 その時だった。突然、サイレンの音がけたたましく鳴り響いたかと思うと、防毒マスクをした二人の人間が担架を持って、大急ぎで駆け込んできたのだ。
?:「あんた、大変だ!!!」
アシュラン:「な・・・。一体、どうしたんですか!!?」
 その二人の、あまりにも現実離れした様子に、頭の回転の速いアシュランといえども、状況が全く把握できなかった。
防毒マスクの男:「いいか、落ち着いて聞けよ!」
 防毒マスクを着けた人物(おそらく、基地の衛生兵だろう)は、切迫した口調で言った。
防毒マスクの男:「生物学的警報(バイオハザード)だ」
アシュラン:「な・・・・!?」
 その時、基地内に、いつもとは違う切迫したアナウンスが流れ、場の空気を振るわせた。
アナウンス:「現在、当基地内において、B(生物化学)兵器によるテロ行為が発生。当基地は、生物学的警戒態勢に突入しました。各隊員はその場を離れず、医療班の指示に従って的確に行動してください。繰り返します、現在、当基地内において・・・」
アシュラン:「B兵器によるテロだって!!?そんな、バカな・・・」
 旧世紀から現在まで、変わらずこの世で最も恐ろしい兵器の一つが、高い殺傷力を持つのみならず、一回の使用で感染によって次々と犠牲者を広げてゆき、死体は見るもおぞましい様相となる生物化学兵器であることは、軍のエリートであるアシュランには骨身に染みてわかっていた。しかし、それだけに、軍施設はB兵器のテロに関しては、細心の注意を払っている。B兵器テロと聴いても、アシュランはこの事態がにわかには信じられなかった。
 しかし、防毒マスクの衛生兵は、なおも緊迫した口調で続けた。
防毒マスクの男:「残念ながら本当だ。糧量の一部に、悪質な遺伝子改良型寄生虫兵器が混入されたんだ。あんたはそれを、たらふく食ってるはずなんだ」
アシュラン:「お、俺が・・・?」
 そう言われてみれば、今日の昼食は、どこか変な味がしたような気がしないでもない(もっとも、その時も頭は考え事でぐるぐる渦巻いていたので、味なんてわからなかったが)。
 すると、衛生兵二人は、アシュランが思考しているうちに、素早く彼を羽交い絞めにし、持ってきた移動式の簡易ベッドに移送しようとした。
アシュラン:「お、おい!!」
もう一人の衛生兵:「おとなしくしな。あんた、ヤバイ病気に感染してるんだからね!」
 そう鋭く吐き捨てた衛生兵の声は、高い。ということは、マスクで顔は隠れていて見えないが、この衛生兵は女性なのだろうか。
アシュラン:「・・・それで、俺は一体何の病気に感染してるんだ?」
衛生兵の男:「それはな・・・通称、ツケノタブル・ミガホア虫ってやつだ」
アシュラン:「は・・?」
 そんな細菌兵器、聞いたことが無かった。
衛生兵の男:「かなり最近になって発見されたモンだからな、アンタが知らないのも無理はねえ。・・・これはな、感染すると、体中にびっしりと、直径2、3センチの球状の腫瘍が生えてくる。その様子は、まるで体中にブドウの実が生ったみてえになっちまうんだぜ・・」
アシュラン:「・・・・」
 アシュランは自分の体中にブドウのような腫瘍ができた様を想像してしまい、体がサッと冷えるのを感じた。


 
衛生兵の男:「どいたどいた!!生物兵器のキャリアだ!!感染されたくなかったら、退いてくれ!!」
 衛生兵二人はアシュランの乗ったベッドを押して、基地の廊下を駆け抜けた。それを通りがかった兵士が何人か、何事かと覗き込もうとするが、衛生兵たちの言葉を聞くと、みなサッと顔色を変え、即回れ右して駆け足で離れていった。
アシュラン:「お、おい、本当なのか、その、ケツノポリス・・なんたらとかいうのは?」
衛生兵の男:「ツケノタブル・ミガホア虫だ!・・・ああ、それだけじゃねえ。腫瘍ができるのは、奴らがそこに卵を産みつけるからなんだ。だから、しばらくすると、やつらの幼虫が何万匹も腫瘍を食い破ってウジャウジャ飛び出してくるぜ!」
アシュラン:「う・・・」
 アシュランは、またしてもたくましい想像力で、ブドウだらけになった自分の体から無数の芋虫のような幼虫が湧き出してくるのを想像してしまった。
衛生兵の男:「さらに、腫瘍が破裂した後は、同じ大きさの膿のプールをたたえた穴が空く。つまり、今度は体中が穴だらけになっちまうのさ!」
アシュラン:「そ、それは、本当なのか・・・?」
衛生兵の男:「ああ、マジだ!しかも、男の場合、まず股間がやられる・・・。生殖器がブドウみてえになって、それがつぎつぎ破裂して、そこから虫がワラワラ出てくる、って寸法だ!」
アシュラン:「・・・・」
 もう、想像したくもなかった。
アシュラン:「・・・それは、特効薬(ワクチン)はあるのか!?治るんだろうな、というか、治ってくれ!!」
 
すると、衛生兵の男は、思い切り重い声で、こう言った。
衛生兵の男:「無い。お前の場合、手遅れだ。」
アシュラン:「う、嘘だろ・・・。」
 そのときだった。アシュランが違和感を覚えたのは。
 基地の出口は、限られた数しかない。もし食料にB兵器が混入されていたのなら、それを口にした大量の兵士が大病院に運ばれるため、出口に殺到するはずだ。しかし、ここはもう出口のすぐそばだというにも拘らず、アシュラン以外の兵士が運ばれてくる気配が全く無いのだ。
 そもそも、彼らは本当に衛生兵なのだろうか?それにしては、先程の症状を話す口ぶりは、いやに楽しそうだったが・・・。
アシュラン:「お、おい、お前ら、何者だ!!俺をどうするつもりなんだ!!」
 二人の衛生兵は一瞬顔を見合わせると、そのまま基地の外へとベッドを押して飛び出し、しばらく走った後、いきなり急停止した。
アシュラン:「う、うわ!!なんだよ、おい!?」
衛生兵の男:「お前の場合、治らないから焼却処分だ。馬鹿に効くワクチンなんざねえからな」
 そう言いながら、衛生兵の男はマスクを外した。その下からは、どこをどう見ても兵隊には見えない、軽薄そうな細面の若者の顔が現れた。
青年:「お迎えに来たぜ。ZAFTの赤服、アシュラン・ザラさんよぉ」
 不敵そうにニヤっと笑う青年の後頭部を、もう一人の衛生兵がすかさずチョップした。
青年:「いてっ!いきなり何するんだよ、リャン!!」
リャンと呼ばれた少女:「馬鹿っ!!特効薬がいるのはアンタだよ、あきら!!・・・まったく、何が『ツケノタブル・ミガホア虫』だ。笑いを堪えるのに、アタシがどれほど苦労したと思ってるんだ!!」
 ぷりぷりしながら、もう一人の偽衛生兵もマスクを外した。マスクの下から現れたのは、中国系の顔立ちをした、猫のような美少女だった。そして、アシュランには、その顔に見覚えがあった。そう、それは・・・。
アシュラン:「レミー!!?」
 そう、リャンと呼ばれた謎の少女は、アシュランの恋人だった少女と瓜二つだったのだ。
リャン:「は!?あんた、何言ってんだ?」
 リャンにそう指摘されて、アシュランは落ち着きを取り戻した。そうだ。レミーがこんな所にいるはずも無い。彼女は死んだ。だからここにいる少女は、単に他人の空似に他ならないのだ。
アシュラン:「いや、すまない。何でもないんだ・・・」
 するとリャンが、ずずいっとアシュランの顔を覗き込んだ。
リャン:「おいおい、あきら。こいつ、本当に大丈夫なんだろうな?なんか、『凄腕』どころか、『細腕』って感じなんだけど・・・。」
あきら:「俺に聞くなよ。ま、でも、案外見かけによらないんじゃないの?俺のダチ、透だって、見た目はこんなもんだが、ネットん中じゃすげえんだぜ」
アシュラン:「透だって!!?」
 突然耳に飛び込んできた思いも寄らない名前に、アシュランはつい、声を乱して叫んだ。
アシュラン「お前、相馬透を知っているのか!?お前たちは、何者だ!!?」
 すると、いままでにやけ笑いを顔に貼り付けていたあきらが、すっと冷たい表情に変わった。
あきら:「ああ、知ってるさ。お前なんかより、ずーっと、な!」
アシュラン:「・・・・」
リャン:「おいおい、話は後だよ!」
 いつしか基地からの警報は、バイオ・ハザードのそれから、聞きなれた通常のものへと変わっていた。
警報:「緊急事態です。何者かが基地に侵入、兵士一人を連れ去り、逃走しました。連れ去られたのは、特殊精鋭第一部隊所属、アシュラン・ザラ。繰り返します・・・」
リャン:「さあ、とっととここからオサラバするよ!!」
 そう言うと、二人はベッドを押して急発進させ、その衝撃でアシュランをベッドに押し付けると、そのまま基地から離れていった。
アシュラン:「おいおい、何をするんだ!!止まれ!!!」
 
アシュランは力の限り叫ぶが、抵抗することはできなかった。何しろ、ベッドの後方を押しているリャンが、こちらに向けて油断無く拳銃を構えていたのだから・・。


 
リャン:「いつまでベッドに乗ってるんだよ!!あんた、そのままアジトまで連れてってもらうつもりかい!!」
 ある程度まで進むと、アシュランはいきなりリャンにベッドから蹴り落とされた。
アシュラン:「ウッ!!おい、今度は何を・・・?」
 すると、すぐさま目の前に仲間のものらしき車がやって来て目の前で停車、ドアを開けた。
リャン:「さあ、乗りな!」
 抵抗しようにも、リャンに銃を突きつけられていては、丸腰のアシュランにはどうすることもできない。
 車の運転席には、いかにも無法者、といった感じの男が座っていた。
 アシュランは後部座席に、あきらとリャンに挟まれる形で座らせられた。
アシュラン:「おい、いい加減教えてくれ。お前らは一体何者なんだ!? お前ら、基地に生物兵器なんてばらまいて、一体どうするつもりだ!!」
 すると、あきらがバカにした表情で、はっ、と笑った。ディアッカに少し似ている笑い方だが、ディアッカのものより、ずっとタチが悪そうだ。
あきら:「おいおい、あんた、まだ気付いてないのかい?」
アシュラン:「え・・・」
リャン:「・・・あのさ、こいつがばら撒いたとかいう虫の名前、逆さから読んでみな」
アシュラン:「逆さって・・・、ツケノタブル・ミガホア、アホガミル・・・・あ」
 アホガミルブタノケツ。つまり、そういうことだ。
アシュラン:「じゃあ、お前らが基地内に散布したのは・・・」
あきら:「そ。水虫の親戚みてえな、軽ーいやつさ。それにしても、お前のあのときの表情、ありゃマジで面白かったなー。思い切り信じて顔面蒼白になりやがってさ」
 ひっひっひ、とあきらは品の無い笑い声を上げた。一方、反対側に座っているリャンは、完全に呆れている。
リャン:「おいおい、アンタ、ZAFTの赤服パイロットだろ。そんなバカみたいなハッタリに、引っかかんなよな・・・」
アシュラン:「う・・・」
 ショックだ。そんな下らない嘘に騙されたことはもちろんだが、この恋人にそっくりの少女に、思い切りバカにされたことが特に。
リャン:「まったく、本当にこんなヤツが役に立つのかね?」
あきら:「ま、立つんじゃねーの。なんてったって、クーウォンさんのお墨付きなんだからな」
リャン:「そのクーウォンの目も、今回ばかりは曇ったんじゃないかね。なんか、また近眼がひどくなったってぼやいてたし・・・・」
アシュラン:「ク、クーウォンだって!!!!?」
 アシュランは思わず叫んだ。
 クーウォン。それは、『あの』リー・クーウォンだろうか。それならば、この二人は・・・。
 すると、リャンとあきらが、不敵な表情で微笑んだ。
リャン:「ようこそ、『飛刀』へ。あんたをアジトに歓迎するよ」


 


 


 


 


 


 


 


 


第十七章『慟哭』完

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現在社会人として東京都心の企業に勤めている。出身地は北海道。
一人っ子。故に(?)わがままでせっかちなところがある。趣味はドライブと創作作品鑑賞。ただし基本的に超インドア。
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