Endless world -咬龍の庭-
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創作小説『バルドフォースG』 第十九章

もう少し掲載のペースを早めていきたいです。『バルG』第十九章です。
因みに、今話辺りから、一話の分量もかなり長くなってきます。これ、字数制限のあるライブドアブログだったら、三回くらいに分けないといけなかったんだろうなぁ(^-^;。引越ししてよかった。
個人的には、今のFC2さんの仕様もちょっと使いにくいので、前の仕様に戻してほしいんですけどね・・・。

では、いつも通り「READ MORE」にて本文へ。








バルドフォース エグゼ
バルドフォース エグゼ









HG 1/144 フリーダムガンダム
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バルG第十九章


『幼馴染』


 


 


月菜:「ここが、V・S・S・・・。と、透、す、すごいね・・・・」
透:「お、おい、月菜、何ビビってんだよ。それに、あんまりきょろきょろするな。おのぼりさんじゃないんだから」
 かく言う透も、目の前にある建物の威容に、内心感嘆を覚えずにはいられなかった。
 ここは中央区域(セントラル・シティ)の、その中でも中央部にある、巨大な企業都市だ。その一角に、V・S・S(バーチャル・スフィア・セキュリティ)はそびえ立っていた。いや、『そびえ立っていた』という表現は適切ではないか。V・S・Sの本社は、透たちが今までイメージしてきた企業ビルのように、無闇に縦に巨大だったりはしなかった。ただ、都市の広大な一角を占拠したような、美しい公園のような敷地の真ん中に存在する、環境設計によって創られた、周囲の外観を損なわない程度に大きな建物が、威圧感とはまた別種の、しかし途方も無い存在感を醸し出しながら存在していた。そして、そここそが、透たちの新しい職場だった。
 『V・S・S(バーチャル・スフィア・セキュリティ)』。ネット世界に親しむ者なら、その名を知らぬ者はいない。最新鋭の装備で武装した、精鋭パイロットたちを多数所有するこの会社は、警備会社の名こそ冠してはいるが、その実質は、ネット世界最強の傭兵部隊、と言った方が正しいだろう。更に、電子兵器産業、脳内チップ産業をはじめとした、各種電子産業界にも強い影響力を持ち、企業としての社会的な力もバカにならないほど強い。正しく、選ばれたものだけの、エリート集団の組織なのだ。
月菜:「でもさ、そんなところに、あたしたちみたいなのが本当に入社しちゃっていいのかな・・・・」
透:「いいんじゃないのか。第一、社長自らが推薦してくれたんだから」
 あの日の翌朝、V・S・Sの社長・橘玲佳が再び面会にやって来たとき、透はすぐに返事をした。迷う理由は無かった。月菜をこれ以上不幸にしないためにも、透は玲佳の申し出を受けた。すると、その日の内に、透たちはあっけなく釈放された。そうして、釈放時に待っていたV・S・Sの社員と思しき人物から二人分の入社手続きのための書類一式を手渡され、それに記入してV・S・S送信したところ、またしてもすぐにに返事が来たのだ。
 そして、入社試験としての面接のため、透と月菜は今こうして、V・S・Sの本社の前にいるのだが・・・・。
透:「まあ、確かにおかしな話ではあるよな。俺たちみたいな下町のチンピラどもなんかに、あの橘玲佳が直接スカウトに来るなんてさ」
月菜:「え、いや、別にあたしは透はそうなってもおかしくないと思ってるよ。だって、透は最高のシュミクラムパイロットだもん」
 そう真顔で褒められると、なんだか照れくさいものだ。
月菜:「でも、透はともかく、何であたしにまでお誘いがかかってるんだろ?」
 確かに、透も一番引っかかっているのがそれだった。月菜は、確かにサポートとしては優秀ではあるが、それも飛び抜けてというほどでもないし、シュミクラムパイロットとしての能力に至っては、そこら辺のガキの方がまだマシというていらくである。
透:「ま、きっとお茶汲み係が不足してるんじゃないか」
月菜:「なによ、それ。一人じゃ満足に掃除もできないくせに、生意気言わないでよね」
透:「今それは関係ないだろ」
 月菜といつも通りのそんな言い合いをしていると、透の心は不思議と落ち着いた。心にわだかまった疑念も、完全にではないが、大分溶けていった。きっと大丈夫、自分のした選択は間違いじゃなかったのだと、そう思えてきたのだ。
透:「さあ、いつまでもこうしていても仕方が無い。行くぞ、月菜」
月菜:「うん」


 


 
 建造物内に入った途端、透たちは二人組みのガードマンに呼び止められた。やはり不審人物だと思われたか、と思った瞬間、ガードマンはふかぶかと頭を下げて言った。
ガードマン:「相馬透さまと笹桐月菜さまですね。あなたたちを案内するよう、上から仰せつかっております」
透:「あ、ああ・・・」
 突然敬礼され面食らっている透たちを横目に、ガードマンたちは環境建築のオフィスビル内を歩いていった。透たちもあわてて彼らにつづく。
月菜:「それにしても、あたしたち、何かものすごく場違いだよね・・・」
 月菜の指摘どおり、グレーの背広を着たサラリーマンか白のスーツを着たパイロットたちしかいないこの社内で、背広を持っていなかったため普段着のままの二人は、完全に浮いている。思い切り緊張している月菜は、すれ違った社員風の男に「あ、ははは、お、おじゃましてます・・・」などと強張った微笑みで意味不明の挨拶をするが、それにも沈黙で答えられ、疎外感は高まるばかりだ。
透:「ま、場違いは仕方無いさ。お前の言う通り、俺たちは『育ちの悪いの』なんだからな」
 すると、月菜がムッと不機嫌そうな顔で透を睨んだ。どうやら、月菜のお小言は、緊張していようとお構いなく発動するらしい。
月菜:「『育ちが悪く』見える原因は、透が作ってるんだからね。もう、折角昨日あたしが洗濯してあげた服を、なんで着てこないのかなあ。それに、ポケットに手を入れて歩くのやめてよ、みっともないよ、ほら」
 そう言って、月菜は透のポケットから手を無理やり引っ張り出そうとする。
透:「あのな、気安く人の手を触るんじゃない。お、おい、男のズボンの裾の中に手を入れるな!」
月菜:「もう、人聞きの悪いこと言わないでよ。あたしはただ、袖出して歩いてるとみっともないから、しまおうとしただけじゃない」
透:「第一、みっともないと言うなら、こんなところで大声出してるお前の方がよっぽどみっともないぞ」
月菜:「う・・・・」
 月菜が顔を真っ赤にしながら反論しようとしたところで、いつの間にか目の前にあった扉の向こうから響いたよく通る美しい声によって、不毛な夫婦漫才にようやく終止符が打たれた。
?:「ようやく来てくれたのね。さあ、二人とも、入って頂戴」
 その言葉を受け、ガードマンたちが古めかしくも立派な扉を開けた。
月菜:「ふぁぁ・・」
 目の前に現れた部屋を見た瞬間、月菜が間の抜けた声をあげた。そして、その横では透も、密かに目の前の光景には面食らっていた。
 床は一面の大理石、真っ赤な絨毯にはアラビア語圏の神話のようなものが金の刺繍で描かれている。大きな机は、これまたこの時代では珍しい木材、それも最高級のものを使っている。その他の家具も、全てが骨董品級のものだ。ネット内ならともかく、現実世界でこれほど立派な部屋は、ぞうざらにはないだろう。
 そして、その部屋の中央に、豪華な部屋の雰囲気に完全に馴染んでいる一人の女性が、透たちを待っていた。
 最初に見た時は、ネット世界の戦場。次に見た時は留置所内だった。だから、彼女をきちんと見るのは、これが始めてだ。
 見た目は二十代後半。しかし、全身から発せられる並々ならぬ威圧感は、それが見せかけに過ぎないことを物語っている。
 ネット世界に親しむものなら、誰もが知る人物。早くも今世紀最大の成功者になるのではないかと噂されているその人物こそ、V・S・Sの美貌の女社長、橘玲佳であった。
玲佳:「さあ、お掛けなさい」
 玲佳は、透たちにソファーを勧めると、自らも机を挟んで反対側のソファーに優雅な仕草で腰掛けた。いきなり住む世界が違いすぎる人物に椅子を勧められ、戸惑っていた透たちだが、ガードマンたちが扉を閉めて退室し、他にすることも無さそうなので、諦めにも似た心境で、玲佳の言う通りにソファーに腰掛けた。
月菜:「ひゃ!?」
 月菜が、ソファーの想像以上のやわらかさに、間抜けな悲鳴をあげた。透は、なんとかこの目の前の人物になめられまいと、虚勢を張るので精一杯だった。
玲佳:「相馬透君に、笹桐月菜さんね」
 玲佳は、ゆっくりと二人に微笑みかけた。その笑顔は、温かく美しいものであるはずなのに、見る者にどこか、蛇に呑まれた蛙の心境を連想させた。
玲佳:「私が、これから二人の面接を担当させていただきます、バーチャル・スフィア・セキュリティの最高経営責任者、橘玲佳です」
 そう言って、玲佳は二人のデータの書かれた資料を、立派な漆塗りの机の上に置いた。
透:「どうして社長自らが、俺たちを面接するんだ?」
 透は、玲佳から発せられる得体の知れない雰囲気に呑まれまいとして、つい言動が険しくなってしまう。
月菜:「と、透、口の利き方には気を付けた方がいいって・・・」
 月菜が慌ててフォローしようとするが、当の玲佳はそんなことはまるで気にも留めず、ただ微笑んでいた。
玲佳:「ふふ、いきなり私が出てきて、少しビックリさせてしまったようね。でもね、優秀なシュミクラムパイロットというのは、社の根幹に関わる人材なの。だから、上級役員や、社長である私自らが面接して、その資質を判断することにしているのよ」
 そう言って、玲佳は机にあったリモコンを操作した。すると、天井から巨大なスクリーンがおりてきて、そこに透たちのデータが映し出された。
玲佳:「では、面接を始めましょうか。相馬透君」
透:「は、はい!」
 思わず、透は今までしたことも無いような、模範生っぽい滑稽な返答の仕方をしてしまう。だが、玲佳はくすりとも笑わず、真剣な表情のまま質問を続けた。
玲佳:「あなたがシュミクラムに乗ったのは、何歳のとき?そのための訓練期間は?」
透:「15歳のとき。販売業者をハッキングしたとき、友達と乗り逃げしたのが最初です。特に訓練は、受けていません」
 あまり人に誇れる経歴ではなかったが、ここまできて隠し立てしても仕方がないと思い、透は素直にありのままを答えた。
 しかし玲佳は、非難するどころか、心底感嘆した様子だった。
玲佳:「あなた、凄いわ。普通、訓練も無しにシュミクラムを乗り逃げしようとしたって、そんなことはそうそうできるものではない。シュミクラムは、基本的には人体と違う。柔らかなタンパク質で構成された人体と違って、シュミクラムは鋼とオイルでできている。いくらそれが仮想のものだからといっても、今までの肉体と全く違う体をいきなり動かそうとしたって、普通は上手くなんていきっこない。転んで仮想骨折に泣くのがオチなのよ。なのに、あなたはそれを・・・。あなたといい、その友達といい、本当に、大した才能の持ち主だわ」
月菜:「はい。透も優哉も、あ、優哉は透の友達のことなんですけど、本当に、シュミクラムでは誰にも負けない天才なんです」
 月菜が、質問されてもいないのに、横からしゃしゃり出てきた。そして、月菜の声には、誇らしさが隠し切れずに滲み出ていた。玲佳は、そんな月菜を咎めること無く、優しく微笑んで見つめた。
玲佳:「ふふ、そうね。シュミクラムを操ることは、誰にでもできる。しかし、それをある一定以上のレベルで行うことは、並大抵の才能では成し得ない。こういう、いわゆる生まれついての“天才”はね、本当に見つけるのが難しいの。試験や公募では、一定人数を揃えるのが到底不可能なくらいにね」
 そう言って、玲佳の表情がすっと変わった。それは、冷利で有能な経営者の表情だった。
玲佳:「そして、そういう才能は、生まれ育ちには全く関係が無いの。だから、我が社は、それこそ死に物狂いで網を張って、有能な人材の発見に努めているわ。教育機関にはもちろんのこと、ハックされそうな標的、はたまた戦場になりやすい場所なんかもね」
 そう言って微笑む玲佳の表情に、透は薄ら寒いものを感じた。どこぞの機関に仕掛けた(ハックした)ときにでも、透たちの存在は玲佳の『網』にかかったのではないか。そう考えると、ひどく落ち着かない気がしたのだ。
玲佳:「まあ、そういうことよ。だから、もうあなたたちの採用は、決定しているわ」
 透たちは、玲佳が言った言葉を、にわかには理解できなかった。
玲佳:「あらあら、あまり呆けた顔をすると、その整った顔が台無しじゃない。透君、月菜さん」
 先に我に返ったのは、月菜だった。
月菜:「え、ってことは、あれ、試験は・・・?」
玲佳:「ええ、強いて言うなら、あなたたちの今までの生活が試験のようなもの。第一、私自らがスカウトした人材を、私がはねてどうするのよ」
 すると、月菜の表情が、パァと明るくなった。
月菜:「うそぉ!透、やったね!!あたしたち、晴れてV・S・Sの社員だよ!!」
 だから時と場所を考えてはしゃげよ馬鹿、と思いながら、透はここに来てからずっと抱いていた疑念を口にした。
透:「でも、社長。その、俺はともかくとしても、どうして月菜もなんですか?月菜は、正直、あまりシュミクラム使いに向いているとは・・・・」
 すると、玲佳は深い瞳で透と、それから月菜を見つめた。
玲佳:「ふふふ、月菜さん、あなた随分とお友達に過小評価されているのね。透君、確かに月菜さんはあなたのような“天才”ではないけれど、“秀才”になる大きな可能性を秘めているわ。彼女は、きっと訓練すれば大化けする」
 そう言って、玲佳は再びリモコンを操作した。
 スクリーンに現れたのは、ゼフィランサスを庇いながらイージスにガトリングガンを掃射するアレックスの姿だった。これは、あのとき、優哉の復讐のためにアシュランの小隊に喧嘩を売ったときの映像だろう。
透:「い、いつの間にこんなものを・・・」
玲佳:「あら、さっき言ったじゃない、私たちは『ネット世界のあらゆるところに網を張ってる』のだって。それに、これは軍の交戦記録よ。軍とは『密接な協力関係』にある私が持っていても、何の不思議でもないわ」
 そう言うと、玲佳はスクリーンをしまった。
玲佳:「とにかくね、月菜さんは、ここ一番ではかなりの戦闘能力を発揮している。これは、大きな才能が隠れていることを示す証拠である可能性が高いわ。透君、あなたは月菜さんがパイロットの才能無いと思っていたみたいだけれど、それはあなたたち、周囲の人間が凄すぎて、月菜さんの隠れた才能が埋もれていたからなの」
 透は、信じられないという表情で月菜を見た(透の視線に気付いた月菜は、かなり不機嫌そうな顔をした)。しかし、確かに今まで透が窮地に陥ったときは、月菜は何だかんだいってきちんと助けてくれた。それに、仲間たちは、最初にシュミクラムに乗ったときに大ゴケして仮想複雑骨折をやらかした月菜を見て「月菜にはパイロットの才能が無い」と決め付けたが、今考えてみると、ああいう方が普通だったのかもしれない。
玲佳:「あと、これは我が社の統計的なデータによるものなんだけれど、パイロットの戦闘能力は、そのパイロットの才能と指数関数的な関係にあるらしいの。才能の倍違うパイロットなら、実戦では四倍の働きを見せてくれるわ。だから、大勢のパイロットを雇うよりも、大きな才能を秘めた少数のパイロットを高給で雇った方が、結局のところ効率がいいのよ。これは、我が社が数年でこの業界のトップに登りつめた秘訣でもあるわ」
 そして、玲佳は資料を纏め、ゆっくりと立ち上がりながら言った。
玲佳:「そういうわけで、我が社は貴方たちの才能に投資する、貴方たちはその才能を活かして我が社の利益となってもらう、それでいいかしら?」
 二人に、拒む理由などあるはずが無かった。
 強くうなずいた二人を見て、玲佳は満足そうに言った。
玲佳:「ありがとう。貴方たちには、危険を代償に、最高レベルの生活を保障するわ。無論、金銭面だけではなく、ね」
 一瞬、透は玲佳が最後に言った『金銭面以外での報酬』という言葉と、それを言う玲佳の、何とも言えない妖しい表情が気になったが、その時は何も問いただせる雰囲気ではなかったので、透は月菜と共に一礼し、そのまま社長室を立ち去った。


 


 


 数日後
 透は月菜と共に、今まで住んでいた下町のアパートを引き払い、V・S・Sの社員寮への引越しを始めていた。
透:「それにしても、流石はV・S・S。一般の社員寮でも、ここまで立派なものだとはな」
 部屋は小奇麗な特殊素材製、窓を兼ねた超大型スクリーンと、最新型の備え付けネットワーク端末、更には窓枠には環境整備機能を持った改良種だろう観賞用植物が植えられていて、透たちが今まで住んでいた薄汚れたアパートとは、比べるべくも無かった。
月菜:「ほんとほんと。これからここに住めるなんて、大感激だよねー」
透:「ああ、そうだな」
 思わず頷いた透だが、思い切り引っかかるものを感じた。
透:「・・・って、ここに住むって、お前、ここは俺の部屋だぞ」
月菜:「それは知ってるよ。だってここ、あたしの部屋でもあるんだし」
透:「は?」
 さっきから、会話が全く噛み合っていない。
透:「お前、何を言って・・・」
月菜:「だから、ここは『あたしと透の部屋』なの。ベッドだって、ほら、二つあるじゃん」
透:「そういや、確かにそうだな・・・じゃなくって!!
月菜:「きゃ!もう、透、いきなり大声出さないでよ、ビックリするじゃない!」
透:「ビックリしたのはこっちだ!!俺はこんなこと、一言も聞いてないぞ!!」
月菜:「それは、あたしが言ってないんじゃなくて、本当に透が聞いてなかっただけ。あたし、一昨日くらいにきちんと言ったよ。透だって、きちんと「ああ、わかった」とか言ってたじゃない」
透:「一昨日って、それ、俺が部屋の片付けのために悪戦苦闘してたときじゃないか!そんなときにこんな話するな!!まともに聞いてるわけないだろ!!」
月菜:「でもさ、もう決まっちゃったことだよ」
 透は近くにあった通話機を手に取り、内線ボタンを押した。しかし、コール音が鳴るより早く、月菜が通話機本体に付いていた待機ボタンを押してしまった。
透:「おいおい、月菜、なにするんだよ!!」
月菜:「なにするんだよ、はこっちの台詞だよ、もう。透、今どこにかけようとしたの」
透:「社長のところに決まってるだろ!今すぐにこの部屋を変えてもらう!!」
月菜:「止めなよ。社長さん、忙しいところに悪いよ。それに、この部屋決めたの社長さんだよ」
透:「なに!!?」
月菜:「あたしね、透と近い寮になるようにって社長さんに頼んでみたんだ。そしてら、社長さんの粋な計らいで、既婚者用の部屋を紹介してくれて」
 そう話す月菜の顔が何故かほんのり赤らんでいて、透の苛立ちを余計に加速させた。
透:「何が、「粋な計らい」だ!!とにかく、こんなことはダメだ!!」
月菜:「こんなことって・・・・透、もしかしてあたしのこと、女として意識してるの?」
透:「今更、そんなわけないだろ!!でも、流石に同棲はマズイだろうが!!!」
 それを聞いて、月菜は安心したような、寂しいような不思議な表情でため息をついた。
月菜:「だったら問題無いじゃん。別々に二部屋借りるより家賃も安いしさ。それに透、家事も炊事も人並み以下だし、生活もメチャメチャ不規則じゃん。きちんと一人で生活していけるの?」
透:「そんなこと、当たり前だろ・・・」
 とは言うものの、確かに月菜の言うことは否定できない。今までの自堕落な生活がいきなり改まるとも思えないし、ここは規則に厳しい一般企業だ。意外に家庭的な月菜の能力は、一人暮らしをする上ではかなり大きな助けになるだろう。
透:「・・・確かに、月菜の言うことも一理あるかも、な」
 それに、実を言うと、透としても、いきなりこの新しい環境で一人暮らしていくことへの不安は少なからずあった。それを考えると、月菜が傍にいてくれるというのは、多少は心強いものだ。もっともそんなことは、口が裂けても言わないが。
月菜:「でしょ!それに、あたしも実は朝とか弱いしさ、透が起こしてくれたりなんかするとありがたいかもなーとか思うんだ」
 月菜はパアッっと表情を輝かせ、はしゃぎながら何度も頷いた。その花が咲いたような表情を見て、透は不覚にも一瞬ドキリとしてしまう。そんな様子を悟られたくなくて、透は慌てて辺りを見回した。
透:「でもな・・そ、そうだ、流石にベッドは移動しよう!」
 しかし、ベッドは何故かびくともしなかった。
月菜:「それ備え付けだって。あのさ、もう諦めたら。それに、プライベートに浸りたいときには個室だってあるんだし。透がクールなふりして実はスケベなことはあたしは百も承知なんだから、もう別に気にすることなんかないんじゃない」
透:「そういう問題じゃない!!・・・って、確かに今更そんなこと言っても仕方が無いか。明日からもう仕事は始まるんだし、さっさと片付けてしまわないとな」
月菜:「そうそう。人間、諦めが肝心だよねー」
透:「・・・・・・」
 もう呆れ果てて何かを言う気力も失せた透は、ただ黙って手を動かし始めた。
 
 結局、透たちが部屋を片付け終わったのは、すっかり夜も遅くなってからだった。しかし、一日でほとんど完全に片付けを終えることは、おそらく透一人では無理だっただろう。そう考えると、隣のベッドで疲れ果ててぐったりしている月菜の存在は、とても貴重なものだと思えた。
 とにかく、明日からはこのV・S・Sでのサラリーマン生活が本格的に始まるのだ。だから、今日は早めに寝ようと、二人とも片付けが終わってすぐにシャワーを浴び、その後すぐにベッドに横になったのだが・・・・。
透:「・・・」
 眠りは、すぐには訪れてくれなかった。そして、そうなると、どうしても横で寝ている同居人の姿に目が行ってしまうのだ。
 
今は布団に隠された身体は、ほっそりと魅力的なラインを保っていることを透は知っている。布団からはみ出た肩と、細くすっきりとしたうなじは、透の目から見ても非常に蟲惑的だ。そして、今はそむけられているその顔は、可愛らしい少女の面影を残しながらも、大人びた美しさも併せ持っているのだ。
 昼間には、「月菜を女として見ていない」と言い切った透だったが、あれは本当はウソだ。なぜなら、幼馴染の少女、笹桐月菜は、とても魅力的な女性に育ってしまったのだ。
透:「これで、あんなに口うるさくなきゃな・・・・」
 そう呟きながら、これも単なる照れ隠しだと、透は思った。月菜のお節介な性格には、幾度と無く呆れさせられたが、同時にとても助けられていると思ってしまっている自分がいる。特に、優哉を亡くしてから今までのことで、そのことを何度も痛感させられてしまった。
 すると、
月菜:「・・悪かったわね、口うるさくて」
 月菜がうらめしげに答えて、透は内心大いに慌てた。どうやら月菜も、眠れずにいたらしい。
透:「ああ、悪いよ、全く・・・」
 透は内心の動揺を悟られまいと、あえてぶっきら棒に言った。すると、反論してくるとばっかり思っていた月菜は、意外にもしおらしい声で呟いた。
月菜:「・・・やっぱり、お節介だったかな。そうだよね、いくらなんでも同居なんて、ちょっとやりすぎだなとあたしも思ったし」
 思ったならやるなよバカ、と言いかけて、透はその言葉を飲み込んだ。それは透の本心ではなかったから。そして、せめて今日、今くらいは、少しは素直になってもいいと思ったから。
透:「・・そうだな、少しやりすぎだ。でもさ、月菜のお節介は、今に始まったことじゃないからな」
月菜:「そうだね。前の引越しも、こんな感じだったよね。あの時はさ、優哉も手伝ってくれたよね・・・」
 そうして、二人は同時に、同じ風景を思い起こした。
 

 月菜の親父さんが死んだ後、少しして透は笹桐の家を出た。一人立ちしたかったし、何より月菜の親父さんが遺した金は、全て月菜のために使われるべきだと思ったからだ。その頃は、既に優哉を相棒としてハックでそれなりの金を稼いではいたから、透には自分一人くらいは養っていける自信があった。
 世慣れた優哉のおかげで新しいアパートを借りることに成功し、明日から住むことになる新居を見上げたとき、引越しの手伝いに来ていた優哉が言った。
優哉:「おいおい、透、お前何そんなに寂しそうな顔してるんだ?」
透:「え? い、いや、別にそんな顔してるつもりはないけどな・・・」
 透は咄嗟にそう答えたが、実は図星を突かれて慌てていたのだ。そんな透を、優哉は深く優しい瞳で見つめながら言った。
優哉:「やっぱ、笹桐さんの家を出たのは失敗だったんじゃないのか?月菜のこと、気になるんだろ?」
透:「そんなこと、あるわけ・・・・」
 ない、とは言い切れなかった。いつもそうだ。優哉は、ひねくれがちな透の本心を、いつもしっかりと的確に見抜いてくれていたのだ。
 でも透は、一度決めたことを、男として、容易に撤回はしたくなかった。
透:「確かに、気にならないと言えば嘘になるか・・・。でも、俺はもう決めたんだ!それに、月菜だってもうガキじゃない。一人でしっかり、やっていけるさ。俺なんか、いた方が結局は邪魔なんだ」
優哉:「ま、そういう考え方もあるかもな・・・。それじゃこれからは、俺らもしっかり稼がないとな。一応身分は偽造してあるし、ここの大家は家賃を滞納しない限りは俺らの身元なんて調べようとも思わないだろう。逆に言うと、不審だと感づかれたりしたら、アウトだからな」
透:「ああ、任せておけ。お前の分まで、稼いでやるよ」
優哉:「はは、頼りにしてるよ、相棒」
 優哉がそう言って、透の大好きな笑顔でにっこり笑ったときだった。
?:「とおるーー!!」
 後ろから、よく耳に馴染んだ声が、追いかけてきた。
月菜:「透、待ってよ、いきなり出で行っちゃうなんて、ひどいじゃない!!」
 月菜は、怒ったような、泣きそうなような、何とも言えない表情で叫んだ。
透:「月菜、俺はもう決めたんだ。お前がもう何を言っても、俺は戻るつもりはないからな」
 すると月菜は、透が思いもしなかったことを言い出したのだ。
月菜:「わかってる。だから止めに来たわけじゃないよ。あたしも引越しに来たの」
透:「な、え!!?」
 確かに、よく見てみると、月菜は大きなドラムバックを背負っていた。
月菜:「ちなみに、今日から透のお隣さんだから。よろしくね」
透:「え、え・・・・」
 そう言えば、透の部屋の隣の物件も確か空いていたが、いや、しかし・・・。
 すると、優哉が優しく透の肩をたたいた。
優哉:「ま、いいじゃないか。必要な稼ぎが一人分増えたくらい、俺らには何てこともないだろ。それに、月菜も一人は寂しいのさ」
透:「・・・ああ」
 優哉にそう諭されては、透はいつも、何故か逆らうことはできなかった。
優哉:「さあて、引越しが一人分増えちまったからな、頑張ってさっさと片付けちまおうぜ」
月菜:「大丈夫よ。あたし、透よりは戦力になる自信あるからね」
優哉:「はは、確かに。これに関しては、月菜は透より大分信頼できるからな」
月菜:「優哉ー、わかってんじゃん」
透:「おいおいお前ら、人が黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって」
月菜:「ふふふ、悔しかったら、これからはきちんと一人で生活してよね。ま、無理でしょうけど」
透:「なんだとー!!」
優哉:「ははは」
 相変わらずの夫婦漫才を続ける二人の横で、優哉は日溜りのような笑顔で笑っていた。
 

 不意に、透の胸に熱いものが込み上げてきた。そうだ、あの頃には、まだ優哉がいたのだ。
月菜:「・・うう・・グス・・優哉・・・優哉ぁ・・・・」
 月菜もまた、小さくしゃくりあげている。無理も無い。透たちにとって、優哉の存在はあまりにも大きかったのだ。
 透は、思わず胸のペンダントを握り締めようとして、それがもう無いことに改めて気付かされた。あれは、軍に捕まったとき“危険物”として没収されてしまった。優哉どころか、優哉の大切な形見さえも、透は失ってしまったのだ。透の胸を、改めて、言いようも無い喪失感が襲った。
 ここ数日、忙しくて忘れていた、いや、忘れようとしていた想い。そして、これからは、もうそれに正面から向き合わないといけない。“仇討ち”のような逃げ道を作ることは、もう許されないのだ。
 そこまで考えたとき、不意に月菜が言った。
月菜:「透。アシュランのこと、まだ恨んでる・・・?」
 アシュラン・ザラ。優哉を殺した仇。そして、優哉によく似た瞳をもった青年。優哉以来の親友になれると思ったほどの、深い親しみを感じた相手。
透:「・・・正直言って、わからない」
月菜:「・・・・」
透:「あいつが優哉を殺したって、そう考えると今でもたまらなくあいつが憎くなるときがある。でも、それは逆恨みで、そしてそのために俺は取り返しのつかないことをしてしまった・・。それに、あいつを憎んでいると、ふと思ってしまうんだ。「優哉のことさえなければ、俺はあいつと楽しい時間を過ごせるはずなのに。」って・・・・。そして、俺、いつの間にか『優哉の仇』を憎んでいるんじゃなくて、『あいつが優哉の仇であったこと』を憎んでいるんだ。変だよな、こんなの・・・・」
月菜:「ううん、そんなことないよ。あたしも透の気持ち、わかるよ。優哉もきっと、いや、絶対透の気持ち、わかってくれるよ・・・・」
 いつもの透なら、それを単なる気休めと言って、跳ね除けていただろう。でも、今の透に襲い掛かる喪失感は、とても一人では耐え難いものだった。だから、例え藁にでも縋りたかった。それに、今隣にいる女性は、『藁』と形容してしまうにはあまりにも暖かく、心地よかった。だから、透は、ぶっきらぼうに会話を打ち切って、顔を背けた。
透:「さあ、明日は早い。もう寝るぞ」
月菜:「うん・・」
 その月菜の声を聞いた瞬間、不覚にも透の頬を、一滴の涙が伝った。


 


 


翌日早朝、透たちは、玲佳の待つ社長室に呼ばれた。
 一体何の用事かと、緊張して身構える二人に、玲佳は穏やかな声でやんわりと言った。
玲佳:「おはよう、二人とも。まだ出勤時間ではないこんな時間に、貴方たちだけ呼び出して、ごめんなさいね。今日は、特別な用事があったの」
 そう言うと、玲佳はリモコンを操作し、大型のスクリーンを呼び出した。そして、玲佳が別のボタンを押すと、今度は机の中心部がせり上がり、中からロングコードにつながれた皮膚電極(ダーマロード)と、神経挿入子(ニューロジャック)が現れた。
玲佳:「さあ、これで没入しなさい。あなたたちが我が社に入社するに当たって、渡したいものがあるから」
 透たちはニューロジャックを受け取ると、遠慮がちにふかふかのソファにすわり、それらを首筋に挿入した。
 
『没入(ダイブ)
 
透:「こ、これは・・・・」
月菜:「うわぁ・・・」
 没入した次の瞬間、二人は目の前にあるものを見上げて、感嘆の声をあげた。
 二人の目の前には、二体の鋼鉄の巨人が並んでそびえ立っていた。シュミクラム、しかも、どちらも一目で新型機とわかるほど立派なものだ。
 そこに、皮膚電極を使ってネットに接続しているのだろう玲佳の声が響き渡った。
玲佳:「ふふふ、気に入ってもらえたようね。そう、貴方たちには、このシュミクラムを与えるわ。なにせ、シュミクラムがなかったら、仕事にならないしね」
 そうは言うものの、このシュミクラムたちは、他の一般社員が使っているものに比べるまでもなく、明らかに最新鋭だ。
玲佳:「この前も言ったように、私は貴方がたを見込んだからこそ、このV・S・Sに入社させたのよ。最新鋭機のパイロットくらいの待遇は、当然じゃない」
 そして、玲佳は左側のシュミクラムのデータを表示した。
玲佳:「こちらは、月菜さんにインストールしてもらうシュミクラムよ。我が社の主戦力、“アストレイ”シリーズの最新型“ブルーフレーム”の試作機よ。まあ、試作機といっても、ほとんどの武装はテストが終了しているわ。だから、実質的には、エースパイロット専用機とほとんど同意よ」
月菜:「は、はい・・」
 『エースパイロット』と言われて思い切りプレッシャーをかけられた月菜は、緊張しながらこれから自分の愛機となる機体を見上げた。基本的なフォルムは、従来の“アストレイ”と全く変わらないが、機体のカラーは、従来のアストレイがレットだった部分はブルーになっている。そして、あえて旧時代のポリゴンを模したような角ばったボディは、逆にその機体がただものではないことを暗に示しているようだった。
 月菜が新型機のインストール作業にかかったのを横目に、透は自らに与えられることになる機体を、夢でも見るような心地で見上げた。
 ボディは黒と赤と青の三色、四肢は大部分が白のすっきりとしたカラーが特徴のその機体は、背中に大きな青の一対の翼型バインダーを装備しており、四本の角を生やしたその顔もゼフィランサスよりもスマートで、どことなく神秘的な気品さえ漂う機体だった。
玲佳:「ふふ、気に入ってくれたようね。この機体は、我が社の威信をかけて開発したもので、通称“フリーダム”と名付けられた、最新型のガンダムタイプよ」
 “フリーダム”。これからV・S・Sの飼い犬となる透にとっては、何とも皮肉な名だ。
 透はフリーダムをインストールしようとして、同時に表示されたマニュアルに目を通し、更に度肝を抜かれた。腰部には二対のレールガン、翼型バインダーの内部にはやはり二対のプラズマ砲を装備し、そのどれもが並みのシュミクラムの重火器以上の威力を持っているようだ。しかも、他の部品も、全身のほとんどが、シュミクラム通の透でさえ今日始めて聞くような、超最新の部品や技術で構成されているのだ。
透:「社、社長、これは一体・・・・・」
 すると、玲佳はさもうれしそうに笑った。
玲佳:「ふふふ、当然よ。貴方は、α-ユニットに入ることを前提で我が社が引き抜いたのだもの」
 透にとって、そんな話は初耳だった。しかし、更に玲佳は続けた。
玲佳:「あら、何も驚くことではないわ。貴方は一度、α-ユニット、しかもその中でもトップクラスの実力を持つα-Ⅳとα-Ⅴを退けているのだから」
 
確かにそうだ。あのとき、憐の協力があったとはいえ、透は自力でネット上の最強部隊とも言われるα-ユニットを二人も退けている。
透:「わかりました。ご期待に沿えるよう、頑張ります」
 透としては、人のもとに所属するのはあまりいい気分ではなかったが、密かに自負していた自分の実力を、しかも成功者として皆に一目置かれる人物に認められるのは、決して悪い気はしなかった。
 透はインストールプログラムに言われるまま、シュミクラムのデータに個人情報を打ち込んでゆく。最後に、インストールプログラムが言った。
※:「貴方の声紋を入力して下さい」
 
透は、一瞬何を言おうか迷ったが、ゲン担ぎの意味も込めて、子供の頃好きだった伝説のシュミクラムパイロット、安室嶺の名台詞を叫ぶことに決めたのだった。
透:「相馬透、フリーダム、行きます!!!」


 


 


 それから、更に数日が過ぎた。
 
透たちは、橘玲佳社長の命の下、V・S・S傘下の企業のデータベースの警備の任に就いていた。
透:「それにしても、警備会社の仕事ってのも、思ったよりは暇なんだな・・・」
月菜:「まあ、仕事は『警備』だからねぇ」
 透が月菜とユニットを組んでから早数日、透たちに与えられた任務は、その全てが、企業のデータメンテナンス中の見回りという、地味で退屈な仕事ばかりだった。もっとも、データメンテナンス中は、ほとんどのセキュリティ機能がダウンするため、ハッカーたちにとってはまたとない侵入のチャンスである。そのため、最王手セキュリティ企業の社員である透たちが借り出されているのだ。
 そして、透たちは「賊を見つけ、彼らが交戦の意思を示すようなら即射殺」の命を受けている。のんびりとした雰囲気のこの任務だが、その実、常に危険と隣り合わせなのが実情なのだ。
透:「それにしても、月菜、お前、随分とシュミクラム上手くなったな」
月菜:「え、そ、そう?」
 そう言いながら、月菜は社長に与えられた新型機で、華麗にターンを決めて見せた。以前、シュミクラムに乗ってはずっこけて仮想骨折を繰り返していた人間と同一人物とはとても思えない。最初、月菜が透とユニットを組むシュミクラムパイロットだと知ったときは、流石に「本当に大丈夫かよ」と思ったものだが、確かに月菜は、玲佳の言う通り、きちんとした訓練を受け始めた途端、その才能を瞬く間に開花していった。戦闘シミュレーションの戦績も、まだまだ透には遠く及ばないものの、かなりの好成績だと聞いている。
 月菜は、一通りの高度な移動テクニックを披露して見せた後、こう呟いた。
月菜:「それにしても、透もそろそろ退屈してきたんじゃない?折角の新型なのに、最近戦闘も無いし」
透:「バカ、平和の方がいいに決まってるだろ!!シュミクラムに乗って戦うことが、どういうことだかお前だって知らないわけじゃないだろう!!」
月菜:「・・・そうだね、ゴメン、ちょっと浮かれてた」
 透だって、確かに、折角与えられた新型機(しかも透の場合『超』が付く代物だ)を試したくないわけじゃない。でも透たちは、あまりにも重い犠牲を代償に、知ってしまった。以前は、シュミクラムで死ぬのは、よっぽど運が悪いか単なる間抜けだと思っていた。だが、現実は違った。シュミクラムに乗っていても、戦えば人は容易に死ぬ。そして、もし透が誰かを殺せば、その友人は透たちを恨み、憎しみの連鎖が広がってゆくのだ。だから、戦いなんて、粗雑(クルード)な事態なんて、本当は起こらない方がいいのだ。
月菜:「・・・でも、安心した」
透:「はぁ?」
月菜:「実はね、今のは、ちょっと試してみたんだ、透のこと。でもよかった。透、ちゃんと成長してる」
 そう呟く、回線のウィンドウに映し出された月菜の表情は、とても穏やかで、子を見守る母のような美しさがあった。
透:「・・・まあ、こいつの場合、『母』を通り越して『おばさん』なんだけどな・・・」
 照れ隠しで呟いたつもりが、しっかり月菜には聞かれていたらしい。
月菜:「誰がおばさんよ、誰が!!まったくもう、やっぱり透、全然成長してない!!!」
透:「俺は真実を述べたまでだ。いくら俺が成長しようと、お前がおばさんなことは変わりない」
月菜:「ムキィー!!!」
*:「A―ⅠとA―Ⅱの両名、現在の会話は作戦内容とは著しく無関係なものと判断されます。よって両名、一ポイントの減点です」
 
途端に、サポートのAIの無機質な音声が響き渡る。V・S・Sがネット界最強の傭兵部隊たる理由の一つに、この『最新のAI(人工知能)によるサポート』が挙げられるのだ。当初は、凡ミスしがちなサポート(月菜)よりも優秀なサポートのもとで、安心して任務に集中できる、と思っていた透だったが、この人情味に欠ける機械によるサポートは、今ではこの会社の数少ない不満点の一つだった。
月菜:「ご、ごめんなさい」
透:「機械に謝ってどうすんだよ・・・。まったく、石頭のサポートが、こんなに窮屈なものだとは知らなかったな」
 すると、前方から、同じ任務に就いている別部隊のシュミクラムが通りがかった。確か、A―ⅥとA―Ⅶのユニットだったろうか。
透:「よう、お疲れさん」
A―Ⅵ:「・・・・・」
 二人は、まるで透たちなど最初からいなかったかのように、一瞥もくれずに任務に戻っていった。
 そう、数少ない不満点のもう一つは、同僚の態度の悪さだ。透たちが入社してから一週間近くが経つが、その間一度も、月菜以外の同僚と会話らしい会話をしたことがない。彼らはみな、まるで透たちなどそこに存在しないかのように、もくもくと作業を続けるだけなのだ。
透:「なんだよ、あいつら・・・・」
月菜:「まあまあ。きっと、あたしたち、嫌われてるんだよ。新人さんなのに、いきなりそんな凄い機体貰っちゃったんだし。でも、今は無理でも、きちんとお仕事続けていけば、きっといつか打ち解けられるよ」
 月菜はそう言うが、彼らと打ち解けられる日が来るとは、何故か透にはとても思えなかった。そういえば、以前交戦したα-ユニットの少女たちも、彼らと同じく人間味がほとんど感じられなかったが・・・。
 そこまで考えたときだった。
※:「緊急警報、緊急警報。賊がデータベース
内に侵入し、機密レベルAのデータに接触しました。警備担当の各員は、至急配置に就いてください。繰り返します、賊がデータベース内に・・・」
透:「何!!?」
 警報のブザーが鳴り響くと同時に、スクリーンが開き、橘玲佳社長の顔が映し出される。
玲佳:「透君、月菜さん、データ内に賊が侵入したわ!!構造体外壁のごくごく目立たない箇所に、小さな『裏口(バックドア)』が塞ぎ忘れてあったみたいなの!!いい、見つけたら即射殺しなさい、これは命令よ!!!」
 玲佳の表情には、珍しく余裕が感じられなかった。おそらく、『データが人を殺す』ことが常識である今の時代、裏口(セキュリティの綻び。大抵のハッカーたちはそこを狙う)から侵入されてデータを盗まれることは、信用を第一とするビジネスの世界で生きるためにはあまりにも手痛いダメージだからだろう。
透:「それにしても、社長。即射殺というのは・・・・」
 そのとき、透の声を打ち消すかのように、新たな情報が警報によってもたらされた。
※:「賊は二つの組織により構成され、一つは悪質なデータ盗賊、もう一つは十代後半とみられる少年たちで構成されたハッキンググループで『ブラック・ドッグ』を名乗っています。賊はいずれもシュミクラムで武装、盗賊団はX―4・Y―8区域付近を、ハッキングチームはX―6・Y―2付近を逃走中・・・」
透:「盗賊の方はすぐ近くか!!月菜、行くぞ!!!」
月菜:「うん・・じゃなくて、ヤー!!!」
 全力で高速移動する透の後ろを、月菜はしっかり付いて来たが、それでもどんどん透から引き離されてゆく。フリーダムは、信じられないくらいに速かった。背中の翼型バインダーが生み出す圧倒的な推進力は、機動力に特化させたゼフィランサスですら遠く及ばないほどの驚異的な速さを機体に与えている。
 そして透は、瞬く間に逃げる盗賊団に追いついた。
透:「待て!!データを置いて武器を捨て、速やかに投降しろ!!!」
 透はビームライフルを構えて叫んだ。しかし、相手はかなりベテランの盗賊団なのか、こちらの警告に従う素振りもみせない。
 そのとき、月菜がようやく追いついて来た。
月菜:「透~、ちょっと待ってよぉー。・・・えっと、警告シグナルはもう送った?」
 瞬間、盗賊団のシュミクラムの一機が、月菜に向けて発砲した。咄嗟に月菜を素人と見たのだろう。月菜は危うく転がって、ビームを避けた。
透:「月菜!!チクショウ、バカ野朗が!!」
 これで、彼らは射殺されても文句の言えない立場となった。透としては、できる限り彼らを殺したくはない。彼らは、少し前の自分に似ているから。だが、もうそんなことも言っていられないのだ。
透:「死んでも、俺を恨むなよ!!」
盗賊A:「やってみろよ、サラリーマン!!」
 盗賊たちは、嘲るかのように、透にもビームを撃ちかけてきた。しかし、フリーダムに搭載された超高感度センサーによって、ビームの軌道は怖いくらいにはっきりと見え、かわすのは容易だった。透は隙を見て(透からすれば、相手は完全に隙だらけだったが)ビームライフルからビームを放ち、一機のビームライフルを的確に撃ち抜いた。
盗賊A:「ちっ!クソがぁー!!」
 ライフルを失った盗賊は、ビームサーベルを引き抜いて透におどりかかった。
透:「クッ!!」
 透は咄嗟に襲いかかってくる盗賊にライフルを向けるが、もう一人の盗賊がビームを撃ちかけ、透はそれに気をとられ、一瞬無防備になった。その隙を狙って、盗賊が光刃を振り下ろした。
月菜:「危ない、透!!!」
 月菜が、転がったまま、咄嗟にビームライフルのトリガーを引いた。月菜のアストレイブルーフレームに試験的に装備されたロングパルスビームライフルは、波打つ軌道のパルスレーザーを放ち、盗賊のサーベルを持った右手もろとも、コックピットを薙ぎ払った。
盗賊A:「ぎゃぁぁぁ!!」
 盗賊のシュミクラムが、パイロットの断末魔と共に閃光を発し、消滅した。
月菜:「あ、ああ・・・」
 突然思わぬ形で初めて人を殺めてしまい自失する月菜に、残った盗賊が銃口を向けた。
盗賊B:「テメェ、よくも仲間を!!!」
透:「月菜!!」
 盗賊の銃口が火を噴く前に、透は無我夢中で、翼バインダーに収納された収縮プラズマ砲を展開し、放った。コンパクトながら重火器レベルの火力を持つそれは、盗賊のシュミクラムを容赦無く飲み込み、消滅させた。
月菜:「透、あたし、あたし・・・・」
 月菜は自分のしてしまった行為に慄き、画面の向こうで顔面を蒼白にさせて震えていた。
透:「月菜、気にするな。ありゃ自殺だよ・・・・」
 それは、月菜に向けてというだけではなく、自分にも向けて言った台詞だったが、透の心は、いささかも軽くはならなかった。そんな透たちを気遣う様子も無く、AIが新たな警告を発する。
AI:「A―Ⅰ・Ⅱのユニットに告ぎます。A―Ⅲが取り逃がした盗賊グループの残党が、そちらに接近しています。A-Ⅲ到着までの間、交戦してください。」
透:「さあ、月菜、来るぞ!!」
月菜:「う、うん!」
 月菜は、震えが残る表情で、それでも精一杯力強く頷いた。
AI:「A―Ⅰ・Ⅱユニット、敵盗賊団が味方と合流し、三機がそちらに向かっています。注意してください」
透:「そういうことを、直前に言うなよな!ほら、もう敵さんが見えてきちまったぜ!」
 三人の盗賊たちは、透たちの姿を確認するなり発砲してきた。盗賊たちのシュミクラムは、二機はビームライフルを構え、もう一機は途中でライフルを失ったのか、ビームサーベルを構えていた。
透:「ったく、次から次へと、そんなに死にたいのかよ!!」
 透は吼えると、ライフルから二発のビームをほぼ同時に撃ち、一方のMSの右腕を、もう一方のライフルを過たず撃ち抜いた。そして、彼らがビームサーベルを抜く前に、腰部に折りたたまれた二対のレール砲を展開して連続で放ち、二機の脚部を砕いて、接近戦を仕掛けようという気を挫く。
 一方、月菜を見ると、突進してくる最後の一機相手にビームライフルを構えながらも、先程のことを思い出したのか、トリガーを引けずにいた。そのうちに敵は接近し、ビーム刃を振り下ろして、ライフルを一刀両断した。
月菜:「きゃぁ! こ、来ないでよ!!」
 なおも執拗に斬りすがる盗賊相手に、月菜はバックパックからビームサーベルを引き抜いて応戦するが、やはり相手を殺してしまう恐怖のためだろうか、完全に受け太刀状態だ。透は月菜を援護しようとしたが、この乱戦状態では盗賊を狙ったビームが月菜に当たってしまうこともあり得る。透は射撃にも自信はあったが、月菜に万が一のことなどあってはならない。
透:「チッ!」
 透はライフルと、ついでにシールドも捨てると、月菜に執拗に斬りかかる盗賊目掛けて全速力で突進。腰部にマウントされたビームサーベルを二本とも引き抜くと、瞬く間にサーベルを持つ右腕と両脚を斬り飛ばして、一瞬のうちに敵を完全に戦闘不能に追い込んだ。
月菜:「と、透・・・、ありがと」
 そのとき、AIが新たな指示を出した。
AI:「A―Ⅰ・Ⅱユニットは、至急西のブロックに向かって下さい。ハッキングチームが闘争中です。そちらにはA―Ⅲが間もなく到着するので、そちらはA―Ⅲに任せてください」
透:「了解」
 透たちは親しみの持てない同僚にその場を任せて、ハッキングチームを追うために移動を開始した。
 
 そして、透たちは間も無く、逃走する三機のシュミクラムを発見した。それぞれに派手な装飾がされてあり、一目でこれがガキたちのものだとわかる。ハッカーの少年たちのシュミクラムは、途中で銃撃を受けたのか所々破損しており、まともに戦える状態ではなかった。
透:「動くな!!動くと撃つぞ!!」
 透と月菜は、少年たちが抵抗してこないことを祈りながら、彼らに銃を向けた。すると、
少年A:「あれ。おい、この声・・・・」
少年B:「ああ、そうだよ多分。間違い無いよ」
少年C:「あなた、もしかして『草原の狼』の相馬透さんじゃないか!?」
透:「え?」
 戸惑う透をよそに、少年たちは場の緊迫した空気にそぐわない馴れ馴れしさで話しかけてきた。
少年A:「やっぱりそうだ!うわ~、感激だなー。覚えてますか? 俺、ケンジ。ほら、昔、ハッカー専用のチャットルームで音声のみでやりとりしたことありますよね」
少年B:「チームが解散して、しばらくしてパクられた、って聞きましたけど、V・S・Sに入ってたんですね」
少年C:「俺たち、透さんたちみたいになりたくてハッカー始めたんです。同じハッカーのよしみで、見逃してもらえませんか」
透:「この・・・そんな都合のいい話、あるわけないだろ!!」
 まるで昔の、あまりにも無謀だったころの自分を見ているようで、透は腹立たしかったが、一方ではどこかホッとしていた。これならば、少なくとも命のやり取りにはならないだろう。
透:「お前たちのやってることは、許されないことなんだ。見逃すことはできないから、せめて大人しく捕まってくれ」
 すると、憧れの人物からの直接の説得だったせいだろうか、想像以上に少年たちは物分りよく聞いてくれた。
少年A:「・・・わかりました。それじゃあ、俺たち大人しく投降しますから、命だけは助けてくれますよね」
透:「・・・ああ、わかった、約束する」
 そう言って、透は銃口を下げた。少年たちも、もともと銃器は持っていなかったし、両手を上げて後ろを向き、完全に降伏の意思を見せていた。隠し武器を持っている様子も無い。事態が収集したように思われ、透たちが安心した、そのときだった。
玲佳:「何をしているの、相馬君!!さっさと銃殺しなさい!!!」
 突然、玲佳からの通信が割り込んできたのだ。
透:「な!!?」
月菜:「で、でも社長、この子たち、降伏するって・・・・」
 すると、玲佳は有無を言わせぬ口調で怒鳴りつけた。
玲佳:「ええい、もういいわ!!A―Ⅰ・Ⅱ以外の全社員に告ぐ。この子たちを射殺しなさい!!!」
 同時に、数機のアストレイが部屋になだれ込み、少年たちに銃口を向けた。そして、
少年A:「ちょ、ちょっとタンマ!!!俺たち、降参するって・・・!!!」
 少年が言い終わる前に、アストレイたちの銃口が一斉に火を噴いた。放たれたビームは、寸分の狂いも無く少年たちのMSのコックピットを直撃し、少年たちは断末魔を上げる暇も無く、ネット世界から、そしてこの世から消滅した。
月菜:「う、うそぉぉぉ!!!?」
透:「な・・社長、これはどういうことだ!!!」
 玲佳の答えは、ウィンドウに表示された憤怒を隠しきれぬ表情だった。
玲佳:「AI、この子たちを強制離脱(アボート)して!!!」
AI:「わかりました。A―Ⅰ・Ⅱユニットを、構造体からアボートします」
透:「おい、ちょっと待て、おい・・・うっ!!!」
 瞬間、透の体を、全身の神経の束を直接つかんで引っ張りまわされるような、何とも言えない不快感が駆け抜け、透たちはネット世界から引きずり出されたのだった。
 
『強制離脱(アボート)
 
 
透:「う・・・くぅ」
 気が付くと、透はコンソールに寝転がっており、そんな透を二人の人物が、それぞれ対照的な面持ちで見つめていた。一人は、まるでこの世の終わりのような顔をして透を気遣う月菜。もう一人は、まるで透を薄汚いゴキブリか何かのように冷徹に見下す玲佳だった。
透:「お、俺は、一体・・・。それに、ここは・・・」
月菜:「と、透、まだ起きちゃダメだって・・」
 今にも泣き出しそうな顔で心配する月菜を無視し立ち上がると、未だに残る強制離脱(アボート)による不快感を頭を振るって追い出した。その途端、今まで靄がかかったようだった意識が急にハッキリし、そして目の前の人物に問わねばならぬこともまた、ハッキリと思い出された。

『ちょ、ちょっとタンマ!!! 俺たち、降参するって・・・!!!』
 
透:「何故だ・・・」
玲佳:「?」
透:「何故、なぜ彼らを射殺したんだ!!」
月菜:「ちょ、ちょっと、透!」
 月菜が慌てて止めるが、透の怒りは収まらず、橘玲佳の、自分の雇い主の襟首を掴んで締め上げるという、本来なら許されるはずもない行動に出た。しかし、玲佳は自分より遥かに背の高い透に締め上げられても、微動だにせず、眉一つ動かさない。
玲佳:「それは、あの子らが重要な情報を盗んだからよ。それくらい、あなたもわかるでしょ」
 玲佳は、それがさも当然であるかのごとく、はっきりと言った。
透:「だ、だからって・・・、あいつらは、降伏してたじゃないか!!」
 すると、玲佳は大きくため息をついた。まるで、聞き分けの無い子供を躾ける母親のような態度で。
玲佳:「透君。いくら彼が降伏したと言っても、彼らが見てしまったデータの記憶は、彼らが生きている限りなくならない。そして、そのデータに書かれていることが、ネットの噂話レベルにでも上れば、誰かが職を失うかもしれない、誰かが社会的に抹殺されるかもしれない。いいえ、あの中には、大勢の人たちの生活を支えているデータもあるわ。だからそのデータが悪用されれば、罪も無い人が大勢死ぬかもしれない」
透:「・・・・」
玲佳:「『データが人を殺す』。この時代に生きている者にとっては、常識よね。だから、彼らはね、“あのデータに触れた時点で死が決定されていた”の」
 確かに、玲佳の言うことはもっともだった。それくらい、透にもわかる。しかし、玲佳の言い口は、喪われていった命に対して何の感情も含んでいない、酷く冷たいものだった。それが、少年たちの最期の叫びと合わさって、透の中に、やり場の無い怒りを形成する。
玲佳:「・・・・何、その顔は?まだ何か、言いたいことでもあって?」
 不穏な空気を察した月菜が、素早く両者の間に割り込んだ。
月菜:「ね、ねえ、透、止めなよ、流石にこれ以上はヤバイよ!クビになっちゃうよ!!」
玲佳:「大丈夫よ、月菜さん。自分で入れた社員の教育も、私の務め。あなたたちは、そう簡単にはクビにはしないわ。ただ、社令不服従は本来なら厳罰だから、あなたたちには三日間の謹慎と、反省文を数枚書いてもらうことにはなりますけど」
 その、犯した罪にはあまりにも見合わない軽い罰が、透の心にかえって「見下されている」という意識を持たせ、透の憤りに油を注ぐ。
 更に、一社員が社長につかみかかると言う事態になっても、他のパイロットたちは表情の一つさえ変えず、ただ黙々と次に与えられた仕事をこなしていた。その様は、まるでよくできた精巧な人形のようで、その不気味さからくる不快感が、透の心に更なる怒りとなって転化される。
透:「・・・・・・・」
 透は玲佳を思い切り一睨みすると、そのまま何も言わずに作戦室から出て行った。すぐ後ろで、「透、待ってよ!!」という月菜の声が聞こえたが、透は自分の部屋に付くまで、ただの一度も振り返らなかった。


 


 


部屋に戻るとすぐに、透は強烈な吐き気を覚え、トイレで一通り胃の中のものをぶちまけた。そして洗面所で口を濯ぎ、顔を上げて鏡を見ると、そこにはまるで別人のように憔悴した自分の顔があった。
透:「・・・・クソッ!!」
 透の頭の中では、今でもあの少年たちの最期の叫びが、引っ切り無しに反響していた。
 
『ちょ、ちょっとタンマ!!!俺たち、降参するって・・・!!!』
 
 
そして、すぐにそれとは別の、しかしよく似た二人の人間の声が、悲鳴の反響に加わる。
 
『やめろ! 俺たちはテロリストじゃない!!!』
『やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!』
 
透:「畜生、畜生!! 優哉、俺は・・・っ!!」
 無抵抗を表明しながら、無残にも貫かれた大切な存在。透は親友を殺した相手を憎んで、憎んで、憎み切った。その相手もまた、大切な人を無残に殺された、同じ境遇の存在だと知らずに・・・。
 そして、その光景は、今日再び、目の前で起こった。無抵抗の少年たちが、無残にも撃ち殺される悪夢。しかもそれは、透の仲間たちがやったことであり、透も言うなれば、彼らを殺した一人だった。
 今日、透は優哉の仇を憎む権利さえ、失ってしまったのだ。
月菜:「透・・・・」
 リビングに戻ってみると、月菜が今にも泣き出しそうな表情でこちらを見ていた。その視線に、透は何故かいたたまれない気持ちになる。
月菜:「と、透、何か作ろうか?」
透:「・・・・」
 食べられるわけがなかった。ついさっき、あらかた胃の中のものをぶちまけたばかりなのだ。
月菜:「そ、そうだよね、食欲なんて沸くわけないよね・・・。それじゃあさ、テレビでも観ようか。きっと面白いのやってるよ・・」
 月菜は、無理に笑顔を作りながら、リモコンを操作した。
 
しかし、スクリーンに映し出されたのは、一昔前の戦争を題材にしたB級映画(ホロ)で、しかも今丁度、包囲されて戦意を失った部隊に向けて、敵の部隊が銃を構えたところだった。
兵士:「た、助けてくれ!降伏するから、こ、殺さないでくれぇ!!」
敵兵士:「ハハハハ、死ね、死ねぇ!!戦争では降伏なぞ認めん、貴様らは皆殺しだぁ!!」
 丸腰で怯え神に祈る若い兵士に向かって、敵兵士が無慈悲にも自動小銃の引き金を引いたところで、月菜は慌ててテレビの電源を切った。
月菜:「・・・ご、ゴメン」
 なんとも居心地の悪い空気が流れた。そして、その空気に耐え切れなくなった透は、おもむろに立ち上がった。
月菜:「と、透!?どこ行くの?」
透:「ここを出る。こんな胸糞悪い所、もうオサラバだ!!」
月菜:「え、ちょ、ちょっと待って・・・」
 月菜が何か言い出す前に、透は扉に向かって歩き始めたが・・・。
月菜:「透、待って!!」
 思いもかけず、月菜に腕を掴まれた。透の腕を掴む月菜の力は、今までに無いほど強かった。もう二度と透を離さぬように。離してしまえば、もう二度と掴めぬことを知っているかのように。
透:「月菜、離せ」
 透ははっきりと拒絶の意を込めて言った。しかし、月菜の透の腕を掴む力は、ほんの少しも弱くなりはしなかった。
透:「月菜、いい加減に離せ!!」
月菜:「嫌、離さない、絶対、絶対離さない!!
 突然、月菜が悲鳴のような、いや、悲鳴そのものの叫び声をあげた。透は驚きのあまり、一瞬歩を止めた。
透:「つ、月菜?」
月菜:「透、今度はどこへ行くつもりなの!?なんで出て行こうとするの!!」
透:「なんでって、当たり前だろう!!お前、今日ネットであったことを見てただろう!!」
月菜:「わかってるよ!でも、でも、我慢しようよ。ね?」
透:「我慢って、お前・・・・、お前、自分の言ってることがわかってるのか!!あいつらは、いや、俺たちは、優哉を殺したヤツと、同じことをしたんだぞ!!!」
月菜:「わかってるよ、わかってるけど・・・」
透:「わかってなんかいるもんか!!お前は今、優哉が目の前で殺されて、それで我慢しろと言ったも同じなんだぞ!!!」
月菜:「ち、違・・・」
透:「いいや、違わないね!!とにかく、俺はこの会社を辞める!!こんな胸糞悪い所、もう沢山だ!!!」
月菜:「それで、透はどこへ行くの?」
 唐突に、今まで喚いていたのが嘘のように、落ち着いた、それでいてこの上もなく悲しそうな声で、月菜は言った。
月菜:「ここを辞めて、それで透は、どこへ行くの?」
透:「ど、どこって・・・、ここよりマシなどこかさ!!」
 透にも、当てはあるわけではなかった。そして、そんな透に対し、月菜は冷静に、しかし泣いているような声で続ける。
月菜:「透、あたしたち犯罪者なんだよ?今は社長のおかげでまっとうな仕事に就いていられてるけど、ここを辞めたら、もう、あとはアンダーグラウンドぐらいしか、行く所なんてないんだよ」
透:「そ、それなら、身分証を偽装してでも・・・・」
月菜:「それにね、もしこんな状況じゃなくても、きっと無いよ、ここよりマシな仕事なんて。シュミクラムに乗り続ける限り、あたしたちには、人を傷付ける汚れた仕事しか、きっと無い・・」
透:「そ、それは・・・・」
月菜:「透、あたし、こんな時に不謹慎かもしれないけど・・・・。この話を始めて聞いたとき、思ったの。きっとこれは、神様がくれたチャンスなんじゃないか、ってね・・・」
透:「・・・・。」
月菜:「あたしね、正直な話、もし透がちゃんとした学校に通え透:「・・・・・」
月菜:「あたしたちの人生って、ツキとは無縁だったよね。結局、生きていくためには汚いことに手を染めるしかなくって、どんなに才能があっても、どんなに頑張っても、社会には絶対認められなくて、それで、あんな風に、まるで無意味だったみたいに殺されて・・・・」
透:「・・・・」
月菜:「だからね、この話が来たとき、あたし凄く嬉しかった。これも汚い仕事には違いないけど、でも、少なくともここにいれば、社会は透を認めてくれる。透の才能を、努力を、透の力を認めてくれるんだよ。事実、ここに来てからすぐにあんなに凄い機体も貰って、しかもα―ユニット確定って言われて・・・。透、凄いよ。これ、社会の中で言ったら、透はきっとみんなに尊敬されるよ。だから、ね、ここにいよう?」
透:「・・・・」


月菜:「あたしね、もし透がちゃんとした学校に通えてたら、A級プログラマー、ううん、達人級(ウィザード))だって夢じゃなかった、って思ってる。透だけじゃない。優哉だって、父さんだって、誰にも負けない才能があったのに・・・。あはは、貧乏って、辛いよね・・・
 月菜の言うことは、正しい。だから透が、それでも出て行きたいと考えるのは、ただの子供じみた意地に過ぎない。それでも、いや、月菜の言うことが正しいからこそ、透は気に食わなかった。月菜の、大切な者を慈しむ視線が、耐えられなかったのだ。
透:「すまんな、月菜、俺は決めたん・・・・」
透が言い終わる前に、月菜は淀みも躊躇いも無く、言い切った。


月菜:「だったら、あたしも一緒に行く。」
透:
「月菜?」
月菜:「お願い、透、もう一人にしないで!!!
あたし、どこまでだって行くから!もし透がアンダーグラウンドに行くことになっても、あたし付いて行くから!!」()
透:「バカなことを言うな!!」
 でも、わかっていた。以前優哉に言われたことが、今なら少しわかる。死を覚悟してアシュランと決着をつけに行った時でさえ、そうすれば自分にも死の危険が待っていると知りながら、月菜は躊躇うことなく透を追った。月菜は、例えどんな所にだって、透を追ってくるのだ。
 だから、ここで言わねばならない。
透:「うざいな!!そういうの、迷惑なんだよ!!」
月菜:「―――!!!」
 まるで、心を巨大な刃物で思い切り斬り裂かれたような痛みを覚えながら、それでも透は言葉を続けた。
透:「大体お前、うるさいんだよ!!人の選択に、いちいちあれこれ口出ししやがって!!」
月菜:「だ、だって、あたしは透が一度決めたことは変えられないもん!だから、透が決める前に、あれこれ口出しするしかないもん!!」
 月菜の大きな瞳からは、大粒の涙がぼろぼろとこぼれ始めていた。しかし、透はそれでも、心を鬼にして言う。
透:「それがうざいって言ってるんだよ!!俺が何をどう決めようが、お前の知ったことじゃないだろ!!とにかく、お前は迷惑なんだ!!お前はさも当然のように俺の傍にいるけどな、お前が俺の傍にいることは、俺にとっては迷惑でしかないんだよ!!!」
 言った途端、透の心に大きな穴が空き、そこに嫌な風が吹き込んでくる感じがした。
 もし、今透の傍から月菜がいなくなれば、透は半身を失うに等しい苦痛を受けることはわかっていた。月菜が傍にいて、いつも口うるさくあれこれ言って、だからこそ、透は今日ここまでやってこれたということも、知っていた。
 でも、だからこそ、これ以上、本当にこれ以上は、月菜を巻き込むわけにはいかなかった。
月菜:「とお・・・る・・・・」
 月菜が力無くその場に座り込む様を透は見ていられず、だからこそ駄目押しと言えるような言葉を放って、
透:「わかったら、もう俺につきまとうな」
 透は、二人の部屋を後にした。


 


 


 それから数時間後、透は気が付くと、古巣の下町(ダウンタウン)の一角に立っていた。町には相変わらず淀んだ空気が立ち込め、それに似つかわしいくすんだ雰囲気を纏った住人たちが闊歩する風景は、『神の恩恵』などというものの存在を根本から否定するように思えた。
 そして、この風景は、かつての透がその一部だったものであり、そしてこれからの透がその一部になるものでもあった。
 透は、ただ何と無しに、昔よく仲間と行ったいきつけのバーに足を運んだ。相変わらず地べたから天に向かって唾を吐くような、そのゴテゴテしたいかがわしげな店の外装は、透が以前この町を出た時と何ら変わっていなかった。
店のウェイトレス:「お!やあ、兄弟(ブラッディ)、お久しぶり!・・・どうしたの、ヤバイ事から足を洗って、どっかに就職したって聞いたけど・・・。」

 こちらも相変わらず、派手でケバい格好をしたウェイトレスが、透に親しげにウィンクをしてくる。
透:ああ、辞めたんだよ。色々胸糞悪い職場でな。」
ウェイトレス:「そ。それじゃあ、注文は、麻薬入りミルク(モロコ・ドレンクロム)でOK?」
透:「とりあえず、合法(ヤバくない)のを一杯」
ウェイトレス:「透ちゃん、それ、難し(ハード)過ぎ~」
 そして、透は空いている席に腰掛け、程なくして目の前に出された『いかにもヤバそうな』毒々しい色の飲み物を眺め、ため息をついた。
 周囲には、引っ切り無しに、下町独特の、野卑で汚いスラングが飛び交っている。透自身、先ほど久しぶりにスラングで会話したとき、何か郷愁のようなものを覚えた。
透:「そうだな。俺には、やっぱりこういう生活しかないんだろうな・・・」
 そう言ってドリンクで満たされたグラスに手を伸ばしたとき、不意に月菜の顔が、別れた時の何とも言えない泣き顔が、脳裏に鮮明に蘇った。
透:「チッ、忘れろよ、俺!もう、あいつを巻き添えにするわけにはいかないんだ。あいつは俺なんかと離れて、幸せにならないといけないんだ!!」
 しかし、いくら振り払おうとしても、月菜の“幸せとは程遠い”悲しそうな表情は、透の脳裏にこびり付いて離れなかった。
透:「畜生!全く、どうにかしてやがる。・・・・何か、別のことでも考えようか」
 そう思い立って、透は、この場所の思い出を順々に思い浮かべていった。できるだけ月菜が登場しない思い出、優哉やあきらとここでバカ話に興じた思い出を。
 そのとき、ある日、ここであきらと交わした会話が、鮮明に思い出された。


 


 


 それは、一年ほど前だったか。草原の狼(ステッペン ウルフ)が、大物をハックの獲物として本格的に狙い出す直前の頃。その頃、透にはどうしても欲しい機材があったのだが、生憎その時は持ち合わせが足りず、そして当時狙っていた獲物のレベルでは、数回ハックを繰り返した位でその機材には到底手が出なかった。
 
そんな時、丁度あきらが、何か新しい仕事を始めたという噂を聞いた。しかも聞く所によると、かなり収入はいいらしかった。なので、透は自分もその仕事に混ぜてもらおうと、あきらにその話をするためここに呼んだのだった。
あきら:
「やめとめやめとけ。お前にその仕事は、合わねぇよ」
 それが、あきらの第一声だった。
透:
「はぁ!?何でだよ!お前の仕事が、何かヤバイもんだってことは、こちとら百も承知なんだよ。お前も俺の腕は、知ってるだろ!」
あきら:
「ああ、知ってるなら話は早えぇな。“だから”俺は「やめとけ」って言ってるんだ」
透:
「おいおい、何でだよ!さっきから、全然会話がかみ合ってないぞ」
 すると、あきらは盛大にため息をついて、言った。
あきら:
「「おいおい」、はこっちのセリフだよ、まったく。お前を変な仕事に巻き込んだら、月菜に何て言われるか、わかったもんじゃないだろ」
透:
「あのなあ、何でそこで月菜が出てくるんだよ。それに、あいつが何言おうと、俺には関係無いだろ!」
あきら:
「大アリだよ!お前、月菜までヤバイ仕事に巻き込む気か!!」
透:
「え?」
 その時は、何故透がヤバイ仕事を引き受けることが、即ち月菜を巻き込むことになるのか、透には皆目見等がつかなかった。
 そんな透を見て、あきらは再び、大きなため息をついた。
あきら:
「おまえなぁ・・・・。まあ、いいけどよ。とにかく、今日は一旦家に帰れ。そして、月菜と乳繰り合って、一晩経っても考えが変わらなかったら、そんときゃ、もんのすげードロドロに汚れた仕事を紹介してやるよ」
透:
「あきら、俺と月菜はそんな関係じゃ無いって、何度言ったら・・・」
あきら:
「はいはい。もったいないねー。月菜だって(オンナ)、それも滅多にいねえ上玉だ、ってのによぉ」
 あきらは透が反論する前に、ケケケ、と下品に笑いながら、代金をテーブルの上に置いて店を出たのだった。
 それから、面白くない気分で部屋に帰ると、案の定、月菜がご飯を作って待っていた。
月菜:「透、随分遅かったじゃない。全くもう、あたしお腹ぺこぺこなんだからね」
透:「はぁ?んなもん、それなら先に食べりゃいいだろ。全く、今日はお前といい、あきらといい、全然会話がかみ合わない」
月菜:「あきら?あきらとどこで何話してきたのよ」
透:「そんなの別にお前には関係無いだろ」
月菜:「そりゃ、そうだけど・・・教えてくれたっていいじゃない!」
透:「必要ない」
月菜:「もう、そんなこと言うなら、夕ご飯、分けてあげないんだから。今日は透の大っ好きなビーフシチューなのにね~」
:「・・・別にいらないね」
月菜:「ふふ、何さ、その一瞬の沈黙は。本当はほしいんでしょ。いいけどなー、どうしようかなー♪」
透:「まあ、別にいいけどな。二人分食うことになって、太って泣きを見るのはお前だし」
月菜:「くっ!・・・わかったわよ、好きなだけ食べてよね!」
 そんなこんなで、いつもの言い合い(周囲には『夫婦漫才』とか言われているが)をして、そのあと二人で、月菜の部屋のテーブルを囲んで食事をした。
月菜:「透、どう、美味しい?」
透:「まあ、まずまず、だな」
 口ではそう言ったが、月菜のビーフシチューは、とても美味しかった。ルーは市販のものを使ってはいたが、隠し味の味付け、野菜の切り方や煮込み具合などが、透の好みにきちんと合わせてあったのだ。
 透はふと、先ほどあきらに言われたことを思い出した。
(もし俺が小銭欲しさに請けた仕事で、この生活が壊れるとしたら・・・・)
 そう考えると、何故か胸がたまらなく締め付けられるのだった。
月菜:「どうしたの、透?」
 突然月菜に聞かれて、透は内心慌てた。今自分の考えていたことを、月菜に見透かされた気がしたから。
透:「別に・・・」
 そんなはずは無いか、と透は思いなおした。あのボケボケ月菜に、そんな洞察力などあるはずが無いと思ったから。しかし、月菜はなおも食いすがった。
月菜:「別に、じゃないって。透、また何か悩んでることあるでしょ。もう、何かあったら、あたしに相談しなさいっていってるのに。いっつもいっつも一人で抱え込んで、挙句最終的に優哉に泣き付くんだから」
透:「誰も泣き付いてなんかいない!」
月菜:「はいはい、まったくもう、『遠くの親戚より近くの他人』っていう諺もあるんだから、ちょっとくらいお隣さんのあたしに頼ってもいいのに。あたし、透のためなら、結構何だってしちゃうんだからさ」
透:「別にいらないね。それに、お前、よくそんな諺知ってるな」
月菜:「またバカにして!・・・・んで、何かあったの」
 何故か知らないが、どうやら今日は月菜の虫の居所が悪いみたいだったので、適当なことを言って逃れようとした透の口から出たのは、透にも予想だにしなかった言葉だった。
透:「いや、別に。たださ、シチュー美味いな、って思ってさ」
 瞬間、月菜が突然黙り、俺は一体何を言ってるんだ、と透が思ったそのとき。
月菜:「え、う、うん。ありがと、透」
 月菜が、信じられないくらい綺麗な笑顔で笑った。
透:「ば、ばか!今までの酷すぎるやつに比べたら、だよ!」
 透は慌てて心にも無いことを言いながら、何故か心が満たされてゆくのを感じた。
 そしてその時、この生活が、幼馴染と二人、騒がしくも平凡で、平和な生活が、この上もなく、愛しく感じたのだった。
 結局、あきらの仕事は請けなかった。そしてそれから、あきらが透の前でヤバイ仕事の話をすることも、一切無かった。
 最も、透は、こんなことがあったことさえ、一週間以内にはすっかり綺麗に忘れ去っていたが。


 


 
透:「つき・・な」
 口に出して呟いて、初めて透は現実に引き戻された。
透:「っったく、俺は何を考えてるんだ!!だから、俺はもう、一人で生きていくって決めたんだろう!」
 そう言って、透はまた別のことを考えようとした。しかし、頭に浮かぶのは、何故か月菜の顔ばかりだ。
 透にお小言を言うときの月菜。ドジをやらかして半べその月菜。ハックの成功祝いに酒盛りして、酔いつぶれてヘベレケになった月菜。そして、優哉が死んで悲しみに暮れた月菜。透の無謀な仇討ちにいつも心配そうな顔で付いてきた月菜。普段からは想像もつかないほど綺麗な月菜の笑顔。そして、ついさっき見てきた、思い出すだけで透の胸が締め付けられる、月菜の泣き顔。
透:「・・・畜生!!」
 透はテーブルの上に、乱暴に御代分の小銭を叩き付けると、逃げるように店を去った。結局、ドリンクは、一口も飲まなかった。
 そして、その時、透は認めてしまった。
 自分がとっくに、月菜を幼馴染としてではなく、異性として好きになっていたことを・・・。


 


 


 夜もとっぷりと暮れ、日付も変わった頃、透はV・S・Sの社員寮にいた。寮を出るとき、勢いで着の身着のまま出てきてしまったので、どのみち一度は荷物を取りに戻らなければならなかったのだ。
透:「月菜は・・・寝てる、よな・・・・」
 透は、自らに言い聞かせるようにひとりごちた。
 
正直、もしもう一度月菜と会ってしまえば、今の透には、それを振り切って出て行くだけの気力は無かったのだ。
透:「くそっ、我ながら、なんて女々しい!」
 透は毒づきながら、二人の部屋の扉に手をかけ、そして中の様子を伺うため、扉に耳をそばだてた。
 果たして、何も聞こえないと思っていた透の耳に飛び込んできたのは、月菜の泣き声だった。
月菜:「う、うう、っっく、うう、ああ、う、うぁぁーー!!透、透、ごめんね、ごめんね、透!!
 まるで、この世の全てに絶望したような慟哭と、己の身を切り裂くような謝罪の言葉。月菜が泣くところは何度も見たことがあったが、こんな月菜を見るのは、長い付き合いの中でもたった一度しか無かった。
月菜:透、透。あたしを置いていかないでよ、とおるーー!!
透:「くっ!!」
 もうたまらなかった。居ても立ってもいられなかった。透は意地もプライドも捨てて、扉を開け、部屋に駆け込んだ。
透:月菜!!!
 部屋の状態は、透が出て行ったときそのまんまだった。月菜は、明かりを付けることも、カーテンを閉めることも、そしておそらくシャワーを浴びることも食事を取ることも全て忘れ、透が使っていたベッドに突っ伏して、親に捨てられた赤子のように、声を殺すことなく泣いていたのだった。
透:「月菜、月菜、しっかりしろ!!」
月菜:「とお・・・る?」
 月菜がゆっくりと顔を上げた。その顔は、何時間もただひたすら泣き通したせいで、真っ赤に泣き腫らされているにも関わらず、まるで死人のように青く、一切の生気が感じられなかった。
透:「月菜・・・済まない!!」
 透は、月菜を抱きしめた。万感の想いを込めて、もう二度と離さぬよう。月菜はその腕の中で、現状をまだ上手く認識できていないようだった。
月菜:「とおる、とおるなの・・・?」
透:「ごめん、月菜」
 次の瞬間、月菜の目から、また新たな涙が溢れ出した。
月菜:透、透、とおる、とおる!!!
 月菜は透の胸に顔を埋め、この世の終わりのように、泣きじゃくった。
月菜:「ごめんね、もううるさく言わないから、お節介ももうしないから、だから、だから、あたしを置いていかないで、一人にしないで!!!
透:「月菜・・・・」
 こんな様子の月菜を、透はかつて一度だけ、見た事があった。
 それは、月菜の父親、笹桐源治が死んだときだった・・・。


 


 


 月菜の親父さんの最期は、腕のハッカー(ホットドガー)には似つかわしくない、現実(リアル)での交通事故という、平凡でありふれたものだった。
 透が知らせを受けて、連絡を受けた病院に駆けつけたとき、月菜は父の亡骸にすがり、この世の全てに絶望するかのように、大声をあげて泣いていたのだ。
月菜:お父さん、お父さん!! 嘘よ、そんな、お願い、あたしを一人にしないで!!!!
 透は、そんな月菜に声一つかけることができず、ただただその場で立ち尽くすだけだった。
 月菜は一晩中泣き続けた。そして夜が明ける頃、涙も声も枯れた月菜は、そのまま泣き疲れて眠ってしまった。透は、月菜が泣き疲れるまで、そして泣き疲れて眠ってからもずっと、月菜の傍にいた。透に出来ることは何も無いことはわかっていたが、それでも今は、絶対月菜の傍を離れるべきではないと思ったからだ。
 透は、眠る月菜に毛布をかけ、月菜が起きるまでずっと傍にいた。
 起きた月菜は、憔悴しきった表情で、それでも一言透に言った。
月菜:「ありがと・・・・」


 


 
月菜:「ごめんね、透・・・」
 ふと気が付くと、月菜は泣き止んでいた。しかし、その顔はあの時と同じで、完全に憔悴しきっていた。
月菜:「そうだよね、透も、自分の人生を生きたいよね。あたしなんかが口を出すことじゃないよね。むしろ、あたしなんかが傍にいたら、邪魔だよね・・・」
透:「月菜、それは・・・」
月菜:「だから、いいよ、透。あたしなんか置いて行っちゃっても。あたしは、何とか頑張って、一人で生きていくからさ」
 そう言って、月菜は笑った。しかし、そのあまりにもぎこちなく不自然な笑顔は、逆に透の胸を、強く締め上げる。
月菜:「だから、透はもうあたしになんて構わず・・・・」
透:もう止めろ!!無理をするな!!!
 もう、その先なんか聞いていられなかった。透は、月菜の口を塞ぐ目的で、さらにきつく抱きしめた。
透:「月菜、もういいんだ!!全く、一人でなんて生きていけないくせに、お互い、何を言ってんだよ!!そんな、心にも無いことなんて、もう言わなくてもいいんだよ!!!」
月菜:「とおる・・・・」
透:「あんなに一人が嫌で泣いてたくせに、強がるなよ、バカ!!」
 月菜の瞳に、再び涙が満ちていく。
月菜:「ダメ・・・だよ、とおる。そんなこと言われたら、あたし、折角我慢してるのに、もう、我慢できなくなっちゃうよ・・・・」
透:「我慢なんかしなくてもいいんだ!お前も、俺も!!」
 月菜の瞳から、再び、大粒の涙が零れ落ちた。
月菜:「う、うう・・・・、あたしね、気付いちゃったんだ・・・・。あたし、透がそばにいないと、もうどうしていいかわからない・・・。透はずっと傍にいて、お父さんが死んじゃった時も、ずっと傍にいてくれて・・。きっと、あの時からだね。あたし、透が傍にいないとダメな、弱い女になっちゃったんだ・・・」
 今までずっと秘めていた、月菜の告白。だから透も、もう何も隠すことなんて無かった。
透:「俺もだよ、月菜。笹桐の家に来て、記憶も無くて、周りに知り合いもいなくて・・・。そんなとき、お前が手を差し伸べてくれた。きっとあの時、俺はお前が傍にいるのが当たり前で、そして、きっとお前が傍にいなくちゃならなくなってしまったんだと思う・・・」
月菜:「透・・・」
透:「俺、バカだよな。何でも一人でできる気になって・・・。でも、きっとそれは、あきらや優哉が支えてくれたからで、そして何より、お前が傍にいてくれたからなんだ。そんなことも気付かず、一人で生きていける気になって・・、それで、いざ一人になってみると、お前のことしか考えられない俺がいるんだ・・・・」
月菜:「透、それって・・・」
 月菜は、真っ直ぐに透を見つめていた。その透き通った瞳を、今はもう、透は逸らすことなく真っ直ぐに見つめ返す。
透:「・・・好きだ、月菜。だから、いつも俺の傍にいてくれ」
月菜:とおる!!!
 月菜は、透の胸の中に己の身を投げ出し、そして透の胸に顔を埋めて、再び泣き始めた。
月菜:「あたしも、あたしもずっと好きだったよ。透、とおる、愛してる・・・」
透:「月菜・・・」
 そしてそのまま、二人は朝日が昇るまで、お互いの身を抱きしめていた・・・・・。


 


 


朝日が二人の部屋の中を照らし始めた頃、月菜はようやく泣き止み、透の腕の中から離れた。
月菜:「ごめんね、透。なんかみっともない告白だったね・・・」
 そう言って微笑む月菜の笑顔は、先ほどとは違い、生気に満ちていて、見るものを安らがせる美しさがあった。この笑顔のためだけでも自分の気持ちを伝えてよかった、と、透は心の底から思った。
透:「しっかし、お前、よくまあ、あんなに泣けるもんだな」
月菜:「えへへ。だって、透がずっと傍にいてくれるって言ってくれて、それで、うぅ、嬉しくて・・・・」
 そう言った拍子に、月菜はまた少し涙ぐんだ。
透:「バカ、もう泣くなよ。脱水症状になっても知らないぞ」
月菜:「あー、バカとは何よ、バカとは」
透:「バカはバカだからバカなんだよ」
月菜:「あのねぇ・・・。ふふ、なんか嬉しいな、またこうしたやり取りが、しかもこの先ずっと、できるんだね」
透:「まあな」
 月菜は、朝日に照らされた窓の外の街並みを、遠い目で見つめた。
月菜:「あたしね、実はずっと、怖かったんだ」
透:「怖かった?」
月菜:「うん。透の才能は、本当に凄かったから。だから、いつか、透はあたしの傍を離れて、ずっとずっと、遠いところへ行っちゃうんじゃないかって。今は透はあたしたちとバカやってるけど、いつかそのうち、もっと上を目指し始めて、ずっとずっと、高いところに行っちゃうんじゃないか、って・・・」
透:「月菜・・・」
月菜:「でも、大丈夫だよね。透は高いところへ行っても、それでもあたしの傍に、いてくれるんだよね・・・」
透:「当たり前だよ。俺は、ずっとお前の傍にいる。いや、いさせてくれ」
月菜:「うん・・・・」


 そして、二人は自然にキスを交わした。月菜の柔らかい唇が離れて初めて、透はこれが始めてのキスだったことに気が付いた。おそらく、月菜もそうだったろう。
月菜:「透、大好き・・・」
透:「月菜・・・」
 そして、透はそのまま自然に、月菜のスカートのホックに指をかけた。月菜も、これから起こることを既に受け入れ、透に身を委ねている。
 スカートのホックが外れ、月菜が透の腕をより一層強く握り締めた、その時。
?:「ハイ、お二人さん!今日の所は残念でしょうけど、ここまでにして」
透:「うわぁ!!?」
月菜:「ひゃい!!?」
 突然、室内の端末から玲佳社長の声が流れて、二人は慌てて離れ、お互いそっぽを向いた。
玲佳:「ごめんなさいね、お二人さん。でも、今すぐに、どうしても二人に知らせたことがあったの」
透:「な、何ですか?」
 透は顔面が熱で沸騰しそうなのを必死で堪えていた。
玲佳:「ふふ、それは社長室に来てのお楽しみよ。それと、透君、あなたの謹慎は明日付けで解除するわ。まあとにかく、あと十分以内に社長室に来て頂戴。言っておくけど、続きをする時間は無いからね」
月菜:「は、はい・・・」
透:「バカ!そこで返事をするなよ!!」
玲佳:「うふふ」
 玲佳は、初々しい二人を微笑ましそうに眺めると、通話の回線を切った。


 


 


 そしてきっかり十分後、社長室に着いた二人を待っていたのは、予想だにもしない、驚くべき報せだった。
玲佳:「相馬透君。あなたを、この私の権限において、明日付けでα―ユニットに指名するわ」
透:「な・・・・」
月菜:「え、えーー、うそぉ!!」
 流石にこれは、晴天の霹靂だ。いや、瓢箪から小馬、というべきか。
玲佳:「あら、何を驚いているの、二人とも。昨日、言ったでしょ。相馬君は、α―ユニットに選抜することを前提にして、雇ったのだって」
透:「いや、そうですが・・・しかし、昨日俺は謹慎処分を受けて・・・・」
玲佳:「気が変わったのよ。昨日のあなたの戦いのデータを観ているうちにね」
透:「え?」
玲佳:「昨日の戦い、あなたは“フリーダム”を現時点では最高レベルで使いこなしていたわ。あれは、あまりにも高性能のおかげで、反面使いこなせる人材は限られているの。あなたはそれを、まるで手足の如く操っていた。その戦闘力は、もはや“シグー”をも遥かに凌ぐわ。こんな逸材を、通常部隊に眠らせておく馬鹿はいない」
透:「はぁ・・・・」
 そう言われても、透には突然のことで、何がなにやら、イマイチピンとこなかった。それに、あの“フリーダム”というシュミクラム、透にとっては、何故かかつての愛機“ゼフィランサス”よりも、格段に扱いやすかったのだが・・・。
 すると、いち早く状況を理解した月菜が、透の背中をバシバシ叩きながら言った。
月菜:「透、凄いよ!!α―ユニットだよ、αユニット!!ネット界最強部隊の一員じゃない!!」
透:「あのな、月菜、ここがどこだか考えてはしゃげ」
月菜:「う・・・」
 しかし、月菜に言われ、透にもようやく実感が沸いてきた。
 『α―ユニット』。橘玲佳直属のV・S・Sにおける特殊部隊にして、あのZAFTの赤服さえ凌ぐ実力を持つといわれる、最新鋭のシュミクラムと装備に身を固めた、ネット界最強の部隊。その一員に、透は抜擢されたのだ。これはつまり、透の実力が、ネット界では最強クラスだと認められたことと等しかった。
透:「α―ユニットか・・・」
玲佳:「ふふふ、「まんざらでもない」って顔ね。それでは、この決定を正式なものにしたいんだけれど、いいかしらね」
透:「はい」
 透は力強く頷いた。確かに、今の自分には汚れた仕事しか有り得ないのかもしれない。でも、それならば、その仕事の中で自分のできる精一杯をこなし、守るべき人を、隣にいるこの少女を、幸せにしてゆくべきだろう。
 すると、月菜がいきなり挙手をした。
月菜:「あ、あの、橘社長!お、お願いがあるんですけど・・・」
玲佳:「いいわ、言って頂戴」
 玲佳は、それもあたかも予測の範囲内であったかのように笑顔で承ると、月菜が口を開く前に透に向き直り、言った。
玲佳:「ちょっと透君には、席を外してもらえないかしらね。女同士の語らい、というものも、してみたくてね」
透:「あ、はい・・・」
 イマイチ釈然としないものは残ったが、それでも透は玲佳の言うことに反論する根拠を持たなかったので、速やかに社長室を退室した。
 
 そして、待つこと数十分。
透:「遅いな・・・。月菜のやつ、何を話してるんだ・・・・」
 透は社長室の前で、つい数時間ほど前に恋人になった女性を待っていた。
 社長室からは、時折月菜の相変わらずデカイ声が聞こえてくる。話の雰囲気に不穏なものは無く、ただ普通に会話が盛り上がっているだけらしいのだが・・・。
 すると、そのときだった。
月菜:「とおるーー!!あたしも、α―ユニットへの配転が決まったよーーー!!!」
透:「うおぉ!?」 
 いきなり社長室から飛び出してきた月菜に、タックルされてしまった。
透:「おいおい、何だよ、いたいな」
月菜:「えへへ、ゴメンゴメン。でもさ、透、今の話、聞いた」
透:「ああ、やけにお前、テンション高いな。・・・っていうか、ちょと待て!!なんでお前が、α―ユニットなんだ!!!?」
 いくらなんでも、それは無茶な話だ。月菜の実力は、確かに以前とは比べ物にはならないほど成長しているが、それでも、ZAFTの赤服レベルにさえも、まだまだ全く達していない。せいぜい、ZAFTの一般兵レベルが関の山だ。
月菜:「それはわかってるよ。けどさ、あたしだって頑張るもん。社長に、特殊メニューでの訓練を受けることを条件に、あたしの要求、飲んでもらった。あたし、頑張って、透にすぐに追いつくから」
透:「でも、あのな・・・」
 すると、月菜は、強い意志の篭った瞳で、真っ直ぐに透を見つめた。今まで、透が一度として見たことの無い、凛々しい表情だった。
月菜:「透、さっき言ってくれたよね。どんなに高いところへ行っても、あたしの傍にいてくれるって。だからね、あたし、透の足手まといにはなりたくないんだ。透が高いところへ行ってもあたしのこと振り返ってくれるなら、あたしだって高いところへ行って、いつか絶対、透に追いつくんだ。そして、お互い肩を並べて、生きてゆくんだ」
 そう言う月菜の表情には、数時間前の、一人になることを恐れてこの世に絶望していた少女の面影は無かった。
透:「そうか、だったら、月菜がずっと、俺と肩を並べてくれるなら・・・、月菜はずっと、俺が守ってやる!」
月菜:「うん!あたしも透を守れるよう、頑張るから!!」
 そして二人は、ここが社長室の前だということも忘れ、お互いの唇を重ねあった。
 月菜の温もりを感じながら、透は、これからずっと、例えどんなことがあろうとも、この少女を守って共に生きてゆこうと、心に堅く誓ったのだった。


 


 


 


 


 


 


 


第十九章『幼馴染』完

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現在社会人として東京都心の企業に勤めている。出身地は北海道。
一人っ子。故に(?)わがままでせっかちなところがある。趣味はドライブと創作作品鑑賞。ただし基本的に超インドア。
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